今回は短め。申し訳ない。
そんな訳で初投稿です。
超かぐや姫! シアターでもう一度見てきました。
やっぱ、なんか……いいよね!
お陰でまた蛇足を書いてしまった。
でも一応本編と繋がる予定なので……見逃して!
悪意と狂気に満ち溢れていた人造の迷宮は、既にその機能を失い。現在は精霊の六円環を模した大儀式を執り行うための祭壇へと変貌を遂げていた。
ロキ・ファミリアにフレイヤ・ファミリアを筆頭に、名だたる派閥が今度こそ決着を付けようと奮戦している最中、とある空間。隠し扉の奥にあるそこで一人の人間の男と一柱の男神が対峙していた。
男神の名はディオニュソス。今回の事件の黒幕であり
「答え合わせ、だと?」
「おおよ。結論から言われても決め付けや言い掛かりだと喚かれても困るからな。アンタの逃げ道を一つずつ潰して行こうと思ってな」
逃げ道。暗に目の前の神を事此処に至って逃げ出す臆病者だと吹聴する。
そんなベジットの言葉の裏に隠された意図に当然ながら気付くディオニュソスは、その顔を真っ赤に、憤怒に染め上げる。
「………流石は無能なヘスティアの眷族だ。生意気なのは筋金入りか、良いだろう聞いてやる。お前の言う答え合わせに付き合ってやろうじゃないか」
額に青筋を幾つも浮かばせ、苛立ちを募らせながらそれでもディオニュソスは努めて冷静さを装っている。
「ではまず一つ目の答えだが……アンタ、神酒造り得意だろ? 主に
昔、一度ベジットは神ソーマが造り出した神酒を呑んだことがある。神々すら酔いしれる神酒は下界の人類にとって猛毒。
ディオニュソスの造る神酒とはベクトルが異なっているが、目の前の神が造り出す神酒はソーマの造るソレより遥かに濃厚で極まっている。
「神々すら酔わせる事の出来る酒、泥酔……つまり、重篤な酩酊状態は一種の催眠。或いは魅了に掛けられた様な状態になる訳だ」
そうなれば、犯人側が如何にアリバイを積み上げようと、前提が変わってくる。
酒で相手を酔わせて狂わせ、操れる程の酩酊状態や禁断症状に陥れれば、犯人側にとってアリバイは単なる辻褄合わせの道具に成り下がる。
「アンタの
先の一次攻略戦によって、救出されたディオニュソス・ファミリアの元眷族達は現在ディアンケヒト・ファミリアの医療施設に運び込まれ、治療を受けている。
眷族の全員が重いアルコール依存症に陥っており、アミッド達
神ディアンケヒトと同じ医神であるミアハも診断し、同じ結果を導きだした為、間違いない。
そして、ディオニュソスという神は葡萄やワイン、歓喜に【狂気】と今回の件の符号とやたらと一致している部分を司っている。
これを思い出したのは一次攻略戦より後。ディアンケヒトとミアハから葡萄酒による神酒という情報を聞かされた時だ。
「更に言えば、この神酒を使ってアンタは別の神を
「……っ!」
ギリィッと、ディオニュソスの口元から歯軋りの音が聞こえてくる。
「そういやダイダロス通りに一柱の神がいたっけな。確か名は……ペニア」
オラリオのダイダロス通りの主として、貧窮を司る女神にして老婆。
『富は精神を腐らせる。豊かさは肉体から労働を奪う』と、神らしく真理を突いた格言を遺している女神は第一次攻略戦より後、姿を消している。
「アンタの造る神酒を以てすれば、神を操るのもそう難しくない。下界の人類と生け贄用の神、これ等を上手く利用すれば自分が送還されたという演出も可能な訳だ」
序でに言えば、神酒を使って自己暗示に使うことも可能なのではないかと、ベジットは考えている。
酒に酔うという事は、自己の認識も曖昧だという事。自身を深い酩酊状態にすれば表向き人類を深く愛している慈悲深い神を演じることも出来るという事だ。
でなければ、何度も顔を合わせて情報を交換していたという女神ロキを出し抜けるとは到底思えなかった。
「神も人間も自分の酒で意のままに操る。実に闇派閥の神らしい考えだ。脱帽したよ」
