スパーキングゼロ、大型DLCで評価が覆るか。
影山ヒロノブ先生の久し振りの主題歌が熱すぎる。
その日のオラリオは、朝から少しざわついていた。
都市南東部にある『ダイダロス通り』、そこの中央地帯では住民達の避難を完了させたガネーシャ・ファミリアが陣取っており、今回の彼等は
「ったく、我々を良い様に使いやがってロキ・ファミリアの便利屋ではないんだぞ」
「ボヤかないでイルタ、私達の任務は『ダイダロス通り』の警備。一般人や内から外へ逃れようとする闇派閥の人間を見逃すわけにはいかないからね」
ロキ・ファミリアの長である【勇者】フィン・ディムナの指示に従い、ガネーシャ・ファミリアの眷族達は人造迷宮に繋がる出入り口を封鎖するように陣取っていた。
だが、派閥の中でも幹部として知られ、血気盛んなアマゾネスの戦士であるイルタには少々物足りないらしく、実質後方で待機を命じられたことに些か不満を抱いていた。
闇派閥は同胞であるハシャーナの仇、その仇を討てない事を悔しく思う彼女を、副団長であるアーディ・ヴァルマが宥める。
「その通りだ」
「姉者……」
「お姉ちゃん」
「我々の任は闇派閥を余さず捉える包囲網の一環も担っている。それに我々の他にもヘファイストス・ファミリアも第一進行から外されている。それはフィンのこの後の事を見据えての判断だ」
それに付け加えるように、長であるシャクティ・ヴァルマが今回の自分達の存在意義を伝える。今自分達がこの場にいるのは敵を倒す為ではなく、後の状況変化に備えての配置。
「イルタ、私達は復讐者になる事はない。群衆の盾、それが我々ガネーシャ・ファミリアの本懐。逝ったハシャーナもそう願ってくれる筈だ」
「……分かったよ姉者。私も私の役割を全うするよ」
「ああ、それでいい。ありがとう、イルタ」
仇討に燃えるイルタを、言葉で介して解きほぐす。団長であり派閥の姉貴分であるシャクティの説得を受けて、イルタも自分のやるべき事を見直した。
「ガネーシャの出番無し!! ガネーシャ寂しッ!!」
「「ガネーシャうるさい」」
そんな自分の
そんな、何時ものやり取りに笑みを浮かべながら、ふとアーディは思う。
(……でも、本当に私達の出番ってあるのかな? いや、やるべき事を見誤るつもりは毛頭無いけど……)
思い返すのは、今回の作戦の参加者。ロキ・ファミリアを筆頭に先の掃討から無事復帰を果たした
他にも支援派閥のディアンケヒト・ファミリアも参加し、その中にはあの【戦場の聖女】の名も挙がっていた。
錚々たる面々、それだけで【勇者】の本気度も伝わってくるというモノだが。
(ベジットさん、またやりすぎなきゃいいけど……)
今回の作戦の中でもトップレベルの大戦力。ヘスティア・ファミリアの長、ベジットの参戦はアーディの胸中に期待と不安を撒き散らすのだった。
◇
「イチ、二、サン、シ……と、ストレッチはこんなもんかな」
『ダイダロス通り』北東部、突入部隊主力。ロキ・ファミリアやディアンケヒト・ファミリアが主力を努める場所にて、周囲の冒険者達が準備を進める中、ベジットは一人ストレッチをして身体を解していた。
「こうして同じ戦場に立つのは、何気に初めてですね。ベジットさん」
「おー、アミッド。それがお前の法衣か」
今回の作戦で突入部隊が被害を最小限に抑える為にフィンが用意したオラリオ最上の
普段の治癒師としてではなく、【戦場の聖女】として現場に挑む法衣を身に纏う彼女に、ベジットは舌を巻いた。
美しさの中に強さと気高さを併せ持った彼女の戦闘用の衣装。けれど何故だろう、ベジット的には普段の格好の方が圧があるように感じた。
「良いかベジット、大事な大事なアミッドを戦場に送るのだ。絶対に傷一つ付けるのでは無いぞ」
