ベジット来たぞぉぉぉぉッ!!
そんな訳で初投稿です。
「ほーん、
ダンジョン、21階層。【大樹の迷宮】にて、
「あぁ、それにしても助かったぜベジッチ。アンタがくれたポーションのお陰で俺もレイも助かったぜ」
「まさかポーションがモンスターにも効くとは思わなかった。……いや待って、ベジッチて俺の事?」
「ダメか?」
「だめというか、そこまで呼ぶならフルネームで呼べよ」
「いいじゃん。呼びやすいぜ、ベジッチ」
「そうかぁ?」
蜥蜴人……リザードマンを縮めてリドと名乗る喋るモンスター、その異端さから
「………あノ」
「ん、どした?」
「あなたは、私達ヲ見て何も思わないのデスカ?」
時々カタコトが混じりながら、それでも流暢に言葉を話す
「ん~……凄いね、ダンジョン。くらい?」
人間の言語を話し、人の様に感情を晒す。これまでモンスターは人類の絶対悪として存在していた。
遥か昔、何千年も間で人類の存在を脅かしてきたモンスターが言葉を話す。知性を示し、知能を仄めかせる。
それは、これ迄のこの世界の歴史に於いてあまりにも衝撃的すぎる新事実。普通なら受け入れない、普通なら出会った瞬間殺し殺される間柄。
だから、
対してベジットの感想は、本人が冒険者としてまだ新米の気分でいることから、“そういうのもあるのか”くらいの気持ちである。
「まぁ、無闇に人を襲わないのなら、俺から言えることは特に無いな」
あっけらかんと、不安そうに訊ねてくるレイにベジットは率直に応えた。冒険者を襲わなければいい、ただそれだけの理由でベジットは目の前の異端児の
「それで、お前らの縄張り……いや、棲みかは何処だ?」
「ちょ、ちょっと待ってくれベジッチ。本当に、俺達を見て何とも思わねぇのか?」
道を訊ね、怪我した二人を棲んでいる場所まで護衛を自らかってでるベジット。そんな冒険者にリドは改めて訊ねるが。
「イヤだって、お前ら
事実、ベジットに発見されるまで二人は他のモンスターから率先して狙われていた。傷付き、倒れる
「ほれ、そんな事は良いからさっさと移動するぞ。他の冒険者に見られたら余計面倒だろ」
「あ、あぁ……」
「分かリましタ」
その後、ベジットに促され、言われるがまま棲みかへ向かい、此処まで来れば大丈夫という
「んじゃ、俺はもう行くから、お前らも今後はもう少し気を付けろよ」
「ま、待ってくれ! まだ礼が……!」
「良いって良いって、俺も今日は早く帰りたいし、機会があったらまた逢おうな!」
自分も先を急いでいるからと、何かと呼び止めようとしてくるリドの声を振り切り、ベジットはダンジョンを後にした。
人類史に刻まれる出会い。その出会いはあっという間に果たされ、そしてあっという間に解散となった。
◇
「ふぃー、やっぱお日様は良いね。気分が明るくなる」
そして無事に地上へ戻ったベジットは今日の成果を確認しようと、そのままギルドへ脚を進めようとする。今日もリリルカから借りた
この分なら後二、三回潜れば立派な庭付きの屋敷が土地ごと買えるかもしれない。
しかし、この分ならその心配もないだろうと、荷物を抱え直し、改めてギルドへ向かおうとした所で。
「おーい! ベジットくーん!」
「ヘスティア、今帰りか?」
「うん。無事に二人の二つ名が決まったよ。どちらも無難! 取り敢えず肩の荷が降りたよ」
「そりゃ良かった」
神会で行われる眷族への名付け、ベジットもそれとなく話は聞いていた為、ベートとリリルカに変な二つ名が付けられないか心配していたが、ヘスティアの様子から見てどうやらその心配はなさそうだ。
「ちょうど俺もギルドに換金しに行く所だし、どうせだから一緒に帰るか」
「わーい、デートだ」
「ついでに二人にジャガ丸くんでも買ってやるか。最近流行ってるみたいだしな」
「あーん、無視するなよー」
