ダンジョンに超なアイツが来るのは間違いか?   作:アゴン

122 / 129

遂に始まったFAKEコラボ!

個人的には初代様に出てきて欲しいなー!なんて。

そんな訳で初投稿です。


物語122

 

 

 

 魔法とは、この世界に於ける超常を具現化させる事で、魔導師とはその魔法を十全に扱う者達の総称である。

 

 火や雷、水や風の自然から音や光、闇や呪いと魔法と呼ばれるものの存在は千差万別で、魔導師と呼ばれる者達も多種多様に分けられる。

 

 しかし、そんな彼等でもこれ迄の長い人類史の中で確認されていない魔法があった。空想を現実化させる魔法の中で、未だ空想のままとされてきた魔法。

 

 【空を飛ぶ魔法】

 

 火や氷の魔法が確認されながら、未だ誰一人扱えなかった人類の夢。十数年前まで、これに該当するのはとある神の眷族の“神秘”のアビリティを持った魔道具製作者(アイテムメーカー)と、風の異能を有した者だけとされてきた。

 

 それも翔ぶと言うには制約が多く、飛ぶと言うには諸々が足りておらず、人類が空を制するにはまだまだ長い時が必要であると、神々の誰もがそう思った。

 

 しかし闇派閥が跋扈する暗黒期、それも大抗争の頃からふとした切欠で秘密裏に、だが着実に人が空を飛ぶ姿が目撃されてきた。

 

 ベジット。女神ヘスティアと共にオラリオへやって来た処女神の眷族、彼の扱う“気”、魔法と異なるその力は人類に新たな選択肢を与えてくれた。

 

 即ち、翼を持たない人類が【空を飛ぶ技術(わざ)】を手に入れた瞬間である。

 

 気という力を習得し、空を飛べるという眷族は公には既に十数人確認されている。ベジットが属するヘスティア・ファミリアを筆頭にロキ・ファミリア、フレイヤ・ファミリアの二大派閥。

 

 他にもアストレア・ファミリアからも確認され、その全てが第一級冒険者(レベル5)以上であるとギルドが公言している。

 

 故に、気を学んだ冒険者が進んで力を付けようとしているのは、ひとえに空を飛ぶ術を身に付けられる指針がLv.5(そこ)にあるからだ。

 

 “空を自由に飛べる。”冒険者に憧れた無法者達がこの文言に抗える訳がなく、その言葉は美の女神の魅了以上に魅力的だった。

 

 そして、この日人類はメレン港のロログ湖にて一つの転換期を迎える。

 

 それは空を飛ぶ術を身に付けた人類が………ある意味、当然の帰結とも呼べる次の段階。即ち、空中戦である。

 

 この日、ロログ湖に住まう者達は全員目撃することになる。空を自由自在に飛ぶ魔導師二人の空中戦を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 爆ぜる。メレンの港町が一望出来る程の高度で音の爆発が炸裂する。震える大気の奔流から間一髪免れたリヴェリアは、自身の命を刈り取りに来ている見えない死の鎌を前に全神経を全集中させながら未だ涼しい顔をしている暴君を睨み付ける。

 

(此方の位置を正確に射貫いてくる精度。向こうだって空中戦の経験は浅いだろうに、既にこれ程の戦いぶりを見せるとは……!)

 

 “舞空術”という技を習得した事で、空という新たな戦いの場を獲得したリヴェリア達魔導師は、新たな壁に直面することとなった。

 

 空とは地に足を付けていた時よりもずっと自由で奔放で、そして不規則だった。相手が地に足を付けるモンスターであれば上から一方的に一掃できるが、相手が空を翔ぶ翼竜タイプのモンスターならその難易度は劇的に変化する。

 

 自分と同じく自由自在に空を翔ぶモンスターは生まれからその様に設計されて生まれてくる為、同じ空を翔ぶ者でもその経験の差は歴然だった。

 

 単に地上から撃ち落とすだけではなく、同じく空を飛ぶモンスターを追いながら魔法を詠唱する日々は、歴戦の冒険者であるリヴェリアをして、酷く大変な毎日だった。

 

 空を飛べる様になってもまだ泥臭い努力を強いられるとはと、当時のリヴェリアは内心でウンザリしていたが………それ以上にワクワクしていた。

 

 最強の魔導師と謂れ、何時しか畏れられるだけだった自分が、新たな境地に挑める。リヴェリアにとって苦労の日々は自身のこれ迄の人生を彩る何物にも勝る宝だった。

 

