今回は地味回。
8月も終わりに差し掛かり、もうじき秋の季節か。
その割には30度超えとかどうなっとるんじゃい令和ちゃん!
そんな訳で初投稿です。
第一次人造迷宮攻略。この作戦で最後の闇派閥とされるタナトス・ファミリアは事実上の壊滅、幹部を含むほぼ全ての団員が討伐され、主神タナトスは自決し自ら天へと還った。
表向きはロキ・ファミリアを含めた今回の作戦に参加した全員の勝利。だが、事の顛末を知る当事者達はとてもではないが勝利の余韻に浸る事はしなかった。
「───してやられたな」
ロキ・ファミリアの本拠地【黄昏の館】にて、今回の作戦の総指揮を任されていたフィンは呟く。それに同意するようにガレスもリヴェリアも腕を組んで唸る。
「確かに僕達の被害は比較的軽微で、闇派閥の主神タナトスも自ら自決し、天界へ還った。けれど」
「
未だにその全容が明らかにされていないエニュオの存在。何一つ奴の素性に関する情報を得られないまま、此処まで来てしまった。
作戦終盤の際に表れた緑肉、アレが神ディオニュソスの送還を契機にしたモノであれば、エニュオの目論見は依然として継続されている事になるだろう。
「そして、エニュオは神タナトス………いや、闇派閥そのものを生け贄にした」
「人の所業ではないな」
これ迄、互いに利用し合う間柄であっても、エニュオ側と闇派閥の間には確かな同盟関係にあった。
一方的に相手を切り捨て、闇派閥諸とも自分達を屠ろうと画策するエニュオの底知れない策謀ぶりに、フィン達三巨頭の背に悪寒が走る。
しかし、そんな彼等の不安を吹き飛ばすように主神ロキは不敵に笑う。
「しかし、そんなエニュオにも誤算があった」
そう、あの時、人造迷宮でディオニュソスが天へ送還され、緑肉が溢れた時。奇跡は起きた。
恩恵を失い、只人に成り下がったディオニュソス・ファミリアの眷族達。一般人並みの身体能力では決して逃れられない緑肉の津波から、最低限の被害で抑えられた。
闇派閥も同様、邪神タナトスの恩恵から外された者達はどういう訳かガネーシャ・ファミリアの団員達の前に送られ、現在は奴等の全員が独房にぶちこまれている。
こんなデタラメな奇跡を力技で成し遂げられる奴なんて、世界広しと言えど一人しかいない。
ベジット。
ヘスティア・ファミリアの団長にして最強のLv.1。どんな手品か魔法かは知らないが、今回の奇跡に彼が関わっているのは間違いない。
(恐らく、ベジットには空間に干渉するスキルが発現しているのだろう。【凶狼】が時間に干渉するスキルを持ち合わせている様に)
気付けばディアンケヒト・ファミリアやガネーシャ・ファミリアの下へ送られていた。一人や二人だけでなく、敵味方問わず十数名から聞かされた同一の聴取の内容。
ここまで証言が揃っていれば、フィンだけでなくとも流石に気付く。
ベジットには、点から点へ移動する転移のような移動手段がある。
(“空間”の団長に“時間”の副団長か。やれやれ、トンでもない派閥が出来たもんだ)
座っている椅子の背凭れに寄りかかり、フィンは天井を見上げる。
空間と時間に干渉するスキルとか、そんなの
いや何人かは似たような奴はいたかもしれないが……それでもあくまで似ている程度。ベジットやベートの様なスキルとは根本的に違う筈。
改めてベジット達のデタラメ具合に肩を竦める。
「あん時、
「だが、そんなエニュオの目論見は外れ、被害は最小限に抑えられ、ワシ等も生き延びた」
タナトスの矜持とフィン達の日頃の鍛練の賜物で、あの緑肉から逃れられる事が出来た。
その途中、一瞬だけ危ない場面がフィンを襲ったが、その刹那の間も
第一次の攻略作戦で大きな代償を支払う事になったが、同時に残された者もまた多い。
「……だが、分からないのはディオニュソス・ファミリアの眷族達だ。幾ら慕っている主人が天へ送還されたとは言え、ああも心神喪失するものなのか?」
リヴェリアの口から零れた一言。
現在、ディオニュソス・ファミリアの面々は主神が天へ送還された事へのショックが大きかったのか、彼等の全員が現在ディアンケヒトの所で療養している。
団員の殆どの目が虚ろとなり、呂律も回らない状態になっている。
主神の送還による弊害か、心神喪失とも呼べる彼等の現状にリヴェリアは不思議でならなかった。
「………それについて、ディアンケヒトの守銭奴から気になる話が出てきた。ディオニュソス・ファミリアの子達、もれなく全員が重度の酩酊状態にあると診断されたらしいわ」
「………なんだって?」
酩酊状態。ディオニュソス・ファミリアの眷族達は皆酷く酔った状態であったと、ディアンケヒトを通してロキは言う。
「その件について、ウチはこれからディオニュソスの
「了解した」
