ダンジョンに超なアイツが来るのは間違いか?   作:アゴン

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今回も、ちょっと人間関係がアレな感じです。

苦手な方はすみません。

 間一髪なお話。

そんな訳で初投稿です。


物語120

 

 

 

 ───ヘスティア・ファミリアには、というよりその団長であるベジットには幾つもの秘密が抱えられている。

 

 一つは、自分が転生者であること。自身の前世を自覚し、今世で憧れの対象であった存在(ベジット)に成り、憧れに恥じない為に強さを追い求める求道者となった。

 

 ベジット自身としては、これこそが秘中の秘ではあるのだが、それ以外にもう一つ決定的な秘密を抱えている。

 

 それが《黒竜の単独討伐》

 

 地下迷宮(ダンジョン)より出で、陸の王者(ベヒーモス)海の覇者(リヴァイアサン)と共に千年に渡って下界を蹂躙してきた災厄の怪物。

 

 嘗ては最強の英雄アルバートがその命と引き換えに黒竜に一撃を見舞い、北の大地へと追いやり風の大精霊の力でその身を封じ込めた。

 

 それから千年。神々が最強の眷族を育てる為に下界へ君臨し、遂には下界最強と謂わしめたゼウス・ヘラの二大派閥が総力を挙げて挑み……それでも討ち果たせなかった怪物の中の怪物。

 

 黒竜という終末機構を討伐することは下界の、ひいては人類の救界(救済)と同意義。

 

 下界に降臨した神々と、その眷族と人類総てに突き付けられた回避不可能な命題。それが黒竜討伐である。

 

 ところがどっこい。そんな人類が総軍となって果たすべき大敵を、あろうことか腕試し感覚でサラッと討伐して下さりやがった大馬鹿野郎が現れてしまった。

 

 それが転生者であり、自称天下無敵を自負するベジット(■■)である。力の制御も巧みになり、超サイヤ人にまで変身できるようになった事で、ベジット(■■)は自分がどれだけ強くなれたのかと気になり、手頃な相手を探していた。

 

 その手頃な相手に選ばれたのが黒竜である。ゼウスの最強眷族達はザルドを除き悉く死に絶え、ヘラの【女帝】が片腕を喰い千切られて啼き喚き、最強の眷族達を無惨に喰い殺した黒竜とその眷族()達。

 

 唯一生き延びたマキシムは己の不手際に嘆く暇も見せず、隻腕となり、残り間もない命を全てを消費して次代に後を託し散って逝った。

 

 終末機構であり、世界の終わりと同義とされる黒竜。そんな黒竜を色違いポ○モン程度の認識しかなかったベジットはこれを一蹴。

 

 天界に座す神々はこの光景を目の当たりにした瞬間………ドン引きした。

 

『えぇ、なに四天王?』

 

 人類が泥にまみれ、血反吐を吐きながら培ってきた神と人類の力の結晶。それが敗れ、下界全体が絶望に伏し、闇と混沌が嬉々として蠢く暗黒の時代の中、唐突に現れたどこの馬とも知れない人間……人間? らしき青年が腕試しと称し黒竜を圧倒した。

 

 天界に座す神々は瞠目した。驚愕し、驚嘆し、そして……何とも言えなくなっていた。人類が全知零能となった神々と手を取って乗り越えなくてはならなかった試練を、ベジットは特に苦戦らしい苦戦をせずに討伐した。単独(ソロ)で。

 

 そして何が一番酷いって、黒竜を討伐した当時のベジット(本人)に全くその自覚が無いことだ。黒竜を精々メガ○ンカしたリザー○ン擬き程度の認識しかしていないベジットは、自分のやらかした偉業に何一つ感じ入る事はせず、これ迄倒してきたモンスター……よりもちょっぴり手応えのある相手として記憶の片隅に押しやっていた。

 

 自分のやらかしたことの重大さを理解するのは、オラリオにて鍛冶の女神にその時の事を説明された時。その時だって、レイド戦のボスを横取りしてしまった。なんてふざけた感想を抱く始末。

 

 後に、オラリオで騒動を引き起こしたとある地下世界の暗黒神は、天界に強制送還された直後に全ての事情を把握。愕然となり、膝から崩れ落ちたという。

 

 そんなエレボス君をからかう神々は当時の天界にはいなかった。人類の為、人類の生存と未来の為に下界に於いて絶対悪の邪神としてその名を未来永劫刻まれる事になったエレボスは、ただひたすら慟哭の日々を過ごしたという。

 

 そんな、全方位にして広範囲に大きな爪痕を残してしまう偉業という名の“やらかし”をしてしまったのがベジットが自覚するべき最大の秘密である。

 

 ………因みに、人語を解し理性ある異端児(ゼノス)風の大精霊(アリア)の復活。ベジット自身の(ゴッド)化、なんて秘密の在庫をヘスティア・ファミリアは抱えているのだが、一番マシな秘密は何だと思う?

