ダンジョンに超なアイツが来るのは間違いか?   作:アゴン

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久し振りに進撃の巨人2をプレイ。

いや、やっぱおもせーわこれ。



物語133

 

 

 

 異端児(ゼノス)達が襲われた。

 

 その報せをフェルズから渡された水晶を通して耳にしたベル・クラネルは、ヴェルフ達の制止を振り切り、一目散に駆け出していた。

 

 脳裏を過るのは出会ったばかりの竜女(ヴィーブル)の小女。傷だらけで怯えていて、モンスターからも冒険者からも狙われていた異端児の女の子。

 

 幾星霜の時の中で、彼女は人を殺しては人に殺される悪夢を繰り返してきた。こんなのはもう嫌だとどれだけ願っても終わる事のない地獄の悪夢。

 

 モンスターと人類が敵対している限り終わることの無い無間地獄。けれど、ベルの頭にはそんな理屈など何処にも無かった。

 

 あるのは……臆病で、けれど天真爛漫な竜の小女。彼女と過ごした時間と彼女の笑顔が、ベルの脚に力を与える。

 

(助けなきゃ!!)

 

 ベルの頭にあるのはただそれだけ。理由も理屈もない衝動的な叫び。助けたい。ただその一心のみで走る彼の前に待つのは……。

 

 とある一つの分岐点だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 数分前。

 

「追い付いたぞ!!」

 

「ウィーネを連れ去りやがって!」

 

「もう逃がしはせん。観念しろ!」

 

 ヘスティア・ファミリアという気の良い連中を見送り、新たな同胞に拠点の場所やらフェルズとの連絡手段やらを教えながら移動していた時、奴等は現れた。

 

 下卑た笑みを浮かべて卑劣にも奇襲を仕掛けてきたのは、数年前まで自分達を食い物にしてきたと言う因縁ある相手───イケロス・ファミリアの冒険者だった。

 

 奴等は自分達を見世物だと豪語し、手足を捥いで調教し、好色家な貴族に高値で売り捌くと吼えながら、異端児達へ襲い掛かってきた。

 

 死角からの唐突な悪意と殺意の一刺し。しかしその刃は彼等の喉元に一切届くことはなかった。

 

 ヘスティア・ファミリアの長であるベジットから教わった“気”なる力。全ての生命には必ず在るとされている力の概念は、異端児達をダンジョンのバグから産み出された異端なる生命体から別枠へと押し上げてくれた。

 

 気の感知に長けた者は自分達を狙い、近付いてくる連中を教え、危険を遠ざけたり。力の底上げに長けた者は同胞の盾であり矛となって脅威をその力で排除してきた。

 

『もし覚えられたなら、是非とも習得してくれ。その方が面白───もとい、お前達の為にもなる筈だ』

 

 彼の言う通り、教わった気の力は異端児達に単なる力としてではなく、居場所を守る非常に有用な手段となっていた。

 

 何より、全ての生命には必ず在るとされる力を習得した時、リドやレイは自分達の存在が世界に認められた気がして……嬉しかった。

 

 この力は、人類と敵対する為ではない。自分達の居場所を守り、同胞達を護る為の盾として使おう。

 

 この取り決めには普段人類に懐疑的なグロス達も賛同。この日、異端児達は人類との共存というゴールにほんの僅かだが近付いた気がした。

 

 もしこの力がいつか、自分達の為だけでなく、人類の為に振るえる日が来るかもしれない。そんな、夢みたいな日を目標に異端達もまた己を鍛えた。

 

 故に、気付いた。死角から放たれる刃を、異端児達は対応して見せた。

 

 襲い来るイケロス・ファミリアの猛攻を避け、グロス達は磨き上げたその力を以て悪意ある人間達を粉砕。悉くを血祭りに上げた。

 

 だが、一人。唯一新参者のウィーネだけは気を習得しておらず、イケロス・ファミリアの副団長の起死回生の一手により、連れ去られてしまった。

 

 当然ながら追い掛け、そして漸く追い詰める事が出来た。ダンジョン特有の景色から何時しか整地された不思議な空間へ躍り出たが、そこが人造迷宮であることを知らないグロス達は、ウィーネを人質に取ったグランへ殺意を剥き出しにする。

 

「く、来るんじゃねぇ! コイツがどうなっても良いのか!?」

 

 手に持った短刀がウィーネの喉元に突き付ける。近付けば殺すというある種の定番な台詞を吐き捨てるグランに、グロスは鼻で笑う。

 

