ダンジョンに超なアイツが来るのは間違いか?   作:アゴン

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またもや我慢出来ませんでした。


そんな訳で初投稿です。




物語2

 

 

 

「漸く着いた。ここが───」

 

「迷宮都市オラリオ!」

 

 巨大な外壁門を潜り抜け、遂に世界の中心と呼ばれる迷宮都市オラリオへたどり着いた一人と一柱。

 

 ベジットとヘスティアは旅の目的地である迷宮都市オラリオの街並みを感慨深く見渡した。

 

「しっかし、マジでデカイ街だなァ。確かに世界の中心なんて言われるのも頷ける」

 

「あそこの街の中心に聳え立っているのが【バベル】だね。全50階建ての巨大な摩天楼、公共施設や換金所、各派閥(ファミリア)の商業施設も充実してて、30階の大広間では数ヶ月に一回神会(デナトゥス)が開かれるみたいだよ」

 

見渡す限り続く街並み、その中心には巨大な白亜の塔が聳え立っている。空高く聳え立つ塔の迫力に圧倒していると、荷台に乗っているヘスティアからうんちくが飛んできた。

 

「ヘスティア様、詳しいな」

 

「ガネーシャの眷族()からパンフ貰った」

 

 パタパタとパンフレットを掲げてくるヘスティアにそんなものもあるのかと、今の時代とは似合わない文化にベジットは目を丸くさせる。

 

「───て言うか、(関所)の所でもそうだったけど、妙にヒリついてないか、この街」

 

 落ち着いて周囲を見渡せば、街の大きさに比べて道行く人の数が少ない気がする。一見すれば大都市らしく活気が伝わってくるが、ベジットはその中から言葉にし難い緊張感の様なモノを感じ取っていた。

 

 他にも街に入る際もガネーシャの眷族を名乗る者達から審問紛いな質問責めにあった事も、違和感を覚えた一因となっている。

 

 その時は幸いにも女神ヘスティアの擁護のお陰で荷物を暴かれる事無く街へ入れた。この荷物、一度荷解くと地味に手間暇が掛かるから、ヘスティアの助け船には本当に感謝している。

 

「なーんか、面倒ごとが起きそうな予感」

 

「ベジットくーん、なにブツブツ言っているのさ? さっさと宿を探して休もうぜ。僕はもう疲れたよ」

 

「アンタ今日一日ずっと荷台に乗ってただけだろうが」

 

 歩くのが辛くなって足が痛いと騒ぐもんだから、仕方なく荷台に乗せたのに、今ではすっかり私物と化している。

 

 地上に降りた事で全知零能の存在へと格が落ちていると彼女は語っているが……正直ズボラが過ぎる気がした。

 

「そもそも、今日は例の鍛冶神様の所へ顔を出す予定だろ。素材の換金とかしなくちゃ行けないし、もう少し我慢しろよ」

 

「はーい。………所で、僕達の案内をしてくれる子って───」

 

「お待たせしました! ヘスティア・ファミリアの方々ですね!」

 

 門の所から駆け出してくるのは一人の少女、元気良く此方に走り寄ってくる快活そうな娘。

 

 短い髪が揺れ、ボーイッシュな彼女はベジット達の前に現れるなり深々と頭を下げた。

 

「ごめんなさい、待たせてしまって。私はガネーシャ・ファミリアの団員、アーディ・ヴァルマって言います! 気軽にアーディって呼んで下さい!」

 

「おぉ、ガネーシャの眷族らしい元気な子じゃないか。僕はヘスティア、ヨロシクね。それで此方が……」

 

「オッス、俺ベジット。一応この女神の眷族やってる」

 

 一応ってなんだよー!? と、抗議をしてくるヘスティアを軽く流し、改めてベジットはアーディと名乗る少女に向き直る。

 

「アンタがヘファイストス様の所まで案内してくれるのか?」

 

「はい。迷宮都市はその名の通り迷宮(ダンジョン)の上に成り立っている都市ですが、人も物流の流れも速く、建物が軒並連なっていますから、初めての人は結構迷い易いんです」

 

「ウンウン、このパンフでも書かれているけど、路地裏とか結構入り組んでて、迷子になる人は少なからずいるみたいだね」

 

