ダンジョンに超なアイツが来るのは間違いか?   作:アゴン

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 今更ですが、まだ本作はプロローグの段階です。

……いや長すぎるな。

そんな訳で初投稿です。


物語15

 

 

 

 戦場と化したオラリオ。都市部から少し離れた郊外に簡易の避難所に送られた市民達、その中には零細派閥のヘスティアも含まれており、聞こえてくる戦闘の音に怯える人類に可能な限り寄り添い続けた。

 

 神の恩恵を受け、神の眷族となってダンジョンで活躍する冒険者達は、神の恩恵を受けていない一般市民達とは力の差が雲泥のモノとなる。

 

良く言えば英雄的。悪く言えば……極論、ダンジョンのモンスターと遜色のない脅威である。そんな冒険者と同じ神の恩恵を受けた闇派閥の争いは力のない大衆にとって恐怖以外の何者でもない。

 

 けれど、彼等は知っている。自分達とは違い力を持っている冒険者達もまた恐怖を知る人間で、日夜命懸けで戦っているという事を。

 

大抗争。一度はオラリオを火の海に沈め、小さくない犠牲を出した災厄。人により課せられた絶望を、今度は人の力で乗り越えて見せると、冒険者達は誓った。

 

 同じ人間相手に殺し合いをして、痛みと怖さを知りながら耐えて戦う彼等を、人々はもう一度信じる事に懸けた。

 

「大丈夫、怖くない。怖くない!」

 

「アストレア・ファミリアの人達も戦っているんだ! せめて、戦いが終わるまで耐えるんだ!」

 

 戦いの音が近くで聞こえる度に、子供が悲鳴を噛み殺す。闇派閥に自分達が知られちゃいけないと、せめてもの勇気で耐えようとする。

 

 そんな人類を痛ましく思いながら、それでも見守るヘスティアは………ふと、一人の少女を見た。

 

幼く、そして手錠の嵌められた小さな女の子。その周囲にはLv.1であるが故に民衆の護衛として割り当てられたガネーシャ・ファミリアの眷族達が、少女を中心に固められている。

 

 その少女を見て、ヘスティアは思い出した。彼女はあの大抗争の日、自爆要員の一人として割り当てられた闇派閥の一人のなのだと。

 

 何故そんな彼女がここにいるのか、恐らくは避難所を振り当てられた際に、人数制限か何かに引っ掛かり、此方に来たのだろう。

 

 この事が周囲にバレたら暴動が起きてしまう。その事を危惧し、戦っている眷族達の事を考えて一度は見て見ぬフリをしようとしたヘスティアだが……。

 

「っ」

 

 出来なかった。虚ろな顔で、絶望のただ中にいる孤児を見捨てる。そんな選択肢をヘスティアが取れる筈もなかった。

 

 誰もが怯え、踞る。そんな中でただ一人、ヘスティアだけは立ち上がり、少女に向けて歩み寄った。

 

「へ、ヘスティア様?」

 

「いかがなされましたか?」

 

 此方に気付いたガネーシャの眷族が一斉に振り返るが、ヘスティアはシーッと彼等に騒がないよう促す。

 

ヘスティアの意図が分からないまま、少女へ近付いていく彼女を見て、眷族の一人が止めようと動く。

 

恩恵もなく、身体をくまなく調べた事で既に少女には何かを出来る余力はない。が、それでも闇派閥に与していた以上、神を近付けさせる訳にはいかない。

 

「よせ、手を出さない方がいい」

 

「で、ですが先輩、あのままではヘスティア様が……!」

 

 しかし、そんな眷族の行動を先輩と呼ばれたガネーシャの眷族が制止させる。本来なら後輩の言うことが正しい、だが邪神に唆され、都合の良い使い捨ての爆弾とされた少女に何も思わない訳ではない。

 

団長に知られたら説教では済まない勝手な行いだが、それでも少女に近付く女神に期待せずにはいられなかった。

 

 そんな彼等の気持ちを知ってか知らずか、竈の女神は少女の隣に腰を下ろす。

 

「やぁ、随分と暗い顔をしているけど、大丈夫かい? お腹減ってるのかな?」

 

「─────」

 

 努めて明るい口調で話し掛けるヘスティアだが、その言葉が少女に届くことはない。虚ろな眼で地面を見つめ、ブツブツと何かを呟いている彼女に、それでもヘスティアは諦めずに語り掛けた。

 