そういって、ロキはガレスを伴って執務室から出ようとした矢先。
女子棟の方から、少しばかりの喧騒が聞こえてきた。。
その音に心当たりのあるフィン達は互いに顔を見合わせて。
「………先ずは、此方の問題を片付ける所から始めよか」
フィン達は先ず騒ぎの発端の場所である食堂へ向かった。
◇
レフィーヤにとって、フィルヴィス・シャリアというエルフの女の子は、アイズやティオネ達よりも身近で、頼れる冒険者だった。
自身の素性はあまり語らず、けれど彼女は自身の在り方を誰よりも行動で示してきた。
モンスターに襲われ、動けなくなった冒険者を助け、困っている人を見捨てず、常に誰かの為に行動してきた。
嘗てはディオニュソス・ファミリアの一員であると明かし、それ以降は決して他者に寄り添わず、レフィーヤの前にも極力姿を現さなくなった。
『私は………穢れているから』
そういって自らを“
『それは違います!!』
レフィーヤは、自ら穢れていると貶すレフィーヤをそんな事はないと断じた。貴女は美しい、貴女は穢れてなんかいない。そう語る嘘のないレフィーヤの言葉と瞳にフィルヴィスは目を丸くさせて……微笑んだ。
美しい人だった。夜の空の様な長い黒髪に白い肌、神々が【
『ありがとう』
そういって、笑みを浮かべながら緑肉に取り込まれる光景が、レフィーヤの目にしたフィルヴィス・シャリアの最期の姿だった。
◇
「………さて、そんじゃあもう一度情報の擦り合わせをしておこうか。俺が人造迷宮で踏ん張ってた間、何が起きたって?」
一方その頃、ヘスティア・ファミリア本拠地【竈火の館】の執務室にて。
副団長であるベートからの報告を耳にしたベジットは、自身の聞き間違いであることを信じてもう一度聞き直した。
「ベル達、色々あって深層に落ちた」
「モルドとか、【疾風】と一緒に深層に落ちて」
「
「はしょりすぎてない???」
報告してくるベートもヘスティアも、既に頭がパンク寸前なのか、有り金全てを溶かした人間の様な顔をしている。
聞くところによると、下層付近で冒険していたベル達は、例のごとくダンジョンの
モルド達は
けれどそこで今回の異常事態の原因足るダンジョンの白血球ことジャガーノートと遭遇。限界に限界を超え、何とかジャガ丸を撃破。
流石のリュー・リオンも疲労困憊で、ベル達も死屍累々な状態。そこへ人造迷宮攻略から直で探索に出ていたリド達異端児とアルフィア、リリルカ・アーデが合流。
全員無事に帰還を果たし、現在はディアンケヒト・ファミリアで療養中との事。
「……濃すぎない?」
受け取った報告書に目を通してもにわかには信じがたい内容だ。
そして何が一番信じられないって、ベル達新入り組がもれなく全員ランクアップ可能という事。
いや、そりゃあLv.2やLv.1が深層から生還すればそりゃ偉業認定入るだろう。期間は兎も角として内容的にはヴェルフや春姫は分かる。
一緒にダンジョンに潜っていた桜花、命、千草もランクアップは確実。オグマ達も階層主の撃破を成し遂げた事で長年の夢である
意味が分からないのはベルだ。この男、つい先日Lv.4になったばかりなのにもう次の昇格が可能になっている。
ステイタスこそ完熟していないのでランクアップこそしないが、前回のアステリオスの一件からまだ1ヶ月程度しか時間は経過していない。
早すぎるベルの成長ぶりにベジットは頭を抱えた。
そりゃあ、ベートもヘスティアも表情が崩れる訳だ。ザルドもアルフィアもちょっと引いているし、マジで今回は色々とイレギュラーが過ぎる。
「………取り敢えず、ベル達にはゆっくり休んで貰お」
「………うん、そうだね」
取り敢えず全員生きて帰って来たことを喜び、巻き込まれたモルド達には後日詫びの品を用意する事にしよう。
さて、ベル達の事は一先ずこれで言いとして、
逸らしていた問題、反対側のソファーに座る
「さて、詳しい話を聞かせて貰おうか。フィルヴィス・シャリア」
ベジットの対面には畏縮したフィルヴィスが気まずそうに肩を縮めていた。
用意された紅茶は、既に冷めきっていた。
Q.はしょりすぎてない?
A.はしょりました。ベジットが人造迷宮攻略中、ベル君達は遠征の用意もなく深層へ大分。
多分深層深くで眠る奴がなんかしたのでしょう。
強化されたベル君達やモルド達、Lv.6のリュー・リオンがいても中々にシンドイ冒険劇。
事前に春姫に魔道書を読ませて魔法を進化させていなかったら、普通に詰んでいたかもしれない、そんな冒険。
Q.リュー・リオンは……惚れた?
A.惚れないリュー・リオンはリュー・リオンじゃないと思う。
Q.アルフィアマッマは?
A.流石に息子の一大事に其処まで気にしてはいられなかった。
後日、ゴスペルします。