ダンジョンに超なアイツが来るのは間違いか?   作:アゴン

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スミマセン。今回はだいぶ短めで話も進んでおりません。
申し訳ありません。




物語121

 

 

 

 最強の魔導師はと聞かれて、オラリオに住まう多くの人々は口を揃えて彼女の名を出すだろう。

 

 リヴェリア・リヨス・アールヴ。魔法に長けるエルフの一族の中で王族として知られる《ハイエルフ》、エルフ達にとって王族に位置する彼女は神にも等しい存在として認知されている。

 

 神々が名付けた二つ名は【九魔姫(ナイン・ヘル)】。攻撃・防御・回復の魔法に加え、それぞれ3段階の階位を含めた魔法を詠唱連結することによって規模や効果を変えるという。

 

 その卓越した魔力制御と九つの魔法。これ等を使いこなす彼女の魔法の手腕はオラリオの中でも一、二を争うトップレベルの猛者であると誰もが信じ、疑わなかった。

 

 彼女に対抗するのは、対立派閥(フレイヤ・ファミリア)に属する【白妖の魔杖(ヒルドスレイヴ)】くらいとされてきた。

 

 エルフが総出となって神々と等しく仰ぎ見る魔法一族の王。彼女こそが世界最強の魔導師であると。

 

 誰もがそう………疑わなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ、本気で戦る気かよ」

 

 お昼下がりのロログ湖、その中でも人気の無い謂わば穴場の場所で、ベジットは呆れの言葉を口にする。

 

「…………」

 

 投げ掛けた相手は未だ無言な灰の魔女。不機嫌オーラを全開で、話し掛けるなと背中で語る彼女にベジットは諦観の溜め息を吐き出した。

 

 どうしてこうなったのか、先程まで自分の事を叱り付けていたのに、どういう訳か今はリヴェリアを目の敵にしているアルフィアにベジットはほとほと困り果てていた。

 

 何時もなら気に入らない事があればすぐに福音(ゴスペル)をブッパしてくるアルフィアが、態々戦いの場を選んでいる。その時点でベジットは彼女がどれだけ苛ついているのかを伺い知れた。

 

 相手はベジットとヘスティアがオラリオに来てから何かと世話になっている他派閥、その副団長。本音を言えば何とかアルフィアの機嫌を直して貰いたかったが、未だ一言も話さない彼女にベジットは内心でシクシクと涙を流していた。

 

 しかも厄介なのが、相手側であるリヴェリアも戦る気満々だという事。普段は冷静沈着で、滅多な事では激昂しない彼女が、まるで思春期の少女の様に感情を爆発させている。

 

 彼女とは他派閥ではあるが、大抗争(七年前)の頃から何かと世話になり、互いに年頃の幼女(アイズとリリルカ)の育児もあったりしたので、ベジットはリヴェリアにママ友みたいな親しみがあったりした。

 

 冒険者の先輩としても、彼女の言う“大木の心”という心構えは大変参考になったし、ベジットはリヴェリアを一人の人間として尊敬している。

 

 そんなベジットにとって親しみのある女性二人が真剣に、本気で戦おうとしている。

 

 できれば今すぐ止めて欲しいし、機嫌だって直して欲しい。主神同士は兎も角、隣人として懇意のあるロキ・ファミリアと角の立つ様な関係にはなりたくないと言うのが、ベジットのウソ偽りの無い本音である。

 

 けれど……。

 

「あぁ、もう分かったよ、もう止めねぇよ」

 

「…………」

 

 相変わらず、彼女からの返事はない。

 

「だが、やるからには勝てよ」

 

 だからベジットは、団長としてアルフィアに命令する。

 

 勝利すること。それは何かを求め、何かを得る為にオラリオに集まる冒険者達の前提条件。

 

 相変わらずアルフィアからの返事はない。最近少しは打ち解けてきたと思っていたのに、また振り出しかなと落ち込むベジットは気付かない。

 

