ダンジョンに超なアイツが来るのは間違いか?   作:アゴン

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今回の水着イベもトンチキ具合が大変ヨロシ(笑)

そんな訳で初投稿です


物語143

 

 

 

「───そうか、了解した。……あぁ、アミッド達ディアンケヒト・ファミリアとヘルメス・ファミリアは一度人造迷宮から撤退させてくれ。アイテムの消耗は……そうか、ああ、分かり次第よろしく頼む」

 

「ベジット達が何かしたんか?」

 

 人造迷宮攻略作戦の最中、モンスター達を蹂躙し、闇派閥の団員達を蹴散らす主力部隊。

 

 その一団を率い、各階層で奮戦している仲間達と協力者達へ指示を飛ばしていたフィンであったが、ある意味で最も期待している部隊、ベジット達からの連絡にフィンは満足そうに笑みを浮かべる。

 

「あぁ、先程凄まじい気が二つ程現れては消えたからね。なんだと思い訊ねてみたら、ベジットが【殺帝(ヴァレッタ)】と呪詛師のバルカ・ペルディクスを討伐したらしい」

 

 闇派閥の幹部、しかも二人も倒されたと聞いてフィン達の士気は跳ね上がる。

 

「文字通り鎧袖一触だったらしいよ。“宝玉の胎児”に取り込まれ、化け物へ成り果てた二人を文字通り一瞬で倒してしまったらしい」

 

「ガッハッハ! 相変わらず派手じゃのうベジットの奴は! ワシ等も負けてはおれんわい!」

 

 凶悪な策謀を企て此方を追い詰めるヴァレッタと、おぞましい呪いで此方を苦しめるバルカ。闇派閥にとって要と言って良い二人の退場の報せは自分達の勢いと士気を向上させ、勝利への流れを掴ませる。

 

 少なくとも、多くの冒険者達はそう思っている筈だ。

 

 しかしフィンやガレス達は幹部二人の討伐に士気は上げても、奇妙な違和感を感じずにはいられなかった。

 

「なんやフィン、なんか気になる事でもあるんか?」

 

「……順調過ぎる」

 

 ロキの言葉に、フィンは正直な今の自分の気持ちを吐露する。

 

 バルカにヴァレッタという闇派閥の主力が倒されたこと、それ自体は歓迎しているが……如何せん作戦が上手くいきすぎている。

 

 これ迄、人造迷宮はベジット達による最初の斥候から始まり、アストレア・ファミリアが出入り口の調査をし、他にも今日まで幾度と無く攻撃をしてきたが、その都度この人造迷宮は激しく抵抗し、自分達の侵攻を阻んできた。

 

 確かにフィンはそんな人造迷宮の仕掛け、闇派閥の同行を予見し、可能な限りの準備を施してきた。如何なる窮地や初見殺しの罠に嵌まっても脱出できるように下準備をしてきたつもりだ。

 

 事実、その甲斐あってか今の所自分達の派閥(ロキ・ファミリア)を含めて全ての部隊が必要最低限の損害で済んでいて、人的被害に至っては皆無。

 

 これ以上ない最高の状況。だが、フィンはその自分達の今の状況にこそ違和感を感じていた。

 

(闇派閥の……“都市の破壊者(エニュオ)”側の抵抗が少なすぎる。先のベジット達による破壊工作の影響? それとも実際に打つ手が無いのか?)

 

 いや、それはない。高速に回転するフィンの頭脳がそれはないと断じてくる。

 

(幹部二人が撃破され、闇派閥にはもう要となる人物はいない。神タナトスだって全智の存在であっても部隊指揮の経験はない筈)

 

 懸念事項があるとすれば、怪人であるレヴィスの存在。彼女は、初めて出会った時からアイズを圧倒する程の力の持ち主で、純粋なステイタスに限って言えばLv.7以上。

 

 そこへ“黒い気”という力を得たことで、アストレア・ファミリアが窮地に追いやられる程に強さを増し、現在も強くなり続けているという。

 

 確かに彼女の存在は脅威だが、それだって所詮は一時的な脅威に過ぎない。この盤面を引っくり返す程の力を持っているのかと聞かれれば、正直それは難しいのではないだろうか。

 

 であれば、考えられるとすれば“穢れた精霊の分身体(デミ・スピリット)”の存在だろう。

 

 現在確認できている可及的速やかに撃破すべき精霊の分身体の数は六。それらが一斉に起動し、襲い掛かってくるのであればレヴィスとはまた違った脅威にはなるのだろうが……。

 

(だが、精霊の分身が出てくる気配は今の所無い。闇派閥とエニュオで何らかの齟齬が生まれているのか?)