 

 考えたくもない? それはそう。

 

 

 

 

 

 

 

 

(やべぇ、ロキ様ってば眼がマジだ。本気でこの場で俺の秘密を暴こうとしてやがる……!)

 

 貸し切り状態の酒場にて、ベジットはコップに注がれた水に口を付けながら、自分の事をうっすらと眼を開けて睨んでくる悪神からの口撃からどう捌こうかと、必死にその脳髄を活性化させて思案していた。

 

 そもそも、世界をひっくり返す秘密なんてものは……当然、心当たりしかないベジットであったが、如何せん、抱えている秘密が多すぎる。

 

 世界終末機構の黒竜を筆頭に、風の大精霊ことアリアの復活。人語を学び、人と変わらない理性と知性を持った異端児達。

 

 自身の修行でついなってしまった超サイヤ人ゴッド等々、抱えている秘密に限りがあれど、そのどれもが超ヘビー級の重さを誇るものばかり。

 

 心当たりが多すぎて、どの事を言っているのか分からない。目の前の悪神は権謀術数に長け、数いる神々の中でも非常に頭がキレる超越存在(デウス・デア)だ。

 

 どういう訳か、自分の嘘は神にも通用するみたいだが、ベジット(■■)はそもそも嘘が苦手な人種。下手に誤魔化そうとした所で、事細かに追及されて嘘と見破られてしまう。

 

 故に、ベジットの出せる言葉は自ずと限られてしまう。

 

「なぁベジット、ウチ等と自分の仲や。確かに人には嘘の一つや二つもあるやろうが、今回ばかりはチィッとばかし事情が違う。ここだけの話にしとくから、抱えておく秘密……吐き出しいや?」

 

 言葉こそ丁寧で、その声音は人類を慮る慈悲深き神のようだが、ベジットには首を真綿の様に締めてくる蛇のように聞こえた。

 

(ひ、秘密ってアレだよな? “黒い気”についてだよな? それとも……別件? え、どれを話せば納得してくれるの?)

 

 目の前のロキは待っている(・・・・・)。自分がひた隠しにしている秘密を、あたかも自分から差し出すように眼と微笑み。そして身に纏っている微かな神気でベジットから聞き出そうとしている。

 

 恐らくは、彼女の中で自分は白に近いグレーな扱いなのだろう。“気”という概念を広め、極めようと教えてきたのは他でもないベジット自身。

 

 そんなベジットが黒い気に関してなにも知らないというのは、あまりにも都合良く聞こえるのだろう。少なくとも、無関係とは思えない。

 

 これ迄アストレア・ファミリアやガネーシャ・ファミリアの前で追及してこなかったのは、悪神なりの慈悲だったのかもしれない。

 

「え、えぇ……と……」

 

 言葉が詰まる。何を言っても誤魔化しにはならず、そしてその誤魔化しの数だけ今後のヘスティア・ファミリアの信用が落ちる気がして、ベジットは自分の口からなんて言葉を吐き出せば良いのか、必死になって考えていた。

 

(どうする!? いっそのこと全部ゲロッちまうか? 黒竜を討伐した事とか、アイズの母親っぽいアリアがアリスという偽名で本拠地(ウチ)にいることとか、異端児(ゼノス)に関する話とか、もれなく全部吐き出しちまうか!?)

 

 フィンからの追及は………ない。事前に話の内容を擦り合わせていたのか、【勇者】の名を背負う小人は眼を瞑ったまま頷こうともしない。

 

 遠回しにこの場で聞いたことは黙認するという意味合いなのか、であれば本当にこの場で全てをぶちまけても案外すんなり受け入れられたりするのでは?

