お盆休み、終わっちゃったね。
皆はこの夏楽しめた?
そんな訳で初投稿です。
「何処ぞの神が送還されたか」
ヘスティア・ファミリア
天へ伸びる光の柱。下界から神が天界へ還る際に引き起こされる天の超常。
天へ突き立てるように伸びる光の柱を前に、本拠地の食堂で主神や他の眷族共々待機していたアルフィアは窓越しに呟く。
「どうも、事態は混沌としているようだな。どうする副団長、俺達も出るか?」
「………出るとするなら俺かリリルカ、或いはアルフィアだな。ザルドはアリスと共に引き続きヘスティアの護衛だ」
事態が動いている。それも嫌な方向にと、冒険者としての直感に従い、
「ベル達の帰りも遅ェのも気になる。アルフィアは念の為に何時でも出れる様にしておけ」
「了解した」
団長であるベジットの不在に代わり、ベートの代理としての振る舞いに誰もが否を口にすることは無かった。
「しかし、今回の神の送還。タイミングで言えば闇派閥のタナトス神が挙げられますが……」
「事はそんな単純な話ではねぇだろうよ」
リリルカは楽観的な可能性を口にするが、リリルカ自身もそれはないと確信していた。
相手はオラリオに長年蔓延っていた闇派閥最後の生き残り。そのしぶとさと恐ろしさは同じオラリオに住まうモノとしてリリルカ・アーデも良く理解している。
送還されるならば、道連れの一つでも画策するのが闇派閥のやり方だ。もし仮に送還されたのが味方側の神だとするのら……。
「仮に天へ送還されたのが神ロキだとすれば……事態は最悪ってもんではないな」
「【勇者】が側にいながら、それはないと思うがな」
無論、ザルド達もロキが送還されたとは思っていない。【
生半可な策謀では【勇者】フィン・ディムナを出し抜くことは不可能。嘗て《洗礼》と称してフィン達を蹂躙したザルドと言えど、その評価は覆る事はしなかった。
けれど、神が天界へ送還されたと言うのも事実。今頃、混沌とした事態になっているだろう人造迷宮に思いを馳せながら、消え行く天の柱を眺めていると。
ダンダンと玄関の戸を強く叩く音が聞こえてくる。その必死に強く戸を叩く誰かに、ただならぬ予感を感じた一同は、互いに顔を見合わせて誰が出るかじゃんけんを始めるのだった。
◇
「なんだよ、なんなんだよ
押し寄せる緑肉。敵も味方も問わず、人間もモンスターも見境無く喰らい尽くしながら、人造迷宮を埋め尽くしていく肉の津波。
困惑の断末魔を挙げながらまた一人喰われる闇派閥の構成員を尻目に、ヘルメス・ファミリアのルルネが叫ぶ。
「ね、ねぇアスフィ! この緑肉って24階層の
「良いから走りなさい! あの緑肉触れたら終わりですよ!」
彼等の脳裏に過るのは先の24階層にて遭遇した異形な空間と化した食糧庫、緑肉に覆われたあの空間は正しく今自分達に迫るアレと同じものだ。
あれに捕食されれば一貫の終わり。急ぎディアンケヒト・ファミリアのアミッド達を引き連れて人造迷宮から脱出せねば。
そうして漸く
緑肉の侵攻も、流石にオリハルコンの扉を破ることは叶わなかったのか、激しく扉を打ち付ける音が徐々に収まっていく。
助かった。そう安堵したのも束の間、自分が人造迷宮の出入り口の一つを潰してしまった事に気付き、アスフィの表情は青ざめる。
中にはまだベジットやライラ、ロキ・ファミリアの面々もいる。万が一彼等が緑肉に取り込まれたりしたら……なんて、最悪な未来予想図を描いた瞬間。
「わぎゃ!」
「あうっ」
ドサドサと何かが落ちる音が聞こえる。何だと思い音のした方へ振り向けば、自分達と分かれた筈のライラとロキ・ファミリアの面々が転がっていた。
「す、【狡鼠】!? ロキ・ファミリアも、どうして……?」
無事なのは純粋に喜ばしいが、アスフィの頭には却って疑問符が浮かんでくる。ベジット達は自分達と分かたれた後も人造迷宮の奥へ進んでいた筈、なのにどうして彼等はここにいるのか。
不思議に思うアスフィだが、戸惑っているのはライラ達も同様だった。
「わ、分かんねぇ。真剣な顔したベジットの旦那がいきなりアタシの肩に手を置いたと思ったら、一瞬だけフワッと身体が浮かんで……」
「俺も……」
「私も……」