「実は僕、乾パンを持ってるんだ。本当は隠れて食べる所だけど………君だけに特別だぜ、半分こに分けて二人で戴こうじゃないか!」

 

 明らかに空回りの空元気、それも少女には届いておらず、差し出されたパンを一瞥するだけ。

 

それでも心を開かない少女に、ヘスティアは敢えて地雷を踏むことにした。

 

「────ねぇ、どうして君は闇派閥にいたの?」

 

 小さく、それでいて少女にだけ聞こえるように伝えると、少女は分かりやすく肩を震わせる。

 

「ゴメンよ、辛いことを聞いて。でも知りたいんだ。どうして君がそんな事をしようとしたのか。どんな思いでそうしようと思ったのか」

 

「どう………して?」

 

 漸く反応を見せた少女。どうして自分に拘ろうとするのか、揺れる瞳で見上げてくる少女に。

 

「これでも僕は女神だからね、自己満足でも人類(子供達)には寄り添ってあげたいんだ」

 

 ヘスティアは微笑んだ。傲慢だと、神故の驕りだと、謗るものはそう罵倒するだろう。

 

それでも、彼女の気持ちから逃げ出したくない。そんな女神の神意に触れた少女は、ポツリポツリと言葉を漏らす。

 

「────パパとママ、死んじゃったんだ」

 

「うん」

 

「会いたいけど会えなくて、でもタナトス様が会わせてくれるって、天国で………パパとママに会いたくて」

 

「うん」

 

 機械的だった少女の口調が、嗚咽混じりになっていく。

 

「いけない事なのは分かってた。でも、寂しくて、苦しくて!」

 

「うん」

 

そんな少女の独白を、ヘスティアはただ静かに聞き入れた。

 

「ごめんなさい。迷惑を掛けてごめんなさい。我が儘言って、ごめんなさい!」

 

 きっと、この子は聡い子だったのだろう。両親が死んで心が追い付かず、聡いが故に邪神に付け込まれた。天国で両親に会わせてやるという、都合の良い餌をちらつかせて。

 

「……ねぇ君、今でもパパとママに会いたいかい?」

 

 少しの沈黙、けれど頷いてくる少女にヘスティアはそっかーと応え、少しばかり考えた。

 

「じゃあさ、少しばかり先送りしようぜ。君が天国に逝くのは、君がするべき事をしっかりやり遂げてから、て事でさ」

 

「私の、するべき事?」

 

 涙を流し、鼻水を啜りながら見上げてくる少女にヘスティアは笑みを浮かべた。

 

「幸せになる事。君が成長して、大人になって、好きな人が出来たりして、その人と家庭を持って子供を作ったりして、君なりの幸せを手に入れるんだ」

 

 勿論、冒険者になって未知を踏破していくのもいい。幸せは人の形それぞれ異なる。自分だけの幸せを見つけていくのだと、ヘスティアは語る。

 

「どうして?」

 

「だって、その方が天国のパパとママとお話がいっぱい出来るじゃないか」

 

 ニカッと、満面の笑みを見せるヘスティアに少女は目を見開いた。

 

「天国には何時だって逝ける。でも、それは今じゃない。君が幸せになって、人として生き抜いたその果てに辿り着く所さ」

 

「私……」

 

「うん?」

 

「私は、幸せになっても、いいんですか?」

 

「当たり前さ」

 

 微笑み、包んでくる女神に少女の涙腺が決壊した。声を上げて泣きじゃくる少女に、周囲の人々は驚くが、女神の姿を見て何かを察し、皆見ないフリをしている。

 

 これから少女は辛い時期が待っている。いつか彼女を闇派閥の一人だと知った心ない者が、後ろ指を差してくるかもしれない。

 

けれど、それでも少女は自身が幸せになる事を諦めはしないだろう。いつか来る終わりの日、笑顔で両親に会いに行く為に。

 

「───やっぱ、神様って凄いや。ねぇ先輩」

 

「いかんな」

 

「先輩?」

 

「雨が降ってきた」

 

 相変わらず曇天だが、雨が降ってくる気配はない。何を言っているのだと、先輩の横顔をみるとその頬を確かに雫が滴り落ちていた。

 

妙にカッコつけた言い回しだが、ここは女神の包容力に免じてツッコムのは止めようと、後輩はそれからも自身の職務に全うした。

 

 尚この三秒後に極太(ごんぶと)ビームが放たれ、オラリオの暗雲やらモンスターやらがまとめて消し飛ばされ、情緒も糞もない澄み渡る青空がオラリオを照らすが、それは別のお話。

