最近知った衝撃的なニュース。
某超なかぐや姫とヤニカスが同一人物であるという事。
この年前半大人気を泊したかぐや姫が、まさかのニコチン中毒者という疑惑に、全俺困惑。
教えてくれいろP、俺はどうすれば良い?
そんな訳で初投稿です。
咆哮がオラリオに轟いた。
天地を揺らす音圧、音の振動だけで分かる圧倒的威圧感。突如として現れた強大な力の出現に、オラリオにいる強者どもは挙って現場へ雪崩れ込んだ。
神々すら予想し得なかった
「黒い
「戦っているのは、ベル・クラネルか!?」
建物を粉砕し、障害物をものともしないで進撃する黒いミノタウロス。ベル・クラネルを執拗に狙う怪物をヘスティア・ファミリアの監視に赴いていた彼等は横槍を慣行する。
自分達だってLv.3。冒険者になり立ての新米に負ける道理はないと、それぞれ得物を手に突貫しようとして。
「■■■■■ッ!!」
無粋。そう言わんばかりに放たれる
立ち尽くし、無防備となった彼等に向けてミノタウロスは斧を振り上げる。見上げる程に巨大で強大な怪物を前に、自身の死を予見したロキ・ファミリアの冒険者はその顔を絶望の色で染め上げるが……。
「【ファイア・ボルト】!!」
ベル・クラネルの放つ炎の弾丸が、ミノタウロス───アステリオスの行動を阻害する。
余所見をしてしまった事に対して内心で謝罪をしつつ、アステリオスは再びベルへ狙いを定めて口角を吊り上げる。
此方だと、民間人を巻き込まず且つ邪魔の入らないよう、人気の無い場所を目指して走るベルをアステリオスが追い掛ける。
一瞬の出来事。しかし確かに自分達はあの一瞬で死地に立たされ、そして救われた。
その事実を噛み締めるように、ロキ・ファミリアの女冒険者は震える自身の体を両手で抑えながら呟いた。
「………なんで、戦えるの?」
見ただけで分かった。あの黒いミノタウロスは、自分達では足止めにもならない絶対的な強さを持った化け物であると。
猛毒のような液体を浴びて、大幅に身体能力が低下しているみたいだが、そんなものが慰めにならない程にあのミノタウロスは常軌を逸していた。
手にした斧を横に薙いだだけで周辺の建物は瓦解する。一撃でも直撃すれば再起不能は免れない。
形となった死。Lv.3程度の冒険者が束になった所で勝てる訳がない。
なのに。
「見れば直感で分かるでしょ!? 勝てる訳がないって!!」
あの白髪の少年は立ち向かった。あの嵐のような咆哮を受けて、自分達は脚が竦んで動けなかったのに、微塵も恐怖を感じた様子はなく、少年は黒いミノタウロスに挑んで見せた。
自分達には到底理解できない心境。この日、ロキ・ファミリアの女冒険者は、自分が生きている事に心底喜びながら、路地裏の一角で震えていた。
◇
何故、自分はこの人と戦えているのか。
目の前を通り過ぎる戦斧を見送りながら、返し刀で【
黒いミノタウロスが繰り出す一撃一撃が、自分を打ち倒すのに充分な威力を有している。
当たれば終わり。絶望を越えた死地の中で、それでも客観的に見て戦えている事に、他ならぬベル・クラネルが内心で驚いていた。
どうして自分は戦えているのか。気を解放し、界王拳も3倍を維持しているが、それでも目の前の黒いミノタウロス───アステリオスとは、雲泥の差と言う程に実力に開きがあった筈。
それでも対等に戦えている理由の一つに、
現在進行形でアステリオスの肉体を蝕み、並みの冒険者であれば即死も免れない第一級の呪い。それを受けて尚、猛牛の猛りは鎮まることはなかった。
そしてもう一つの理由として、ベル・クラネルが日頃から格上との戦いに馴れていると言うのが大きくあった。
【
何れもオラリオでトップを走る怪物達。彼等に加えトンチキの中のトンチキであるベジットによる扱きは、間違いなくベルの内に糧として根付いている。
今、自分が戦えているのは間違いなくベジット達のお陰だ。
(ありがとうございます。団長、みんな!!)