 

 オラリオの破壊という意味では、両者の目的は一致している筈。互いを利用し合う事はあっても、仲違いをする場面で無いことは双方理解している筈。

 

(なんだ? 僕は今、何を見落としている?)

 

 順調だからこそ生まれる違和感。親指の疼きも止まらず、警報の様に痺れてくる。

 

 しかし、部隊を率いて作戦を開始している以上、足踏みをしている暇はない。

 

 ならば、フィンが立てられる作戦は……。

 

 

 

 

 

 

 

 

「前線を下げる、ですか?」

 

オラクルから伝わってきたフィンからの指示をライラはそのまま伝える。

 

 折角此処まで押し込めた前線を下げるという事の意味を今一つ理解できていないアミッドだが、今回の作戦の総指揮者であるフィンの指示であるなら無視はできない。

 

「あぁ、因みにディアンケヒト・ファミリアは本作戦から撤退。ヘルメス・ファミリアには人造迷宮の外まで送ってやって欲しいって言伝てもあるぜ」

 

「分かりました。彼女達は必ず私達が送り届けましょう」

 

 そういって、一先ず話を区切りまで終えた一同は今回の戦闘の立役者であるベジットに視線を向ける。

 

 彼は灰となって消え行くヴァレッタだったモノの亡骸の前で佇んでいる。彼の女神であるヘスティアへの侮辱を聞いて怒り心頭になっていたのは、背中越しでしか見ていなかったアスフィ達でも理解できた。

 

 その怒りは未だに収まっていないのだろう。此方に顔を向けないで沈黙を保っているのが何よりの証左だった。

 

「………しくったな」

 

 一方、その本人はボソリと誰にも聞かれない程度の小声で自身の失態を口にする。

 

 此方を挑発していたヴァレッタの台詞、その内容からしてアポロン・ファミリアの団長とその幹部達を特殊なアイテムでタラシ込んだ事は間違いない。

 

 加えて、恐らくは状況的に“黒竜の鱗”を奪ったのも奴の仕業。もっと情報を聞き出せば良かったのに、半ば衝動的に倒してしまった事をベジットは軽く後悔した。

 

「あの……ベジットさん?」

 

 背後から声を掛けられ、我に返ったベジットは軽く頬を叩く。切り換えろ、今の自分は人の命を預かっている立場であることを自覚しろ。

 

 そう強く己に言い聞かせて、声の主へ振り返る。

 

「おう、どしたアミッド」

 

 何時も通りの口調。明るく、何処か軽薄さも滲み出る何時ものベジットの態度にアミッドはホッと胸を撫で下ろす。

 

「ライラさんとフィンさんが話し合った結果、我々ディアンケヒト・ファミリアとヘルメス・ファミリアはこの人造迷宮からの離脱が決定しました。最後までご一緒できず、誠に申し訳ないのですが……」

 

「いいよいいよ。フィンがそう判断したなら俺から言えることはない。対呪詛の秘薬もまだまだ残ってるし、その元となる奴も俺が倒した。なら、非戦闘員は早い段階で避難しておくべきだ」

 

 ベジットもフィンの意見には大いに賛成しているようで、アミッド達の離脱にはよしとしている。

 

「もうすぐ敵が根城にしている階層をウチのルルネと【狡鼠】が見つけ出しますので、その後に私達も離脱します」

 

 バルカ・ペルディクスから奪取した“ダイダロスの手記”、そこには人造迷宮の詳しい構造や仕掛けの全てを書き記されており、現在ライラとヘルメス・ファミリアのルルネが速読中。

 

 彼女達の優れた記憶力をもってすれば、敵が根城にしている階層を割り出すことは容易く、あと数秒足らずでその情報は全ての部隊に浸透する事だろう。

 

 瞬間、ライラとルルネの声が響き渡る。

 

 9階層。闇派閥の根城を特定した二人の冒険者の声が人造迷宮に響き渡る。

 

 各階層の部隊が一部を除いて一斉に動き出す。その様子を空気で感じ取ったベジット達も行動に移そうとした時、アスフィ・アル・アンドロメダはベジットに頭を下げた。

 

「先の18階層。我等の主神が引き起こした愚行の件、本当に申し訳ありませんでした」

 

 それは、これ迄なぁなぁにしてきた神ヘルメスのやらかし。彼のベルに対する執着と押し付けがましい願望で行われた凶行。

 

