ダンジョンに超なアイツが来るのは間違いか?   作:アゴン

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そう言えば、ヒロアカとドラゴンボールって同じ巻数なんですよね。

そんな訳で初投稿です。


物語14

 

 

 

 ただ、そこには静寂があった。闇派閥との決戦だというのに、誰もが殺し合いの最中だという事を忘れ、ただ一人の人間に視線が注がれていた。

 

ベジット。つい数日前にオラリオに来たばかりの新入り、神の恩恵も授かったばかりの最弱(Lv.1)

 

最弱、そう、最弱だ。本来Lv.1の冒険者は通常の一般市民より強く頑丈なだけの存在。更に高いレベルの冒険者には当然ながら及ぶ訳もなく、この闇派閥との戦いでは精々裏方の後方支援が際一杯。

 

そもそも、冒険者はレベル一つ違うだけで他とは隔絶した実力の差が開き、それがこの神時代の一つの(ルール)とされている。

 

 その理を、神々が敷いたルールを、知ったことかと吹き飛ばしたのが奴だ。アスフィも、アーディも、その光景を目にした多くの冒険者、闇派閥の構成員達ですら言葉を失っていた。

 

 大通りを死の川とさせたモンスターの群れが、欠片すら残さず消滅している。遥かオラリオの外まで見晴らしが良くなり、その光景を作り出した張本人は溢す。

 

「目に見えた被害は大通りに沿った店と都市門だけ。いやー、我ながら上手く加減できたもんだぜ」

 

 力をセーブ(制限)しつつ、目の前のモンスターと側にいた闇派閥のテイマーだけを消し飛ばす。中々に加減が難しかったが無事にやり遂げて見せた。

 

流石はベジットだと、内心で他人事の様に自分を褒めつつ、最近やたらと我慢をしていた鬱憤が晴らせた事にベジットは満足気に頷いた。

 

ただし。

 

「ふざけんな、ふざけんなよ? アレだけ用意したモンスター共が、一瞬で………全滅? 何の冗談だ。なんの悪夢だ? なぁ、誰か教えてくれよ」

 

 闇派閥の幹部が一人、【殺帝】のヴァレッタは愕然としながら抗議の声を上げる。長い時間を掛けて用意したモンスター達。

 

特に、深層から調達したモンスター達は此方の少なくない人員を消費して手に入れた特注品。それが、マトモな抵抗も許されず、断末魔すら無く奴の放つ光に呑み込まれて消えた。

 

 アレ等がちゃんと機能してれば今頃オラリオは死と血で埋め尽くされ、オッタルや冒険者達を絶望の底に叩き落とす事など容易い───その筈だった。

 

それが、たった一人の人間によって覆された。暗雲が消し飛んで差し込まれる日の光、その中心に立つ(ベジット)はヴァレッタの方へ視線を向けて───笑った。

 

「ひッ!?」

 

 不敵に笑うベジット。アレだけの力を出しておきながら、その顔に一切の疲労の翳りはなく。寧ろヴァレッタに仕掛けてこいと笑っている。

 

分かりやすい挑発。しかしヴァレッタはその笑みを煽りとは受け取れず、寧ろ恐怖を感じて脚を震わせた。アレだけのエネルギーの塊を放出して全くの疲弊はなく、当然と腕を組んで佇んでいる。

 

 ────怖い。アレだけの力を、アレ程の破壊を撒き散らしておきながら平然としているベジットに、ヴァレッタは心底恐怖を感じた。

 

一方で、挑発に乗らずに撤退の気配すら見せているヴァレッタにベジットは違う意味で困惑していた。

 

あの手のタイプはてっきり煽られた拍子に激昂し、激情のまま仕掛けてくるかと思っていただけに、ヴァレッタの反応に肩透かしとなっていた。

 

(仕方ない。このまま此方から向かうとするか)

 

 とは言え、オラリオの今後の平和を思うのなら、ヴァレッタなる闇派閥の犯罪者は早目に取っ捕まえるのがいいだろう。未だ呆然となって自分の背中を見ているノアール達を尻目に、ベジットが動こうとした時。

 

 背後から突然轟音が響き渡り、オラリオ中に衝撃を轟かせた。

 

 大地を震わせる振動に、再びオラリオの冒険者達が驚く、障壁の一部が砕かれ、ベジットは顕となったその奥を見る。

 

