ダンジョンに超なアイツが来るのは間違いか?   作:アゴン

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物語146

 

 

 

 ────第一次人造迷宮(クノッソス)攻略作戦終盤。

 

 この時、レフィーヤ・ウィリディスは危機に瀕していた。

 

 団長であるフィンの前線を一時下げるという指示の下、来た道を引き返すレフィーヤの前に現れたのは、襲い掛かる人喰花の群れと自爆特攻要員の闇派閥の構成員達だった。

 

 危機的状況だが、レフィーヤもこれまで幾度となくそんな危機的状況から生き残ってきた冒険者で、彼女の周囲を固めるロキ・ファミリアの面々もまた強かな冒険者であった。

 

 迫り来る人喰花を複数人で対応し、レフィーヤが魔法を撃って撃滅する。同伴していたディオニュソス・ファミリアの団長(アウラ)がその光景に唖然としていると、砂塵の中から人影が現れるのを目にした。

 

 砂塵の中から現れるのは、白い仮面を被った怪人。先日のロキ・ファミリアが遠征の際に遭遇したとされる穢れた精霊側の主戦力。

 

 奴の狙いはレフィーヤだと、迫り来る刹那の合間に察したアウラはレフィーヤを体当たりで突き飛ばす。

 

 突然の衝撃に驚きながらレフィーヤが振り返った先で見たのは、頸と胴が分かたれるアウラの姿だった。

 

「アウラさんッ!!」

 

 光を喪った眼がレフィーヤと重なる。次の瞬間、人喰花がアウラだったモノへ殺到し、肉を噛み砕くおぞましい咀嚼音が辺りに充満する。

 

 突然の悲劇。しかしそれでも動揺より怒りが勝ったレフィーヤは、瞬時に詠唱を開始。同じ班の【貴猫(アルシャー)】のアナキティ・オータムが前衛を務めようと前に出る。

 

 猫の獣人特有の敏捷(スピード)、それに“気”の力も合わせて分身に似た撹乱技(写し身)を披露するが……。

 

「鈍い」

 

「ガッ!」

 

「アナキティさん!?」

 

 白仮面には通じず、本物と見切ったアナキティの腹部を蹴り飛ばし吹き飛ばす。

 

 思わぬ白仮面の強さ、そのまま懐に飛び込んでくる奴にレフィーヤは目を見開く。

 

 手刀が迫る。怪人の膂力をもってすれば容易く人を切り裂く怪物の手。

 

 間近に迫る死を前にした……その時だ。

 

「させんッ!」

 

「ふぃ、フィルヴィスさん!?」

 

 突如頭上から現れた黒い仮面と外套に身を包んだエルフ、フィルヴィス・シャリアが片手剣を手に割って入る。

 

「フィルヴィス・シャリア、まだ生きていたか。忌々しい奴!!」

 

 白仮面が激昂する。激しい怒りと憎悪の発露にレフィーヤ達は絶句する。

 

「あの御方から逃げ出しておいておめおめと、良い機会だ。ここで引導を渡してくれる!!」

 

「私はまだ死ぬわけにはいかない。止めさせて貰うぞ!!」

 

 瞬間、白と黒の剣撃が人造迷宮を彩っていく。Lv.3(中堅)のレフィーヤの動体視力では追い付けない程に速く、凄まじい攻防。

 

 今まで見たことない彼女の本気にレフィーヤはただ圧倒されていた。

 

 しかし、一見互角に見えていた均衡も途端に崩れ、白仮面の無造作な腕の薙ぎ払いで吹き飛ばされる。

 

「ぐっ」

 

「フィルヴィスさん!」

 

「来るなレフィーヤ!!」

 

 駆け寄ろうとするレフィーヤを声を上げて制止する。

 

 その瞬間、人造迷宮全体を揺さぶる衝撃がレフィーヤ達を襲う。突然の足場が揺さぶられるような衝撃に踏鞴を踏むレフィーヤ、一体何が起きたのかと動揺を隠せずにいると、周囲の人間───ディオニュソス・ファミリアの眷族達から慟哭に似た呟きがこぼれ落ちる。

 

「あ、あれ? 体が……重い?」

 

「き、急に辺りが暗くなった! 何も見えないぞ!?」

 

「いやぁ、なに、なんなのよぉぉっ!?!?」

 

 突然、自分達の体から力が抜け落ちていく。その感覚に嫌な予感を感じたレフィーヤがまさかと眼を見開いた。

 

