ダンジョンに超なアイツが来るのは間違いか?   作:アゴン

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本作のアイズのレベル、後で見直した所、大分高めに設定したしまった為、随時変更しようと思います。

そんな訳で初投稿です。


物語29

 

 

 

 ────神会(デナトゥス)

 

 通称神の井戸端会議。下界に降り、全知零能となったオラリオに住まう眷族を持った神々が、下界や人類(子供)達に関する情報等を交換し合う三ヶ月に一度の会合。

 

この日、初めて神会に参加する事になったヘスティアであったが、その顔色は悪い。酷く緊張状態の彼女を見かねて友神であるヘファイストスとミアハ、そしてアストレアが隣に座った。

 

「ちょっとヘスティア大丈夫? 顔色悪いわよ」

 

「あぁ、ヘファイストス。ちょっと、今日の事を考えると朝から憂鬱でさ」

 

「……まぁ、眷族(子供)の事を考えると無理もないな」

 

 神会とは、オラリオでの情報交換の場であると同時に、昇格(ランクアップ)を果たした子供達へ二つ名を贈る命名式でもある。

 

しかし、面白がる神に取って命名式は一大イベント。神々のセンスに毎回脱帽している人類だが、場合によってはとんでもなく恥ずかしくて痛々しい名を与えられる事態へと発展する。

 

 と言うか、殆どの場合がソレである。

 

例1:【曙光と常闇の聖騎士(シャイニング・オブ・ダークナイト)

 

例2:【滅びの爆裂士(バースト・ストリーム)

 

 等々、イタイ二つ名を付けられたその眷族の主神は悶絶し、それを眺めて他の神々が笑い転げるという地獄絵図が完成されるという。

 

 その前例を聞かされたヘスティアは、ベートとリリルカという可愛い眷族に無難な二つ名を勝ち取る為の覚悟をしてきたのである。

 

「よっしゃ、全員集まったな。ほな早速始めるでー」

 

「ッ!?」

 

 特に前置きもなく、突然司会を始めるロキにヘスティアの鼓動が早くなる。

 

「先ずはドチビの所のベート・ローガやな。前のヴィーザルのトコでは【灰狼(フェンリス)】か、けど今回の階層主を単独で討伐したからLv.5へ昇格っと」

 

「ま、待つんだロ───」

 

「まぁ、既に街では【凶狼(ヴァナルガンド)】って呼ばれとるみたいやし、今回で正式にそれになるっちゅー事でええか」

 

「「「異議なーし」」」

 

「………え?」

 

 いきなり始まったベートの命名はあっさりと終わった。突然の事に戸惑うヘスティアだが、次に始まるもう一人の眷族の話に移ると、再びその顔をひきつらせた。

 

「んで、もう一人の小人族(パルゥム)やねんけど……おいドチビ。なんかリクエストとかあるんか?」

 

「え!? えっと……」

 

 しかし、ここでまさかのリクエストという振りにヘスティアはまたもや困惑する。おかしい、命名式とは神々がふざけ倒す催しではなかったのか?

 

「ったく、自分の眷族なのに考えておらんかったんかい。………なら他の奴に聞くしかないかぁ」

 

「でも、言うて神々(俺等)もリリルカちゃんの事なんて聞いたことねぇぞ?」

 

「そもそもどうやって昇格したんだ」

 

「なんでも、ベジットに一太刀浴びせたんだと」

 

「「「納得しかねぇ」」」

 

 他の神々に聞いても、特に変な二つ名を付けようとしてこない事に、ヘスティアは益々混乱し始める。

 

「私で良ければ一つ心当たりが……」

 

「おぉ、ファイたんか。なになに?」

 

「へ、ヘファイストス?」

 

 不安げに神友を見上げるが、安心しなさいと視線で語ってくれるヘファイストス。天界にいた頃から付き合いのある彼女を信じようと、ヘスティアも頷いた。

 

「先日、ヘスティア・ファミリアがウチに武具の依頼をしてきたのよ。次のダンジョン探索に必要だから手頃なモノを見繕って欲しいってね」

 

「ほんほん、ほんで?」

 

「その際、私がリリルカちゃんの得物を選ぼうと一通りの武器を握らせたんだけど………槍がヤバかったわ。多分潜在能力は第一級相当なんじゃないかしら」

 

 おおっ、と神々が騒ぎ立つ。

 

「勿論、あくまで鍛冶神としての見解だから武神とは違うかもだけど、私はリリルカ・アーデに槍使いとしての可能性を見たわ」

 

 鍛冶神が自らリリルカの得物を打つ事になった所はボカしているが、リリルカの才覚を神々の前で堂々と公開した事に、ヘスティアはこれでいいのかと冷や汗を流した。

 