「其処で、街の治安維持を担っている私達ガネーシャ・ファミリアが、街の案内と警護を任されているのです」

 

 どうやらこの街の安全面はガネーシャ・ファミリアなる派閥に一任されており、その人員の数は他の派閥を圧倒するらしい。目の前の少女も進んで都市の秩序を護る為に活動していると言うのだから、何とも凄まじいモノだ。

 

「それでは鍛冶神ヘファイストス様の本拠地(ホーム)へご案内させていただきますね」

 

「「宜しくお願いします」」

 

 丁寧に道案内をしてくれるアーディに、二人も丁寧に返す。弱冠15歳で定職に就いている少女アーディ。そんな彼女の事をベジットは素直に凄いと思った。

 

 それから、オラリオの街と人を観察しながらアーディに付いていくこと数分、ベジットは彼女と他愛ない雑談を交わしていた。

 

オラリオに来ることになった経緯、女神ヘスティアとの出会いやオラリオに着くまでの道中の話、ガネーシャ・ファミリアの一員として、此方の事情を探っているつもりだろうが、アーディとの会話は楽しく、不快にはならなかった。

 

 ヘスティアも気兼ねなく会話しているし、彼女がガネーシャ・ファミリアの一員と言うのも何となく理解出来た気がした。

 

「───所でベジットさん、荷台に乗せている荷物って、換金目的の素材(ドロップ)アイテムなんですよね? 随分と荷物が多いみたいですけど」

 

「あぁこれ? 実際はデカイ素材が二、三個あるだけで他は小物ばかり。査定の時間はそんなに掛からないと思うけど?」

 

「あぁいえそうじゃなくて……その、言いにくい話で申し訳ないんだけど、ベジットさんは...……レベル1、なんですよね?」

 

「うんや、違うな」

 

「え?」

 

「そもそも俺、まだ恩恵受けてないし」

 

 何やら申し訳なさそうにしているが、生憎自分はヘスティア・ファミリアの団員として振る舞っているモノの、実際はまだ眷族にはなっていない。

 

 と言うのも理由は単純で、神の恩恵なるモノを授かるには神の血なるモノを背中に滴し、神の恩恵(ファルナ)とやらを刻む必要があるらしい。

 

そうなって初めて人類は神の眷族になれるというが、生憎此方はまだ旅の途中、オラリオに着いて何処かの宿屋で落ち着いてから、という事になっている。

 

 ───まぁ、最大の理由が指に針を突き刺すのが怖い! オラリオに着くまで待って! なんて宣っているそこの処女神が最大の理由なのではあるが。

 

「え? じゃ、じゃあその素材は……恩恵無しで手に入れたモノだと?」

 

「ふっふーん、そうだぜアーディ君。僕の眷族(予定)は恩恵を受ける前から凄いんだぜ! 見てろよー! これからはヘスティア・ファミリアの時代さ! ロキなんて目じゃないぜ!」

 

 まだ本格的に眷族になっていないのにすっかり天下取りなヘスティア。ベジットは呆れこそすれど否定はせず、ただアーディはその会話に違和感を覚えていた。

 

 神の眷族となった者とそうでない者との差、更にそこから上への位階へ至った者は恩恵無しの人類とは一線を画す存在へとなっている。

 

 そして、そんな超人達でも時には敗北してしまうのが魔物という存在なのである。

 

 古代の英雄達、神々が下界に降りてくるまではそんな彼等が命懸けで戦い、打ち勝ってきたとされてきたが………まさか、彼がそんな才ある人だと?

