ダンジョンに超なアイツが来るのは間違いか?   作:アゴン

149 / 153


 漸く雨が止んだ思ったら今度は台風。

 泣きたくなりますね。

そんな訳で初投稿です。


物語149

 

 

 

 第二次人造迷宮攻略作戦。その進捗は驚く程に順調だった。

 

 緑肉により侵食され、儀式の回路そのものとなった人造迷宮。其処から放たれる《精霊の分身(デミ・スピリット)》による一斉砲撃は、召集された冒険者の桁違いな制圧力により無力化されていた。

 

 ロキ・ファミリアの【重傑(エルガルム)】であるガレス・ランドロックが率いる部隊も例外では無かった。

 

 繰り出される四方八方からの魔法砲撃。地水火風の四属性から連なるそれらの波状砲撃を、四人の小人族(パルゥム)が予め渡されていたヘファイストス・ファミリア謹製の対属性布を使った旗を使って悉くこれを捌き、防いで見せる。

 

 丁寧に編み込まれた職人の旗、精霊の砲撃すら防ぐその性能もさることながら、舞うように戦う美神の四兄弟による連携は、正しく無限の連携に相応しい活躍だった。

 

 回廊から再び光が灯る。今度は先行している四兄弟ではなく、後続の部隊に向けて放とうとしている魔法の砲撃。

 

 その起点に赤く輝く無数の槍が、悉く貫き───爆砕。連鎖し、誘爆しながら抉れていく廻廊の外壁。

 

 再生している間は無防備な回廊をガレス達は瞬く間に走り抜けていく。

 

「いやはや、何となく分かってはいたが……凄まじい活躍ぶりじゃのう今時の小人族は」

 

「ハッハッハ! 可愛いのに強いとは至れり尽くせりだな!」

 

 自分達を狙い、追い詰める筈だった迷宮側の仕掛け(ギミック)が悉く潰されていく光景に、ガレスは呆れと称賛を、ヘファイストス・ファミリアの団長である椿・コルブランドは心からの絶賛を五人の小人族へ送った。

 

「……言っておくけどガレスの旦那よォ、アタシはあんな芸当は無理だから期待すんなよ? 精々アタシが出来んのはフィンの補助だ。戦闘の方は其処までじゃねぇから、あんま期待すんなよ」

 

「フィンの補助が出来るだけでお主も大概じゃと思うけどなぁ……」

 

 部隊の中で唯一のアストレア・ファミリアの眷族、【狡鼠】のライラが今の内に釘を刺す。

 

 自分の戦闘力は前の四兄弟や後輩と比べて些かおざなり。斥候や諜報活動等の裏方が本来の自分の活躍の場である事を理解している彼女としては、この場に立っている事が割と本気で納得出来ていなかった。

 

 恐らくは、対立派閥の眷族同士の橋渡し。本来であればロキ・ファミリアとフレイヤ・ファミリアは互いにいがみ合う対立者。

 

 その緩衝材として選ばれたのが、自分なのだろうとライラは何となく理解する。

 

 だけど……。

 

「流石、女神フレイヤの守護者。相変わらず見事な連携ですね。惚れ惚れします」

 

「あ、ハイ」

 

「ウッス」

 

「アザマッス」

 

「ッス」

 

「けれど、まだ少しばかり準備運動が足りていないご様子。これから待ち受けているのは忌々しくも穢らわしい堕ちた精霊(蟲)、もう少し───ギアを上げましょうか」

 

 その目隠し(バイザー)の奥でうっすらと朱い光が灯る。クスクスと小さく嗤う小人族の希望に、ガリバー四兄弟は揃ってそれぞれ抱き合う。

 

「ねぇ誰!? 俺達の後輩をこんなんにしたの!?」

 

「こぇーんだけど! 仮にも精霊を蟲呼ばわりとかこぇーんだけど!!」

 

「誰だ! 勘違い野郎の【勇者】と肩を並べるより万倍マシだと言った奴! 俺だよ!!」

 

「お願い戻って! あの頃の弄り易かった時の君に戻って! お願い!!」

 

「あ?」

 

「「「「押忍! 無駄口スミマセンでした!!」」」」

 

 本来であれば煽り煽られ、ギスギスと冒険者らしい間柄になる筈だった関係性が、立った一人の小人族の少女により変えられていく。

 

 あの女神第一主義である【炎金の四戦士(ブリンガル)】のガリバー兄弟が、まるで舎弟の様に【槍の乙女】の指示に従っている。

 

(まぁ、気持ちは分かる)

 

 以前からもそうだったが、頭角を表した頃からリリルカ・アーデにはどういう訳か逆らい辛かった。

 

 別に嫌悪感や苛立ち等は抱いた事はないし、当時から目上の人には種族問わず丁寧な物腰な彼女に色々と処世術を知るライラとしてもちゃんと出来ている後輩に色んな意味で安堵していた。