 本来であれば邪神認定され、闇派閥の一派として断罪されてもおかしくなかったのに、今日に至るまでヘスティア・ファミリアはヘルメス・ファミリアに対して何も要求をしてこなかった。

 

 故にアスフィはベジットに向けて謝罪する。今日までマトモに謝罪の一つもしなかった事、自分達のやらかしをギルドに報告しなかった事。

 

 それらを含めて深々と頭を下げて謝罪するアスフィだが、対するベジットの反応は薄かった。

 

「あ、うん。そんな事もあったね」

 

 正直な話、神ヘルメスのやらかした事はベジットにとって其処まで気に障る内容ではなかった。

 

 黒いゴライアスも冒険者達の経験値になったし、ベル達にとっても階層主との戦闘経験は今後の冒険者生活で必ず活きる事だろう。

 

 その時のケジメもアルフィアが付けさせた。だから別にベジットとしてはそこまで気にしていないし、何なら興味すらなかった。

 

「まぁ、()の因縁を子供(眷族)に報いらせる……なんて馬鹿な事は言わねぇよ。ただ、その事で負い目を感じてるって言うなら、今後何かしらの魔道具を依頼する際、割り引きしてくれると助かる」

 

 そう言って軽くウィンクするベジットにアスフィは安堵の表情を浮かべた。

 

 今ではヘスティア・ファミリアはオラリオの最強派閥の一角。古株の眷族一人一人が一騎当千の実力者であり、更にはクロッゾの魔剣や位階昇格(ランクアップ)という稀少魔法を持つ眷族など、下級層もデタラメ具合が突き抜けた派閥となっている。

 

 そんな奴等を束ねているのがLv.1の冒険者で、そんな奴が一番強いというトンチキぶり。そんな連中に睨まれているかもしれないと察したアスフィ達はそれはもう眠れぬ日々を過ごしていたという。

 

 そんな悪夢の日々から解放された事を内心喜びながら、アスフィは再び頭を下げて仲間達と共にアミッド達の護衛に回る。

 

 人造迷宮から離脱する彼女達を見送り、改めてベジットはライラとロキ・ファミリアの面々へ振り返った。

 

「さて、敵の根城も分かった訳だし、フィン達も9階層に向かっている。俺達も合流するべきなんだろうが……」

 

「なにか、気になる事でも?」

 

 各階層で行動しているフィン達の位置は彼等の気を感じ取って把握している。現在進行形で9階層に向かっているフィン達と自分達も合流するべきなのだろう。

 

 しかし、何処か歯切れの悪いベジットの物言いにロキ・ファミリアの黒髪短髪のロイドが声を出す。

 

「……例の怪人、レヴィスだったか? ソイツが今アイズ達と接触した」

 

「「「ッ!?」」」

 

「しかもコイツ……相当気を高めてやがんな。聞いてたよりずっと強そうだ」

 

 ベジットのその一言にロキ・ファミリアだけでなくライラの表情も強張る。恐らくは何人かはレヴィスの気を感知したのだろう、顔を青くさせてガタガタ震え出す彼等にベジットは自分の行動の選択肢に悩ませた。

 

 即ち、フィンと合流するかアイズと合流するか。

 

 作戦の概要ではレヴィスという怪人を吊り上げる事。その為の餌としてアイズとリヴェリアが囮の部隊として選ばれたというのは理解できる。

 

 実際この時点でフィンの読みは何一つ間違っていないし、アイズだって以前より強くなっている。

 

 レヴィスに一方的に負けることは無いだろうし、リヴェリアだって付いている。他にも向こうにはアストレア・ファミリアの団長と副団長も付いている。

 

 決して、一方的な展開になりはしないだろう。

 

 だが……。

 

(このレヴィスって奴の気、なんか妙だな。まるで別のナニかと混じっているみたいな……怪人だからか?)

 

 怪人というには、混ざった部分が如何にそこまで考えても、答えは出ない。いっそ部隊を分けるか? なんて考えていた次の瞬間。

 

「っ!」

 

 とある一つの神気が唐突に消えた。

 

 次の瞬間、大きな地鳴りに似た轟音が辺りに響き、巨大な光の柱が人造迷宮を貫いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「Lv.6が三枚にLv.7が一枚………か、流石にすんなり事が運ぶことはない、か」

 

 人造迷宮攻略の別部隊。対怪人(レヴィス)の囮部隊として集められたアイズを含めた面々は、目の前の怪物に苦戦を強いられていた。

 

