ダンジョンに超なアイツが来るのは間違いか?   作:アゴン

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最近、朝晩がめっきり寒くなってきましたね。
風邪には充分気を付けましょう。

そんな訳で初投稿です。


物語155

 

 

 

 人造迷宮、そこに蠢く闇と悪意を秘めた化生達との決戦は、オラリオ───冒険者達の勝利で幕を降ろした。

 

 首魁である邪神も、穢れた精霊の分身達も、その全てが冒険者達の尽力により駆逐され、オラリオには再び平穏が戻った。

 

 度重なるモンスターによるオラリオ地上進出。先の異端児達の件を踏まえ、ギルドはこれを全てはイケロス・ファミリアを始めとした闇派閥の仕業であると公表した。

 

 女神デメテルもそんな闇派閥の被害に遭った神の一柱(一人)。彼女の言葉もあってオラリオの人々はギルド(ロイマン)の言葉にも納得し、闇派閥との戦いに巻き込まれて散った犠牲者と天に還った神々の事を悼んだ。

 

 神ディオニュソスもその一柱。闇派閥との決戦の際、尽力を尽くすも悔しくも闇派閥の邪神に敗れ、自神の眷族達だけを何とか逃した気高い男神。

 

 と、表向きはそういう事になっている。自らの神酒に溺れ、善神として振る舞ってきたディオニュソスには眷族だった者達以外に信者がいる。

 

 邪竜ニーズホッグに取り込まれ、表面化したあの顔こそがディオニュソスの本性だと知られたら面倒な事になりかねない。

 

 これを懸念に思ったギルドは本作戦の総指揮を担ったフィン……その主神である女神ロキの提案により、神ディオニュソスは恐ろしい邪神としてではなく、最後まで人類の為に戦った善神として人々から敬われる事になる。

 

 自神の望んだモノとは真逆の結果に、今頃ディオニュソスは悔しく歯噛みしている事だろう。

 

「尤も、ディオニュソスの阿呆が天に還っていればの話やけどな」

 

 摩天楼(バベル)。オラリオにおけるダンジョンの蓋としての役割を担う塔、神々が集う会場にて女神ロキが重々しく口を開く。

 

「ドチビ……ヘスティアん所のベジットがやってくれた一撃。あの黄金の龍は文字通りなんもかんもみーんな消し飛ばしてしもうたわ。邪竜ニーズホッグも、それに取り込まれたディオニュソスの魂そのものもな」

 

 現在、オラリオでは邪竜ニーズホッグを屠った時に見せたベジットにより街中が大騒ぎである。特に最後に見せた黄金の龍は、オラリオの人々の脳裏に深く刻み込まれ、子供達は勿論、大人達ですら興奮冷めやらぬ様子だ。

 

「神は不滅。さしものベジットもそこに手を出す事はしなかったみたいやけど……神の絶対的な不変性は砕かれた」

 

「神は再び甦るわ。この星が有る限りね。何千年後か何万年後か、或いは何億年後か。ディオニュソスは再び神として発生(復活)するでしょう」

 

「ただし、その時はもうウチ等の知っているディオニュソスはいない。まっさらで、神格も権能も碌に持ち合わせていない赤子同然の状態や」

 

 輪廻転生。世界が続く限り、魂はまた巡る。別の形として……神もまた別の存在として、再びこの世界で生まれ変わる。

 

 しかしそれは、神としての終わりを意味していた。神とは不変で、不滅的なモノ、それを破壊されたディオニュソスは二度と元の神格として生まれる(発生する)事はないだろう。

 

 それは、詰まる所の結果的な神殺し。下界では誰一人成し遂げてはならない禁忌が、あの時確かに成し遂げられてしまった。

 

 神々は当然ながら騒然となった。記憶も失い、神格も失い、権能も失う。神としての芯となる部分が丸ごと消されたという事実に他の神々は息を呑む他なかった。

 

 “ベジットは神を殺せる”

 

 その事実に普段は浮かれている神々は口を固く結んで閉じた。

 

「ま、腐れ外道の邪神の末路なんかどうでもええわ」

 

