寒くなったり暑くなったり、体調崩しやすい天気やなぁ。
そんな訳で初投稿です。
オラリオの街の一角で起きた騒動、モンスターの出現はヘスティア・ファミリアの団長であるベジットの鶴の一声によって鎮静化した。
その後はオラリオの街に現れたモンスター
ヘスティア・ファミリアは以前も怪物祭にて裏で騒動を引き起こしたとされるフレイヤ・ファミリアにお灸を据えさせた功績もあり、人々からの信頼は厚い。
その怪物祭が来年も開催されるよう、密かに協力関係を築いたという主神達による口裏合わせで出来た建前は、こうしてオラリオの人々に受け入れられモンスター騒動もひと先ず落ち着きを見せた。
しかし、そんなヘスティア・ファミリアの言い分に各ファミリアが素直に頷く訳もなく、オラリオの様々な派閥がヘスティア・ファミリアの動向を監視しようと遠巻きから彼等の本拠地を観察していた。
ロキ・ファミリアの眷族であるレフィーヤ・ウィリディスもその一人、先のベル・クラネルの行動に言葉に出来ない感情が沸き上がった彼女は、日頃から続くベルへの対抗意識から、進んでヘスティア・ファミリアの監視員に名乗り出た。
「…………………」
「お、おいレフィーヤの奴どうしたんだ?」
「それが朝からずっとこうで~、聞いても何でもないって取り付く島もないんですよ~」
部屋の窓際に陣取り、ジーッと視線だけはヘスティア・ファミリアの本拠地へ固定している。然り気無く、気取られないようにしろという
同じ監視員としてヘスティア・ファミリアの本拠地から程近い宿屋にて部屋を借りた
が、エルフィ本人も分からず、昨日からずっとこの調子なんですよと苦笑う彼女に先輩冒険者のクルスは溜め息を吐いて肩を落とす。
「おいレフィーヤ。相手はヘスティア・ファミリアなんだぞ。もっと気配を消して、慎重になってくれ」
「なってます」
ムスーッとして不機嫌を隠そうともしない後輩にクルスは再び頭を抱えた。
エルフィも何故そんなに怒っているのか、膨れた頬をツンツンとつつきながら訊ねるが、レフィーヤの答えはテンプレ通りの「怒ってません」しか返ってこない。
怖い目をして、睨み付けるようにヘスティア・ファミリアの本拠地を監視する。確かに団長からヘスティア・ファミリアに動きがあれば逐一連絡するように言われているが、これでは向こうに気取られてしまうのも時間の問題だろう。
いや、もしかしたら既に気付かれているのかもしれない。
他のファミリアも何かを隠しているであろうヘスティア・ファミリアを注意深く監視している。にも関わらず、肝心なヘスティア・ファミリアは沈黙を保ったままなんの動きもない。
不気味に思える程の静けさにクルスは息を呑んだ。
対して、レフィーヤの憤りは未だ収まらず、寧ろ沈黙を保っているヘスティア・ファミリアの態度が自分達を歯牙にも掛けていない様に思えて、余計に腹立だしかった。
………いや、本質はそこではない。レフィーヤがここまで感情にさざ波が立っているのは、偏にあの冒険者、ベル・クラネルの行動にあった。
あの時、彼は身を挺してモンスターを庇った。街中の人達から敵視させる恐れがあったのに、迷いながら、後悔しながらもモンスターを背に自分達の前を立ち塞がった。
そんな彼の行いが、まるで自分達の方が悪かったのではないかと、あの時のレフィーヤにはベル・クラネルの行動が正しく見えた。
(でも、あのヒューマンは何も話そうとしません! だから、私だって何も分からない!!)
