最近話題のゼンゼロ。試しにプレイした所。
雅を二凸したり、キャラを一先ず60レベルに育てたりして、ストーリーも遊び尽くしましたが……別に嵌まってません。
嵌まってませんよ。
そんな訳で初投稿です。
【
彼がヘスティア・ファミリアへ参入してから一週間、ベジットという規格外の冒険者が現れてからオラリオは以前の活気さを取り戻し、復興も滞りなくすすんだ事で現在はすっかり元の街並みを取り戻していた。
そんな復興を果たしたオラリオを見渡せる外壁。迷宮都市をグルリと囲んだ壁の上で、上記に出た狼が蹴りを振るう。
「シッ!」
「踏み込みがまだ甘ぇな。相手の動きを牽制してぇなら、もうチッと全体に工夫を凝らせ」
「ヌァッ!?」
間断なく振るわれる槍のごときベートの蹴り、その悉くを片手でいなしたベジットは勢いが乗ったベートの蹴りを横へずれる様に受け流す。
堪らずバランスを崩した所へ、頭を指で軽く小突く。それだけで
「~~~~ッ!?」
頭を打ち、悶絶しているベートを尻目にベジットは次に控える
「さて、次はリリだな。遠慮せずに打ち込んでこい」
「は、はい!」
ベジットの正式な弟子となったリリルカ・アーデ。相変わらず人を殴るのに慣れていないのか、その動きはまだぎこちない。
「変に遠慮をすると却って怪我しちまうからな。俺も適当に拳を突き出すから、先ずは避ける事を学んでいこうか」
「わ、解りました!」
リリルカに当たらないように寸止めで拳や蹴りを振るうが、意外にもリリルカはこれを避けてしまう。避け勘………というべきか、それともソーマ・ファミリアでの経験がそうさせているのかは定かではない。
その後、避け疲れたリリルカと回復したベートが再び交代し、これを朝食時まで続ける。これがヘスティア・ファミリアの新しい朝のルーティンだった。
◇
ヘスティア・ファミリア本拠地の地下。流石に四人もいれば手狭にもなるその場所でヘスティアが作った朝食を頬張る三人。
朝の朝食当番もすっかり身に付いたヘスティアの味付けは、意外にも美味く。眷族の誰もが文句一つ言わなかった。
美味そうに食べる自分の眷族達を見て、ヘスティアは微笑みながらベジットに訊ねる。
「それでベジット君、二人はどうだい? 君から見て将来有望かな?」
「まだ一週間其処らで解るかよ。………けど、ベートは流石冒険者だけあって動きが出来ているのは解った。後はこれを磨いてどれだけ自分で高められるかだな」
「────フンッ」
「リリルカは………兎に角避け勘が冴えている。小人族特有なモノなのかは解らないが、俺はセンスがあると思うな」
「そ、そうですか!?」
「とはいっても、攻撃面に関しては些かおざなりだな。受け身になりすぎていると、それは相手にとって良い的になりかねない。モンスターもそういう所を突いてくるってのは、リリも解ってるな?」
「ウッ、は、はい……」
褒める所は褒めて、欠点等は容赦なく指摘する。それがベジットなりの教訓だというのは幼いながらもリリルカは理解していた。
「ベートは何か言いたいことはあるか?」
「────この一週間、テメェの強さはイヤでも理解した。立ち回り、姿勢、眼の良さ。そのどれもが俺達とは隔絶している」
「おっ、随分と高評価」
「五月蝿ぇ茶化すな。だが、だからこそ解らねぇ、テメェが見せた“あの力”。あれは一体なんだ?」
「あれ?」
「正邪決戦と、この間のソーマ・ファミリアとの戦争遊戯で見せたあの力だ」
ベートが思い返すのは二つの戦い。モンスターを都市門ごと吹き飛ばす蒼白い極光とソーマ・ファミリアを要塞ごと吹き飛ばした光の剣。
あれは、既存するどの魔法にも該当しない未知の力。広範囲に超高威力、そしてその上でほぼ無詠唱と来た。
あんな出鱈目な力を持つ冒険者など聞いたことがない。なら、あの力は眷族になる以前からのモノだと考えるべきなのだが……。
「あぁ、アレね。本当はもうちっと二人の基礎的な部分を見てからにしようとも思ったんだが………まぁ、いっか」
「あ? そりゃどういう意味だ?」
「実は今日お呼ばれされてんだよ」
「ウゲー、本当に行くのかいベジット君」