「そうだ。俺達はまず、これからの話をしなくちゃいけない」

 

 話題を切り替える。そんなロキの意図を察し、話に割り込んでくる神がいた。

 

 ヘルメス。伝令の神で、嘗てゼウスのパシリだった彼の神へ神々の視線が向けられる。

 

 うっすらと眼を開き、訝しんでいるロキの視線を敢えて受け流し、ヘルメスは続けた。

 

「嘗て古代の世界にて、その力とおぞましさで世界を絶望に沈めたモンスター、ニーズホッグ」

 

「その脅威度と強さは嘗ての《陸の王者(ベヒーモス)》や《海の覇者(リヴァイアサン)》に比肩する」

 

 当時の世界で邪竜ニーズホッグを倒せる英雄はいなかった。不在だったからこそ神々は六体の大精霊を下界へと遣わし、《精霊の六円環》を以てこれを打破した。

 

「その邪竜をたった一人の冒険者が撃滅した。嘗てのベヒーモス、リヴァイアサンに匹敵し、或いは凌駕しえる脅威を。たった一人の人間が、たった一人の力によって! これは、あのゼウス・ヘラの眷族達だって成し遂げられなかった! そうだろう!?」

 

 両手を広げ、仰々しい振る舞いで場を沸き立たせるヘルメス。確かにそうだと同調するヘルメスに対し、一部の神々の眼はとても冷ややかなモノだった。

 

 嘗てオラリオに存在した最強派閥、その眷族である彼等は協力し合いながら三大モンスターの内、その二体を撃滅した。

 

 それが今も続いている人類最新の英雄神話。しかし、その神話は遂に更新された。

 

 厄災の邪竜ニーズホッグの単独撃破。その偉業の意味をヘルメスは正しく伝える。

 

「皆も再び見えてきた筈だ。神々と人類の悲願である黒竜の討伐! 嘗てゼウス・ヘラが挑み、そして失敗した三大冒険者依頼(クエスト)の最後の一つ、そのゴールが!!」

 

「「「「っ!?」」」」

 

 改めて突き付けられた事実。ダンジョンから産み落とされ、世界に終末をもたらすとされる黒き竜。

 

 大英雄アルバートを始めとした数多の英雄達が挑み、屠られてきた終焉のドラゴン。

 

 その討伐する機会が今、再び近付きつつあるというヘルメスの言葉に神々のどよめきに熱が入る。

 

 ベジットが現れてから、オラリオは凄まじい勢いでその勢力を増していた。フレイヤとロキの派閥を筆頭に彼から“気”を学んだ者達は劇的に力を付け、神々の予想を振り切る勢いで強さを増していった。

 

 Lv.7の冒険者も数も多く、Lv.8の冒険者も存在している。上位冒険者の数も質もゼウス・ヘラのいた頃に近づきつつある。

 

 誰もがそう思いながら、敢えて口にしてかなかったモノ、それは期待感だった。

 

「皆が口にしなかった気持ち、俺も分かる。でもそれでも期待してしまうんだ! あの黄金の戦士を、彼が放つ黄金の龍を目にした時から!」

 

 邪竜と邪神、その二つの脅威を打ち払った黄金の戦士。黄金の龍を解き放ち、世界を覆う暗雲を払った光景は人類だけでなく神々の脳裏にすら深く焼き付き刻み込まれている。

 

 彼ならば或いは、アルバートを越える英雄に成れるかもしれない。真の意味で世界を救う救世の英雄に至れるかもしれない。

 

 最後に、ヘルメスは宣言する。

 

「決戦の日は近い! そうさ、ゼウス・ヘラを越える日は確かに近付いているんだ!!」

 

 高らかにそう告げるヘルメスに感化された神々が大いに賑わいを見せるなか。

 

「……やはり、こうなったか」

 

「ワシ、知らんからな。本当に、一切、関与しないからな」

 

「どうすんのよヘスティア、ベジット」

 

 ミアハ、ディアンケヒト、そしてヘファイストス。真実を知る三柱の神は予想されていた展開に辟易とした様子で溜め息を吐いていた。

 