 そして、そんなレフィーヤの予感を裏付けるように、白い仮面の怪人は喉奥をクックッと鳴らす。

 

「いつぞやの神が送還されたか。女神(ロキ)かそれとも男神(ディオニュソス)か」

 

 それだけ呟いて白い仮面の怪人は迷宮の奥へ姿を消した。

 

 嫌な沈黙が降りてくる。

 

 神の眷族は神から恩恵を刻まれ、一般的な人間とは隔絶した力を有する事になる。肉体を鍛え、精神を鍛え、それに比例して眷族達は強くなる。

 

 だが、逆を言えば神との繋がりを喪った眷族は恩恵も剥奪され、その力を失う。何年にも渡って培ってきた眷族としての研鑽が根刮ぎ奪われるのだ。

 

 そして、それによる被害の大きさは嘗ての大抗争の時に証明されている。眷族の………いや、全ての冒険者が絶対に許してはならない最悪な諸行の一つ。

 

 しかし、その最悪が今この場で起きてしまった。神との繋がりを絶たれ、恩恵を喪ったディオニュソス・ファミリアの眷族達。

 

 自分達が慕う神の送還に嘆くのも束の間、人造迷宮の奥から神の送還によって起動した緑肉の津波が押し寄せて来る。

 

 モンスターも闇派閥も問わず、迷宮内の全てが呑まれていく光景にレフィーヤ達は背筋が凍った。

 

「撤退、撤退ー!!」

 

 アナキティの鶴の一声で我に返ったレフィーヤ達が反射的に指示に従う。最硬金属製(オリハルコン)の扉まで退却する為、ロキ・ファミリアの面々は一斉に駆け出した。

 

 ディオニュソス・ファミリアを置き去りにして。

 

 迷宮……いや、切羽詰まった危機的状況に於いて、最も恐ろしいのはモンスターではない。

 

 救いを求めて差し出してくる人間の手であると、フィン達は言う。

 

 一つの手を掴めば二つの手が、二つを掴めば四つの手が、救いを求めて再現なく冒険者達を求め、引きずり込んでいく。

 

 助けを求める彼等の悲鳴を無視して、耳に蓋をして恨みの声から逃げるように駆けていく。

 

 しかし、そんな中一人だけ足を止める者がいた。

 

 フィルヴィスだ。彼女だけは、押し寄せる緑肉を剣圧で吹き飛ばしながら、恩恵を失ったディオニュソス・ファミリアの眷族達を拾っては扉の向こうへ投げ飛ばしていた。

 

 しかし、そんな事をすれば自身が逃げ遅れるのは当然の事で。

 

「フィルヴィスさん!!」

 

 レフィーヤの叫び声が聞こえてくる。そんな彼女に向けて最後の一人を投げ飛ばし、彼女に託す。

 

 助けられる者は全て助けられた。扉の向こうまで吹き飛ぶレフィーヤを見て自分はやり遂げたのだと満足したフィルヴィスは、最後に彼女に向けて礼を口にした。

 

「ありがとう」

 

 こんな私を綺麗だと言ってくれた同胞。美しく、優しく、自分には勿体無い最高の友達。

 

「ありがとうレフィーヤ、私と友達になってくれて」

 

 扉の前で涙を流す彼女。扉が閉じられ、これで完全に自身の逃げ道が失ったと悟ったフィルヴィスは最後に押し寄せる緑肉の津波に向けて剣を突き立てる。

 

「タダでは死なんぞ」

 

 最後の最期まで足掻くことを決めたフィルヴィスが、迫る緑肉の津波に吶喊しようとして。

 

「おっしゃ! コイツで最後!!」

 

「ふぇ?」

 

 次の瞬間、彼女はとある派閥の本拠地、その執務室に立たされていた。

 

 

 

 

◇

 

 

 

 

「───成る程、【下層決戦】の後の28階層でそんなそんな事があったわけね」

 

「…………はい」

 

 ヘスティア・ファミリアの本拠地【竈火の館】。

 

 執務室から場所を移し、眷族達の憩いの場である食堂にてベジットは目の前の黒髪のエルフ、フィルヴィス・シャリアから28階層の悲劇について聞き、その内容に納得するように頷いていた。

 

「じゃあ、エニュオはアイツ(・・・)で確定したのは良いとしてフィルヴィスくん、君はこれからどうするんだい?」

 

 ディオニュソス・ファミリアが一度は壊滅したとされる28階層での出来事。表向きは異常な頻度の【怪物の宴(モンスター・パーティー)】によるものだとされてきたが、真相はもっと厄介なモノだった。