 

 (イヤ駄目だろ)

 

 暴挙に出そうになるベジットの喉元を残った理性が押し留める。

 

 相手はトリックスターで、下界に降臨した後も長年眷族達と共に下界の理不尽に揉まれてきた悪神ロキ。如何に天下無敵のベジットであろうと、権謀術数に長けた神相手に舌戦は分が悪い。

 

 全てを話す訳にはいかない。特に異端児達とはダンジョンに巣食うモンスターとは異なる独自の関係性を築いている。友人(ダチ)を売るわけにはいかない。

 

 であればどうするか。足りない頭で考えたベジットの導きだした答えは……自身の事。

 

 転生云々の話ではない。超サイヤ人3に至るついでに、勢いで成ってしまった神化の件。かなりのツッコミを予想されるが、黒竜の話題で下界に騒乱を巻き起こしたり、異端児達を暴露するよりずっと良い。

 

「……実は」

 

 相手がロキであれば別に他の神々に言いふらしたりはしないだろう。フィンもオラリオが騒然となる情報を流布したりしないだろうし、案外ベストな選択肢かもしれない。

 

 口を開き、喉の奥に引っ込ませた言葉を絞り出そうとした………その時だ。

 

「何をしている?」

 

 地の底から響くような低い声がベジット達しかいない酒場に響く。

 

 振り返ればヘスティア・ファミリア秘蔵の特記戦力。【静寂】のアルフィアがそこにいた。

 

「あ、あれ? アルフィア? お前、適当にフラついているって言ってなかったか?」

 

「…………」

 

 腕を組み、ジロリと見下ろしてくるアルフィア。異様な圧を放つ彼女にベジットの額から冷や汗が流れる。

 

 すると、苦笑いを浮かべるベジットに露骨な溜め息を吐き捨て……。

 

ウチの(・・・)団長が何を言ったのかは知らんが……貴様等、少しばかり度が過ぎていないか?」

 

「………」

 

「なんやて?」

 

 暴君の如し【静寂】の口から出てくるのは、侮蔑の言葉。ロキ・ファミリアの頭目とその主神を相手にまさかの喧嘩腰の罵倒にベジットの顔は真っ青になる。

 

「そも、貴様等がこの男に対して何かを意見できる資格を持ち合わせている等……本気で思っているのか? であるならば思い上がりも甚だしい。即刻その首を切り離し、モンスターの餌になってこい」

 

「ちょ、おま!?」

 

 罵倒と言うには剰りにも嫌悪と怒りに満ちた言葉。そんなアルフィアの言葉にある程度の自覚はあったのだろう、押し黙る【勇者】とロキにアルフィアはフンッと鼻を鳴らす。

 

「ベジット、貴様もだ。そこの道化師に何を言われたのかは知らんが、何故イチイチコイツらの機嫌を伺う?」

 

「いや、別にフィンやロキ様には派閥運営やら立ち回りとかで世話になった事あっからさ!」

 

「その結果、アポロン・ファミリアなんて三下派閥に付け入られる事になったのだろうが」

 

 普段閉じられた眼を開き、灰と翠のオッドアイがベジットを射貫く。

 

 今、彼女が最も怒りの矛先を向けているのはベジットだ。誰よりも強い癖に、誰よりも自分に疎い(・・・・・)ベジットが要らぬ重荷を自ら背負い込もうとしている。

 

 それがどういう訳か非常に面白くないアルフィアは、自分でも理解できない怒りにその身を燃やしていた。

 

 アルフィアに正論で責められ、言い返す言葉も失ったベジットが目に見えて落ち込んでいく。そんな自分の団長を前にアルフィアは一瞬だけ言葉を詰まらせ……。

 

「……もういい。向こうで神ニョルズとその眷族どもが待っている。とっとと終わらせて本拠地に帰るぞ」

 

「お、おい」

 

「ちょ、おい待ちぃや! まだ話は終わってへんぞ!」

 

 ベジットの腕を引き、酒場から出て行こうとする。そんな二人をロキが待てと呼び止めて来るが……。

 

「いい加減、自分達の立場を弁えろ」

 

 その鋭い眼光に嘗ての最強(ヘラ)を想起するロキは、その口を閉ざすしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「お、おいアルフィア! 本当にどうしたんだよお前」

 

 自分の腕を掴み、引っ張っていくアルフィアにベジットは動揺したままだった。普段大人しく、口を開けば女王節全開のアルフィアが普段より輪をかけて酷くなっている。

 

 一体何に対して怒っているのか、皆目見当も付かないベジットであったが、取り敢えず落ち着かせようと声を掛けるが……アルフィアには届かないのか、腕を掴んだままズンズンと歩みを進めていく彼女にベジットは唯々困惑していた。

 

 力で振りほどくのは簡単だが、そうすると後がより怖くなる気がする。ベジットとしての直感がこの場は大人しくしていろと囁いてくる。

 

 どうしたもんかと頭を悩ませていたその時、向こうからエルフの集団がやって来た。その先頭に立つのはエルフの王族にしてロキ・ファミリアの副団長を勤めているリヴェリア・リヨス・アールヴ。

 

 【静寂】と【九魔姫】、二人の視線が重なった瞬間火花が散った。そんな気がした。

 

「ベジット、フィンとロキとの話し合いは終わったか?」

 