挙げ句、己の目的の為に闇派閥ですら使い潰す。悪辣という言葉ではなお足りない目の前の神の狂気に、ベジットは心底嫌悪していた。
そも、この入れ換えのトリックに付いてはベジットは最初から看破していた。
何せベジットは気を探れば神も人類も関係なく位置を探れる。一次攻略戦のおり、慣れ親しんだロキの近くにはディオニュソスの気が近くにあった。
その後、いきなり正気を失い単独行動を始めたと思ったら、何やら隠し通路らしき場所に身を隠し、其処で待っていたもう一柱の神が送還された。
直後、神の送還を機に精霊の分身達が起動。緑肉が人造迷宮を呑み込んできた為、ベジットは恩恵を失ったディオニュソス・ファミリアだった眷族達及び生き残りの闇派閥を救出に動いた為、気付くのが少し遅れてしまっていた。
つまり、状況証拠で言えば、ベジットの中でディオニュソスはほぼほぼ“黒”だったというわけだ。
尤も、気でお前の動きを見ていたから分かった。と言っても納得しないと思った為、この情報はヘスティア達や女神ロキと三巨頭以外知られてはいない。
そして、その際に女神ロキとフィンからこれ迄の調査で知り得た情報を受け取り、事の顛末の裏取りを行う事が出来た。
つまり、探偵みたいにアレコレ語っているが、そのほぼ全てが女神ロキの入れ知恵であるという事。
(マァジでヤバイねロキ様。アンタもう悪神じゃないよ。探偵神だよ)
僅かな違和感と情報によって導きだした答え。ベジットのもたらした情報によってより確信を得たロキは、ベジットにこれ迄の
要するに、目の前のアルコール中毒神は、自身が造った酒を悪用し、闇派閥もオラリオも手玉にとって見せたのである。
恐らく、ベジットとこれまで顔合わせをしてこなかったのも意図したモノなのだろう。
「………くっ、クク。成る程、面白い推理だ。けれど忘れていないかい? 私が葡萄酒の神酒を造るにはそれ相応の材料が必要だという事を」
「…………」
「如何に私が優れた神酒が必要だとしても、元となる材料が無ければ神酒は造れない。そう! つまりはこのオラリオに私と同調する神がいるという事!!」
ディオニュソスは嗤う。澄まし顔で淡々と語るベジットを少しでも変える為に、煽るように嘲笑う。
「これ迄オラリオを支えてきた大派閥! オラリオの胃袋にして世界の生命線! そう、つまりは女神デメテル! 彼女こそ、私の同胞にして同じ目的を持った同士───」
「いや、そっちもとっくに裏取りしてるから」
「…………」
大仰に語るディオニュソスを、ベジットは一息に両断した。
◇
作戦開始数刻前。
『えぇ、そうよ。オラリオを陥れ、オラリオを崩壊に導こうとしたのは、他ならぬこの私、デメテルよ!』
『いや嘘だろ。流石にそれは無理あるぜデメテル様』
オラリオから少し離れた女神デメテルの別荘。嘗て大抗争の時、外から物資を運ぶ際に使われた隠し通路の先。
デメテルの趣向を凝らせた庭園にて、その女神は歪に嗤い、そして固まった。
『アンタの事は
豊穣の女神デメテル。
『そう、あの子の事、救ってくれたのね』
『あぁ、そして今度はアンタの子供達を救う番だ』
『──お願いします。私の眷族達をどうか、どうか……!』
『任せろ。俺もアンタの造ってくれた作物に生かされてきた身だ。その恩を少しでも返せるよう、全力を尽くすよ』
◇
「今頃、デメテル様は
「〜〜〜〜〜っ!!??」
ギリギリと歯を喰い縛る音が聞こえる。顔を真っ赤に染め上げ、眼光をこれでもかと見開かせる邪神を前に、ベジットは不敵に笑みを浮かべる。
「そうそう、女神デメテルから伝言だぜ。『アナタのようなドブ以下の神と組んでいたとされてはデメテル・ファミリアの沽券に関わる。二度と口にしないで』だとよ。流石の慈悲深き女神様も、駄々を捏ねる
「ベジットぉぉぉぉっ!!」
ディオニュソスが憤る。唾を撒き散らし、喚き騒ぐ邪神を前に。
「吼えるなよ。夜はこれからだぜ?」
これでもかと、挑発の言葉を吐き続けるのだった。
Q.ベジット、結局何を見落としてたん?