理由も理屈も既に長であるベジットが説明した。けれど、レフィーヤにはどうしても理解できない事があった。
あの時、彼は何を思ってあんなことをしたのか。それを問い詰めるべく。
レフィーヤは、ヘスティア・ファミリアの本拠地の門を叩いていた。
「ちょおっ!? レフィーヤ、なにしてんのっ!?」
ガンガンとヘスティア・ファミリアの本拠地の扉にノックをカマしているレフィーヤにクルスの心臓が跳ね上がる。
徐に立ち上がり、部屋を出ていったと思えば、まさかまさかの正面突破。猪もかくやな一直線の行動にクルスは悲鳴を挙げながら後を追う。
ヘスティア・ファミリアを監視している他派閥の冒険者は思った。【
「出てきなさいベル・クラネル!! 出てきてあの時の事を説明しなさーい!!」
華奢なレフィーヤでもLv.3の冒険者、乱雑に叩けば木製の扉なんて簡単に破壊できてしまう。
そうなればヘスティア・ファミリアからの心証は最悪。派閥同士の関係性は比較的友好を自負しているロキ・ファミリアとしてはレフィーヤの暴挙は看過出来ないモノであった。
クルスが急ぎ回収しようと窓から飛び降りた……その時、ギィッと【竈火の館】の扉が開く。
扉が開き、やっと観念したのかとちょっとしてやったりな表情になるレフィーヤだが……。
「────騒々しいな」
「ピッ」
開いた隙間からレフィーヤが目にしたのは、怒髪天な
圧倒的威圧感と殺意。メレンで見せた魔王の如き振る舞いと強さを脳裏に深く刻み込まれているレフィーヤは、彼女の視線に意識がトビかける。
(い、いや落ち着け私! この程度で怯んでいては駄目! 私はレフィーヤ・ウィリディス! 偉大なるエルフの王族、リヴェリア様に見初めて戴いた後継者なのだかr───)
「失せろ」
覇気を滲ませて放たれる一言に、今度こそレフィーヤの意識は刈り取られる。そんな彼女を担ぎながら、必死に館に向けて頭を下げるクルスに一部始終を遠巻きで見ていたベジットは、同情の視線を向けていた。
◇
「【千の妖精】、これで監視網から外れますかね」
「そうあってくれなきゃ、俺は【
仲間達により担ぎ上げられ、自分達の本拠地へ急ぎ撤退するロキ・ファミリアにリリルカとベートは呆れ、或いは同情にも似た感情を向けていた。
普段は社交的でエルフの中でも人当たりも良いと聞くレフィーヤのまさかの行動。アルフィアという特大の地雷に踏み込んでしまった彼女に起きた、自業自得の末路。
寧ろ、殺意を向けられただけで済んで良かったなと言うべきだろう。日頃からベジットが受けているような戯れの【
「しかし、こうも監視の目があると、変に意識しちまうな。ひぃふぅみぃ……12人って所か?」
「残念ヴェルフ君、正解は18人。向こうとあちらの建物の影に三人ずつ此方を見ているぞ」
あれから丸一日。一先ず騒ぎを納めたベジットはウィーネを連れて本拠地へと帰り、何時も通りの日常を送ろうとしていた。
しかし、異端児達をアッサリと受け入れている本人達とは異なり、他派閥の連中は今回の騒動をヘスティア・ファミリアを崩す一手になり得ないかと画策し、主神の指示の下で眷族達に監視を命じた。
あれだけベジットやファミリアの力を先の戦争遊戯でみせつけたと言うのに、ヘスティア・ファミリアから少しでも情報を引き抜こうとする彼等に、流石の一同も辟易とした。
こうも監視の目があっては、日課の鍛冶の仕事も集中できずに滞ってしまう。今日は休みだなと割り切ったヴェルフは、暇潰しに気の感知による人数当てを行っていた。
「はー、流石は団長。感知範囲がエゲツないですね」
「ヴェルフも結構いい線いってんじゃん。なに? ザルドから大剣の扱いだけじゃなく、気の修行もしてたん?」
「えぇ。先のアマゾネスに襲われた時もそうですけど、俺ってば奇襲や不意討ちに対処出来なくて、無様を晒しちまってるんですよ」