 

 一先ず元凶の方は今は放っておくとして、問題は目の前のフィルヴィスだ。自分で言っているように、彼女の体は今最悪な形で“穢されている”。

 

 仮に大元である元凶を倒した所で、彼女がその穢れから解放されることはなく、精々が諸とも消え去る運命を辿るだけだろう。

 

 どちらにしても自身の末路は決まっている。ならば自ずと答えもまた決まっているのだと覚悟を決め、己の運命を受け入れたフィルヴィスは真っ直ぐな眼差しをベジットと主神であるヘスティアに向けた。

 

「既にこの身は穢れに満ちている。であればこの命、最期の瞬間まで余さず使いきりたいのです」

 

 迷いなくそう言い放つフィルヴィスにヘスティアは眼を細めた。

 

「………眩しいな」

 

 命の輝き。どれだけ肉体と魂を弄ばれようと、その在り方だけは歪ませないフィルヴィスの芯の強さにヘスティアは心からの称賛を送った。

 

 気が触れてもおかしくない恐怖と狂気の中で、どうして其処まで気高くいられるのか。ヘスティアは下界の人類の底無しな強さに心底感銘を受けた。

 

 それ故に、ちょっとだけ悲しい。

 

 何故なら。

 

「おし、じゃあまずはお前のその穢れから何とかするか」

 

「…………ふぇ?」

 

 今この場には、そんなちゃちな悲劇を根本から粉砕する自他共に認める天下無敵のベジットがいる。呆然となって目を丸くさせるフィルヴィスにヘスティアは手を合わせて合唱。

 

 話を聞いていたザルドは、心を落ち着かせる香りのする特製の茶葉で淹れた紅茶をフィルヴィスの前にソッと差し出すのだった。

 

 フィルヴィスは混乱した。

 

 

 

◇

 

 

 

 

「さて、黒幕が誰か分かった事だし、残された謎はこの壁画だけだな」

 

 その後、ベジットによる紆余曲折(ソウルパニッシャー)を経てフィルヴィスは穢れから解放され、放心状態となった彼女を現在は来客用の部屋(ベッド付き)で安静にさせている。

 

 埋め込まれた魔石が溶けて元凶の力の由来の関係で半精霊と化したフィルヴィス、他の陣営が聞いたらツッコミ所満載の奇跡が起きたのだがそれはそれ。

 

 今ベジット達が頭を悩ませているのは、目の前にあるアストレア・ファミリアの一人が書き記したとされるある壁画の写し。

 

 恐らくはエニュオの意図が最も色濃く描かれている絵なのだろうが、ベジットもヘスティアも何の事だかサッパリだった。

 

 六体の精霊らしき女性像と一体の竜らしきモンスター、恐らくは過去の下界で行われた何らかの儀式を記したモノらしいが、基本的に引きこもりで下界の様子にはノータッチなヘスティアも皆目見当が付かず、またザルドもアルフィアも心当たりはないと言う。

 

 一応ヘファイストスやヘスティアの友神達には訊ねたが、生憎その頃の天界は中々に忙しい時期であった為、誰も知る由は無かった。

 

 唯一知ったのは武神タケミカヅチから聞いた壁画の中央に記された竜の名が“ニーズホッグ”という邪竜であるという事。

 

 遥か古の時代に実在したというモンスター。その強さは凄まじく、当時の世界を絶望のドン底に突き落とすほどの圧倒的な力を有していたという。

 

 強さと言う点で天界に轟く程であることから、同じ強さの概念の位置するタケミカヅチもニーズホッグの名称だけは知っていたとされている。

 

 けれど、その邪竜もどうして下界から姿を消したのか。話を聞けば、このニーズホッグも三大冒険者依頼(クエスト)に並ぶ程の怪物であるには間違いない筈。

 

 その事には恐らくかのニーズホッグらしき邪竜を囲む精霊らしき六体の女性像が関わっているらしいが……ふとベジットは気付く。

 

「まさか、“黒竜の鱗”を触媒にニーズホッグを復活させるとかじゃ……ねぇよな?」

 

「いや、流石にそれは……」

 

 ない。とは、ヘスティアも強く言えなかった。

 

 ヘスティア・ファミリアの中でも一部の者しか知られていない最上級の機密事項。“黒竜討伐済み”とそのドロップアイテムである黒竜の鱗、その情報は限られた者にしか知られていない秘匿情報。

 

 闇派閥がそれを知る筈もないが……事実として黒竜の鱗は奪われている。

 