嬉しかった。目の前の強敵を、打ち勝つべき相手を、戦えている自分に育ててくれた全てに感謝しながら、ベルは短剣を振るい続けた。
◇
「────凄い」
その光景を目の当たりにして、アイズ・ヴァレンシュタインの口から出てきたのは、心の底からの感嘆の言葉だった。
黒いミノタウロス。彼の内に秘められた力は今の自分をも遥かに越えたモノで、マトモに戦えば自分でも敵わないと思われる災厄級のモンスター。
今のベル・クラネルが敵う道理はない。だというのに、現実にあの白い少年は必死な形相でも、必死に黒いミノタウロスに食らい付いていた。
これ迄で培ってきた技と駆け引き、その全てを使って遥か格上に挑んでいるベルに、アイズは目が離せないでいた。
助けに入るべきなのだろう。常識的に、マトモな倫理観を持つ者であれば、彼より強い自分が割って入って助けるべきなのだろう。
でも、出来なかった。
必死に戦う彼を見て、懸命に戦うベルを見て、アイズはこの戦いに横槍を入れるべきではないと、冒険者としての本能に従っていた。
そして、そんな結論に至っているのは
「まさか、こんな
「フィン!」
隣に降り立つのは
「忘れていたよ。冒険というのは何時だって、こんなにも心を熱くさせるモノなんだって」
フィンはヘスティア・ファミリア───否、ベジットに対し、以前から負い目を感じていた。
誰よりも強い身でありながら、それを鼻に掛けず紳士的で、どんな人間に対しても対等で友好的に接してくれるベジットの存在は、フィンに少しずつ負の感情を蓄積していった。
誰よりも強い癖に下手に出て、秘匿して独占すべき気という力を何の意図もなしに広め、他所の派閥が強くなることを是と受け入れ、なんの裏もなしに他者を助ける。
そんなベジットを、フィンは妬ましく思っていた。
【暴食】と【静寂】という嘗てオラリオを襲った危険人物二人を、リスクを承知の上で受け入れ、打倒黒竜の為に尽力を尽くすと言い切った時も、そんなベジットを羨ましく思い、同時に妬ましく思ってしまっていた。
誰かの為に泥を被り、それを微塵も他者に気取らせること無く強く在り続ける。その在り方はまるで、勇者そのものの様に見えた。
悔しかった。一切の打算無く、当たり前のようにそう在れるベジットに。
悔しくて、妬ましくて、そして……そんな自分が誰よりも浅ましく思えた。
きっと、自分は二度とそんな風に振る舞える事は出来ないと、心の何処かで決め付けていた。
自分はフィン・ディムナ。一族再興の為に人事を尽くし、勇者として在り続けるのだと、死んだ両親が自分にしてくれたように、その勇気に報いる人間になれるように、自分自身を“人工の勇者”として定めた。
……でも。
「そうじゃないんだ。勇気とは、勇者とは、そういう事に限った話ではないんだ」
「フィン?」
憎しみもなく、悪意もなく、ただ目の前の相手を越えたいという純粋な願いの下で戦う二人の雄。
我武者羅で直向きに、一切の淀み無く戦う二人にフィンは何となく分かった様な気がした。
「アイズ、僕は近い内に“理性のあるモンスター”に接触しようと思う」
「!?」
既に異端児の存在は、ここ暫くの間オラリオに駆け巡っていた情報で当たりを付けていた。
情報を確定し、彼等の拠点を断定したにも関わらず、未だに踏ん切りが付けなかったのは、偏にフィンに覚悟が足りなかったから。
けど、ベル・クラネルの冒険譚を目の当たりにしてフィンも腹が決まった。
「ギルド……いや、神ウラノスが抱えている黒衣の魔術師。彼と接触し、理知のあるモンスターと協力関係を立ち上げる」
全ては、オラリオの地下に根付く闇を払拭するため、強い決意と覚悟を滲ませるフィンに、アイズもまた強く頷いた。
◇
「嘘だろ嘘だろ嘘だろ嘘だろ嘘だろ嘘だろ嘘だろ嘘だろ嘘だろ嘘だろォォォッ!?」
黒衣の魔術師───フェルズから聞かされた信じがたい話に、ベジットは転生以来初となる危機感を抱きながら、地上に向けてダンジョンを駆け上がっていた。
本来であれば瞬間移動で瞬時に現場に行ける筈なのに、聞かされた話に気を取られて其処まで気が付かなかったベジットは、進路上を遮るモンスターを吹き飛ばし、モンスターに囲まれている冒険者達の存在に気付かないまま、地上へと舞い戻る。
何時もと変わらないオラリオの街並み、その一角で突如として起こる爆発。感じ取れる気から彼処が件の場所だと認識したベジットは、ビシュンッと超スピードで姿を掻き消し、現場近くの屋根へと飛び移る。
既に其処には多くの民衆が囲んでいて、他の屋根には多くの冒険者達が駆け付けていた。
オッタルやアレン、白黒エルフの二人というフレイヤ・ファミリアだけでなく、アイズやフィン等のロキ・ファミリアの面々が黒いミノタウロスと戦うベルを見守っていた。
誰もが見守る姿勢を崩さない中、ベジットは愕然となる。
(おま、おま、アステリオスゥゥゥ!? なしてベル君と戦ってんの!? ベル君まだLv.3よ!? お前の半分以下の実力しかまだ無いのよ!?)