「だから、ダンジョン探索でベルの足を引っ張らないように頑張ってるわけね。うんうん、向上心があるのは良いことだ」
自分なりにやることを模索し、実力を底上げしようとするヴェルフの努力に感心し、頷く。
ステイタスの延びも順調だし、もしヴェルフがLv.3に昇格したら、ヘスティア・ファミリアの面々で遠征に繰り出すことも視野にいれても良いのかもしれない。
そんな事を考えていると、ベジット達のいる……最早憩いの場となっている食堂にアルフィアが戻ってきた。
「アルフィア様、申し訳ありません。来客の対応を任せてしまって……」
「別に良い。仕事をしている最中の人間に別の仕事を割り振る程、私は白痴ではないからな」
玄関から戻ってきたアルフィアに申し訳ないと頭を下げる春姫。丁度タイミング悪く昼食終わりの後片付けをしていた彼女に代わり、来客の相手をしてくれたアルフィアに春姫はありがとうございますと改めて礼を口にする。
「いやー、流石はアルフィア。迷惑な来賓の対応はお前に頼むのに限るな」
「惜しむらくは、その対応に回数制限があることだな」
「初回はサービス。二回目以降からどんどんゴスペられる確率が爆上げされていくって寸法か」
「ジェノスってきたら寧ろ確変だろ」
「望むなら今ここでブチ込んでやろうか?」
ベジットだけでなく、悪ノリをかましてくるベートとザルド。好き放題言いたいことを宣う三人にアルフィアの額に血管が浮かび上がる。
「はいはい。じゃれ合うのもそこまでにして、本題に入るよ」
並みの冒険者ではアルフィアの苛立ちの空気に震えがると言うのに、主神であるヘスティアは眷族同士による他愛のないじゃれ合いと処理。
手を叩いて本題と向き合うことを促してくる彼女に眷族達は大人しく席に付いた。
「ベジット君が連れてきたウィーネ君の処遇なんだけど、皆はどうする? 僕は君達の選択を尊重するよ」
ウィーネは現在、ヘスティア・ファミリアの所有物としてギルドも認可し、ベジットという規格外の冒険者が管理しているという建前でその存在を認められている。
形だけの話だが、これでウィーネはヘスティア・ファミリアに在籍できる口実ができた訳だ。
「俺は別にこのままウチにいても良いと思うがな。実際にテイムしたモンスター扱いになった訳だし」
イケロス・ファミリアも主神含め、殆どの眷族がガネーシャ・ファミリアの手によってお縄となっている。
残すは団長であるディックスの身柄だけだが……これがまた一向に行方が分からず、副団長のグラン曰く、何でも数ヶ月ほど前から魂が抜け落ちたように腑抜けになり、何に対しても無気力になったという。
その為ディックスの所在は未だ分からないとされているが……まぁ、神イケロスを縛り上げればその辺りも何れ明らかになることだろう。
そんな訳で、異端児達にとって厄介な派閥が事実上壊滅したことにより、ウィーネの身を脅かす者は誰もいなくなったというわけだ。
ギルドが正式にヘスティア・ファミリアがウィーネをテイムし、自分達の所有物であることを明らかにした為、公に糾弾してくる輩もいなくなるだろう。
「リリも別にウィーネさんを受け入れるのは賛成ですよ」
「俺も、特に反対する理由もないしな」
リリもヴェルフもウィーネを受け入れることに反感はなく、他の面々も同様なのか特に反対意見は出ることはなかった。
「アリスはどうだ? 一応精霊な訳だし、モンスターが近くにいることに抵抗とかなかったりしないか?」
「どうして? ウィーネ可愛いじゃん」
仮にも大精霊がそんなに軽くて良いのかと、ベジット以外の事情を知る者はツッコミを入れたくなるのを必死に堪えた。
ウィーネのヘスティア・ファミリアの参入。それに異議を唱える者はこの場にはいなかった。
懐が広いというか、底抜けていると錯覚するほどに受け入れてくれるファミリアの皆に、ベルは感謝と同時に申し訳なくなった。