「同胞を殺すか? ならば次の瞬間、直ぐに貴様の番が来るだけだぞ? 我々は他のもの達より些か血の気が多い。敵討ちで殺す………なんて、甘い末路で終わると思うなよ?」

 

「ヒッ!?」

 

 甲冑を纏う人蜘蛛(アラクネ)の蠱惑的で怒りが滲み出た微笑みにイケロス・ファミリアの団長であるグランの顔がひきつる。

 

 彼女───ラーニェの蜘蛛特有の攻撃で倒された仲間の末路を目にしていたグランは、自分もああなるのだと想像して立ち竦む。

 

 他にも石竜(ガーゴイル)や馬鷲、ウォーシャドウにフォモール、そして蜥蜴人(リザードマン)

 

 ドイツもコイツも滲み出る覇気から、自分よりも遥か格上だというのはグランにも理解できた。

 

 自分にはもう逃げ場はない。ああ、その通りなのだろう。

 

 しかし、自棄になった人間は善悪問わず往生際が悪いのが常。その事を異端児達は考慮するべきだった。

 

「良いぜ、俺を殺してぇならそうしろ。所詮テメェ等はモンスター、人間様と仲良しこよしなんて出来るわけがねぇんだ!!」

 

 グランの手がウィーネの額にある緋色の宝石に伸びる。アレはウィーネにとっての生命線、理性を保つ楔。

 

 アレを剥がされたら不味い。

 

「ウィーネ! 振りほどけ!」

 

「う、うー……!」

 

 拉致られた際に薬でも嗅がされたのか、反応が鈍い。しかし流石稀少個体のモンスターだけあって、徐々にウィーネの体に力が戻っていく。

 

 それを抱えているグランが気付かない訳がなく、振りほどかれる前に一矢報いてやろうと、その指で額の宝石に手を掛けた───その時だ。

 

「ハッ!!」

 

「ナバァッ!?」

 

 蜥蜴人───リドが掌をグランに向けた瞬間、裂帛の気合いを放った瞬間にそれは起きた。

 

 グランの体を襲った衝撃。眼には見えず、ただ凄まじい勢いと威力のある大気の圧がウィーネごとグランを吹き飛ばす。

 

 壁を突き破り、向こうから爆発と轟音が轟く中、異端児達は唖然となる一方で……。

 

「で、出来た。ベジッチ直伝の【気合い砲】」

 

 リドは以前に教わったトンチキ技が成功した事に、自分自身で驚いていた。

 

 しかし、唖然となっているのも束の間。壁の向こうから聞こえてくる悲鳴に我に返った異端児達はまさかと顔を青ざめる。

 

 急いで追い掛けるが、壁の向こうには更に壁に孔が空いていて、その手前には顔の潰れたグランが倒れている。

 

 しかし、そこにウィーネの姿は無かった。

 

『も、モンスターだぁっ!!』

 

 聞こえてきた人間達の悲鳴。まさかと思い視線をそちらに向ければ、大衆に囲まれたウィーネの姿がそこにはあった。

 

 やっちまった。ウィーネを助けるがあまり、力みすぎたリドは相方の石竜(グロス)にどつかれながら、事のなり行きを見守るしか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「何で、何でモンスターがオラリオにいるんだよ!!」

 

 それは、言い訳のしようがなかった。

 

 自身を覆っていたローブは奇襲された時に損傷し、今のウィーネには自身を覆うものが何もなかった。

 

 顕になる青い肌、額に光る紅い宝石。人ならざるその姿に人々の間には瞬く間に恐慌状態が広がっていく。

 

「この、あっちへ行け! 化け物!!」

 

「ヒゥッ」

 

 向けられる敵意と憎悪、多くの民衆から向けられる負の感情。先日から続く人類からの憤りを受けてしまったウィーネは堪らず自己防衛の羽を展開。

 

 そのまま、自身を護るように包み込む。

 

 しかし、その判断は過ちだった。

 

「コイツ、翼を生やしたぞ!!」

 

「暴れる気かっ!?」

 

 民衆にとって、モンスターは絶対悪。ウィーネにとってただの自己防衛に過ぎない行動も、彼等からすれば敵対行動に他ならない。

 

 投げ付けられる石礫。投げ付けられるものでアレば何でも良いと、構わず人々はモノを投げ付ける。

 

 ありったけの悪意と怒りをぶつけ、罵声を浴びせる。血走った眼で睨んでくる民衆にウィーネはただ縮こまるしかなかった。

 

(怖い……怖いよ……)

 

 同じだ。曽てウィーネか体験してきた悪夢の記憶。立ち塞がる人間の悉くが自分を敵視し、悪意と憎悪を向けている。

 

 分かっている。悪いのは自分だ。モンスターである自分には救いを求める資格なんてない。ただ……。

 

(ベル……!)