 自分だけに向けられた応援(エール)。それを噛み締めるアルフィアの横顔は心なしか……少し、笑っているように見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 湖の中心にて佇む一人のエルフ。水面に足を付けながら、一切の波紋を広げる事なく水面の上に立つ彼女は───エルフの王女。

 

 王族の証である翡翠の長髪は後ろに束ね、これからの戦いに備えて1本に纏められている。

 

 この場に出るまで、多くの者達から心配の声を掛けられた。決闘という戦場に赴く自分を後輩達から止めてくれと懇願され、事態を知った団長(フィン)主神(ロキ)からは呆れの溜め息を進呈された。

 

 分かっている。今の自分がどれだけみっともなく、情けない奴なのか。オラリオ二大派閥、その一角の副団長としてあるまじき短慮な行動をしているのか、リヴェリア自身が強く理解していた。

 

 けれど、それでも、奴が()の隣に立っているのを見ると、無性に腹が立ってしまう。

 

 彼の善意に甘えている奴が、彼の優しさに寄生しているだけの癖に、我が物顔でそこに立っているのが……気に食わない。

 

 あぁそうだ。認めよう、今の自分は醜く嫉妬している。大抗争の頃、あの暗黒の時代から共に冒険者として切磋琢磨してきた彼を、理解者面で彼の側にいることが何よりも気に入らないのだ。

 

 笑いたければ笑えば良い。それでもリヴェリアはこの胸に宿る苛立ちを誤魔化すことが出来なかった。

 

「───来たか」

 

 向こう岸から伝わってくる僅かな波紋。それが戦うべき相手が到来したことを告げる報せだった。

 

 音もなく、気配もなく、ただ其処に顕れる一人の魔女。

 

 魔女の周囲には一切の音が潜み、まるでそこの空間だけ現世から削り取られた様な錯覚すら覚える。

 

 覚えている。目の前の魔女は冒険者となった自分を幾度となく踏みにじり、蹂躙していった過去を。

 

 覚えている。奴の魔導師としての素養は自分より遥かに上だと言うことを。

 

 一歩、二歩とその歩みを進める度に小さな波紋が広がる。清廉なる魔力の流れ、長い間魔導師として活動してきた自分よりも遥かに短い時間でその領域を踏破した若き天災(・・)魔導師。

 

 【才能の権化】にして【才禍の怪物】。

 

 灰の魔女アルフィアが、あの頃と同じ様に私の前に立っている。

 

「戦う前に一つ聞かせろ」

 

「…………なんだ?」

 

「お前は何故、オラリオに帰ってきた」

 

 リヴェリアの口から溢れるのはあの日から抱いていた疑問。その疑問にアルフィアは妹の忘れ形見の成長を間近で見守りたいというそれっぽい答えで応じた。

 

 当然、リヴェリアが納得する筈もない。

 

「ベル・クラネル。彼の少年の成長を見守りたいと貴様は言うが……本当にそうか?」

 

「…………」

 

 あの時、ベジットは言った。何れ来る終末(黒竜)に対する手段として二人を生かしたのだと。誰よりも終焉に立ち向かう覚悟を示した上で彼は言い切った。

 

 けれど………本当にそうなのか?

 

 あの時のザルドとアルフィアからは何処か言葉にできない違和感があった。まるで全てに諦観しているような……諦めや絶望とも違う、世界を救えなかった者が背負う、呪いの様な覚悟。

 

 そういったモノが全て、霧散しているように見えた。

 

 死ぬつもりだった人間が、ふっと沸いた幸運により生き延びたから? それとも……何か別の(・・・・)原因がある(・・・・・)のか?(・・・)

 

 どれだけ考えても、リヴェリアの疑念は消えはしない。故に問い質す他なかった。

 

「応えろ【静寂】。あの日、ベジットの手で生き長らえたお前達は、一体何を見たと言うのだ」

 

 杖を向ける。その矛先の対象に嫉妬と矜持の天秤を揺らしながら、僅かに残った副団長としての責務として、リヴェリアはアルフィアに問いを投げ掛ける。

 

 しかし。

 

「───良く喋る」

 

「なに?」

 