「ほーん、槍かぁ。ウチのフィンも得意な武器は槍やったな」

 

「私の所のアルフリッグも槍が得意だったわね」

 

 ロキとフレイヤ。二大派閥から出される有名どころの名前に神々はどよめき始めた。

 

「おぉ、ロキやフレイヤ様の所の眷族と同じか。これは期待できるのでは?」

 

「そういや小人族の間では槍を扱う小人族の女騎士が女神として信奉されてるんだっけ?」

 

「確か……フィアナだっけか? なら願掛けにその子の名前を拝借する?」

 

「【槍の乙女(デミ・フィアナ)】とか?」

 

「いやー、リリルカちゃんはまだ八歳なんだろ? 流石にそれは荷が重すぎないか?」

 

(あ、あれ? なんか真面目に話し合われてる?)

 

 予想とは異なり、真面目に議論している神々にヘスティアは肩透かしを食らう。もっとふざけた二つ名が出てくるのかと、警戒していただけに。

 

「なら、今でた案はリリルカちゃんが第一級(Lv.5)に昇格した時に付けて上げようや。その頃になったら、その娘も一端の冒険者になっとるやろ」

 

「なら【槍の寵児(リュース)】というのはどうかしら? これからのリリルカ・アーデという女の子の未来に期待を込めて」

 

「お、いいんじゃないか?」

 

「よっしゃ、ならアストレアの案でリリルカ・アーデの二つ名は【槍の寵児】に決定や」

 

「「「意義なーし」」」

 

 トントン拍子に進んだ二つ名の命名式。ベートもリリルカも総じて変なモノでもなく、痛々しい名前で無いことに、ヘスティアは心から安堵した。

 

「よ、良かったぁ。変な名前を付けられないかずっと不安だったから……」

 

「それは………ねぇ」

 

(((変な二つ名付けてベジット(あんなの)が出て来られたら洒落にならねぇだろうが)))

 

 聞いていた話とは異なり、終始真面目に話し合っていた神々にヘスティアは胸を撫で下ろした。

 

 しかし、ヘスティアは知らない。戦争遊戯で見せたベジットのあの力を見てから、神々はヘスティア・ファミリアに対して既に其処まで強く出ることは出来ないという事実に。

 

 もし此処で調子に乗って変な二つ名を付けてしまえば、あの光の剣が向けられるのは自分達なのかもしれない。

 

故に、ヘスティア・ファミリアの命名は慎重に行うと言うのが、大多数の派閥の総意である。

 

 そんな神々の心中など知る由もなく、ヘファイストスの隣で手を振ってくれるアストレアにヘスティアは何度も頭を下げて感謝を伝えた。これで二人に胸を張って伝えられる、早く神会終わらないかなぁと安堵していると。

 

「さて、命名式はこれで終わって次が本題なんやけど………ドチビ」

 

「な、なんだい」

 

「お前ん所のベジット。アイツマジでなんなん? 怒らんから詳しく教えてーな」

 

 普段糸目だったロキの眼がうっすらと開かれてヘスティアを見やる。ある意味で予定調和、他の神々が注目する中、予めベジットと話を合わせていたヘスティアは深い深呼吸の後にポツリと語り出す。

 

「僕がベジット君と出会ったのは、何て事ない只の偶然だった。お腹が減って行き倒れていた僕を、ベジット君が拾ってくれたのが全ての始まりだった」

 

「…………そんで?」

 

「恩恵も無しに、獣やらモンスターをバッタバッタと薙ぎ倒すもんだから、流石に僕も訊ねたよ。君は何者なんだって」

 

 今でも鮮明に思い出せる。小型から大型のモンスターから果てには砂漠に潜むサンドワーム、トドメにはちょっとしたドラゴン等、オラリオに辿り着く迄の間にベジットは自分の目の前で数多くのモンスターを瞬殺していった。

 

流石に天界で引きこもっていたヘスティアも、ベジットの異常性に気付き、堪らず訊ねた。君は何者なんだと。

 

「────彼は、覚えていない。そう言ってたよ」

 

「…………記憶喪失って奴か」

 

 言い分けにしては拙いが、矛盾はない。これから先、何らかの不都合な事が起きたとしても、知らなかったで押し通せる事が出来る。

 

記憶喪失。この世界に於ける過去が存在しないベジットにとって、尤も都合の良い《設定》である。

 

「何でも、ベジット君の最初の記憶はとある森の奥深くだったそうだ。覚えているのは自分の名前と種族、そして………例の金髪碧眼の姿、それくらいだってさ」

 