未だ解っていないベートだが、ヘスティアのゲンナリした様子とリリルカ・アーデの苦笑いと言い、どうやら自分が加入する以前の話らしい。
「お呼ばれって、一体何処にだよ」
「ロキ・ファミリア。そこの団長さんがウチと交流したいんだってさ」
まさかの大手派閥に流石のベートも目を見開いた。
◇
【黄昏の館】ロキ・ファミリアの
門番していた二人に一言二言言葉を交わし、快く中へ通してくれると、中庭にてロキ・ファミリアの三巨頭であるフィン、ガレス、リヴェリアが主神たるロキと共に迎え入れてくれた。
「ようこそ女神ヘスティア、そしてベジットと新たに加わった眷族達も。我が本拠地へ」
「ようフィン。今日はお招きありがとな」
「此方こそ、来てくれて感謝するよ」
フィンから伸ばされた手にベジットも差し出して握手を交わす。そんな二人の間を割って入るように金色の影がベジットに向けて突進してくる。
「ベジットー!」
「おっと、相変わらず元気そうだなアイズ。ん? ちょっと重くなったか?」
「えへへ~。うん! 前より身長伸びた! 今9歳!」
幼女とはいえ仮にもLv.3の突進をアッサリと受け止め、金色の影の正体であるアイズを抱き止める。後ろでリリルカが憤慨した様子でグヌヌと顔を歪めているが、流石にこの場では我慢するようだ。
「…………フッ」
「ンナッ!?」
しかし、ベジットの首に顔を埋めていたアイズだったが、リリルカの顔を見るなりニヤリと嗤う。それを見たリリルカが更に顔を憤怒に歪めた。
「相変わらずウチのアイズに懐かれてるな」
「悪いな。そちらのお子さんなのに」
「いや、お陰でアイズも休む事を学んでな。最近ではウチに新しく来た新人と一緒に良く街に遊びに行ってるんだ」
「へぇ、ちゃんと俺が教えた事、学んでるんだな」
「うん!」
「ただ、勉強の方は相変わらずだがな」
「ヴッ」
「ハハハ!」
己を鍛え、良く休ませ、良く遊ぶ。今になって年相応に成長したアイズはベジットの言葉に嬉しそうに頷くが、途端に横槍してくるリヴェリアの一言に、顔をしかめて沈黙する。
そんな彼女を笑いながら下へ降ろしてやると今度はドワーフの男がやってきた。
「久しいな生意気な
「ゲッ、ガレスのおっちゃん。それ知ってたの?」
「ミノタウロスと相撲を取った黒髪の只人というバカな話を聞けばイヤでも予想出来るわい。全く、ロイマンが嘆いていたぞ。余り派手に暴れ過ぎるなと」
「いやー、人型のモンスターを見掛けたら……つい」
「て言うかガレス様も相撲を知っていたのですね」
まさかの暴露にベジットは頭を掻く。
「そ、それよりもノアールのじっちゃんは元気か? あの人には正邪決戦の時世話になってよ、改めて礼を言いたいんだが……」
露骨に話題を逸らすが、ベジットがロキ・ファミリアに来た本題の一つはあの日、自分に握り飯を恵んでくれたノアールに挨拶をしておきたいと言うのがあった。
あの正邪決戦の日、空腹だった自分の腹を満たしてくれたお陰で最大限のパフォーマンスが出来た訳だし、無事にあの二人を助け出す事が出来た。改めて礼の言葉を贈りたかったのだが……。
「あぁ、ノアール達ならあの後程無くして引退してね。結構前にオラリオから旅に出たよ」
「そ、そうなのか。何だよ、一言くらい挨拶させてくれてもいいじゃねぇか」
「そう言ってくれるだけで嬉しいよ。なに、手紙は時々くれるから向こうで元気にやってるのは間違いない。此処は寂しさに浸るんじゃなく、快く受け入れてやってくれ」
「そうか。………そうだな」
色々と面白そうな爺さんだったから別れは惜しまれるが、ロキ・ファミリアが受け入れているなら自分が口出す事もないだろう。
しかし、先達の新たな旅達に想いを馳せるのも束の間。
「おい、下らねぇ自己紹介は後にしやがれ」
「ちょ、ベート様!」
「おいベート、あまり他所様の本拠地で……」
「んな事より、先ずはアッチをどうにかするのが先だろうが」
苛立った様子のベート、彼の指差す方へ視線を向ければ………。
「なぁにウチの本拠地に堂々と入って来とるんやドチビ!」
「君の所の団長が是非って言うから受けてやったんだよ! 君の許可なんて最初から求めてないのさ! ばぁーかめ!」