他の者も同様で、自身に何が起きたのか上手く言語化出来ていない。
だが、アスフィはこの事象に覚えがあった。
暗黒期、大抗争が起きた日の事。あの時も確か、こんな風にいつの間にか窮地から脱した人間が唐突に現れたのだった。
理屈は分からない。どうやってライラ達があの緑肉から逃げ延びたのか、アスフィには全く理解できなかった。
しかし、分かった事が一つだけある。
「ベジットさん、やはりアナタは……英雄だ」
今この瞬間、彼だけは助けている。追い詰められ、何者かの狡猾な手によって盤面が逆転された今も、彼だけは人を助けるために動いているのだと。
◇
「胸糞悪い事を思い付く
加速する思考、迫り来る緑肉を蹴散らし、喰われそうになっていた闇派閥の女を抱え、ベジットは人造迷宮の中を飛翔する。
敵も味方も問わず、救い上げて外で待機しているガネーシャ・ファミリアの団長の下へ落とす。その最中、ベジットは送還された神について考察する。
(天に還ったのは、神ディオニュソスか? ソイツの眷族だっていう連中の気が軒並み小さくなったから間違いなさそうだが……)
先の神の送還。ベジットは送還された神がディオニュソスであること、神の恩恵が剥がれた眷族はこれ迄培ってきた全能力を喪う。
只人へ戻った冒険者の末路は……大抗争の時に証明している。
だが、ベジットには一抹の疑問があった。今回の作戦に参加したと言う神ディオニュソス、それは本当に神ディオニュソスなのだろうか?
ベジットには神ディオニュソスとの面識はない。嘗ての眷族達が二人を遺して全滅した際も、そして今回も、ベジットは神ディオニュソスと顔を合わせたことがない。
これは、偶然か? 作戦の隠密性を高めるためとか、思い付く
作為的か、それとも偶然か。考えられる可能性は多々あるが、今は人命救助が最優先。
「そんじゃあ、先ずは……被害者を最小限にする事から始めるとするか!」
前方から押し寄せる緑肉がベジットを呑み込む。
瞬間、目映い光が緑肉を粉砕。超サイヤ人と化したベジットは額に左人差し指と中指を当てて気を探る。
黒幕の思惑。それがどれだけ神がかった謀だろうと、己の力で覆す。
そう決めたベジットの進撃が、人造迷宮で開始された。
◇
「遂に、狂乱の宴が始まる」
その神にとって、悲劇とは喜劇だった。
人類の歴史、その殆どはモンスターによる血と惨劇で彩られたもの。涙と慟哭にまみれ、怨嗟と狂気に満ちた
その神───
あの時代をもう一度。そう願い、その為の前祝いとして、今回の贄達による狂乱をエニュオは史上の楽しみとしていた。
他者よりも自分、栄光や名誉よりも己の保身を第一としている生粋の“生きたがり”達。
自分が助かるなら他者を、仲間を蹴り飛ばし生き延びようとする彼等の断末魔を、エニュオは何よりの楽しみとしていた。
「嗚呼どうか、どうかお前達の悲鳴を、極限まで圧縮された妬みを、嫉みを、聞かせておくれ……」
耳を済ませば聞こえてくるだろう、人類達の慟哭。エニュオは自らの心音すら鎮めて彼等の声に耳を傾ける………が。
「……………………あ?」
聞こえない。アレ程待ち望んでいた人類の声が、絶望の叫びが、負の感情による慟哭が、その一切合切が聞こえてこない。
どう言うことだ? 不思議に思い、不完全燃焼となったエニュオは、後に気付く。
自神が望んでいた
エニュオは憤慨した。その美しい顔を憤怒で歪ませ、ベジットとその主神に呪詛の言葉を吐き出しながら、怒りの雄叫びを上げた。
「おのれ、おのれ! そうまでして私の邪魔をするのか。許さん、絶対に許さんぞ………ヘスティアァァァァァァッ!!!」
こうして、成功して失敗した第一次人造迷宮攻略は、最小限の被害で幕を降ろすのだった。
キリの良かったので今回はだいぶ短めです。
次回からはベル君深層編と人造迷宮攻略の触れの部分になる予定です。
あと、レフィーヤ達の一方その頃みたいな話も。
それでは、また次回ノシ
Q.因みに、今回の人造迷宮攻略のRTAはどんな感じ?
A.緑肉にわざとベジットが取り込ませ、ベジットのエネルギーを全開で叩き込む。
耐えきれなくなり、六つの精霊の分身体やニーズ君も自壊するという某ビッグゲテスターみたいに爆散させるのが一番早いです。