「皆さん、ごめんなさい。僕が迷惑を掛けたばかりで……」
「別にベルが悪い訳ではないだろう。お前がウィーネを庇ったのも、全て自分で考えて行動した結果だと言うのなら、俺から言うことは何もないよ」
実際、あの場でベルがウィーネを庇ったのはモンスターを護った人類の裏切り者……ではなく、自身の属するファミリアの財産を護った健気な眷族という事で市民からは受け入れられている。
たとえ他派閥から疑惑の目を向けられてはいるが、それだけ。
悩み、苦悩し、その果てに自分で選んだのがあの時のベルの行動だと言うのなら、ベジットはこれを歓迎することはあっても、咎めるつもりはなかった。
「
「ベートさん……」
団長と副団長の双方から正式に許されたベルは改めて頭を下げて席に着く。さて、話が逸れたなとベジットは手を叩いて場の空気を変え、改めてウィーネに問い掛ける。
「さて、色々言ったがウィーネ。お前はどうしたい? 俺達はお前がこのままウチに残ることに反対はないが、決めるのはお前だ」
「ウィーネが?」
「あぁ、地上に残るか。仲間達の所へ戻るか。大いに悩み、大いに考えろ」
俯き、思案に拭けるウィーネ。彼女の出す答えにベジット達は何も口出しせず、ただ静かに見守っていた。
やがて、顔を上げるウィーネの顔はこれ迄の彼女とは何処か違う……何かを決めた、覚悟ある冒険者の顔をしていた。
◇
「あーあ、イケロス・ファミリアも捕まっちゃったかぁ。こりゃあ、いよいよ俺達に後がなくなっちゃったなぁ」
「ベジットと天の牡牛によるドンパチで
こりゃ、いよいよ見捨てられたかな。なんて管を巻きながらどうしたモノかと頭を悩ませていると……。
「タナトス」
「おりょ、レヴィスちゃん。久し振り~、どうしたん?」
姿を見せたのは、名目上協力関係となっている怪人のレヴィス。赤い髪を揺らしながら現れる彼女の久方振りの来訪にタナトスは破顔する。
「聞いたぞ。【
「そうなの~! 俺も最初聞いた時はベジットに一矢報いたぞとガッツポしたんだけど……」
にこやかに笑みを浮かべたかと思えば、ガックリと肩を落としてタナトスは続ける。
「もーダメ。ガチガチに封印されてんの。うすっぺらい布でグルグル巻き」
「封印?」
「そ、焼いても切っても叩いてもダメ。今ヴァレッタちゃんが一生懸命何とかしようとしてんだけど……ありゃ無理だね。トンでもない力で雁字搦めにされてんの」
ヘスティア・ファミリアから簒奪した布に覆われた大きなドロップアイテム。あれを何とか利用し、強力な武具に加工してやりたいが、巻かれた布が闇派閥の思惑を悉く挫いてしまっている。
切ってもダメ、焼いても無傷。叩いても叩いた鉄槌の方が砕かれる等、何一つ成果が出てきていない。
いっそのこと、あのアイテム自体を武器として扱ってやろうか、なんてアホな話が出てきてしまう始末。
現在ヴァレッタが心血を注いで何とかしようとしているらしいが……恐らくは期待出来ないだろう。
大精霊以上の力で込められた封印術なんて、禁を破った神か、
そんな訳で現在自分達は八方塞がりなのよと、肩を竦めるタナトスに。
「ならば調度良い。そのドロップアイテム、私に寄越せ」
「レヴィスちゃん?」
「その封印、此方で解除してやろう」
「ウフフフフ」
遥か薄暗い深淵の底。薄笑いを浮かべるその横で。
闇よりも黒い漆黒の繭が、静かに胎動し始めていた。
Q.ヘスティア・ファミリアを貶めたい派閥とかあるの?
A.全く無いとは言い難い。良くも悪くも民衆に認知されているヘスティア・ファミリアを少なからず僻んでいる神々はいる。
これは、我々人類にも言えることなのかもしれない。
Q.ベジット、まぁだ盗まれた事気付いてないの?
A.今回の騒動が終わってから、ですね。
次回(嘘)、”雷光降臨”
「宿命のライバルって、ベル君かよォォォっ!!」
ベル君、最大の危機。
ぜってぇ観てくれよな!(笑)