「それを、うちらに信じろと?」

 

「信じる信じないは君達に任せるよ」

 

 肩を竦めるヘスティア。あくまで判断は各々の神々に任せると匙を投げているが、実際ベジットの言葉の真偽を見通せる神はいない。

 

だからこそ、ベジットを恐れる神々の代弁者としてロキが詰問する事になったのだが………そんな面倒な役割を振られてしまった女神に、普段は犬猿の仲であるヘスティアは同情した。

 

 暫しのにらみ合い。相手の真意を探ってくる様なロキの視線にヘスティアも毅然と見詰め返す。

 

僅かに張り詰められる空間、しかしそれは当然ながら長く続く事もなく……。

 

「ま、ええやろ。どうせドチビにオラリオをどうこうする度胸なんてあるわけないやろうし、ベジットに関してはそっちに丸投げさせて貰うわ」

 

「フンッ! 言われなくたってベジット君は僕がチャンと面倒見るもんね!」

 

 結局のところ、今の詰問はベジットという規格外の存在でオラリオのパワーバランスが崩れた事に対する牽制、或いは確認みたいなモノ。

 

 ヘスティアは闇派閥の様なオラリオを破壊して下界を滅茶苦茶にする………等という大それた思想は持っていない。処か、ヘスティアは天界の頃から大神すら一目置いている善神である。

 

 そんな女神が下界の人類を脅かす事は絶対にしないと断言できる。その一点に限って言えばロキも信頼していた。

 

だからこそ、この詰問は必要な儀式であり茶番でもあったのだ。

 

「それじゃあ最後に質問や。ドチビ、自分ベジットの種族を聞いたと言ったな? 何や、ベジットの種族って、只人(ヒューマン)やなかったんか?」

 

 記憶喪失のベジットが覚えている数少ない自身の事、それも種族と言うのなら自分達も知っているかもしれない。

 

人類史が始まって幾星霜、誰も知られていない。或いは既存して、滅んだ種族の生き残りかもしれない。そんな未知の前に、神々は自身の好奇心が疼くのを自覚した。

 

「────サイヤ人。戦闘民族サイヤ人、ベジット君はそう言ったよ」

 

 サイヤ人。初めて耳にした種族。そんなモノはいない、実在しない。いる筈がないと、神々は困惑する。

 

しかし、そう語るヘスティアの顔に嘘を言っている様子はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 【豊穣の女主人】での宴から一夜明け、現在。

 

「─────暇だ」

 

「暇ですねぇ」

 

 ヘスティア・ファミリア本拠地。廃れた教会にてベートとリリルカはそれぞれ無為に過ごしていた。

 

 ベジットによってランクアップを果たし、新たな位階へと踏み入れた二人。本来ならすぐにでもダンジョンに潜り、今の自分の力が何処まで通用するか知りたい。

 

そんな冒険者の(さが)とも呼べる衝動。しかし、今の二人には装備がなく、現在は団長(ベジット)の命令もあり、休暇を強要されていた。

 

「ったく、ベジットの野郎。自分ばかりダンジョンに潜りやがって……!」

 

「仕方ありませんよ。ベジット様の“気”は変幻自在、鎧にも槍にも剣にもなるから、装備なんて必要としないお方ですし」

 

「………逆をいえば、それぐらいこの力を扱えるようになれば良いって訳だな?」

 

「さぁ、何しろベジット様の方針は言うなればメリハリを確りさせる、という事ですからね。鍛える時は鍛え、休む時は休む。仮にベート様が“気“を極めても、ベジット様は休ませていたんじゃないでしょうか」

 

「────チッ、融通が効かねえ野郎だ」

 

「そこは同意しますね」

 

 あー、うー、と。普段から鍛える事ばかりしてきた二人にとって、この休むという時間は中々に辛かった。

 

 ベジットが探索に向かう際には遊んでくる事も推奨していたが、生憎リリルカには遊ぶという事がどういう事か分からず、ベートもまた遊びに行く気分にならなかった。

 

せめて主神が帰ってきてくれれば、神会での話を聞いたり談笑出来たりするのだが………。

 

「………ベート様って、オラリオに来る前は何してたんです?」

 

「………………」

 

「ベート様?」

 

「五月蝿ェ、詮索するんじゃねぇ」

 

 これである。数少ないヘスティア・ファミリアの眷族同士、互いのコミュニケーションを図ろうとしても、ベート・ローガは話を繋げようとしない。

 

素行も口も悪いベートだが、それでも本拠地に留まっている辺り、何だかんだでリリルカの事も気に掛けている様だ。

 