「五月蝿いわ! お前みたいな甲斐性なしのアホ女神にあの三人は勿体無いわ! しかもウチが密かに狙っていた狼人を横からかっさらいおってからに! いつからNTRの神になったこの色ボケがぁ!」
「ぬぁ!? 仮にも処女神に向かってなんて言い草だ! 君なんて美少女美少年ばかり集める性癖全開の癖に!」
「己の性癖を晒して何が悪いねん!」
「最悪だコイツ!?」
悪戯の女神と竈の女神が、醜く争う場面。
「その、悪いな。ウチの神が」
「いや、僕達の方こそ。折角来てもらったのに」
頭を下げる二人の派閥の長。そんな二人を見て…。
((大人って、大変だなぁ))
リリルカとアイズ、二人の最年少の冒険者は二人の背中を見て
その後、二柱の女神を引き離して改めて挨拶を交わす。
「コホン、それでは改めて顔合わせとしておこうか。初めましてヘスティア・ファミリアの諸君。僕はロキ・ファミリアのフィン・ディムナだ」
「は、初めまして、リリルカ・アーデです! フィン様の武勇は
「………どうも」
社交的なリリルカに対し、やはりどこか刺々しいベート。隣でベジットが悪いと謝ればフィンは気にしていないと手で制してくる。
「それじゃあ、此方も新顔を挨拶させておくかな。二人とも、いいね」
「はーい!」
「解りました団長!」
館から新たにやってきた二人の褐色肌の少女。二人共種族はアマゾネスで、外見から察するに恐らく双子の姉妹なのだろう。元気そうな彼女たちは恐らくはアイズと同年代。
「私はティオネ、ティオネ・ヒリュテ。好きな人は団長! よろしく」
「私はティオナだよー! ヨロシクねー!」
「へー、二人がさっき言ってたアイズと遊び友達っていう?」
「そうだよー! お兄さんもアイズの友達?」
「まぁ、そんな感じだな。一応俺はまだまだ駆け出しのLv.1だから、宜しくしてくれると嬉しいな」
「はーい!」
妹のティオナは溌剌としてて見ていて気持ちが良い。周りに同年代の娘がいない環境にいるアイズにとって、彼女の存在は大きいだろう。
対して姉のティオネ・ヒリュテは……。
「良いか、団長は私が見初めた雄なんだ。同じ種族だからって気安く近付くんじゃねーぞ!」
「ひ、ひゃい!」
既にアマゾネス特有の習性でリリルカを意味もなく牽制している。まだ八歳の子供に恋愛とか知らないだろうに……。
「他にも団員達は数多くいるが……流石に時間が掛かるから、紹介の方はここら辺にしておこうか」
「だな。全員、目的はそこじゃないだろうし」
気付けば、館のあちこちから視線が向けられている。見渡せば館の至る所からロキ・ファミリアの眷族達が興味深そうに此方を見ている。
敵意はない。彼等があるのはあくまで興味だけ、それはベートも気にしていたベジットの力の源についてだ。
「折角の招待だが時間が惜しい。早速始めさせてもらうぜ」
「あぁ、ヨロシク頼むよ」
そういって、ベジットはフィン達から離れていく。
「今日俺が説明するのは他でもない。俺が扱う力の総称、即ち“気”についてだ」
離れていくベジット。一歩歩く度に白い炎を纏い、次に地に足を着けていた彼はドンドン地上から離れていき。
「簡単に言えば、“こういう事”が出来るようになる力、ってことだ」
フィン達を見下ろす位置まで浮かぶベジットに、ヘスティアを除いた全員が驚きに目を剥いた。
◇
「つまり、“気”とはあらゆるモノに宿る生命力の事でそれを操る事により様々な技を身に付けられる。という事かい?」
「お、流石は頭脳派。呑み込みが速い」
「ただ、私達魔導士には少しばかり相性の悪そうな概念だな」
「あぁ……確かに“魔力”と“気”は反発しそうだな」
その後、ベジットから“気”という力について一通りレクチャーを受けたフィン達は、改めてベジットからの講義を受け、それぞれ自分なりに解釈しようとその頭脳を回転させていた。
「他にも気には感知能力や気配を消す事も出来てな。後者は先程実践した通り、極めれば色々と悪さが出来たりする」
「アレには驚いたわい。まさか目の前の人間が途端に視えなくなるとはのぅ」
「“消えた”のではなく、“感じない”と言うのが恐ろしい所だな」