 神々すらも沸き立つ新たな英雄神話の誕生。しかしロキは静かに次について考えていた。

 

(結局、アイズにあれだけ固執していたレヴィスなる怪人は最後まで現れへんかったな)

 

 脳裏に過るのは今回の作戦に於ける不確定要素の一つであった怪人レヴィス。

 

 一時はアイズを追い詰め、その得意な怪人としての力か黒い気に誰よりも順応し、遂にはアストレア・ファミリアをも窮地に追い込んだヒト型の化生。

 

 あれ程アイズの拉致に拘っていた彼女が、今回の戦いにはついぞ現れる事はなかった。

 

(恐らく、レヴィスは穢れた精霊───その本体(・・)の下へ辿り着いている筈)

 

 邪神や虎の子の穢れた精霊の分身体を囮に、何故レヴィスはダンジョンの深層へ引き返したのか。

 

(なんや、胸騒ぎがするな。杞憂であればええんやけど……)

 

 穢れた精霊の本体、そこで体勢を整えて改めて自分達を滅ぼそうと画策するのか。ベジットという規格外の冒険者がいる以上、向こうも生半可な手札では対抗できないと分かる筈。

 

 では、一体何を画策しているのか。ロキの思案はヘルメスからウザ絡みされるまで続いた。

 

 

 

 

◇

 

 

 

 

 摩天楼にて、神々が何時ものようにバカ騒ぎを始めていた頃、ヘスティア・ファミリアの本拠地【竈火の館】。

 

「さて、それじゃあ今回の作戦、皆、お疲れ様! カンパーイ!」

 

「「「カンパーイ!」」」

 

 今回の作戦の立役者である冒険者達がヘスティア・ファミリアの本拠地【竈火の館】にてささやかではあるが、祝勝パーティーが行われていた。

 

「おお、なんかスゲェ旨いなこのジュース、濃厚な味わいなのに後味スッキリだ」

 

「ふ、ふーん! それはデメテルの所の農園から特別に卸して貰った一級品さ! 眷族達を助けてくれたお礼って事で、特別に譲って貰ったのさ」

 

「マジか。それじゃあちゃんと味わって呑まないとな」

 

「酒の代わりに一級品の果汁か。それなら文句も言えんな」

 

 ヘスティアの音頭と共に手にしたグラスの中身を煽る一同。こう言った場では基本的に酒であるのがスタンダードだが、後日行われるだろうオラリオ全体を巻き込んだ宴に備えて、今日は軽めの食事会と報告会と言う名目上、過度な飲酒は控えようというヘスティアの提案から来るものだった。

 

 それても、用意した品々はどれも一級品で、料理は得意な春姫とベルが中心に行われている為、どれも味は並みの料理屋を上回っている。

旨い飯とそれに合うジュースに自然とベジット達の箸は進んでいく。

 

「ほう、この肉の味も良くできている。下処理からちゃんと出来ているのが旨味として出てきている。腕を上げたな」

 

「ありがとうございます。これも、ザルド様のご指導の賜物です」

 

 外で作戦に参加していた先輩組、彼等の少なくない労力を労って開かれた今回のお疲れ様会。

 

 ザルドは上達した春姫の料理の腕前を素直に称賛し、弟子である春姫もこれを素直に受け取る。ヘスティア・ファミリア第二の料理番の誕生の瞬間である。

 

「しっかし、先輩方は相変わらず凄まじいな。聞いた話だと相手は相当の化物だったんだろ? 良く被害を最小限に抑えられたな」

 

「まぁ、作戦に参加した主力の殆どは以前にも交戦し、相手のギミックとか丸分かりでしたからね。手強いと言えば手強かったですが、正直脅威と呼べる相手ではありませんでしたので」

 

 穢れた精霊は、確かにそれ自体は強力で強大な相手ではあった。単独で挑めばそこそこ苦戦するだろうし、実際に手応え的に言えば並みの階層主を遥かに凌駕している。

 