主神からのデート発言を聞かなかった事にして、その場から去ろうとするベジットだが………。
「やぁ、ベジット。この間ぶりだね」
「やっほー、ベジット。ダンジョン帰りか? お疲れ様やで」
「フィン、それにロッキー様」
「誰がロッキーやねん」
横から声を掛けてくるロキ・ファミリアの団長とその主神、気さくに声を掛けてくるフィンに知らぬ間ではないベジットも脚を止め、軽めにロキを弄りながら返事をする。
「いやぁ、なんか個人的にしっくり来ちゃって………この際ロッキーに改名しません?」
「せぇへんわ! 時々けったいな事を口走るな自分!?」
「その内格闘技の神様になりそう」
「まさかの武神枠!?」
独特なBGMと共に現れる女神ロキ。ちょっと見てみたいと思ったのは
「ハハ、ウチの主神と仲良くしてくれるのは嬉しいけど、今日君に声を掛けたのは理由があるんだ」
「うん? なんだ?」
「君に教わった“気”、あれについてなんだけど……実は一人目覚めそうな者がいるんだ」
以前の交流会で、ベジットはロキ・ファミリアへ“気”に関する知識と見聞を広め、その後は教え導く事も約束している。
だが、あれからまだ一月も経っていないのに早速“気”に目覚めようとしている者がいると聞いて、流石オラリオトップのファミリアだなとベジットは感心した。
「へぇ、もう一人目が出てきたか。流石はロキ・ファミリアだな。それで誰が目覚めたんだって? アイズか、アマゾネスの姉妹か、それともガレスのおっちゃん? はたまたリヴェリアか」
「いや、彼の名はラウル・ノールド。僕達の後輩だ」
「………ラウ・○・クルーゼ?」
「誰やねん」
ラウルという聞き慣れない人物の名にベジットの脳裏に仮面の男の顔が浮かぶ。そんな奴いたら忘れられないだろうに………だが、女神ロキの言葉からしてどうやら違う様だ。
「将来、ウチの柱の一つになり得る人物さ。未熟で、目立った才能が無いと最近は落ち込んでいたが……」
「なんだ、気を習得して増長でもしたか?」
「まさか、どうやらラウルの奴自分で制御出来ていないみたいでな。この間も、ウチの屋敷の壁にぶつかってなぁ、穴開けてしもてんねん」
「えぇ……」
これ迄才能が無いと言われてきた者が、突然力を得た事で陥る………所謂典型的な増長ターンかと思ったが、どうやらそのラウル某は結構面白い人物らしい。
「君のいう“気”、アレを纏う事は出来るんだが、如何せん制御がおざなりなんだ。ベジット、暇な時で良いから今一度気について教えてくれないだろうか」
「それは別に構わないんだが………」
「なんや、歯切れ悪いなぁ」
何事も快活なベジットにしては珍しく口ごもっている。何かを気にしているのか、少しばかり考え込む素振りを見せた後……。
「なぁロキ様。一つ聞きたい事があんだけどよ」
「なんや?」
「冒険者の魂っていうのかな。ダンジョンで死んだ冒険者ってのはちゃんと成仏したりすんのかなって………」
「んー、あー、成る程」
「ベジット君、何でそんな事を?」
ベジットが訊ねてきたのはダンジョンで死した冒険者の魂の有無。ダンジョンでは多くの危険性が伴い、時に
そんな人の死で溢れるダンジョンが、人の怨念やら恨みやらで変な影響を受けたりしないのか。新米冒険者であるが故に浮かんだ素朴な疑問、対してロキはそう言う事かと変に納得して、ベジットに説明した。
「つまり、ベジットは死んだ冒険者の魂がダンジョンで化けてでたりせぇへんかって気にしてたんやな。なんや、アレだけデタラメに強い癖に幽霊の類いにビビッとんのかい」
「仕方ねぇだろー、こちとら
実際、化けて出てきたらヘスティアから教えて貰った事で会得した
そっぽを向いて図星を突かれたベジットにロキはウヒヒと悪戯に笑った。