ベジットが実践した気の力、その中の一つの気を小さくさせるというモノは、単に気配を消すだけに留まらず、感知させないという厄介さがあった。
「それも驚いたけど僕は感知能力の方に関心があるな。それが出来れば相手がどこにいるか瞬時に解るようになるんだろ? ダンジョン探索で迷うモノは少なからずいる。闇雲に探せば二次災害になるのを、これはその危険性を限りなくゼロにすることが出来る」
「他にも、相手の気の大きさや感じ方でソイツが危険な状態か否かを探ることも出来るぞ」
「聞けば聞く程有用性が凄まじいな。それに、極め付きは───」
「あの空を飛ぶ力。そして───」
「正邪決戦と戦争遊戯で見せたあの力に繋がる。と、そう言いたいのじゃな?」
三巨頭の眼差しがベジットに向けられる。オラリオでもトップを走る数少ないLv.6の眼差しを受けて、ベジットは不敵に笑って頷いた。
「ベジット、ベジット!」
「もう一回、さっきの白い炎をもう一回やって見せて!」
すると、今度は先程までアーダコーダと騒いでいたティオナとアイズがリリルカを連れて一緒に駆け寄ってきた。
「それよりも、先ずは自分が体験してみたいと思わないか?」
「出来るの!?」
「出来るぞ」
「ベジット、良いのかい?」
「あぁ、あくまで体験させるだけでそれ以降は本人に頑張らせるってのが俺のやり方だ。ご所望なら、お三方にも体験させるが?」
「そりゃあ有難い。なら次はワシが……」
「待てガレス。次は私にやらせてくれ。魔力と気の違い、是非ともこの身で体験しておきたい」
「おいおい、ここは団長である僕が先だろう?」
やいのやいのと騒ぎ立つ三巨頭。見たことのない団長達の楽しそうなやり取りに周囲の眷族達は戸惑う一方で。
「さて、リリ達もジャンケンして順番を決めな。大丈夫、全員ちゃんと相手してやるから、喧嘩するなよ」
「「「はーい!」」」
ベジットに言われ、素直にジャンケンで順番を決める少女達。あいこでしょ、あいこでしょ、と何回目かのあいこを重ねて……。
「やったー! 私だー!」
双子のアマゾネス、妹のティオナが
「お、最初はティオナか」
「うん! ねぇベジットさん、本当に私にあんな力があるの?」
「あぁ、その為にお前の潜在的な力を少し引き出させて貰うぞ」
自分にも空を飛べる力がある。それを知ったティオナは目を輝かせてベジットを見上げてくる。
そんなティオナにベジットも優しく微笑み、彼女の頭に手を置く。
潜在能力を引き出す。言葉に出せばかの最長老や老界王神の様な奇跡の様な神業を想起させるが、実態はそこまでのモノではない。
あくまで今出せるティオナの気、それをベジットがアシストして引き出させるという所謂補助的な役割だ。
今日は”気“というエネルギーを知ってもらい、体験してもらう事。それが一番の本題でもあった。
「わ、わ、なんか、なんか凄いのが、身体の内側からブワーッて来る!」
手を乗せられたティオナから白い炎が噴き出してくる。その光景にロキ・ファミリアの全員が食い入る様に見つめ……。
「さて、それじゃあ少し飛んでみるか」
「え? う、ウワー!?」
「ティオナー!?」
ベジットに連れられ、空高く舞い上がるティオナ。妹が困惑しながら空を飛んでいく様を姉のティオネは見守る事しか出来なかった。
オラリオを一望出来る高さまで昇る。そこまで来るとティオナもある程度は馴れた様で、初めて目にする空からの景色に終始目を輝かせていた。
「す、凄い! 凄いよベジットさん! これ、私にも出来るようになる!?」
「あぁ、けど闇雲に自分を鍛えてはあんまり意味がねぇ。自分を極限まで追い詰め、その後ちゃんと労ってやれば、自然と出来るようになるさ」
「ネギ……?」
「身体を休ませるって事さ。さ、下に降りるぞ」
「えー、私もっとここにいたーい」
「ハハ、その時は自分で出来るようになってからな」
その後、ティオナを下へ送ると、子供組から初め中庭にいた全員に気の力を体験させ終えると、ヘスティア・ファミリアは自分達の本拠地へ帰っていった。
「─────凄い体験をしたな」
「あぁ、凄い体験をした」