「どうやら向こうも終わったか。……なら、そっちが優先か」

 

 かめはめ波をブッパし、ある程度の憂さを晴らせたベジットだが、此処からが彼の出番。唖然としているノアール達の視線をそのままにして、ベジットはそれ以上ヴァレッタを見る事なく、超スピードでその場から掻き消える。

 

 姿を消すベジットに戸惑いながらも、周囲の冒険者達は目の前の脅威を倒すために、手にした武器で闇派閥と対峙、反撃の雄叫びを上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「─────俺が、負けたか」

 

「あぁ、俺の勝ちだ」

 

 幾つもの剣檄を重ね、数多の刃で斬り、互いに文字通りの死力を尽くした。

 

障壁の外など既に意識から外れ、互いが互いを喰らい合う蠱毒の儀。征したのは────【猛者】だった。

 

 戦っていた間の記憶は朧気しかなく、ただ夢中で目の前の最強を超える為に戦った【猛者】は、この日この時、遂に雪辱を果たした。

 

血に倒れ伏す嘗ての最強、【暴食】のザルド。これ迄のオッタルの人生の中で何度も泥の味を喰らわされてきた因縁の相手。

 

 強かった。唯々強かった。その身を陸の王者(ベヒーモス)の毒に侵されて尚、【暴食】の権化は恐ろしく強かった。

 

ただ、少しだけ心残りなのが……。

 

「……十年前ならば、勝敗は分からなかった。今のお前(・・・・)に、勝ったところで……」

 

「勝った途端、舐め腐るな……俺はこの戦の前に、たらふく喰ったんだ。今日の俺は、いつ、いかなる俺よりも強かった……」

 

 そんなオッタルの感傷を、ザルドは傲慢だと吐き捨てる。

 

「お前は、それを超えた……俺を、見下すな……自分を、誇れ」

 

「………分かった」

 

 先達からの、最後の叱責(教え)。その昔、幾度と無く挑んだ泥塗れの【猛者】は自分の踏み台となってくれた男に、最大限の感謝を述べた。

 

「………ありがとう、ザルド」

 

「礼など……いらん。それに、お前にはまだ、高い壁が待っているぞ。その事を………忘れるな」

 

「─────」

 

 その言葉の意味を、一瞬オッタルは計れなかった。ザルドを超え、遂に自分がその座へと座ることになった。数多の経験と屈辱の果てに辿り着いた頂、しかしザルドは意味ありげに先はまだあると告げてくる。

 

「っ!」

 

─────思い出した。

 

 あの時、自分はザルドに負け、救護班のテントに運ばれ、負けた激情に駆られて一度は其処から抜け出した。

 

しかし、あの時自分の前に立ち塞がった何者か。受けた傷で意識が朦朧としていて、碌に覚えていない頭だが、あの瞬間だけは鮮明に思い出せる。

 

 オッタルはあの日、二度負けた。一人は目の前で倒れ、長年の因縁の果てに遂に超えたザルド。そして、もう一人は………。

 

「オッタル」

 

「っ、フレイヤ様」

 

 女神の声に意識が引き戻され、オッタルは声のする方へ向き直る。

 

麗しくも美しき女神フレイヤ。オッタルが唯一崇め、信奉している美の女神。護衛もなく、一柱でこの場に来た彼女に歩み寄ろうとして。

 

「────あら?」

 

 ふと、女神から間の抜けた声が聞こえた。何時も毅然としている彼女が、目を丸くさせるとは珍しい。不思議に思ったオッタルが何かと思い振り返れば………。

 

「なにっ!?」

 

「げっ」

 

 動けなくなったザルドを背負い、その場から立ち去ろうとしていた何者かが、其処にいた。

 

………いや、違う。あの逆立った黒髪、確かに自分は覚えている!