「わぁーってるよ。嫁入り前の娘を傷物になんかさせねぇよ」
見送りにやってきた主神ディアンケヒトからの親バカとも取れる言葉を、ベジットは不敵な笑みを浮かべて当然だと受け入れる。
フィンの采配で組み込む事になったベジットとアミッドの編成。今回作戦に参入する事になったベジット、その経緯にはとある情報を経由して耳にしたディアンケヒトがアミッドのパーティーには絶対にベジットを付けろと注文したという。
ベジットが今回の作戦に参加したいと申し出があった時点でこの組み合わせを考えていたフィンは勿論了承。オラリオの最上位の治癒師に最上位の実力者が付いた事で、ディアンケヒトは改めてアミッドの参入を許す形となった。
「取り合えず俺はアミッドから離れないようにするよ。ンで、アミッドは周囲の冒険者を回復。俺は……まぁ別に気にしなくて良いよ。呪詛とか多分俺には効かないだろうし」
「またアナタはそんな事を……」
そもそも、相手が正面に出てきて呪詛を振り撒こうとするものなら、その時点でソイツは再起不能になっている。呪詛と振り撒く以前に出てきた瞬間ブチのめす方針で固めているベジットとしては、アミッドの治癒能力は他の冒険者達に回してやりたいというのが正直な気持ちであった。
それに、今回は一応“仙豆擬き”も四つ程持ち込んでいる。万が一負傷したらこれを喰って回復を図れば良い。
何ともお気楽なベジットにアミッドは深く溜め息を吐く。今回も気苦労が絶えないなと、諦めた様子のアミッドを他所に、ベジットとディアンケヒトは密談を始める。
(それで、どうするんじゃ? 黒竜の鱗の場所は、目星は付いとるのか?)
(この段階じゃ何とも言えねぇよ。何とか時間を作り出して、アミッド達を避難させた後に探すしかねぇ)
(追い詰められた闇派閥は何をしでかすか分からん。良いな、くれぐれもアミッド達の事を守るのじゃぞ!)
(そこでアミッドだけでも守れ! じゃない辺り結構な好印象だぜ、ディアンケヒト様)
戦線に参加するのはアミッドだけでなく他にも複数名の眷族達も参戦している。皆、ディアンケヒトにとって大事な
口からは守銭奴丸出しながめつい神だが、下界の人類に対しても愛情はあるのだろう。そんなオラリオに来てからいろんな意味で世話になっている男神を改めてベジットは見直した。
「あ、ベジットさんだ! 本当に参加してくれるんだ!」
「アミッドも一緒じゃない。成る程、だから団長はここの戦力はあたし達だけに絞った訳ね」
そういってやって来たのは、ロキ・ファミリアの幹部でアマゾネス双子姉妹であるティオナとティオネ。
そして。
「なーんか、妙な既視感を覚えるのはアタシだけかな? なぁ、ベジットの旦那」
「そりゃあ、神で言うフラグって奴だろ。ライラ」
アストレア・ファミリアから頭脳派として知られる【
「聞いたぜ? ザルドに一発かまして昇格したんだって? やるじゃねぇか」
「一発つっても、ギャン泣きしながらのグルグルパンチだけどな。マジであの時はそれくらいしか反撃方法が思い付かんかったわ」
異端児騒動の際、一度はちょっとした対立をしてしまった両派閥だが、長であるベジットはアストレア・ファミリアを咎めず、むしろオラリオの安寧を守ろうとしたライラ達を称え、遥か格上であるザルドに勇敢にも挑んで見せた事で、今回の件を特に痼に残す様な事はしなかった。
中でも、ザルドの猛攻から何とか掻い潜り、その途中で得物も罠も失ったライラは泣きじゃくりながらグルグルパンチを見舞い、見事ザルドに一発食らわせる事に成功したと、他ならぬザルド本人が称賛していた。
「ほんと、歓楽街といい前回の件といい、何でアタシ等ここ最近修羅場潜ってんだよ。お蔭で俊敏の値がSSSオーバーしちゃってんだけど? 変なスキルも芽生えちゃってんだけど?」