「まさか我々の内にあの様な力が秘められていたとはな」
ベジットがもたらした新たな“気”という力。それはロキ・ファミリア………いや、全人類が垂涎の力だと認識した団長のフィンはその力を余すことなく教えてくれたベジットに頭を垂れる勢いで感謝した。
この力は、習得すればダンジョン攻略に大きな変革をもたらす事になる。最初はただの交流のつもりで誘っただけで、ベジットの力の事も半ば冗談のつもりだった。
それをはぐらかす処か真摯に教えてくれるとは思っても見なかった。
「これは、今後ヘスティア・ファミリアとの交流は真剣に考えなければならんぞ」
「元からそのつもりだったけど……うん、意味合いはゴロッと変わったな」
最初はあくまでベジットの力の秘密を知るだけの間柄が、彼処まで丁寧に教えてもらっては、オラリオの大手ファミリアとしては今後彼等を無下に扱うことは出来なくなった。
しかも、気の習得に難航すればまた教えてもらえるという保証もついている事から、ロキ・ファミリアはこれから彼の言葉を無視出来なくなる。
「何が一番恐ろしいって、アレが一切の裏がない善意から来ているモノだというのがなぁ」
「懐が深すぎるのも、考えものじゃな」
ベジット本人としてはこれからオラリオでの生活で世話になることもある、という所謂隣人へのお付き合い程度の認識なのかも知れないが、それにしたって度が過ぎる。
今後、ヘスティア・ファミリアには否応なく注目せざるを得ないだろう。
………まぁ、それは兎も角として。
「だが……フフ、この歳になって新たな力の開拓余地が出来ようとはな。今後、忙しくなるぞ」
「アイズ達若い連中にも良い刺激になった。総じてみれば、得難い機会に恵まれた様じゃな」
「あぁ、それだけは間違いない」
気という新たな力を知り、丁寧にその感覚まで教えてくれた。当然、其処には思いもよらないデメリットもあるだろうが、それでも自分達の新たな可能性にロキ・ファミリアの誰もがワクワクを隠せなかった。
「─────」
そんな自分の眷族達を見て、主神であるロキは思う。
『────おいドチビ。自分、あの只人をどう思う?』
『ベジット君かい? ………彼は僕の眷族だよ。強くて優しい、自慢の眷族だ』
『あの男にはウチらの眼が通じひん。下界の子供達の嘘を見破る眼が。こんなのは初めてや』
『………ヘファイストスも同じこと言ってたっけ』
『ファイたんが?』
『あぁ、嘘が見破れない人間は信用出来ないって。ロキ、君もその口かい?』
『……………』
『まぁ、気持ちも分かるよ。今まで自分達の下界に於ける数少ない力が通用しないんだ、不安に思う気持ちも分かる。けどね、ロキ』
『その不安な気持ちを、ベジット君に押し付けるのは筋違いなんだと、僕は思う。不安に思ってもいい、でも、それでも信じる事が
「───ケッ、あのドチビが。正論吐きよってからに」
ベジットという突然現れた
一体彼等が、どのような生き方を示すのか。一柱の神として、ロキもまた楽しみに思うのだった。
◇
翌日。今日も早朝から特訓に精を出しているベジット達。相変わらず地面に転がされているベートを尻目にベジットはリリルカと向かい合う。
「さて、今日からいよいよ武器を使っての実践だが……リリ、槍の使い方、ちゃんと覚えているか?」
「は、はい。昨日フィン様から基本的な動きは教えてもらえましたので」
昨日の交流会でベジット達は様々な情報を得ることが出来た。
その内の一つがリリルカ・アーデへの槍の扱い方の伝授である。フィンもリリルカも体格が他の種族とは小さい小人族、その体格によるリーチの差を補うべく、小人族が良く使う武器が槍だとフィンは言った。
ガリバー兄弟も身の丈以上の武器を扱い他種族との差を埋めている。その点から考えてもフィンの判断は的を射ている。
「その槍はロキ・ファミリアから貰った鍛練用だから刃は潰してある。遠慮せずに、先ずは教わった通りに振ってみろ」
「はい!」
それから暫く、ベジットはリリルカの槍捌きを観察していた。
筋は悪くない。突きや薙ぎ、払い等基本的な動きは出来ている。【勇者】のお墨付きもあってこのまま成長すれば一端の槍使いとして大成されるだろう。