 しかし、逆に言えば単にそれだけ。既に相手の手の内を知っているリリ達にとっては別段怖い相手ではなく、単なる強力なモンスターの一個体に過ぎない。

 

 他の部隊と比較して手間と時間が掛かったのも、単に自分の攻め方が甘かっただけであると、リリルカ・アーデは断言する。

 

 そんな色んな意味で出鱈目な先輩にヴェルフは苦笑いを浮かべるしかなかった。

 

「でも、今回の戦闘でリリ先輩と副団長、昇格したって聞いたんですけど……?」

 

 そう、口では大した事はないと語るリリルカだが、それに反してリリルカ・アーデのレベルは昨日行われた主神による恩恵の更新により、更に一段階上へ昇格されている。

 

 Lv.7。現時点のオラリオでも未だ数少ない上澄み、ロキ・ファミリアのアイズ達を差し置いて、リリルカ・アーデは遂にその領域へ足を踏み入れた。

 

「ベート様は兎も角、リリは本当はあまり前に出るつもりは無かったんですよ。ただ、ガリバー兄弟の皆さんの熱に当てられてしまい、つい本気になってしまって……」

 

 同胞であるアルフリッグ達やライラとの共闘で、自分の奥深くに眠る何かが刺激され、ついつい本気で諸々を解放してしまった。

 

 斬られては再生し、抉られては再生を繰り返す穢れた精霊。それを嬉々として解体、分割、殲滅を行うリリルカ・アーデにそれはそれは部隊の士気は上がった事だろう。

 

 我に返って冷静になる頃には、既に決着は付いていた。敵である筈の穢れた精霊、その分身が最期は泣きながら殺してくれと懇願してきた事は、リリの中で決定的な秘密となった。

 

 その後、トドメはガレスやガリバー兄弟に任せ、リリは地上へと戻り、他の冒険者達の指揮を臨時に請け負いながら、人喰花の殲滅に乗り出したという。

 

 昇格となったのは、知性はあっても理性の無い穢れた精霊を、自ら死ぬことを望む程に追い詰めたのが一因であると思われる。怖っ。

 

「元々、副団長は昇格自体は以前から可能となっていたんです。それをしなかったのは偏に各能力値の限界突破の為です」

 

「俺は耐久と筋力が若干心許なかったからな。今回の狩りはそれを補える良い戦場だった」

 

 対してベート・ローガは、スキルである【時飛ばし(タイムスキップ)】を習得した時点で、ザルドやアルフィアと同じLv.8へ至る事も充分可能となっていた。

 

 そうしなかったのは、能力値の足りていない項目を埋める為。全ての能力値を限界まで極め、それを超えて昇格すれば、冒険者の器はより強く、より頑丈に成る。

 

 今日まで足りていなかった能力値を全て埋めて、漸く自分の納得出来る強さに至れた事を確認し、ベートはリリと同様に新たな位階への昇格を受け入れる事に至ったのである。

 

「少し遅れたが、これで俺もLv.8だ。ザルド、明日から調整に少し付き合え」

 

「やれやれ、一応俺も一仕事終えた後なんだがなぁ……」

 

「おい副団長、何故私には一度も鍛練の誘いが来ない? 私では不服か?」

 

「テメェはシンプルに怖ェんだよ。人の業を一目見てモノにしやがって」

 

 リリルカがLv.7、ベートがLv.8へと至った事でヘスティア・ファミリアの戦力は現在Lv.8が三人、Lv.7が一人、Lv.5が一人というロキ・ファミリアやフレイヤ・ファミリアにも負けない大戦力を有する事になっている。

 

 他にも、鍛冶師であるヴェルフと春姫も先の深層という死地から生還を果たしたという偉業を以て、Lv.3とLv.2へそれぞれ昇格。

 

 二人の保有している魔法や魔剣、スキルも込みで言えば、ヘスティア・ファミリアの全戦力では世界から見ても随一の大派閥に見える事だろう。

 

 そんな彼等の劇的な飛躍とも呼べる成長に、ベジットは腕を組んで頷く。

 