A.ディオニュソスという神そのもの。
「あれ? ディオニュソスってそんな人類に対して思い入れのある神だっけ?」
という疑問から何となく腑に落ちていなかった。
ディオニュソスという神がワインを造るのが得意と知ってから、色々と納得した。
その後、ロキとフィン達にディオニュソスは送還されていないことを告げ、それに合わせて情報をすり合わせ。
推理の殆どは女神ロキからの受け売り。流石は名探偵ロキ様。
「なんやろ、正直あんま嬉しくないなぁ」
「1日に何回か殺人現場と遭遇しそうですよね」
「なにその死神!? 四騎士でもそうはならんで!?」
以下蛇足⑤(無駄に長いので注意)
八千年の想い。
月見ヤチヨ。嘗てかぐやだったその女の子は縄文時代の頃より一人の男性と友達だった。
月に帰れない自分を物理的に送り届ければ、それでもやはり帰れないと分かり、一人ぼっちのウミウシとなった時も、自分が側にいると言ってくれた。
それからはハチャメチャの毎日で、西に行けば旧き神々との決戦に巻き込まれ、東に行けば巨大ムカデや八つの首を持ったこれまたバカでかい蛇をボコしたりと、それはもう好き勝手に暴れたりした。
時々ギリシャや北欧の神話に出てくる金髪碧眼の青年。その存在は世界中の神話体系にも散見されていて、そんな彼の肩にはいつも可愛らしいウミウシがいたという。
しかし、そんな彼も時代が進むにつれて人々に干渉できなくなっていった。
大きな戦争が起きても、沢山の人々が貧困と死に喘いでも、青年は世界に干渉せず、無関係を貫いた。
女の子は言った。どうして助けてくれないの!? 悲痛に叫ぶ女の子の訴えを男は沈黙で返すしかなかった。
その後、広島と長崎に大きなキノコ雲が浮かんだその日から、女の子と男は疎遠になった。
女の子は後悔した。自分の我儘で彼を傷付けた事を。
彼の前世とその半生を知る者として、あの言葉は絶対に言ってはならなかった。
『今の
今でも思い出す。困った顔で、泣きそうな笑顔を浮かべた彼の顔を。
そんな彼になにも言えず、逃げ出した自分の浅ましさを、女の子は呪い続けた。
それでも、そんな女の子が今日まで生きてきたのは立った一人の少女に出会うためだった。
こんな自分が、彼を傷付けた自分が果して彼女の側にいて良いのかと。ツクヨミを創設して八千年越しに再会した彼女を見付けてから、ずっと続けてきた自問自答。
「良いに決まってんじゃん」
「………ベジット?」
そこは、
現実の場所で、彼はいた。
「悪いな。今まで連絡とれなくて、実はつい最近まで俺の……ベジットとしての力が大分落ちててよ、動けなかったんだ」
「あ、あの……その、私……」
今の女の子の声は電子の声、なのに上手く言葉が出てこない。ごめんなさいと声に出して言いたいのに、まるで錆び付いたように出てこない。
「……でも、今日
「……………え?」
そして、目の前の天下無敵を自称する男の口から溢れる言葉に、少女の思考は停止する。
「今日が命日だったんだ。道理で存在が上手く保てなかった訳だよ。この世界から見ても■■は俺なんだって。悲しいやら情けないやら………でも、もう大丈夫」
手を翳す。少女の存在を保つタケノコを模した物体に向けて、男は最後のサプライズを手渡した。
「■■が死んだから、俺自身ももうじきこの世界から弾き出される。でも、それまでに猶予はまだ残されているから……やるべき事を済ませておくな」
「待って、待って!」
「俺の八千年、全部やる。
渡されるのは膨大なエネルギー。壊れたタケノコの修復が可能とされるレベルまで満たされていくのが伝わってきた。
けれど、目の前の彼がドンドン薄まっていって……。
「さて、そんじゃあ最後に……後輩達にカッコつけに行くとしますか!」
今頃、あの頑張り屋な後輩が一人の女の子を地球へ留めるために月人相手に盛大に喧嘩を売っている事だろう。
なら、先輩として一肌脱いでやらねば。
此処が、自分の最後のカッコ付けられる場所。男は額に人差し指と中指を立てて。
「じゃあな
「ヤダ! 待ってよ、ベジット!!」
その言葉と伸ばした手は、彼に届く事はなかった。