「お祓いに行った方がいいんじゃね?」
「旦那も原因の一因だっての、自覚ある?」
相変わらず悪友のノリの二人。口では文句を口にしているライラだが、ベジットという超級の戦力がいることに安堵している様だ。
「んで? アストレア・ファミリアは今回全員参戦で?」
「うんにゃ、今回は団長と輝夜とアタシだけ。後輩たちはガネーシャ達と同じ後方さ。リューは別件で下層で素材取りに行って貰ってる」
「あれま、後輩組は仕方ないとして、【疾風】は不参加なん? 闇派閥撲滅に参加できないとか、かなり荒れそうやん」
「まぁな。けどその別件は先日の騒動以前からミアハ・ファミリアから依頼を受けてたモノでさ、流石に放置は出来ないという事になってさ」
成る程、目の前の決着よりも以前からの義理という訳か。ベジットは納得した。
「下層である以上後輩には任せる訳にはいかないし、俊敏の能力値的にも【疾風】が適任って訳ね」
「まぁ、リューの事だから、途中で参戦してくるかもだから、その時にはフィンに上手く使って貰うことにするさ」
どうやら、アストレア・ファミリアの中では【疾風】のリュー・リオンだけが不参加の様だ。
尤も、【疾風】と称させる通り、速さに定評のある彼女が向かえば、その依頼とやらも早めに達成出来るだろうし、時間に間に合えば此方に参戦するかもしれない。
「さて、私達も向こうに合流するから、頑張りましょ。【狡鼠】、負けないからね」
「うへ~、程々になぁ」
もうじき作戦の開始時刻。ベジットが参加していることでこの部隊の安全性を認識したヒリュテ姉妹は自分達の持ち場に戻ろうと踵を返す。
その際、妹のティオナは一度だけ振り返り。
「あ、そうだベジットさん! 今回の作戦にはディオニュソス・ファミリアも参加するから、見掛けたら気に掛けてあげて!」
「………何だと?」
それじゃ! と、最後に爆弾発言を残して去っていくティオナ。
ディオニュソス・ファミリア。嘗て共に戦った事のある派閥の名前が出てきた事に目を丸くさせるベジット。次の瞬間彼の中で妙な違和感が生まれる。
何故、ディオニュソス・ファミリアが出てくるのか。今回の件に関係しているのか、一度はオラリオから出ていった派閥が、何故いきなり今回の作戦に参加しているのか。
そもそも、何故ディオニュソス・ファミリアなのか。
(なんだ、この気持ちの悪さは。俺は、一体何を見落としている?)
そんな、ベジットの抱く違和感がドンドン大きくなるの他所に、遂に作戦は開始される。
◇
「嗚呼、漸くこの時が来た。私が奏でる地上最高の
その神は嗤う。来るオラリオ崩壊の日を、今日という序曲が訪れる日を。
「この日の為に、選りすぐりの素材達を再びかき集めた。さぁ、どうか奏でておくれ、私の愛し子達よ……」
仮面の奥で狂喜する。
今回は作戦始まりの段階という事で短めです。
次回からは人造迷宮攻略作戦が始まります。
尚、ベジットのパーティーは
ロキ・ファミリア数名
アミッド
ライラ
ベジット
になります。
格好いいベジットが書けるよう、頑張ります。
Q.他のヘスティア・ファミリアは来てないの?
A.一応参加は打診しているが、今回はベジットが参加するという事で本拠地で待機。
何かあったら応援に駆け付けると約束しているので、一先ずフィン達は安心して作戦に臨んでいる。
Q.アストレア・ファミリアも参加してんの?
A.一応、団長達幹部勢は参加。それぞれの持ち場で活躍する予定。
後輩たちはガネーシャ・ファミリアと一緒に行動中。
Q.ベル君達は?
A.皆と一緒にダンジョンへ。
ちな原作。
次回、
「全部、全部テメェの所為だ、ベジットォォォッ!!」
「……誰?」