(これが、ヘスティア様が仰っていた“ツンデレ”ですか。なんとまぁ面倒くさい……)

 

 他所の冒険者を雑魚と罵倒し、嘲笑うのも彼なりの激励なのだと、ヘスティアから聞かされた時は耳を疑った。

 

けれど、ベジットの見解も似たようなモノだと知り、ベートの悪態は彼なりの励ましなのだとリリルカも思うようになった。

 

 尤も、リリルカの場合はソーマ・ファミリア時代に散々罵詈雑言を浴びてきたから、今更ベートの悪態程度に傷つく事はないと言うのが本音である。

 

 ともあれ、このまま本拠地にいるのも手持ち無沙汰が過ぎる。最近評判のジャガ丸くんとやらでも食べに行こうかと、リリルカが席をたったその時だ。

 

 コンコンッ、扉を叩く音に二人の視線がそこに向けられる。え、誰? 不思議に思ったリリルカとベートは互いに顔を見合わせた。

 

 開かれる扉の向こうから現れるその男は、獅子の鬣の様な髪を靡かせて廃教会へ足を踏み入れる。

 

「突然の来訪申し訳ない。此処がヘスティア・ファミリアの本拠地で間違いないか?」

 

「あぁ?」

 

「えっと、どちら様でしょうか」

 

 突然見知らぬ者の来訪者にリリルカとベートの視線が向けられる。

 

「私はレオン・ヴァーデンベルク。バルドル・クラスの団長で今は《学区》で教鞭を執っている者だ」

 

 

バルドル、学区、聞き慣れない単語にリリルカは首を傾げるが、レオンの名に聞き覚えのあるベートはその目を丸くさせる。

 

「おいレオンって、まさか【ナイト・オブ・ナイト】か!?」

 

「ベート様?」

 

 椅子から立ち上がり、明らかに動揺しているベートにリリルカも困惑する。どうやらベートの反応からして相当の実力者の様だが……。

 

「突然の押し入り済まない。だが、どうか彼に会わせて欲しい」

 

「彼って……?」

 

「ベジット。どうか私に世界を救った英雄と引き合わせてくれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────同時刻、ダンジョン。【大樹の迷宮】にて。

 

「いやー、まさか資金稼ぎの帰りにこんな場面に出会すとはなぁ」

 

 今日も今日とて資金稼ぎ。夢の豪邸な本拠地に向けて絶賛資金稼ぎをしていたベジット。

 

その背にリリルカから借りた荷物入れを背負い、ホクホク顔でダンジョンから帰還しようとしていた時、ふとモンスターに襲われている誰かを見かけた。

 

 人間? それにしては変わった“気”だなと、ダンジョンのモンスターに似ているけど違う気配に吊られ、興味本位で助けてみたところ。

 

「まさか、モンスターを襲うモンスターがいたとはね。いや、それ自体は珍しくもないんだろうけど………」

 

「あ、アンタは………」

 

「う、うぅ……」

 

 頭から血を流し、気を失っている歌人鳥(セイレーン)と、その歌人鳥を庇うように前に立つ赤い鱗の蜥蜴人(リザードマン)

 

「………まさか喋れるとはねぇ。ホントスゴいわ、ダンジョン」

 

 そう言って、なにやら戸惑っているモンスター(?)にベジットは念の為に持ってきたポーションを手渡すのだった。

 

 

 

 

 






Q.【豊穣の女主人】はあれからどうなったの?

A.多大な犠牲を払って、何とかベジットの腹を満たせました。

代償に猫娘は戦闘不能、銀髪の町娘も半泣き、女主人は少しだけ手首を痛めました。

つまり何が言いたいかって、ベジットを同様に満足させたヘイズはスゲェって事。

次回、未知との遭遇。




オマケ。

もしもベジットが古代の世界に来てたら。その2

「よう、危なかったなぁフィアナ。単騎で暴れるのもいいが、ちゃんと仲間も頼れよ」

「………あなたは」

「ん?」

「私の眼を見ても、微塵も恐れないのですね」

「別に恐れる必要はないだろ。宝石みたいで綺麗じゃん」

「………っ」

「それに眼の色だったら俺も変えられるし、何なら赤い方が新鮮味がある」

「あなたは………」

「それに、その眼が嫌いだって言うなら、いつか俺が何とかしてやる。だから笑え、フィアナ。勝利は何時だって、笑っている奴に訪れるんだからな」

「…………不思議な人ですね。あなたは」

「ハハ、良く言われる」

「フフフ」


「うぎ、ウギギギギ……!」

「お、おいディム、どうした? 凄い顔してるぞ」

「脳が、脳が……震、える!!」





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