 

 否定は出来ない。このベジットなる人物からは嘘は感じなかった。それはレベル3であるアーディ・ヴァルマの勘、あるいは冒険者としての本能がそう告げているのかは分からない。

 

 ただ、底が見えなかった。恩恵無しで魔物(モンスター)を狩ったと豪語するベジットからは少なくとも悪意や害意といったモノは感じられない。

 

「あ、もしかして俺が狩り尽くしたと思ってる? 大丈夫だって、まだまだ素材はあったし、何なら今度持ってきてやろうか? お近づきの印って事でさ」

 

「おいおいベジット君、うら若き乙女に気安くナンパするもんじゃないぜ?」

 

「阿呆。これから世話になるかもしれないんだから、ご近所付き合いは大事でしょーが」

 

「あ、アハハ」

 

 反応に困る事を言ってくるベジットに、アーディは苦笑いを浮かべる事しか出来なかった。

 

「あ、着きました。此方が神ヘファイストス様の本拠地(ホーム)になります」

 

「おっ、ここがそうか。サンキューな」

 

 

「ありがとうアーディ君、助かったよ!」

 

 辿り着いた建物を見上げ、礼を言ってくるヘスティア・ファミリアにアーディは軽く会釈をしてその場を去る。

 

(悪い人達ではないみたいだけど、一応お姉ちゃんに報告しとかないとね)

 

 これ迄聞いてきた話で、中でもベジットの話はチグハグな点が多い。今のオラリオ(迷宮都市)が抱えている問題の事から無視はできないと判断したアーディは、内心でヘスティア・ファミリアに謝りつつ、ガネーシャ・ファミリアの本拠地へ急いだ。

 

 そんな彼女の思惑など露しらず、ヘスティア・ファミリアの二人は建物を見上げる。

 

「此処が鍛冶神ヘファイストス様の本拠地か。立派な建物だなー」

 

「流石はヘファイストスだぜ。それじゃあベジット君、僕は彼女を呼んでくるから良い子にして待ってるんだよ!」

 

「お母さんか。浮かれて転ぶなよー」

 

 荷台から下ろし、建物の中へ消えていく主神を見送り、ベジットは通路の邪魔にならないように荷台を端へ寄せる。

 

「しっかし神様ねぇー。俺が今此処でこうしているのも、どっかの神様の思惑が絡んでんのかな?」

 

ヘスティアという神の名は、前世の頃からそれなりに知っている。古代ギリシャの神の一柱に数えられ、中でも処女神ヘスティアはオリンポス十二神の一柱に位置している格のある女神だ。

 

ヘスティアは竈や暖炉、祭壇等の家庭生活を司る神として有名で、その高名さは色々と悪どいギリシャ神話の中でも良心的な神としても知られている。

 

 そんなヘスティアだからこそ眷族になってもいいと思えた。同じギリシャ神話でもゼウスやヘラと言ったDQNな神々よりはずっと良い。

 

 神の存在については……自分がベジットとして此処にいる時点で今更なので考えないようにする。

 

「それにしてもオラリオかぁー。面白そうだけど、色々と面倒ごとも多そうだな。さっきから不躾な視線とか感じるし」

 

 白亜の塔、バベルから此方を見定めるような視線が飛んできている。悪意や敵意はないから放置しているが……アレも何処ぞの神の仕業なのだろうか?

 

 それから道行く人々を眺めている事数分、ヘファイストスの本拠地の扉が開かれる。

 

「もう、ヘスティアってばアポイントも無しに来るんだもの。下界に来たのなら前もって一言声を掛けなさいよ」

 

「えへへー、ゴメンゴメン。でも、君を驚かせたかったのも、喜んで貰いたかったのも本当だぜ!」

 

「はいはい」

 

 扉から出てきたのは赤い髪の女性、右目に眼帯を充てているその姿は確かに神話のヘファイストスと特徴が似通っていた。

 

「貴方がヘスティアの眷族ね。初めまして、私はヘファイストス。このオラリオで鍛冶職人をしているわ」

 

「初めまして、自分はベジット。これから色々とお世話になると思うので、ヨロシクお願いします」

 

「ヨロシク。何かご要望の武具が欲しかったら、ウチに一言声を掛けてちょうだい。贔屓は出来ないけど、相談くらいは受け付けるわ」

 

 互いに軽く自己紹介を交わす。鍛冶の神というから職人らしい気難しい神かと思っていたが、どうやら割りと話せる神物らしい。

 

向こうも似たような反応なのか、その顔には柔らかい笑みが浮かんでいる。

 

「それで、早速相談があるんだけど、其処にある素材を君の目から見て鑑定してくれないかな?」

 

「鑑定って、普通にギルドに渡せば良いじゃない。何で私が?」

 