 アイズ、リヴェリア、輝夜、アリーゼ。ロキ・ファミリアとアストレア・ファミリアの混合編成部隊。その実力はオラリオでもトップクラス。

 

 レヴィスという怪物を相手にフィンが特別に戦力を凝縮させた部隊。階層主だって一方的に倒し得るポテンシャルを秘めた筈の部隊は、しかして目の前の怪人を押し留めるので手一杯だった。

 

「くそが、分かっていたが強さが桁違い過ぎる」

 

「明らかに強さが以前よりも増してるわね。一度でも直撃すれば戦闘不能は避けられないわ。体験した私が言うのだから間違いない!」

 

 輝夜もアリーゼも、先の規格外(ザルド&アルフィア)という怪物達との戦いから生還し、以前よりも劇的に強さを増している。

 

 しかし、目の前のレヴィスという怪物はその腕を振り回すだけで真空の刃を生み出し周囲を蹂躙する。その圧倒的強さを前にアイズ達は徐々に圧されつつあった。

 

 いや、アイズが気掛かりなのはそれだけではない。

 

「……どうして?」

 

「む?」

 

「どうして、アナタから黒竜の気配がするの!?」

 

 表情をひきつらせ、困惑と怒りと絶望に満ちたアイズの口から出てきたのは、この世界の終末装置。

 

 未だ廃棄世界にて風印(・・)されている忌まわしき黒竜の存在だった。

 

 アイズの苦しみで満ちた叫びにリヴェリア達も瞠目する。対して、レヴィス本人はと言うと……。

 

「………何の話だ?(・・・・・)

 

 心底理解不能といった様子で首を傾げている。そこに一切の嘘や演技はなく、手にしているのは(・・・・・・・・)相手を切り裂く剣のみ(・・・・・・・・・・)

 

 何故唐突に黒竜の話が出てくるのか、レヴィスとしてはそちらの方が不思議だった。

 

 静まり返る空間、再びレヴィスがアイズ達へ斬りかかろうとした所で……。

 

「………チッ、エニュオめ。もう始めたか」

 

 瞬間、天地を揺るがす衝撃が人造迷宮を襲う。

 

「これって!?」

 

「神の……送還!?」

 

 大抗争の時、その現象を何度も目にしたアリーゼと輝夜は、アイズ達へ視線を向ける。

 

 天界へ送還された神の眷族はその恩恵を失い、これ迄培ってきた強さを全て失い只人へ成り下がる。

 

 まだ闇派閥最後の一柱であるタナトスの確保の報せは届いていない。最悪の可能性(主神ロキの送還)を予見した二人がアイズ達へ視線を向けるも、当のアイズ達には特に変化はなかった。

 

 では一体誰が? 誰もが戸惑うなか、それは起きる。

 

「………え?」

 

「アイズ、どうした?」

 

「これは………唄?」

 

 神の送還を合図に聞こえる誰かの唄。その唄声に嫌な予感を感じたアイズはすぐに皆に呼び掛ける。

 

「リヴェリア! みんな! 逃げて!!」

 

 瞬間、人造迷宮の至る所から悲鳴が聞こえてくる。

 

 押し寄せてくる緑の肉、闇派閥も冒険者も、敵味方問わず喰らいながら増えていく。

 

 まるでダンジョンそのものが襲い掛かってくる異様な現象を前に、冒険者達は瞬く間に追い詰められていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………あぁ、こんな、こんなことが起きるなんて……」

 

 ヘスティア・ファミリアの本拠地【竈火の館】にて、嘗ての大精霊であるアリス(アリア)が涙を流す。

 

「お願いベジット。みんなを、アイズを……護って」

 

 切実な思いで祈りを捧げるアリス、そんな彼女の願いに答えるように。

 

 人造迷宮、緑肉が人を喰らう地獄にて黄金の炎が顕現する。

 

 

 

 





あまり話が進まなくてもうしわけない。



次回、オラリオの奇跡再び。







オマケ。
作戦前の一時。

「しかし、ベジットが隠していたのは異端児とはね」

「そりゃ、ウチラがどんだけ追求しても口を割らん訳や。あんな爆弾案件、おいそれと言いふらす訳にはいかんもんな」

「……え?」

「惚けなくていいさ。僕達も異端児達に関しては利用し合う立場になっても、一方的に搾取する関係にはなっていないからね」

「今後は同じ秘密を抱えるモン同士、仲良くしようや」

「え、あ………うむ。そうだな」

 フィンとロキの盛大な勘違いに全力で乗っかるベジットであった。
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