 

「色々台無しだよベジット君!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさかこんな形でダンジョンに潜るなんてなぁ、感慨深いというより、複雑だぜ」

 

 ダンジョンの18階層。以前までは楽園と呼ばれ、冒険者達からは数少ない憩いの場として知られる休憩地点。

 

 森林や、人でも食べられる植物が自生している自然豊かな場所とは既に面影はなく、ただ燃え盛る地獄だけが広がっていた。

 

 その地獄に降り立って尚、逆立った黒髪の男───ベジットは笑みを絶やさずにいた。

 

 武器を杖代わりにして膝を突くガレスは、ベジットの背を見上げる。

 

「お主、ベジットだな! 何故お前がここにいる!? 地上は、上の戦いはどうした!?」

 

本来有り得ない筈の増援につい声を荒らげてしまうが、言われた本人は大して気にした様子もなく、血を流して呼吸を荒くさせるガレスに、しまっていた小瓶に入った薬を投げ渡した。

 

万能薬(エリクサー)だ。もう1本あるから、先ずはソイツを飲んで落ち着いてくれ。地上の方は心配すんな。小樽さんがザルドを倒して、戦況はこちら側に一気に傾いた」

 

「そうか、オッタルがやったか! ………ん? 小樽?」

 

 地上の様子を教えられ、気持ちに余裕が生まれたガレスは万能薬を一気に飲み干すと、更に渡してきたもう1本を受け取り、浴びるように自身にぶっかけた。

 

 一瞬何をするんだと目を剥くベジットだが、次の瞬間瞬く間に傷が癒えていくガレスの体を見て、そういう使い方もあるのかと感心の声を溢す。

 

「だが、生憎とまだ地上には余裕がない。闇派閥への追撃もあるし、比較的余裕のある俺が援軍として駆け付けたって訳だ」

 

「それもフィンの指示か?」

 

「────そんな所だ」

 

 嘘である。 この男、地上の戦いが佳境を超え、オッタルがザルドを下して戦局が此方に大きく傾いた事を良いことに、ドサクサに紛れて単独行動を行っているのだ。

 

 闇派閥も何だか恐慌状態だし、戦局的にはもう揺らぐ事はないだろう。そう判断しての独断だが………バレたら何かしら言われるんだろうなぁ。

 

しかし幸いなことに、ロキ・ファミリアのガレスはそこまで細かいことに拘らない人物だったらしい。ベジットの言動を怪しく思うも、そこに悪意が無いことは長年の冒険者としての経験で分かっている様で、フンッと鼻息を飛ばしてもそれ以上追及してくる事はなかった。

 

「フンッ、まぁいいだろう。お前さんの強さは一瞬だけだが目にしている。此処は連携し、奴らを早急に叩き潰すぞ」

 

「いや、それには及ばねぇ」

 

 目の前に佇む四つの影、何れもこれ迄確認されたことの無い未知のモンスター。スケルトン系譜で地上に現れたスカル・シープと特徴が似ており、それはまるで装甲に覆われた恐竜の化石の様だった。

 

体高は見積もって3M(メドル)、鋭い尾は4Mといった所か。

 

明らかに知性を持つモンスター、此方を見据えて警戒心を顕にしている奴等はこれ迄の化物とは明らかに異なり、その性質はどちらかと言えば黒竜に近いナニかを秘めていた。

 

 尤も、アイズとリヴェリアが相手をしているデカブツの方が異質っぽいが。

 

「アレ等の相手は俺がやっとくから、ガレスのおっちゃんは向こうの二人を守ってやってくれ」

 

「なんだと?」

 

「特にアイズが不味い、あの調子で暴れたらすぐにガス欠になっちまうぞ」

 

 言われてガレスは二人を見ると、確かにアイズの動きが見るからに悪くなっている。リヴェリアはそんなアイズのフォローに掛かりきりでマトモに連携を取れていない。

 

「今ここで馴れていない奴と連携した所でたかが知れている。………大丈夫さおっちゃん、俺があの程度の相手に死にやしねぇよ」

 

「しかし……!」

 

 ベジットの言うことは確かに正しい。ザルドを一蹴する彼ならば、目の前の四体もの破壊者を相手にしても生還出来るかもしれない。

 

しかし、冒険者の先達として、一人の後輩に重荷を押し付けるのは気が引ける。そんなガレスの心境を察してか。

 

「ここは後輩に譲ってくれよ、先輩」

 