 故に、自分の努力を無駄とは思わない。

 

 けれど。

 

福音(ゴスペル)

 

「くっ、流石に此処まで才能の差を見せ付けられては、面白くないな!」

 

 空を飛翔する自分を、狙い済ませた狙撃手の様に正確に撃ち抜こうとする灰の魔女。自分が年単位の時間を掛けて漸く会得したモノを、瞬く間に修得していく才能の権化。

 

「どうした? 詠唱はしないのか? それともその口は飾りか? ならばとっとと縫い付けてしまえ。この程度の戯れ、ウチの先槍(リリルカ・アーデ)だって難なく対処するぞ」

 

 暗にリヴェリアを自分達の中(ヘスティア・ファミリア)で誰よりも弱いとアルフィアは突きつける。

 

 そりゃあ純粋な前衛と後衛の魔導師と比べるのは酷と言うだろうが、そんな事アルフィアには関係ない。

 

 事実、【静寂】は未だ本気で戦ってはいないし、空中戦が始まって数分、アルフィアは何時だって魔法で撃ち抜けた筈だが、敢えてそうしてこなかった。

 

「貴様程度の羽虫が、生意気に出し惜しむな。それとも、此処でなにも出来ず死に果てるのがお望みか?」

 

 明かな挑発。しかし現状実力で上回れている以上、リヴェリアの選択肢はない。であれば、お望み通りにしてやろうと彼女の肢体はダラリと脱力する。

 

 その佇まいに、観戦に専念しているロキ・ファミリアの面々には覚えがあった。それは数年前から、ベジットから“気”という概念を教わった時からリヴェリア達魔法を操るもの達が試行錯誤してきた荒業。

 

 “気と魔力の合一”。気と魔力という相反するモノが一つに集約させることで得られる爆発的な力。

 

 空を飛び、宙に浮いている状態でのその力の有無はベジットをして未知なる領域とされている。それが今、アルフィアの前に顕現する。

 

 気の白い炎と、リヴェリアの魔力が混ざっていく。うっすらと淡い翡翠の炎を纏うその様は魔法に長けたエルフの目から見ても神秘的に映った。

 

「────いくぞ」

 

 静かな声音の裏に秘められし激情。それを指摘すること無く、アルフィアは自ら手招きするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「なになになに!? 何がどうなってんの!?」

 

「空で()ってんの、もしかしてリヴェリア!? なんでリヴェリアがガチで戦ってんのよ!?」

 

「あの人は──!」

 

 カーリー・ファミリアのアルガナとバーチェから黒い気について聴取を行っていたヒリュテ姉妹とアイズ、姉のティオネがどれだけ脅しても知らぬ存ぜぬを繰り返し、本気で知らない様子の二人に三人が辟易していた時、それは起きた。

 

 突如として遥か頭上から感じ取った膨れ上がる二つの気、その直後メレン港を震わせる力の発露。

 

 何事かと聴取をそっちのけで現場に駆け付けた三人は普段は見せない激昂しているリヴェリアを見て、唖然としていた。

 

「やぁ三人とも、来たね」

 

「団長! 来てたんですか!?」

 

「ねー! リヴェリアに何があったのさ!?」

 

「それに、どうしてあの人が……」

 

 驚き戸惑い、あわてふためく三人娘。彼女達の疑問は尤もだが……今のフィンにはその全てに応えられる程の余裕はない。

 

 ただ一つ言えることは……。

 

「これは、僕の責任だ」

 

「え?」

 

「だ、団長?」

 

 ヘスティア・ファミリアの団長。彼の圧倒的とも言える強さとは裏腹に、その倫理観や道徳心は今の時代に於いて驚く程高く、彼の行いはその多くが善意に満ちていた。

 

 故に距離感を誤った。彼の隠し事に対する後ろめたさを利用しようとして、とんでもない大蛇を藪から叩き起こしてしまった。

 

 そして、どういう訳か対するリヴェリアもヤル気になってしまっている。普段は高慢な程に冷静沈着な彼女が滅多に見せない激情した姿に、制止するべきだったフィンもロキも言葉を失ってしまっていた。

 

「万が一の時は、僕が間に割って入る。ティオネ達はアキ達と一緒に住民達の避難を頼む」

 

「万が一って、そんな、団長!」

 

「これは団長命令だ。急げ!」

 