 

 互いに目が合い、固まる。時間にして一秒も満たない刹那の時間。その間にザルドを背負った男は、ダラダラと冷や汗を流している。

 

「………じゃ、そういう事で」

 

「ま、待て!!」

 

 オッタルが制止させるよりも速く、男はザルドを連れてその場から掻き消えた。

 

「き、消え……」

 

「オッタル」

 

「ふ、フレイヤ様……」

 

「今は放って起きなさい。それよりも、アナタの更新が先よ」

 

 この短い時間で知りたいことは山程増えたが、主神たる女神にそう言われては従う他なく、オッタルはフレイヤの前に膝を突く。背中に滴り落ちる神の血(イコル)、自分の中にある器がより強く、より広くなっていくのを自覚しながら、オッタルは口を開く。

 

「────フレイヤ様。あの男は、一体?」

 

「彼の名はベジット。つい先日オラリオにやって来た新入りで、“オラリオの奇跡”の張本人よ」

 

「ッ!?」

 

 アッサリと告げられる名に、オッタルはいよいよ以て確信に至る。あの日、自分をいとも簡単に倒して見せた男、記憶の中で幻影でしかなかった影法師が形となって目の前に現れた。

 

ベジット。その名を口ずさむオッタルには既に先程までの頂に座する者ではなくなった。用意された座を蹴り飛ばし、既に【猛者】は遥か先の霧に包まれた頂を見上げている。

 

「フレイヤ様………」

 

「なぁに?」

 

俺は(・・)………強く、なりたいです」

 

 新たに現れた得体の知れない頂。遥か先、オッタルが生涯掛けても辿り着けるか分からない頂を前に、それでも諦めたくないと己の主神に告げる。

 

 都市最強(Lv.7)。オラリオに遂に生まれた新たな頂点、しかし既にその先を見ている眷族に美の女神は嬉しく、愛おしそうに………。

 

「えぇ、強くなりなさいオッタル」

 

 その背中を撫でた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 地下迷宮(ダンジョン)18階層。通称【迷宮の楽園(アンダー・リゾート)】、そこはモンスターが出現しないとされる迷宮の安全階層(セーフティポイント)

 

 本来なら水晶結晶の飴や雲の様な綿菓子が取れ、冒険者達の一時の安らぎの場となる筈だった場所。

 

それが今は、地下階層からの攻撃により18階層のど真ん中が吹き飛び、地獄の竈が顔を覗かせている。

 

 辺り一面は焦土と化し、巨大な大最悪(モンスター)が冒険者達を見下ろしている。

 

そこへ………。

 

「ガレスッ!!」

 

「肩の肉が抉られただけじゃ、案ずるでないわ! ………しかし」

 

 【黒いナニカ】、骨の様に貧相な体躯の癖にまるで死神の様な風体の怪物。ダンジョンが哭いた時に産まれた未確認の怪物は、第一級冒険者(ガレス・ランドロック)の肉体をまるで豆腐の様に刻んで見せた。

 

「この忙しい時に未確認のモンスターとは、つくづく運が悪い。それも………五体(・・)と来たか!」

 

 クルルと喉を鳴らし、不気味に此方を見据える合計10の眼光、怪しく光る紅い眼はガレスやリヴェリア達冒険者を排除するべき対象として見据えている。

 

「恐ろしく速く、魔法も通じる処か反射してくるとはな。幸いというべきか、アルフィアにまで牙を向けるとはな」

 

 ドワーフの冒険者、ガレスの向ける視線の先には既に1体の黒いモンスターを屠った【静寂】がその亡骸を踏みつけて佇んでいる。

 

黒いモンスターは破壊者の如く暴れ、魔法が反射されたのも、それを即時対応して見せたのも彼女。向こうも初見の筈なのにまるで意に介していない【才禍の怪物】の変わらない化物ぶりに、今は敵である筈だというのに、ガレスの心境は恐怖よりも心強さが勝っていた。

 

 彼女が黒い破壊者を圧倒してくれたお陰で、奴らの矛先がアストレア・ファミリアではなく自分に向けられたのも………まぁ良しとしよう。

 

「いや、早く何とかせんと此方が持たんな。リヴェリア! そっちは何とかなりそうか!?」

 

「まだ無理だ!! クソ、アイズ落ち着け!!」

 

「ふー! ふー!!」

 

 大最悪を目にした瞬間アイズは暴走し、ひたすら目の前のモンスターを殺す為だけに剣を振るった。突然の彼女の変化に戸惑うリヴェリアとガレスだが、アストレア・ファミリアがアルフィアの足止めをするという事で、二人はアイズのフォローに回れたのだが……。

 

「何を呆けている小娘ども、この程度の未知で脚を止めるのならその無用の長物、私が引き千切ってやろう」

 

「【福音(ゴスペル)】」

 

 強すぎる。黒いモンスターを屠り、それでも疲弊した様子のないアルフィアはそのままアストレア・ファミリア達に対して蹂躙を開始する。

 

音の嵐が周囲を吹き飛ばし、その余波だけで少女達を吹き飛ばしていく。このままでは小娘達が持たない、しかし、複数の黒いモンスターに囲まれているガレスは自身が死なないように凌ぐ事で手一杯だった。

 

(クソ、このままでは挽き肉にされる! せめてアイズが正気に戻ってくれれば……!)