 

 あの白い少年、自分を助けてくれた彼に会いたい。そんな神にも届かないウィーネの祈りは……。

 

「止めろッ!!」

 

 確かに、届いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 モンスター(少女)を囲む民衆の前に、一人の少年が前に出る。

 

 白い髪が目立つその少年は、追い詰められた表情を浮かべながら民衆の前に立ちはだかり、少女を庇うように両手を広げる。

 

 突然の【リトル・ルーキー】の登場に民衆からどよめきの声が立つ。しかし困惑は疑念へと変わり、その声は徐々に大きくなっていく。

 

「お、おい! アイツ【リトル・ルーキー】じゃないか!?」

 

「ヘスティア・ファミリアの眷族が、どうしてモンスターを庇う!?」

 

「まさか、ヘスティア・ファミリアはモンスターと通じて……!?」

 

 民衆の目付きが変わる。自分の行いの所為でファミリアに要らぬ疑惑を掛けてしまった事を酷く後悔する一方で、ベルの心は追い詰められながら、ある種の充足感を得ていた。

 

 どうすれば良い。悩んでいる自分の脳裏に過るのは、祖父から教わったある言葉。

 

『自分で選べ』

 

 自身の頭で考え、怖くても自分の意思で決める。

 

 ウィーネを守ると決めたのは自分自身。たとえ民衆が相手だろうが、己の意思で決めた事なら最後まで押し通す。

 

 ファミリアのみんなには迷惑を掛けるだろう。その事に罪悪感を感じていたが、後ろのウィーネ(小女)は守る。その事だけには後悔はなかった。

 

(つ、強くて大きい気が幾つも近付いてくる。これは……アイズさん達!?)

 

 ベルが感知したのは、自分が憧れて慕うアイズ・ヴァレンシュタインとその仲間達(ロキ・ファミリア)

 

 他にも様々な強い気配を持った強者たちがここにやってくるのを感じる。

 

 このままではウィーネ諸とも粛清される。どうする? 逃走か、説得か。

 

 脳裏に浮かぶ選択肢を前にベルが僅かな望みを懸けて“説得”を選ぼうとした瞬間。

 

「おーベル、先に来てたか」

 

 自分達の長───ベジットがまるで散歩の最中のような軽い足取りで、ベルへ歩み寄っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヘスティア・ファミリアの団長ベジット。彼がその場に現れた時、民衆は揃って口を噤んだ。

 

 大抗争の頃より活躍していたヘスティア・ファミリア。その活躍には何時だって目の前の男───ベジットの姿があった。

 

 Lv.1の下級冒険者でありながら、【凶狼(ヴァナルガンド)】や【槍の乙女(デミ・フィアナ)】という第一級冒険者を従えて団の長として君臨し、その実力はギルドも認めている規格外の存在。

 

 先のアポロン・ファミリアとの戦争遊戯(ウォー・ゲーム)で再びその実力を見せ付けた彼に、正面切って意義を唱えられる人間はこの場にはいない。

 

 しかし、民衆というのはあらゆる意味で強かな面もあり、相手が比較的気性が穏やかな派閥の長という事もあり、彼等が押し黙る時間は差程長くは無かった。

 

 意義と追及の声を張り上げようとした瞬間。

 

「いやー、悪いね皆の衆。今回はウチのモンスターが迷惑を掛けた」

 

 にべもなく、全くの悪気もなく、ベジットはそう言い切った。ウチのモンスターと。

 

 その言葉に民衆は唖然、ベルも驚きに眼を剥くが……。

 

「いやぁね。言い訳になるかも知れんが聞いて欲しいのよ。そこの竜女(ヴィーブル)な、ウィーネって言うんだけどよ……あ、ウィーネってのはそこのベルが付けた名前な?」

 

「んでさ、折角運良くテイム出来たのは良いけどよ、モンスターを乱獲して回っているイケロス・ファミリアにダンジョンで調教中に盗まれたのよ」

 

 そう言い、いつの間にか右手に持っていたソレをドサリと地に落とすと、顔が素の倍近く膨れ上がったグランが、息も絶え絶えになって痙攣していた。

 