 先に話し掛けてきたのは、リヴェリアだった。

 

「あ、いや……ちょっと内容に行き詰まってな。そっちは例のアマゾネスを?」

 

「あぁ、今はアイズ達が対応しているが……あの様子だとあまり良い情報は期待できそうにない。あの二人のどちらともあの時の事は記憶にないそうだ」

 

 分かっていた事だが、やはり有益な情報は得られそうにないらしい。申し訳なさそうに畏まるリヴェリアをベジットは気にするなと返した。

 

「まぁあの様子だとそうだろうなぁ。俺も“黒い気”について探してはいるんだけど……」

 

「我々が相手をしているのは、これ迄の知識や経験が通用しない未知なる相手だ。油断せず、大木の心で挑む他ない」

 

「だな。こういう時、エルフの教えってのもバカに出来ないな」

 

 リヴェリアの落ち着きのある言葉にベジットも自然と表情を綻ばせる。

 

「ベジット、互いに異なる派閥に属するが、我々は冒険者だ。いがみ合うこともあれば、手を取り合うことだって出来る。もしお前に出来ないことがあるなら……その時は私を頼れ。私に出来る範囲であれば、手を貸そう」

 

「あぁ、その時は頼むよ」

 

 やはり、リヴェリアの大人の対応は安心する。たとえ彼女の言葉が社交辞令(・・・・)であったとしても、万が一の時は遠慮なく頼れるのだと、そう思えるから。

 

 なのに……いや、だからこそ。

 

「───ハッ」

 

 沈黙を破る嘲りは、何よりも鋭い刃のように思えた。

 

「………何が可笑しい、アルフィア」

 

「いや別に。相変わらずエルフというのは勘違いが凄まじいなと呆れただけだ」

 

 何だろう。前々から思っていたが、アルフィアとリヴェリアって仲が悪かったりするのだろうか? 二人から滲み出る覇気が空間を歪ませ、周囲の建物をギシらせていく光景にベジットもお付きのエルフの少女達も白目を剥いた。

 

「私が、何を勘違いしていると?」

 

「未だ未熟の身でありながら、コイツの役に立つ? なんだ、100年生きて脳ミソまでカビが生えたか?」

 

 ビキリッ。顔に青筋を浮かべ、明らかに怒りを顕にしているリヴェリアにエルフの少女達の顔が青ざめる。

 

「相変わらず傲慢が過ぎるな。自分がベジットと女神ヘスティアの保護の傘に入れられているという自覚はあるのか?」

 

「無論、あるとも。少なくとも貴様等よりも余程弁えている」

 

「っ、私達の何処が、弁えていないと……!」

 

「なにもかもだ戯け」

 

 リヴェリアの言葉の端が強くなり、それに合わせてアルフィアの語気も強くなる。

 

「Lv.7。確かに貴様は強くなっただろうさ。だが、今お前がそこに立っているのは誰のお陰だ? 新たな力を覚え、技を習得できたのは誰のお陰だ? 何一つ己一人では成し得ず、何一つ返していない半端者が、身の程を弁えろ」

 

 エルフの少女達は眼で訴えた。アレお前の部下だろうが、何とかしろよと。

 

 ベジットも眼で訴えた。アレお前達の王女様だろうが、何とかしろよと。

 

「そう言うお前も彼の強さに寄り掛かるだけの齧歯類だろうが。何処まで彼の恩義に寄生する。何処まで彼の優しさに依存している。何一つ返していない? それは貴様もだろうが。私が半端者なら、お前は軟弱者だ」

 

 互いに距離を詰め、メンチを切り合う両者。

 

 エルフの少女達とベジットは互いにお前が止めに行けと押し合っている。仲良いね。

 

「「殺す」」

 

 普段の静寂も、大木の心も何処へやら。殺意増し増しにして睨み合う二人の特大魔導師にエルフ達とベジットは揃って頭を抱えた。

 

 

 





Q.黒竜に対するダンまち世界の人々とベジットの認識の差。
A.ダンまち世界の場合
「其は人類が、神々が、互いに手を取り合って挑み、乗り越えなくてはならない最後の災厄。心せよ人類、心せよ神々。其は即ち、世界の終焉である」

A.ベジットの場合。
「わぁ~! おおきなとかげさんだぁ~!!」(トトロに会ったメイ見たいな心境)

 大体こんな温度差。

因みに、ロキがベジットの詰め場にリリルカ・アーデがいた場合
彼女も切れます。


次回、ロログ湖蒸発。
ロログ湖「悪ぃ、オレ死んだ」



 もちろん嘘だよ!





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