 

 けれど何時しか後輩は自分よりも先にLv.6となり、あのフィアナの再来として神々から【槍の乙女(デミ・フィアナ)】の二つ名を賜った時から、彼女から何だか言葉に出来ない“圧”の様なモノを感じ始めていた。

 

 才能豊かなリリルカに嫉妬した訳でもない。なんなら頼もしい後輩だと安心した程だ。本人もその事を鼻に掛けず、寧ろフィアナの再来と呼ばれて困惑していたし、別にその事で気負ったり、増長している訳でもない。

 

 ライラ自身も別にリリルカに嫌悪感を抱いている訳ではない。それは、あの四兄弟もそうだろう。

 

 ただ、何故か彼女には逆らう事が出来ないでいる。

 

 しかも、その事を不快ではなく、寧ろ何処か……懐かしいと感じてしまう自分がいる程だ。

 

「さて、それでは先を急ぎましょう。ライラさん、指示を」

 

「……ハイよ」

 

 兎も角、今はこの猪娘を如何に消耗少なく穢れた精霊の下へ送り届ける為に策を練らねばなるまい。

 

「ったく、頼もしい後輩で私も嬉しいよ」

 

「大変じゃのう、お主も」

 

 苦悩というか葛藤というか、色々と大変そうな小人達ににガレスと椿は少し同情してしまうのだった。

 

 

 

 

◇

 

 

 

 

「「…………」」

 

 本作戦の総指揮の役目を担う事になったフィン。彼が率いる部隊の空気は、アルフィア&リヴェリアの部隊並みに冷たく、殺伐としていた。

 

 その原因となっているのは、二人の獣人。フレイヤ・ファミリア副団長のアレン・フローメルと、ヘスティア・ファミリアの副団長ベート・ローガである。

 

 二人の間に言葉はなく、けれど向けられる殺意は凄まじい。それでも、廻廊の四方から放たれようとしている魔法砲撃を、起こった瞬間(・・・・・・)流石の実力といえた。

 

「だ、団長……」

 

「あまり情けない声を出さないでくれ。気持ちは分かるけども」

 

 二人の殺気に当てられ、ガクブルと震える団員達。協力しているヘファイストス・ファミリアまで恐怖で身を竦ませては、流石に無視は出来なかった。

 

「………あー、申し訳ないが二人とも。仲良くしろ、なんて口が割けても言わないが、せめて殺気を和らげる事はして貰えないだろうか。このままでは精霊の分身(デミ・スピリット)と戦う前に疲弊してしまう」

 

「あぁ? 何を寝惚けた事を言っている」

 

「この程度で疲弊する雑魚なんざ居ても無駄死にを晒すだけだ。とっとと帰らせろ」

 

「うーん、とりつく島もない」

 

 互いに辛辣な言葉を浴びせてくるが、二人の……特にベート・ローガの言っていることは間違ってないので、フィンとしても反論する事は出来なかった。

 

 相手は、オラリオの破壊をこれまで誰にも知られずに計画を進め、闇派閥の残党すら切り捨てる怪物。

 

 人類とは視点の高さからして異なっている神の手腕に対抗するには生半可な実力では不足。

 

 特に廻廊の奥で待ち構えている精霊の分身はそんな甘さが通用する相手ではない。

 

 ベート・ローガの言うことも最もだが……二人のレベルは共にLv.7。オラリオの上澄みの人間が出す殺意は周囲の人間にとっては猛毒に近しい。

 

 それ以前にお前ら副団長なんだから、もう少し外面良くしろよと思わなくもない。

 

「そもそも俺はフレイヤ様の命令で来ているだけに過ぎねぇ。テメェやそこの犬ッコロの下に付いた覚えはねぇ」

 

「別にテメェ如きの助けも必要ねぇんだがな。突っ走る事しか脳がねぇ猫は、さっさと奥行って死んでこい」

 

「あぁ?」

 

「おぉ?」

 

 いがみ合う両者。相変わらずな二人に頭を抱えたくなるフィンだが、それでも敵側に動きがあった時点で即座に対応、無力化してくれるのだから無下には出来ない。

 

(ヘスティア・ファミリアって、本当に癖の多い団員が多いなー)

 

 そもそも、団長がLv.1の時点で色々とおかしいのがヘスティア・ファミリアだ。自分達の派閥も大概だが、それでもヘスティア・ファミリアの異質さを改めて痛感するのだった。

 

 

 

 

◇

 

 

 

 

 長い廻廊も漸く終わりが近くなってきた。

 

 緑肉に侵食され、穢れた精霊の一部となり果てた魔力回路と化した廻廊。至る所から放たれる魔法の砲撃を外壁ごと削りながら進むこと数分。

 

 大した被害も損害もなく、オッタルとザルドが加わっている部隊は他の部隊と同様、或いはそれ以上に順調に進んでいた。

 