 しかも、あれから結局黒竜の鱗の所在は分からず、依然として行方不明のまま。加えて、三大冒険者依頼のドロップアイテムとなると、その異様さは他のモノとは一線を画している。

 

 何せ、ドロップアイテムとなった状態でも、他のモンスターを補食、取り込んで復活を果たそうとする埒外の生命力を持っているのは、既にベヒーモスのドロップアイテムが証明している。

 

 黒竜の鱗もそうなのかは分からないが、少なくともニーズホッグ復活の触媒としてはこれ以上ない品物なのは間違いない。故に、ベジットはこれ迄の闇派閥やエニュオの動きからニーズホッグの復活を推察していたが……そうなると、相手側も黒竜の討伐を知っていなければ辻褄が合わない事になる。

 

 現在は“黒竜の谷”はアリス(アリア)の分身体が風印を維持しつつ、あの大陸の管理を務めている。現状彼処に訪れる者はいないし、古くから風印を見守っていたとされるとあるエルフの部族も今のところ動きはない。

 

 尚、そのエルフの部族の存在に近年まで気付かなかったベジットが、知った時はそれはもう死ぬ程焦ったという裏話があるのだが……今は割愛する。

 

 閑話休題。

 

 そういう訳で、ニーズホッグの復活がエニュオの目的では無いことはベジット達の間で確定となった。勿論、可能性も完全には捨てきれないが、連中が黒竜討伐の話を知らなければ説明できない部分がある為、暫定的にそうはならないだろうという事になった。

 

 となればメインは邪竜ではなく、それを囲む精霊らしき六体の女性像。同じ精霊という事でアリスにも訊ねたのだが……。

 

「まさか、アリスまで知らないとはなぁ」

 

「こればかりは予想外だったよ……」

 

 困ったように天井を仰ぐベジットとヘスティア。二人が思い起こすのは精霊という事で一番知っていそうなアリス(アリア)に話を聞こうとした時だ。

 

『うーん、多分この精霊達は私と同じ大精霊に分類される存在だと思うけど……それ以上の事は私には分からないや。元凶の方は何となく分かったんだけどねぇ~……』

 

 ゴメンねと謝るアリスだが、彼女からは元凶の穢れた精霊本体に関する情報が得られたので別に良しとした。

 

 ただ、同じ大精霊のアリス(アリア)でも分からない六体の大精霊の存在。彼女達が何者か分からなくとも、何らかの目的で邪竜を囲んでいるのは間違いない。

 

 問題は、その目的が分からないとエニュオの目論見も不明のままだという事。

 

「もういっそのこと今から俺が出向いて全部手当たり次第にぶち壊してやろうかなぁ……」

 

「止めなよベジット君、それやったら下手したらオラリオが吹っ飛ぶぜ?」

 

 現在、人造迷宮(クノッソス)は緑肉で埋め尽くされており、手出しが出来ない状態だという。

 

 異端児達や事情を知らない冒険者達にギルドからの依頼というテイで今は人造迷宮へ続く掘削作業が行われていると言う。

 

 彼等が道を開けてくれるまで待機というのが今の自分達の状態だが、色々と面倒臭くなってきたベジットが自ら出向いて全部自分が片付けてやろうかと思った程だ。

 

 具体的に言えば、ベジットのスピリッツエクスカリバーで人造迷宮をまるごと輪切り。恐らく配置されているだろう穢れた精霊の分身体を必殺の一振で薙ぎ払うという寸法である。

 

 勿論、そんな事をすればオラリオが根本から吹き飛ぶからやらないが……もしかしたらエニュオはその辺りも含めて見透かしているのだろうか?

 

 それはない……と、思いたい。

 

 これ迄は姿形も見えず、その目論見も何もかも不明だったエニュオ。フィルヴィスからの証言もありその犯人の正体が分かった事は良いが、未だその目的はハッキリとは分からない。

 

 いや都市の破壊者(エニュオ)を名乗る以上オラリオを崩壊させたい事だけは分かるが……。

 

「どうも、それだけじゃない気がするんだよねぇ……」

 

 エニュオの正体を知り、誰よりも納得しているヘスティアがそう溢す。

 

 天界の頃からエニュオ(仮)の事は怖い神だと認識していた。下界に降り立ち、人類と穏やかに接している姿を見て彼もロキと同様に丸くなったのだと思っていたから、今回の件でその疑惑はヘスティアの中でより一層濃く、強くなってしまった。

 