 有無を言わせないフィンに、ティオネ達は言葉を詰まらせるが、派閥の長の命令に背く訳にもいかず、三人は納得しきれていない表情でその場を後にする。

 

 隣で佇む主神が言う。

 

「そんなに肩肘張らずとも、もしもの時はベジットが何とかするんやないか?」

 

「もしそうなったら、ロキ・ファミリア(僕達)はいよいよ彼等と対等ではいられなくなるよ」

 

 過去にフィンはベジットから派閥の運営やオラリオでの立ち回りについてそれとなく相談を受けていた事がある。稼いだお金は如何に管理するか、ドロップアイテムの保存方法や他にも他愛の無い雑談混じりに彼とは色々と話をしてきた。

 

 ベジットはそんなフィンとの雑談の日々を恩と感じていた。自分達の方が遥かに大きな恩恵を受け取っていると言うのに。

 

 アルフィアの言う言葉は、一から全部が正論だ。ベジットから教わった気という力で強くなり、ファミリアの全体的な底上げも叶えられたというのに、その恩義を仇で返すような真似を、無意識に行ってきた。

 

 これは、その罰なのだろう。

 

「せめて、五体満足で生還してくれよ」

 

 Lv.7となり、オラリオでも数少ない上澄みへ手を伸ばしたリヴェリア。その実力は誰もが認める程で、魔導師としても彼女を最強と呼ぶ冒険者は少なくない。

 

 けれど、彼等は知らない。リヴェリアの立っている最強の座は、本来座っている者がいなくなった空いた席(・・・・)に繰り上がりで居座っているだけであると。

 

 その事実は恐らくリヴェリア自身が誰よりも理解している。

 

 だから。

 

「頑張れ、リヴェリア……!」

 

 ロキ・ファミリアの団長は、絞り出すような声音でそう呟く他なかった。

 

 その一方で。

 

「オラリオの冒険者って、空を飛べるのだな」

 

「スゴーイ」

 

 聴取を受けていた筈のアマゾネスの双子(アルガナとバーチェ)は、空中戦を行う魔導師二人にすっかり目を奪われていた。

 

 それはさながら、都会の真新しさに目移りしているお上りさんのようであったと彼女達の主神であるカーリーは言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 澄み渡る青空に翡翠の直線が縦断する。魔力と気という相反する力を制したリヴェリアの膂力は純粋な前衛冒険者と遜色無く、杖を槍のように振り回すその力はアルフィアに防御をさせる程だった。

 

「【終末の前触れよ、白き雪よ。黄昏を前に(うず)を巻け──」

 

 気による空中軌道と魔法の平行詠唱。気と魔力の合一によりある種の同時使用が可能となった状態であるリヴェリアは、合一で得た力を媒体に極限に高めた一撃を放とうと魔力を練り上げる。

 

 相手は【才禍の怪物】と畏れられた才能の権化。自分の力を完全に見切られる前に決着を付けようと勝負を急ぐが……。

 

「………雑だな」

 

「がッ!?」

 

 刹那、リヴェリアの顔面から赤い飛沫が噴き出す。見れば、既に間合いを詰めていたアルフィアがリヴェリアの顔に拳を突き立てていた。

 

「魔力と気、それを無理矢理合わせることで雑味が出ていることに何故気付かない。無駄の極地、ただ燃料を背負っただけの猪と何が違う」

 

「ぐっ!?」

 

 鼻っ柱を折られ、痛みと衝撃で視界がブレる。だが、この程度は嘗ての《洗礼》を考えれば何時もの事。

 

 即座に立て直しと反撃を兼ねた杖の一突きを見舞うが……。

 

「だから、単調だと言う」

 

「あがァッ!」

 

 アルフィアはそれを容易く掴み、返しの蹴りをリヴェリアの腹部に見舞う。

 

「七年。私がいない合間、お前が積み上げたのはこれで全てか? だとするなら、私のあの時の決断は正しく無為であったと言う他無い」

 

「!」

 

「奴に頼り、奴に縋り、奴に寄生し、それで積み上げたモノがこんな出来損ないとはな。餞別代わりに教えてやる」

 

 そう言うと、アルフィアの身体から二つのエネルギーが合一されていく。そこに一切の淀みはなく、それはリヴェリアとは異なる完成された姿だった。

 

「【咸卦法】、奴はこの力にそんな名を付けた」

 

 まるで凪の水面の様な静寂さ。何処までも見せ付けられる力の差にリヴェリアはグッと溢れる感情を飲み干すことしか出来なかった。

 