「心配せんでも、冒険者の魂は基本的にダンジョンで死んでも魂はちゃんと天界に還るから安心しいや。ベジットが危惧している
「そ、そうなのか」
「とは言え、未だ全容が明らかになっていないダンジョンだからね。あまり楽観視はいけないと忠告だけしておくよ」
「うぐ、そ、そうなのか」
ロキで安堵し、フィンに釘を刺される。ベジットはその強さ故に目を曇らせてしまうが、意外と人間味がある。現に目の前で本人の人間らしい一面を目にしたフィンとその主神は気の抜けたように笑みを浮かべた。
「それじゃあベジット、暇な時で良いからレクチャーの件……」
「おお、いいぞ。なるべく早く都合付けてやるから、その間ラウル某には“気”を扱わないよう言い含めておいてくれ。変な癖を付けられたら矯正するのに手間だからな」
「了解した」
それだけを言い残し、ロキ・ファミリアの代表達は去っていく。
(成る程、つまり
ロキ・ファミリアの去っていく後ろ姿を眺めて、ベジットはふとそんな事を考えていた。
冒険者の一番死亡率が高いのは当然ながらダンジョンで、有史以来数多の冒険者がダンジョンに挑んでは散っていった。
理由は道半ばで力尽きたり、不測の事態に陥ったり、仲間を庇ったり、見捨てられたり、様々な要因が重なって死に追い詰められていく。
そんな、ダンジョンで日常的に冒険者が死んでいるのなら、怨念の一つや二つ出来ていそうなのに、それはないという。
この世界に天界というモノが実在しているお陰なのか、ダンジョンで死した冒険者は他の者達と同様に天界に還りまた新たな命として転生されるという。
(この世界には天界と同様に輪廻転生という概念が
モンスターは基本的にダンジョンから生まれるもの、倒されては生まれ、倒されてはまた生まれる。何度も繰り返し行われるモンスターの死と生誕により、
そしてそのバグを排除しようとする動きがあるのも、通常のモンスターに襲われる理由なのだとしたら……ダンジョンは何らかの母体である可能性も高い?
(そもそも、なんでダンジョンはそんなホイホイとモンスターを誕生させられるんだ? そもそもそのエネルギーは
人間でもそうだが、赤子を産み出すという行為は女性にとって命懸けの行い。多大な労力とエネルギーを消費して次代の命を産み落とす尊きモノ。
ではダンジョンは? ダンジョンを人と比べても仕方がない事だとは思うが、ダンジョンのモンスターを生み出すエネルギーは一体何処から供給されているのか。
分からない。まだ冒険者として活動して一年にも満たない新米のベジットが気に掛ける事ではないが、どうしても気になったので試しに隣の主神に訊ねることにした。
「なぁヘスティア」
「ん? なんだい?」
「ダンジョンってのは………なんなんだ?」
遥か人類史よりも長くこの星に存在している
ダメで元々、気になったから聞いてみた。そんな軽い気持ちで尋ねてみたら……。
「────ダンジョンはダンジョンだよ」
どこまでも平坦な声音で、それだけ応える主神にベジットはそれ以上問い詰めようとは思わなかった。
「良かったのかいロキ、
人気の多い大通りを歩む一人の眷族と一柱の女神、本当なら色々と聞きたいことがあった筈なのに、アッサリと引き下がる主神にフィンは何となく訊ねた。
ベジットという存在は余りにも規格外。いつ、何処で、どのような経緯でアレだけの力を手に入れたのか本人の記憶の事もあって出自も目的も全く分からない未知の塊。
普段は未知を求め、娯楽に飢えた神々も最近はベジットに対して様子見の姿勢を貫いており、戦争遊戯直後とは打って変わって接触を控えている。
神々すら畏れさせるベジット。そんなベジットを警戒しない道理はないし、表面上は良き隣人を装っても、悪神と畏れられたロキが何もしないと言うのは……違和感があった。