「うんうん。皆がそれぞれ成長しているようで、俺も嬉しいよ。これなら近い内にザルドとアルフィア抜きでも深層に挑めそうだ」

 

「「「……………」」」

 

 そんなヘスティア・ファミリアの長であるベジットはLv.1。この場の誰よりも頭のおかしい存在にヴェルフやベート、リリルカまでもがシラーっと冷めた視線を向けていた。

 

「な、何だよお前ら……」

 

「あの、今回一番の大物を仕留めたのって……団長ですよね?」

 

 恐る恐ると言った様子のベルが手を上げて進言してくる。

 

「ん? まぁ、あの邪神のとっておきの秘策だったっぽいし、大物と言えば大物なんじゃね?」

 

「それを倒した団長は……その、昇格(ランクアップ)とかは?」

 

「してないな」

 

「」

 

「ついでに言えばステイタスも初期値(IのALL0)のままだ。どうやったら昇格できるんかね俺、ハハハ」

 

 ベルの質問にもはや笑うしかないベジットだが、実際に黒竜を単独で討伐しているベジットとしては、こんなもんかと思っている為、さほど気落ちはしていない。

 

 因みに黒竜と今回の邪竜、どちらが強かったと聞かれたら……ぶっちゃけ、違いは殆ど分からないと言うのが正直な感想だ。

 

 そういう意味でならあのニーズホッグは黒竜と同格と見られるかもしれないが、あの程度であれば超サイヤ人で充分討伐対応な範囲だった。

 

 じゃあ何故超サイヤ人3になったのかと言うと……ほら、お披露目って大事じゃん?

 

「というか、超サイヤ人3だったか? あれが団長の昇格なんじゃないのか?」

 

「どうなんだろ? それなら俺はレベルを自由自在に上げ下げ出来る奴って事になるんかな?」

 

「普通に詐称……詐欺じゃねぇか」

 

「【詐欺師(インポスター)】という二つ名も、強ち間違いでは無いようだな」

 

「いやこれ詐欺かぁ?」

 

 アハハと、ベジット達は笑う。大きな戦いを乗り越え、皆が生きて生還して更なる強さを遂げた。

 

 なら、今回のささやかな宴程度ならワザワザ目くじらを立てる必要もないだろう。アルフィアも今回ばかりは騒ぐ仲間達に口うるさくせず、大人しくベジットの隣でグラスの中にあるジュースを飲み干した。

 

「でも、本当に凄かったですよ。団長のあの姿も、あの黄金の龍も、あんなのお爺ちゃんが読ませてくれたどの英雄譚にも載ってませんでしたから」

 

 落ち着いた様子で呟くベルだが、あの光景を目の当たりにしたベルの心臓は驚く程高鳴っていた。

 

 暗雲に覆われていたオラリオの空を晴らし、青空の下でその拳を天へと突き上げるベジット。

 

 邪竜を祓う黄金の龍も合わさって、その時のベルが目の当たりにした光景は今も脳裏に焼き付いて離れない。

 

 絵本で見聞きした物語としての英雄譚ではない。ベルが目撃したのは本物の神話、或いはそれに連なる新たな英雄の物語であった。

 

「ハハハ、まぁ流石にあれをもう一度やれと言われても今日は流石に無理だがな」

 

 超サイヤ人3。それは現時点でベジットが出せる最終形態であり、対厄災級モンスター専用の決戦礼装。

 

 その形態に於ける体力の消耗は凄まじく、一度使用すれば数ヵ月は使えない、正しくベジットの切り札。

 

 その証として、現在ベジットは派閥の本拠地にて療養中。限られた者達以外では基本的に面会をも断っているという。勿論、嘘である。

 

 あれだけの力、あれだけの業、厄災認定のモンスターを単独で討伐出来る力とあれば、その代償は凄まじく、流石のベジットも消耗しているだろう。そんな、神々や人類もそう思い込んでいるだろう前提の思い込みを利用した作戦。

 

 ベジットはこれを“ミスター・サタン腹痛作戦”と名付けた。

 

 超サイヤ人3の負荷なんてとっくに克服してるし、何ならその状態で丸二日ほど全力戦闘を可能としている程、自らの体に順応している。

 