 そして。

 

「フンッ」

 

「………ッ」

 

 めり込まれる拳がリヴェリアの意識を寸断する。力を使い果たし、ロログ湖へ落ちていくエルフの王女を尻目に。

 

「落ちろ羽虫。所詮、お前は奴の光に群がる虫の一人に過ぎん」

 

「─────」

 

 その呟きは届く事無く、エルフの王女は才禍の怪物に一矢報いること叶わないまま、ロログ湖に沈んでいく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 あぁ、そうだ。奴の言うこと徹頭徹尾、何一つ疑う余地もなく全てがその通りだった。

 

 彼の力になりたいと嘯きながら、結局は彼の力に甘える。手を貸そうと勇んでおきながら、結局は彼の力に依存する。

 

 奴の言う通り、私は彼という黄金の光に充てられた浅ましい羽虫の一人なのだろう。その認識はきっと間違いではないし、私自身何処か納得している。

 

 けれど、その通りだとしても。

 

(何故、お前にそこまで言われる必要がある?)

 

 私は確かに彼に甘えている。彼の優しさに、強さに、その人柄に。なら、お前はどうなんだ?

 

 彼の優しさに付け入り、彼の人の良さ付け込み、彼の強さに依存しているのは、お前だって同じなんじゃないのか?

 

 これが私の醜い嫉妬心だというのならそれまでだが………確信があった。同じ女としての直感が、奴が自分の同類だと叫んでいる。

 

 であれば、であるのだとすれば。

 

(負けるわけには───いかない!!)

 

 示さなければならない。自分が、ただの寄生虫で無いことを。

 

 示さなければならない。自分が、お前とは違うという証明を。

 

 であるならば、覚悟を決めるしかない。相手は生涯、自分が一度として勝てなかった才能の怪物。

 

 奴を越えるには、自分の意思を届かせるにはこれまで以上に命を掛ける他無い。

 

「────魔力、装填(・・)

 

 内に渦巻く魔力の奔流。それを核として生成し己の裡へ取り込む。

 

 荒れ狂う魔力の渦を、気で強化した肉体の器に浸透させる。

 

 これが、合一を目指す最中に見出だした私だけの戦い方。

 

 メリットもデメリットも一切不明。文字通り前人未踏の領域へ私は足を踏み入れる。

 

 ───さぁ、冒険を始めよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

「───なんだ?」

 

 その異変に最初に気付いたのは、事の成り行きを見守っていたベジットだった。アルフィアの決定的な一撃を受けて、湖へ落ちていったリヴェリア。

 

 彼女の気が小さくなっていくのを感じて、これ以上の戦いは無理だと判断したベジットが助けに向かおうとした時だった。

 

 突如、消えかけていた彼女の気が膨れ上がるのを確かに感じた。

 

 まだリヴェリアに戦う気力があったのもそうだが、仮に立ち上がれたとしても、リヴェリアがアルフィアに勝てる要素はない。

 

 自棄を起こしているのか? いや、恐らくは違う。

 

 では一体何が起きているのかと、不思議に思った瞬間───ロログ湖が一瞬にして凍り付いた。

 

「…………は?」

 

 その光景に唖然となるのはベジットだけではない。ロキ・ファミリアの面々も、メレン港の人々も、アルフィアでさえもその光景に瞠目していた。

 

 凍り付くロログ湖から顕れる一人の女性。こびりついた血の痕は凍てつき、霜となって砕けて消えていく。

 

「り、リヴェリア……様?」

 

 アリシアの困惑と戸惑いに満ちた言葉は、しかしリヴェリアに届く事無く、吹き荒ぶ吹雪に飛ばされる。

 

「装填、完了。さぁ、続きを始めるぞ」

 

 敵を見据える。敵意の他に確かに混じった幾つもの感情、それを同じ女であるアルフィアは確かに感じ取り、口角を吊り上げる。

 

「───ッハ、良いだろう」

 

 膨れ上がる気と魔力。対峙する二人の魔導師の戦いは文字通り、次の段階へ進もうとしていた。

 

 

 

 

 





Q.なんかリヴェリア様、闇の魔法使ってません?
A.どちらかといえば某杖と剣の主人公の方。

Q,二人の戦いは続くの?
A.後少しお待ち下さい。(だってこのままいったら歓楽街がナレ死しそうだったから……!)




  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。