ただ……。
「今一つ、だな」
「分かるかベート」
「あくまで俺の意見としては、だ。経験不足で未熟なのは当然として………何かが足りていねぇ。欠落? 欠損? 上手く言えねぇが、あの小人族には決定的な何かが足りていない」
「………成る程、俺と同じ意見っつー事は、強ち間違いではないようだ」
回復したベートがリリルカの動きを注視しているが、彼から見てのリリルカは何処か違和感があった。才能なしの落ちこぼれ、リリルカはそう言われてサポーターへ身を窶したと言うが、それとは別の何かがある気がした。
動きは悪くない。だが、何かが足りていない。経験や自信というこれから積んで行くモノとは違う………リリルカ・アーデが生まれ持った筈の力が、何かしらの栓で塞がれている様な、そんな感覚。
けれど、それをベートが感覚的に理解しているということは……。
(どうやら、あの時の交流会で見出だせたみたいだな)
一度の体験、一度の経験を経てベートもまた目覚めつつある。少しズルした感は否めないが、これで彼等が新たな可能性を広げてくれれば、自分が頑張った甲斐があったと言うもの。
そう思い、ベジットが安心したのも束の間。
「うっ」
突然、リリルカから呻き声が聞こえた来た。見れば、手にした槍を落として踞っている。
「リリ、大丈夫か?」
「なんだぁ? 手でも吊ったかぁ?」
やりすぎるのも良くないし、一先ず休憩を。と、ベジットがリリルカの肩に触れようとした瞬間。
「っ!」
「なっ!?」
槍が振るわれる。その鋭さはベジットの髪を1本切り飛ばし、後ろにある外壁に傷を入れる。
それは
「……おい、あの小人族のガキ、レベル1って言ったよな?」
「あぁ、その筈だ」
だが、振るわれた力はその範疇から明らかに逸脱していた。ベートの目測から見て
疑問に困惑する二人だが、それはすぐに解消される。リリルカの全身から、僅かだが炎が纏っているのが見える。
(“気”を習得している!? いや、だからって彼処まで劇的に変わるものなのか)
昨日、気の体験はロキ・ファミリアだけに限らず、ベートとリリルカにも同様に施している。基本的には身体能力の驚異的な向上を遂げさせている事から、ステイタスのブーストだとフィン達は評している。
だが、リリルカの動きはそれを加味しても異常に見えた。単なる身体能力の向上ではない、もっと別の何かが………。
「おい、ベジット。ガキの眼を見てみろ」
「アレは……!」
ベートに促されてリリルカの眼を見ると、普段の栗色の可愛らしい眼とは違う、血のように紅く染まった眼光が此方を睨んでいた。
「リリ、まさか……また夜更かししたのか!? 子供は早く寝なさいって、いつも言ってるでしょーが!!」
「絶対違うだろーが!!」
あまりに場違いな指摘に、ベジットの頭を叩いたベートは悪くない。
Q.アマゾネス姉妹はヘスティア・ファミリアをどう思ってるの?
A.狼人以外良い人達。但しティオネはとある理由からリリルカを一方的に恋敵認定している。
それでも、フィンが絡まないと基本的に面倒見の良いお姉さんである。
Q.なんかリリルカさん、眼が紅いようですけど?
A.
「おめめが真っ赤だー!」
「弟子の異常事態なんだからもっと真剣になれや!」
「ベート君が真っ当な反応してくれて、僕は嬉しいよ!」
オマケ
その頃のベル君。2
「あらボウヤ。私に見惚れちゃったの?」
「あ、ご、ごめんなさい! 綺麗な神様だったから、つい見ちゃって………」
「ウフフ、構わないわ。何故なら私は美の女神! アフロディーテなのだから! それにしてもあなた可愛らしい顔をしているわね。どう? 私の眷族になら───」
「ゴスペル(偽)パンチ」
「ぎぃにゃぁぁぁっ!?!?」
「め、女神様ァァァッ!?」
「フンッ、汚ならしい女神が。気安くウチの子に近付くんじゃない」
「お、お義母さん!? 女神様、向こうの山まで吹っ飛んだよ!? 大丈夫なの!?」
「安心しろ、峰打ちだ」
「人間の拳に峰なんて部分は無いよ!?」
「おぉ、ベルの奴賢くなったのぉ」
「気にする所そこじゃねぇだろ」
ベル君ちは今日も平和である。