「さて、そろそろ目的の場所か」

 

「ザルド、今回は俺に譲って貰うぞ。例の精霊は俺が狩る」

 

「それは別に構わんが……」

 

 今回、ザルドは女神ヘファイストスが打ってくれた大剣《傾国》をただの置物にしたくない一心で参加したに過ぎない。謂わば単なる気紛れ、別に目の前のオッタルを肩を並べて戦うには不足と思わないが、本人が一人でヤるつもりなら特に文句ない。

 

 だが、今回の作戦の主導はあくまでロキ・ファミリア。総指揮を担っているフィンもそうだが、今回の部隊の指揮を任されているのは背後に控えている【貴猫】のアナキティだ。

 

 客将としてあまり好き勝手はせず、自重する意思を見せるついでにアナキティを一瞥する。

 

 するとザルドの意図を察したアナキティは頷き、改めて部隊の面々に任務の確認と檄を飛ばそうと後ろへ振り返った時。

 

 ガコンッ。そんな音と共に突如としてレフィーヤ達の足下の床に穴が空いた。

 

 人造迷宮特有の人工的な落とし穴。唐突に起動した罠に面喰らうのも束の間、落ち行くレフィーヤ達へアナキティは手を伸ばそうとするが……届かない。

 

「レフィーヤ! みんなぁッ!!」

 

 瞬く間に遠くなっていく悲鳴。アナキティの選択肢に自分達も後を追う項目が浮かび上がるが……それはダメだと冒険者としての直感が囁いている。

 

 今の自分達が精霊の分身を放置すれば、精霊の六円環の儀式は阻止できない。儀式を止める方法は一体の分身を倒せば防げるのか、それとも全て倒さなければ止まらないのか、それすらも分かっていない状況。

 

 此処でレフィーヤ達を追って戦力を減らす処か無くしてしまえば、六円環を止められる可能性は限りなくゼロになってしまう。

 

 残酷な迄の選択肢を前にアナキティは決意する……が、それよりも前にザルドが彼女の肩に手を置いて。

 

「其処まで悲観する事はあるまい。要は全て手早く終わらせて、後で合流すれば良いだけの話だろう。どうせ、精霊の分身はコイツ(オッタル)一人で相手するだろうし」

 

 言外に気にせず後を追えと促してくれるザルドにアナキティの心は少しばかり救われる。

 

 しかし、そんなザルドの言葉に甘える訳にはいかないと、アナキティは首を横に振る。

 

「……ありがとうございます。ですが、私もこの部隊を任された責任がありますので」

 

「………そうか」

 

 若い冒険者が覚悟を決めたのなら、これ以上なにかを言うのは無粋だな。そう思いザルドはアナキティの肩から手を引き、先へ行く。

 

「………丸くなったな」

 

「幸せ太りかもな」

 

 オッタルの揶揄染みた皮肉も、ザルドは笑って聞き流す。

 

 そうじゃないとツッコミながら、後から付いてくる冒険者達を一瞥し、オッタルも行く。

 

 精霊の分身のいる広間まで後少し、決戦まで後わずか。

 

 

 

 

◇

 

 

 

 

 暗い闇の底、人造迷宮の名残である典型的な落とし穴へ落とされたレフィーヤ達。

 

 彼女達の前には、先の廻廊同様に真っ直ぐ続く一本道が広がっていた。

 

 明らかな罠。けれど未だ空を自在に飛ぶ術を身につけていないレフィーヤ達には選択の余地は無かった。

 

 今、現在進行形で戦っている仲間達。彼等に急ぎ合流する事を目標に、冒険者達は前に進む。

 

 そして廻廊の奥、広い空間でレフィーヤ達を待っていたのは……。

 

「あなたはッ!!」

 

「来たな、冒険者」

 

 薄暗い空間にて、一際目立つ白の仮面。

 

「良く来た。そして死ね」

 

 仮面の奥から滲み出てくる憎悪、それを一切隠そうとせず、白仮面の指先から白迅の雷撃が降り注がれる。

 

 

 

 





今回、ベジット出番無し。

Q.進行速度が一番速い部隊は?
A.リリルカ&ガリバー四兄弟のいる部隊ですね。
 変にギスッたりしないし、部隊が一丸となっている為安定感もあります。

Q.リリさんガリバー四兄弟と仲が良いの?
A.四兄弟の長男が槍の扱い方を教えたりしてくれたので、恩義はあっても嫌悪感はありません。
 女神一筋であり女神の絶対的な守護者を貫く彼等の在り方にリリルカ本人もリスペクト持っています。

「流石は音に聞こえし【炎金の四戦士】。その忠義、見習いたいものです」

「「「「ウッス、アザッス」」」」

「完全に女番と舎弟の仲ではないか」

「これ椿、余計な茶々入れるでないわ」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。