 全ては、黒竜討伐済み作戦の為の時間稼ぎ。今回の件で何処かの神が黒竜討伐に乗り出すという事を予見しての対応策である。

 

 尚、これを聞かされた事情を知る全ての面々は「お前マジか」と言いたそうな顔で心底呆れていた。

 

 無論、ここにいるベル達を除いた面々も同様の反応であった。

 

 閑話休題。

 

「団長の業、という事ですが……その、フィルヴィス様達は今後、どうするのでしょうか?」

 

 今度は春姫が気になっていた事を口にする。

 

 現在、フィルヴィス・シャリアはアウラ・モーリエルに対する監視という名目で、ディアンケヒト・ファミリアの運営している病院の一室にて、ガネーシャ・ファミリアの眷族達と共に待機している。

 

 アウラ・モーリエルの身体は、フィルヴィスと同様に穢れた精霊によって見も心も穢され、一時は人の道を外れた行いを邁進していた。

 

 穢れた精霊による呪縛から解放しようと、フィルヴィスはベジットの業の一つである《ソウル・パニッシャー》を模倣。

 

 処女神であり、聖火(ウェスタ)の化身であるヘスティアの眷族だからこそ出来る神秘再演。

 

 しかし、ベジットのそれとは違い、フィルヴィスの《魂の解放》はより浄化の側面が強く、アウラ・モーリエルを穢していた部分の全てを浄化出来ても、フィルヴィスの様に半精霊化というトンチキ存在になる事はなかった。

 

 穢れた精霊からの呪縛から解放され、邪神の手からも解き放たれた彼女は正しく只人……いや、只エルフとなった。

 

 今後、アウラ・モーリエルは、これ迄犯してきた自分の罪と向き合い続ける事になる。事情も事情で、邪神に唆された件も含めて情状酌量の余地ありと見なされ、処刑こそはされないが、それでもオラリオからの永久追放は免れないだろう。

 

「今後、フィルヴィスはそんなアウラの贖罪の旅に付き合うんだとよ。今朝方、本人が言ってきた」

 

「そうなんですね」

 

 少し寂しい結末だが、救えた命があったというだけで彼女達の末路は上等な方だろう。

 

 それに、フィルヴィス自身は女神ヘスティアの温情もあって眷族でいさせる事になっており、彼女の強さは据え置きのまま。

 

 いざとなったらベジットも瞬間移動で会いに行くし、別段そこまで悲壮感は無い。

 

 フィルヴィス達の新たな旅路、それを想いながらベジット達の宴は続いた。

 

 

 

 

◇

 

 

 

 

 オラリオから遠く離れた海。

 

「あれが、オラリオ……」

 

 遥か遠き聖域から訪れる1隻の船。帆を揺らし、灯台の灯火を頼りに海路を進む船の甲板には。

 

「さぁ、三千年続く古の負債、その払拭の時は来た」

 

 一人の少女がその顔を悲哀に歪ませ、光輝くオラリオの街を眺めていた。

 

 

 

 

 





Q.ベートくんとリリルカちゃん、昇格したんやね。

A.今回の大規模作戦で二人ともアビリティが満足行く数値に至ったので昇格。
 尚、リリルカ・アーデはほぼ単騎で穢れた精霊を圧倒した為、偉業判定を貰いました。

以下反応。

四兄弟「「「「パネェッス姐御!!」」」」
リリ「アンタ等の方が年上でしょうが!?!?」

ライラ「いや、腐っても精霊を殺してくれって泣いて懇願させるとか……ちょっと流石に引いた」
リリ「まって、お願い引かないで!!」

ガレス「まぁ、一応連携を考えて動いてくれたしのう。いや、それでもワシでもおっかないと思ったが」



後に、リリルカ・アーデの二つ名は【双槍の戦魔女(スカサハ)】になる予定。

リリ「なんか二つ名が極まってるぅぅぅ!?!?」

頑張れリリルカ、負けるなリリルカ! 君のマスコットへの道はきっと別の世界線にある事を信じて!!


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