 挑発するような物言いと不敵な笑みを向けてくるベジットにガレスは一瞬だけ目を剥き、吊られて笑った。

 

「直ぐに向こうを片付ける。死んだら承知せんぞ! 生意気な人間(ヒューマン)!」

 

 跳躍し、向こうのデカブツに斬りかかるガレスを見送ったベジットは、改めて四体の破壊者へ向き直る。

 

相手は第一級冒険者(Lv.5)ですら弄ぶ怪物、そんなモンスターを前にベジットはどこまでも自然体のまま。

 

「さて、大人しくしていたのは様子見か、それとも援軍を待っているのか、はたまた別の何かがあるのか………ま、そんな事はどうでもいい」

 

 クルルと喉を鳴らし、瞳孔を開いてベジットを見据えるその眼には、一切の感情は含まれておらず。

 

 そんな破壊者を、ベジットは笑みを浮かべたまま手招きする。

 

「来いよ。ダンジョンのモンスターの力、俺に見せてみろ」

 

 瞬間、四つの咆哮が18階層に響き渡る。強靭な体躯を活かしての弾丸の如き突進。

 

爪と牙、命を刈り取るあらゆる破壊の力を前に、ベジットはやはり不敵に佇むのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う────」

 

「そぉっ?」

 

「なに、あれ?」

 

「何であの数の化物相手に、無傷でいられんだ??」

 

 ガレス達とは少し離れた戦場、正義の眷族であるアストレア・ファミリアは、自分達とは別方向で行われている戦いに、思わずと言った様子で見入っていた。

 

大最悪───【神獣の触手(デルピュネ)】と共に現れた謎のモンスターは、彼女達から見ても埒外の化物に見えた。

 

 巨大な体躯からは予想できない速さを誇り、その鋼よりも強固な骨の体は【重傑(エルガルム)】の腕力を以ても僅かに凹むだけ。

 

その鋭い爪は人の体を容易く引き裂き、その顎は神の恩恵を受けた冒険者を身に纏う鎧ごと咀嚼してしまうだろう。

 

 明らかに階層主をも超えた脅威。今の自分達ではある意味で目の前のアルフィア以上に相手をしたくない存在。

 

 それが四体(・・)。場合によっては上位の派閥(ファミリア)すら全滅せしめる程の驚異的な化物が四体とも、揃いも揃ってたった一人の人間に翻弄されていた。

 

 振り抜かれる黒き爪を体を軽く仰け反らせて避けて見せ、振るわれる尾を足場に跳躍。宙に上げられた所へ喰らおうと、顎を開いて突進するが、これも体を横へ回ることで簡単に避けてしまい、その勢いのまま黒い破壊者は反対にいたもう一体の自身にぶつかり、壁へと激突している。

 

 まるで舞踊、あの恐ろしく速い化物の動きを完全に見切った上で遊んでいる。

 

 彼はまだこの街に来て日の浅い新米冒険者。本来であればこの場所には相応の経験を積んでからでないと踏み入る事も儘ならない領域。

 

 それが、たった数日の内に適応し、第二級の冒険者ですら惨殺せしめる怪物を複数相手にしながら、相変わらず笑みを絶やさずにいる。

 

「つ、強いとは思っていたが………まさか、アレ程とは」

 

「………なぁ、あの兄ちゃんに全部任せたらいいんじゃね? なんて思った私は悪いんかな」

 

 すれ違いざまに破壊者の爪をへし折り、槍代わりにもう一体へ身動きが取れないように胴体へ突き立てるベジットに、ライラはついそんな言葉を吐いてしまう。

 

 彼女の呟きを否定する者はいなかった。彼の強さを間近で見てしまった彼女の何もかもを放り投げたい気持ちを、彼女たちも理解してしまったから。

 

恐らく、彼はあのままモンスターを圧倒し、自分達やガレス達を助けるのだろう。それはもう、御伽噺の英雄譚の様に。

 

 けれど、それは違う。ただ希望を待つだけの木偶にはならないと、アリーゼは剣を握り締めた。

 

「それじゃあ、彼が全部片付けてしまうよりも早く、目の前の英雄を乗り越えましょう! 大丈夫、私達なら出来るわ!」

 

 相も変わらず根拠の無い言葉。この窮地を前にノリと勢いだけで乗り越えようとする自分達の団長にライラも輝夜も呆れの笑みを浮かべてしまう。

 

「やれやれ、団長にそう言われては気張るしかないか」

 

「だー! クソが! やればいいんだろやれば!」

 