「分かってないなーヘファイストス。僕達はオラリオに今日やってきたお上りさんだぜ? そしてここは都会(オラリオ)! 情弱なお上りさんは足元を見られるのが世の常だろ!?」

 

「お前、今色んな所に謝った方がいいぞ」

 

 色々と失礼な言葉を口にする主神にツッコむも、相手のヘファイストスは慣れたモノなのかやれやれと肩を竦める。

 

「はぁ、もういいわ。ならさっさと始めちゃいましょ。言っておくけど、相場の値段で言うから、安くても文句言わないでよね」

 

「ハハ、分かってますよ」

 

 口では厳しい事を言っているが、人の──いや、神の良い所は隠しきれていないらしい。

 

 何だかんだで優しい鍛冶の神に感謝しながら、ベジットは荷物を包んでいた布をペリッと剥いた。

 

 ────瞬間、(しゅ)が溢れた。

 

 それは呪いや怨念の類いではなく、純粋なまでの“威”。千年もの間、世界に君臨し続けていた黒竜の鱗から発せられるごく一部の威だった。

 

 それも旧きモノではなく、新生を果たし、一種の神威とも呼べる呪は、周囲一帯を覆い尽くし、道行く人々を気絶させていく。

 

「────え、え? アレ? 何?」

 

 突然倒れる民衆に、一番戸惑っているのはベジット本人だった。自分が何かをした自覚はなく、ただ素材を神ヘファイストスに鑑定して貰おうとしただけ。

 

まさか、自分の知らない所で何処からか襲撃があったのか? 少しばかり混乱する頭で、そんな事を考えていた時。

 

 誰かに、布を持っている腕を掴まれた。

 

腕を掴んでいるのは、ヘファイストスだった。しかし、何処か様子がおかしい。先程までの気の良さそうな姐さん職人ではなく。

 

【────今すぐ、それを仕舞いなさい】

 

 神が、其処にいた。

 

「え、え? 神ヘファイストス? お、おいヘスティア、アンタの神友なんか様子が………」

 

 様子のおかしいヘファイストスに助けを求めるベジットだが、ヘスティアの方も何やら神々しい光を纏って両手を突き出している。

 

 それはまるで、ベジットが布を捲った中にある素材を押し込める様に。その様子は何処か苦しそうで、額には大粒の汗が浮かんでいる。

 

「お、おいヘスティア! 大丈───」

 

 助けようとするも、掴まれたヘファイストスの手に込められる力が強まる。

 

【───良いから早く、それを仕舞いなさい!】

 

「で、でもヘスティアが……」

 

【いいから!!】

 

「は、はい!」

 

 とうとう、しまいには怒鳴られてしまった事で、ベジットは反射的に布を素材に覆い被せていく。

 

 すると、強大な呪いの如き威圧は消え、辺りは静寂に包まれていく。二柱の神もそれを見届けると、光を解いてその場に蹲る。

 

ヘファイストスは荷台に寄りかかり、ヘスティアは地面に座り込む。何やら凄まじく疲弊した様子の二人に、ベジットは困惑しながら取り敢えずヘスティアの方へ駆け寄り、抱き上げる。

 

「おい、本当にどうしたんだよヘスティア。一体何があったんだ」

 

「そ……れは」

 

「それは、此方の台詞よ」

 

 ヘスティアより早く立ち直ったヘファイストスだが、その視線は依然として鋭いままだった。

 

「────取り敢えず、中に入りなさい」

 

「う、ウッス」

 

 静かにそう告げるヘファイストス、その表情には有無を言わさぬ迫力があり、ベジットは大人しく鍛冶神の後ろを付いて行く以外の選択肢はなかった。

 

 迷宮都市オラリオに着いて早々この始末、はてさてこの先どうなります事やら。

 

 

 






Q.これ、オラリオ中の神々が気付いたんじゃない?

A.ベジットが捲ったのはホンの数ミリ程度なのと、二柱の神が咄嗟に神威で相殺したので周辺近隣の住民と本拠地にいる眷族(団長含む)が気絶する程度で済みました。

もし近くにヴァレン某がいたらヤバかったかも?

それではまた次回ノシ



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