「んー、まぁ最初は問い詰めるつもりやったんやけどな。あの兄ちゃん思ってた以上にホンワカしてて、何か気が削がれてしもうたんよな」
分かる。ロキの苦笑いを見てフィンも同意するように頷いた。
確かに、自分達に“気”と言う概念を教えてくれた件といい、ベジットは基本的に聞けば応えてくれる人物だ。
悪意がある言い方をすれば………都合が良い。基本的にファミリアの手の内は隠すのが各派閥の暗黙の了解だ。
例えば、ロキ・ファミリアでは長年ダンジョン探索で培ってきた冒険のイロハがあり、組織運営の連携に繋がっている。
これを余所の派閥に譲渡するという事は、ロキ・ファミリアの情報をそのまま手渡している事に等しい。もしこの情報がロキ・ファミリアに悪意ある派閥、或いは
だが、ベジットはそんな拘り等初めから持ち合わせておらず、自分達に教えてくれた。
善意の暴力。ヘスティア・ファミリアは敢えて自らの手札を晒す事により、此方の選択肢を狭めて見せた。
向こうに一切の悪意はなく、また特別な意図もない、お陰で自分達の間に純正たる善意の関係が出来上がってしまっていた。
故に、フィンは内心ベジットの事が苦手であった。向こうが誠意ある対応をしてきたなら、それにちゃんと応えるのが【
「ま、一先ず今はラウルの面倒を見てもらえる約束を取り付けただけで良しとしようや」
「だね」
記憶喪失、気、そしてサイヤ人という未知の種族。闇派閥との決戦を乗り越え、日常を取り戻しつつある迷宮都市に新たな風が吹くのをフィンはこの時、確かに感じた。
◇
「ジャガ丸くん、結構イケるな」
「あまり食べ過ぎないでおくれよ、二人の分もあるんだから」
ギルドでの換金も終わり、主神と共に帰路に就く。手元に最近オラリオで流行りつつあるジャンクフードの袋を片手に、ベジットはアツアツに揚がったジャガ丸を頬張っていく。
「ヘスティアのバイト先だから心配はしていなかったが、店長さん……良い人で良かったな」
「怒ると滅茶苦茶怖いけどね」
以前からバイトをしていたヘスティアの働き先、主にジャガ丸の販売員を務めていたヘスティアは怒ると怖い店主に笑顔をひきつらせる。
「他にも色々と新作を練っているみたいだよ。小豆クリーム味とか、カレー味とか」
「それ結局
他の品に注目を浴びせ、結局は普通のが一番旨いよね。でもたまには味変するのもいいよね。そしてまたプレーン味に嵌まっていく。あれ、永久機関が完成した?
この事を考慮して新商品の開発に勤しむジャガ丸店長の手腕に脱帽し、そのままジャガ丸談義を進めること数分。既に愛着が沸きつつある廃教会の本拠地へと帰ってきた。
「ただいまー! ベート君、リリ君、お土産買ってきたよー!」
扉を開き、意気揚々と凱旋するが………教会の中の空気は重く、鎮まり返っていた。
「へ、ヘスティア様、ベジット様……」
「なんだぁ、随分と空気が重いな。そんなに腹減ってたのか? ホラ、ジャガ丸くん買ってきたから、これ食って元気出せ………って、あれ? どちら様?」
中に入ると、
二人から流れる空気に居たたまれなくなったリリルカがベジットに助け船を求めている。ベートの様子からまた喧嘩でもしたのかと訝しむが、どうも違うようだ。
「………あなたが、ベジットさん。ですか?」
鬣の青年が椅子から立ち上がり、此方を見据える。中々に鍛えられ、その強さをオッタルクラスだと見抜いたベジットは、何だか嫌な予感を感じながら応えた。
「確かに俺がベジットだが………アンタは?」
「俺はレオン、レオン・ヴァーデンベルク。【学区】のバルドル・クラスにて団長として教鞭を執っている」
鬣の青年……レオンから怒濤に押し寄せてくる情報の波にベジットは目を丸くさせるしかなかった。
学区? バルドル・クラス? バルドルが神の名前だというのは分かるが……クラスってなに? ファミリアじゃないの? 教鞭って事はこの人教員なの?