「アリーゼ、やりましょう。私達であの英雄を打ち倒す」

 

 目の前の静寂は、時代の逆行を選択した。神時代のシステムでは黒竜に勝てないと、黒き終末を乗り越えるには過去の英雄達の様な旧き強者が必要なのだと。

 

 そんな建前を掲げて(・・・・・・)まで、自分達の敵として立ち塞がってきた先達。超えなくては、乗り越え、今の自分達の強さと正しさを証明する為に。

 

 そんな幼く、小さな英雄の卵達を見て、アルフィアは微かに笑う。

 

「ならば来るがいい、小娘共────英雄の作法を教えてやる

 

 絶対悪を掲げ、立ち塞がる彼女の前に正義の星々(アストレア)が迫る。そんな彼女たちを最強の眷族(アルフィア)は正面から迎え撃った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっべ、いつの間にか向こうも佳境に迫ってんじゃねぇか」

 

 向こうで始まっている最後の戦い、アストレア・ファミリアとアルフィアの激突が始まっているのを目の当たりにして、ベジットは呑気にし過ぎたと自戒する。

 

足下に転がる四つの躯、破壊者たるモンスターを全て打ち倒したベジットは、急いでアルフィアを回収しようとして。

 

「いやー、お見事お見事。あんな化物を一瞬で倒すなんて、流石は噂のベジット君。………いやホント、何で君みたいなのが今更出てくるのかなぁ?」

 

 背後からの声に、ベジットの脚が止まる。振り返れば、細目の男───ヴィトーを従えた神と思われる男神が、拍手をしながら此方に歩み寄ってきた。

 

「────お前は?」

 

「アレ、俺の事を知らないの? ………あぁそうか、確かに名前は知られても姿はそこまで晒しては無かったな」

 

「我が名はエレボス。原初の幽冥にして地下世界の神なり」

 

 黒銀の光を携えて、かの邪神は嗤う。

 

 此処まで来た以上、既に地上では決着が付いたのだろう。ザルドが先に逝き、残すは自分達だと自ら絶対悪を掲げる邪神はベジットに問う。

 

「ベジット、強き者よ。どうか俺の問いに答えて欲しい……」

 

 ザルドが一目おき、オリヴァスを瞬殺して見せた規格外の戦士。突然現れた彼の出自は気になるが、せめてもの抵抗に邪神は訊ねる。

 

「君にとって、正義とは?」

 

 なんのために強くなり、何を成そうとしているのか。そこに正義はあるのか、それともそんなものは無いのか。

 

そんな素朴な疑問を訊ねてくるエレボスに対して………。

 

「て………」

 

「うん?」

 

「テメェかぁ! 余計な事をしやがったのはァァッ!!」

 

「マソップ!?」

 

「え、エレボス様ァァッ!?」

 

 返ってきたのは、容赦のないグーパンだった。

 

 






Q.これ、エレボス死んだんじゃないの~?(カワサキ)

A.まだギリギリ生きてるでゲス

Q.このジャガ丸君何処産?

A.約30階層産



オマケ。


もしもガネーシャ・ファミリアに所属していたら?

「アーディのその武器って、刃引きされてるんだな」

「あ、うん。変かな? 都市を守る治安部隊の私が、刃を潰しているなんて」

「いや、別に変ではないだろ。暴徒を鎮圧するには相手を無力化させれば良いだけであって、手段は別に其処まで求められてないんだろ? 何より、俺素手だし」

「アハハ、そうだね。……私もベジットさんみたいに上手く出来れば良いんだけど?」

「なら、俺が教えてやろうか? ほぼ確実に、相手に外傷を与えることなく鎮圧出来る方法」

「ほ、本当!? 是非、是非教えてください!!」


後日



「はぁぁぁっ! 関節技(サブミッション)こそ王者の技よ!」

「ヒギィィィッ!? う、腕がぁぁ!?」

「あ、アーディが、オレの眷族が、関節技のスペシャリストなバーサーカーにィィィッ!?」

見敵必殺(サーチ&デストロイ)! 見敵必殺(サーチ&デストロイ)ィィィッ!」

「う、うわぁっ! 間接破壊魔(デストロイヤー)だァッ!!」

「生きていていい闇派閥は、(人として)死んだ闇派閥だけだぁッ!!」

こうして、闇派閥はオラリオから消えていきましたとさ。

めでたし、めでたし。

「ベジットは、ベジットのバカは何処へ行った!?!?」

「お、お金稼ぎに単身で深層に向かいました」

終われ。


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