 エニュオはなにかを狙っている。オラリオという街を崩壊させる以外で、世界にとって致命的になる何かを。

 

 しかし分からない。うーんと腕を組んで頭を悩ませているヘスティアとベジット。

 

 しかしどれだけ悩んでも解答は得られず、外で情報を集めてくれているだろうベートとリリルカ達の帰りを待つだけかと思われたその時、二人のいる執務室にノックの音が響く。

 

「お邪魔します。神様、団長、今お時間大丈夫ですか?」

 

「あれ、ベル君じゃないか。今日退院だっけ?」

 

 執務室にやってきたのは、右腕にギプスを巻いたベルだった。先の深層での大冒険を経て、現在はディアンケヒト・ファミリアが運営している病院で入院している彼の登場にヘスティアは目を丸くさせる。

 

「ああいえ、正式な退院じゃなくて、今日は報告書を提出しに来たんです。あ、一応アミッドさんから許可を戴いてるんで、心配しないで下さい」

 

「真面目だなぁベルは。報告書なんてキチンと身体を治してからでも良いだろうに」

 

「いえ、実際は右腕以外何ともないんですよ。ヴェルフも春姫さんも元気で、あと二、三日もすれば退院できるし」

 

 相変わらず真面目な奴だと感心と呆れの半分半分。深層という死地に落とされ、絶対絶命の状況下でそれでも諦めず生還したベルを誇りに思う一方、ベジットはふと気になる事を訊ねた。

 

「今日はお前一人か? 過保護かもしれんがお前はまだ万全じゃないんだ。身体を休めるためにも単独行動は控えろよ?」

 

「はい。リューさんにも同じことを言われて、今回一緒に来てもらったんです」

 

「「…………ん?」」

 

 ベルの口から聞かされる名前にヘスティアとベジットは目が点になる。渡された報告書に視線を落とせば、深層に落ちた際に一時期二人で行動していた時間があり、そこに綴られるラブロマンスみたいな報告書の内容にベジットは嫌な予感を覚えた。

 

 ふと本拠地の出入り口にある門へ視線を向ければ、両腕を組んで仁王立ちしているアルフィアと、彼女の前で酷く狼狽している【疾風】の二人が視界に入ってきたが……ベジットは全力で見なかった事にした。

 

「あれ、団長それって……」

 

「ん?」

 

 玄関口でバチバチな二人を視界の端へと追いやっていると、ベルが例の壁画の写しを見ていたことに気付く。

 

 ヤベ、と思うも同時に今更だと思いながらベジットは適当に誤魔化そうとして……。

 

「これ、『精霊の六円環』ですよね。団長も知ってたんですか?」

 

「………なに?」

 

 ベルの何気ない一言に思考が停止した。

 

 ベジットも、ヘスティアも、ベルの口から出てきた『精霊の六円環』という言葉に二人は目を見開いて固まる。

 

「べ、ベル君。この絵の事……知ってるのかい?」

 

「え? あ、はい。邪竜ニーズホッグを滅ぼした六体の大精霊による『精霊の六円環』ですよね? 昔、お祖父ちゃんから聞かされました」

 

 目をパチクリさせながらそう語るベルに、ヘスティアもベジットも頭を抑えて踞るのだった。

 

 

 

 





Q.フィルヴィスさん、生存確定?
A.ベジットによるソウルパニッシャーで浄化、穢れていた部分は浄化され、本来の力が彼女の肉体で溶け合った為、フィルヴィスさんは前代未聞の半精霊半エルフという種族へ変化。

 フィルヴィス・シャリアの精神はボトボドだ!!

Q.とある部族って?

A.ロキ・ファミリアに属するアリシア某さんの出身地であるとされるエルフの集落。
 彼女の故郷が黒竜の風印を監視する役目を課せられた一族と知ったベジットは、それはもう焦りに焦りまくった。
 なんなら作者も焦った。
 その結果、大抗争決着直後にて黒竜の谷へ風印の様子を見に行こうとしていたエルフ達を丁度見逃してもらったザルド&アルフィアとかち合い、自分達が見に行くからお前達はここで待てというアルフィアの説得に応じ、静観。

 その後、アリスやレオンから風印を見守るエルフの一族の存在を知ったベジットは彼等の協力を仰ぎながら急ぎアリスと一緒に風印のガワ再現計画を発動。
 何とかそのエルフの一族に黒竜討伐済みの事をバレずに済んだ。

 なお、この件はベジットを精神的に一番追い詰めた事件でもある(笑)

 という裏話。矛盾点は許してクレメンス。
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