 

 腕を裂かれ、脇腹を斬られ、血溜まりが足下で出来上がる。出血で意識が薄れ、それでも【重傑(エルガルム)】の矜持として膝を折るわけにも行かない。

 

 そんなガレスに破壊者の顎が開き、喰い千切ろうと迫る。流石にこれは防げんなと、せめて一矢報いてやろうと今まで盾代わりにしていた斧を振りかぶって……。

 

 

 

 

 

 

「っし、何とか間に合ったか」

 

 大きく口開いた破壊者が、真っ二つに切り落とされた。

 

「「「ッ!?」」」

 

唐突に現れた黒髪の男、独特の服装でイヤリングを付けたその男は、出血多量のガレスの前に護るように立っていた。

 

「べ、ベジットさん!? 何でここに!?」

 

「バカな、彼は今は地上にいる筈、何故ダンジョンに!?」

 

 本来ならばいる筈のない男、アストレア・ファミリアの面々も、リヴェリアも、ガレスも、突然現れたベジットに視線が向けられる。

 

「………そうか、奴が」

 

 アルフィアも、同様に閉じた眼で視線を向け。

 

「ハハ、本当に来たんだ。彼、一時はどうなることかと思ったが……」

 

 少し離れた場所で事の様子を眺めていた邪神は、残り四体となった黒い破壊者を前にして不敵な笑みで挑発するベジットを、楽し気に見下ろしていた。

 

 

 





Q.ジャガ丸君、何で六体も出てきてるの?

A.?????「なんかヤベーのが来る。排除しなくちゃ!」


Q.なんで普通に静寂さん対応してるの?

A.静寂「仕掛け(ギミック)としては面白いが、所詮初見殺し。落ち着いて対処すればどうと言うことはない」

Q.どうやって倒したの? 魔法効かないのに。

A.静寂「? ………普通に手刀だが?」

マジでなんなのコイツ。





オマケ
もしもロキ・ファミリアにいたら? その4

「あんがとな、ベジット」

「あん? どしたの急に」

「自分がウチに来てくれて、ファミリアの皆は強くなった。それも、ただ強くなっただけやない、面白おかしく、人生を楽しむように生きている。ウチは、それが一番嬉しいねん」

「特にアイズは、自分と過ごす内によぉ笑うようになったわ。黒竜を倒す事に拘るんじゃなく、その先を見るようになった。子供が未来を楽しむようになった。……ホンマ、感謝しても足りひんわ」

「………まぁ、黒竜は既にいないんですけどね。主に俺のせいで」

「それは、まぁ………時間が何とかしてくれるやろ! フィンとかリヴェリア、ガレスも万が一バレた時は説得する言うてるし!」

「ハハ、そん時は頼りにするさ。………さて、そろそろ作戦開始だ。俺ももう行くぜ」

「ベジット」

「ん?」

「本気、だせるとええな?」

「───ま、その辺りは気長に待つさ」

 その日、人造迷宮(クノッソス)にて一つの悪意と決着が付いた。





解説。

 ヘスティアではなく、ロキ・ファミリアに入団した世界線。入団の経緯はフレイヤ・ファミリアと同じだが、黒竜討伐の件はフィン達三巨頭とロキだけが知る機密事項となっている。イヤリングは無し。

 ベジットの人柄に触れ、心を開いたアイズはその後年相応に成長し、強くなることの意味と理由を改めて見詰めなおし、自身の中にある復讐心を全く別物に昇華させた。

ベジットに触発され、全構成員が原作開始時には1~2程レベルが上がっており、フレイヤ・ファミリアを超える最強の派閥となる。

 しかし、そんなロキだが一つだけ悩みがあり、強すぎるが故に本気を出せないベジットを不憫に思っている。(尚、フレイヤ√では主神フレイヤも同様の悩みを抱える事になる)

一人孤独の道を行くベジットだが、本人はそこまで悩まず面白おかしく異世界生活を堪能している。

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