「お前達は、本当に図々しいな。一体何時から自分達にその様な権利があると錯覚している。我々相手(・・・・)に満足に《返礼》出来ていない未熟者が、何時から裁定者を気取っている」

 

 リヴェリアの投げ掛ける問いを、アルフィアは踏みにじり、踏み砕く。

 

「不愉快だ。消えろ、羽虫(・・)

 

 過去の最強に結局土を付けずじまいだった。そんな弱者に、語る義務も知る権利も在りはしない。

 

 自分ですら(・・・・・)その土俵に(・・・・・)立てていない(・・・・・・)というのに(・・・・・)

 

 波紋が広がる。互いの足場に力場が集約していくのに合わせて、ロログ湖の水面に波紋が徐々に速く、広く、大きく、広がっていく。

 

「精々、今の私を侮っておけ。小娘(・・)

 

 高まる力は直に臨界へと達し。

 

 オラリオ随一の観光地と呼ばれる広大な湖、ロログ湖にこの日。

 

 天を衝く勢いの巨大な水柱が出来上がる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、その頃。

 

「はぁ、はぁ、はぁ……!」

 

「ヴェルフ、大丈夫!?」

 

「あぁ、しかしコイツら……手強いぞ!」

 

 ダンジョンの中層付近にて、自身の実力を高めるために探索を続けていたヘスティア・ファミリアの【リトル・ルーキー】のベル・クラネルと【不冷(イグニス)】のヴェルフ・クロッゾ。

 

 彼等が苦戦を強いられている相手は、ダンジョンのモンスターで無ければ、階層主でもない。

 

「どうした【リトル・ルーキー】、こんなもんかい」

 

 二人を見下ろす無数の眼差し、戦闘種族として知られるアマゾネス達が、それぞれ得物を片手に嗤っている。

 

「アイシャさん、どうして……!」

 

「アタシ等はアマゾネス。良い雄を見付けたら、ちょっかいを掛けずにはいられない難儀な生き物なのさ」

 

 イシュタル・ファミリアの戦闘娼婦(バーベラ)が、人知れずヘスティア・ファミリアに牙を剥く。

 

 バレたら最後、その牙ごと砕かれるのが自身の末路であると覚悟した上で、アイシャ・ベルカはその大剣を振り下ろす。

 

 

 

 




オマケ
アルフィアから見たヘスティア・ファミリア。

主神ヘスティア:能天気な部分が団長と重なって時折腹が立つが、先の戦争遊戯でそれらしく振る舞うヘスティアを目にした事で、一応自分の主神であることを認めた。
「だからってその優しい目を私に向けるんじゃない。ひっぱたくぞ」

団長ベジット:ノーコメント。

副団長ベート:フォローの化身。ベルの事も良く見ていてくれるし、自分でも模倣できない技があると聞き、ある意味で一番注目している。
「いつかお前のスキル、暴いて見せよう」

先槍リリルカ:頼もしい後輩。何処までも自己を高め、容赦も妥協もしない彼女についつい世話を焼いてしまう。
「おい、お前まで私をその目で見るのを止めろ。………可愛いとか言うな!!」

マスコットアリス(アリア):我が家(本拠地)の守り精霊。風の大精霊を拠点防衛に起用するとは、何とも豪気な事だ。
「本来の力であれば………今の私でも厳しいか」

料理長ザルド:特に無し。強いて言うなら今晩の夕飯は暖かいスープが良い。
「因みに、私も料理は出来るからな? しないだけだ。……本当だぞ?」



Q.現在のオラリオに対して何か一言。
A.思っていたより力を付けている冒険者がいることは認めるが……今のところそれだけ。
「正義の眷族はどう思うかだと? 下らん。既に私と奴らとの話しはあの時に終わっている」
「つっても、本当は気にしている癖に~」
「ゴスペル」
「照れ隠しの魔法ブッパはいい加減法律で禁止にすべきだと思います!」
「いや、なんで旦那はアレ受けて無傷なんだよ」
「オラリオの風物詩ね!」
「嫌な風物詩だなぁ」

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