前世で己を倒した宿敵に勝ちたいと、そう願いながら
オッタルはLv.8になってから結構時間が経っているし、ザルドも持ち前の戦闘センスで既にLv.8から逸脱し始めた実力を持っているから、そんな二人と良い感じに戦えるよう、ベジットは遠慮無く鍛えることにした。
嘗て、副団長であるベートに課したブートキャンプ。あの時より少しばかり下方修正したモノを施し、仕上げにぶつかり稽古等をして、アステリオスの粗削りな戦闘力を研磨してやったら……。
ちゃっとやり過ぎた。具体的には穢れた精霊を一方的にボコす………処か、下手をしたら
流石にやり過ぎたと思った。が、まぁ相手がザルドやオッタルならギリ大丈夫だろう。二人とも強いし、なんて呑気に考えていたらあら不思議。
アステリオス君ってば、物凄い上機嫌でベル君と殺し合いしてるじゃないの。
(いやお前が勝ちたいと願っていた相手って───ベル君かよォォォォォッ!?!?)
なんてこったのパンナコッタ。剰りにも衝撃的な事実にベジットは心の中で絶叫、頭を抱えた。
今のベルではどう足掻いても勝ち目がない。見ろ、必死に限界ギリギリの界王拳で攻め立てて、アステリオスがどういうわけか動きが大分鈍くなっていて、それで漸く成立しているだけの戦いだ。
恐らくアステリオスが何らかの
助けに入るべきか? 二人の力量差を誰よりも知っているからこそ、ベジットは戦っている二人の間に割って入ろうかと頭を悩ませた………その時だ。
「頑張れ! リトル・ルーキー!!」
「ウェッ!?」
誰かの声援が戦場に活気をもたらす。その一言を皮切りに民衆達はベルへ声援を送り始めている。
「リトル・ルーキー!」
「リトル・ルーキー!」
「リトル・ルーキー!」
すっかり場の空気が二人の決戦と化していた。アカン、このままではベル君が死ぬゥッ。
もう空気読み人知らずと罵られようと構うものか。ベジットは意識を集中させ、誰にも気付かれること無く二人を回収しようと脚に力を入れて………。
「………止めた」
呆れた笑みを浮かべて、その場に座り込んだ。
「なんて楽しそうに戦ってんだよ、二人とも」
殺し合っている二人。端から見れば互いの命を奪い合う決闘をしていると言うのに、当の本人達は心底楽しそうだった。
界王拳の反動で、今にも全身がバラバラになりそうなのに、その顔に笑みを張り付けて短刀を振るうベル。
一挙一動で成長し続けているベルを、笑みを浮かべて迎え撃つアステリオス。
互いが互いを好敵手であると認め、目の前の強い奴に勝ちたいと願いながら挑み続ける二人は、ベジットから見てもこの上なく楽しそうに見えた。
そう、
ライバル同士の戦い。それはベジットにとって決して叶うことの無い戦い。
だからなのだろう。二人の戦いを邪魔してはならないと、そう思い直してしまったのは。
「万が一の時は、俺が何とかしてやる」
だから、存分に
楽しそうに戦う二人を、ベジットは羨ましそうに眺めるのだった。
いろP「好きならば、ヤニまで愛せ!!」
次回、敗北の少年
戦場聖女「ステンバーイ……ステンバーイ……」