 イケロス・ファミリアの存在は、数年前からベジット達も把握していた。モンスター……異端児達を秘密裏に密漁し、外の変態貴族や様々な裏組織に高値で売買していたとされる密漁派閥。

 

 何度も何度も異端児達をしつこく狙ってくる事から、ベジット達も一時はオラリオから消そうかと真剣に考えた半闇派閥の組織。

 

 今日まで彼等が始末されなかったのは、偏にその用心深さにあった。

 

 団長であるディックス・ペルディクスはその凶暴な人間性とは裏腹に、非常に計算高く巧妙に計画を画策出来る男。異端児達を密漁していた時期も決して現場に痕跡を残す事なく証拠を消すことを部下の団員達にも徹底させる程だ。

 

 証拠不十分でアストレア・ファミリアもガネーシャ・ファミリアも手が出せなかった程の……巧妙な密漁者の集団。

 

 しかし、今回は違った。今回ファミリアを率いたのは副団長のグラン。ディックス程用心深いわけではない彼が率いては、孔だらけの粗だらけなのも無理もなく、故に今回こうしてベジットに公にブチのめせる機会が向こうから転がり込んできた訳である。

 

 何という棚ぼた。こんな好機は中々にない。色々とタイミングが良いし、ベジットはこの際、今回の騒動の責任の全てをイケロス・ファミリアにおっ被せる事にした。

 

「と、まぁそんな訳でさ。こうして諸々の元凶を締め上げた訳だし、今回はこれで大目に見てくれよ。な」

 

「え、いや……」

 

「ど、どうする?」

 

「ヘスティア・ファミリアがモンスターをテイムって……」

 

 聞き慣れない情報に困惑する民衆。

 

 ヘスティア・ファミリアはオラリオの中でもロキ・ファミリアやフレイヤ・ファミリアにも負けない実力派ファミリアというのは先の怪物祭でも知れ渡っていた。

 

 裏で騒動を引き起こしていたフレイヤ・ファミリアを、正面から説教し、分からせたという実績。他にも暗黒期から続く人類へ寄り添う処女神ヘスティアの慈悲深い在り方はオラリオの民衆も覚えが良かった。

 

 数年に渡って積み重ねてきた実績と実力、そしてベジットの嘘と本当を織り混ぜた話術によりオラリオの市民は瞬く間に納得しつつあった。

 

 ヘスティア・ファミリア程の実力者がテイムしたモンスターであれば問題ないのか。

 

 盗んだのが密漁派閥なら仕方ない。など、咀嚼すればする程に理解し、納得してしまう話し。

 

 そして、ベジットの話はここでは終わらない。

 

 だが、ベジットの即興は終わらない。

 

「これはガネーシャ様からも理解して戴いた話だ。そうだろ? ガネーシャ様」

 

「ウム! 全てはベジットの言う通り! そ・し・て!! 俺が!! ガネーシャだァァァァッ!!

 

 うるさっ。

 

 大声を張り上げて、民衆から飛び出してベジットの隣に立つ群衆の主に民衆は今度こそ完全に納得するのだった。

 

「さて、そういう訳だ。理解して戴けたかな?」

 

 不敵に笑うベジットに、物陰から様子を伺っていたロキ・ファミリアの面々は団長にこの事を伝えるべく、本拠地へ急ぎ帰還するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 奈落の底を思わせる様な深層から戻ってくる最中、黒いミノタウロス───アステリオスは自身を呼びに来た同胞を見据える。

 

「なに? 新入りの同胞が密漁者に捕まった?」

 

 アルミラージの異端児から告げられる緊急事態。それは一大事であると、アステリオスは周囲の深層のモンスター郡を腕の一振で蹴散らし、道を物理的に開く。

 

「承知した。直ぐに向かう」

 

 白い闘気の炎を滾らせて、アステリオスは駆ける。

 

 ベジット、痛恨のやらかしが露見するまで、あと……。

 

 

 

 





Q.ベジット、嘘は苦手やなかったん? 何でオラリオの市民は信じたんや?
A.嘘は苦手です。そこにちょいと真実やこれ迄の実績を鑑みて説得力があるベジットに納得したという感じです。

Q.他のファミリアも信じてる?
A.勿論信じてません。が、これ迄のヘスティア・ファミリアの実績もベジットの功績も無視できないのも事実。
 最優の派閥の皆様は是非ともグヌヌしてて下さい。


次回、監視網。

「ベル・クラネルの悪事は、このレフィーヤが全て丸っと暴いて見せます!」

「吠えたな。小娘」

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