良く分からない情報の波にベジットは困惑するしかなかった。一応ヘスティアの方へ視線を向けるが………やはり自分同様、頭に疑問符を浮かべている。
「はぁ、そのバルドル・クラスの団長……教師? が、俺に何のようで?」
「………先ずは、突然の来訪について謝罪させて欲しい。この度、無断無許可での来訪、誠に申し訳なかった」
「あぁいえ、此方も何もお構い出来なくてすみません」
結構強い割に礼節がちゃんとしている。外見の清潔さから礼儀正しい何処かのお坊っちゃんかな? なんて思っていたのも束の間。
「実は、ベジットさんにある事実を確認したくお邪魔させていただいております」
「確認? なんか俺が確認する事ってあったっけ?」
「はい。竜の谷、ひいては黒竜討伐を果たしたという最後の英雄たるあなたに、是非とも話を窺いたく」
「──────────はい?」
固まる。ベジットの挙動が、表情が、感情が、起伏するあらゆる要素がレオンの口からもたらされる爆弾発言で凍り付く。
え、何でコイツが知ってんの? 学区ってアレでしょ、学校でしょ? なんでイチ教員がそんな事を知ってんの?
固まった表情のまま、冷や汗がダラダラと流れていく。しかし、対するレオンはそんなベジットの反応に確信を抱き………。
「やはり、【静寂】………アルフィアさんの言っていたことは間違いじゃなかった」
「ッ!?」
「今、私は確信した。遥か北の大陸にて、大精霊の風印にて封じられていた結界、それを壊し、黒竜を討伐したのは………他でもない」
「ベジットさん。アナタなのですね」
ビシリッと指を突き刺してくるレオン(尚幻覚)。それはさながら真犯人を特定した名探偵のよう(これも幻覚)。
ベートとリリルカの視線が向けられる。嘘か、本当か。団長であるベジットから直接聞き出そうと二人は何も言わずジッと見つめてくるだけ。
ただ、リリルカの瞳だけは困惑に満ちていた。
隣を見る。最後の頼みとしてベジットは主神であるヘスティアに助けを求めるが………。
ヘスティアは何も言わず、ただ悲しそうに首を横に降った。
嗚呼そうか、もう逃げられないのか。追い詰められた
「ほんの、出来心だったんです」
遂に、自白した。
Q.ベジットが風印壊したの?
A.証拠不十分により不起訴。尚、本人は否定している模様。
???「彼なら、きっと何とかしてくれる………あとは、お願い………アイズ………」
オマケ
もしも15年前にヘスティアとベジットがいたら……。
「おい、遂にゼウスとヘラの二大ファミリアが三大冒険者依頼に挑むそうだぞ!」
「最初は陸の王者ベヒーモスか。このオラリオに君臨して千年、いよいよこの時が来たか!」
遂に、厄災と称されるモンスターに挑むとされている二大派閥。オラリオが………いや、世界中がその話題に持ちきりの一方で。
「───来ちゃったね。ベジット君」
「───来ちゃったな、ヘスティア」
一人の眷族と一人の女神が、酒場の隅で頭を抱えていた。
「どーするんだい! 今世界中で話題になっている例のモンスター、三体とも既に君が倒しちゃっているじゃないか! 何がちょっとした腕試しだい! 跡形も残らず消し飛ばすとか、君の辞書に手加減という文字はないのか!?」
「だ、だって、三体とも良い塩梅に叩き甲斐があって、つい力を出しちまったんだよ。一応アレでも手加減はしてるんだぜ」
「問題はそこじゃないよ! どうするんだい! いざ現地に行ってみてもぬけの殻だってバレたら! ゼウスもヘラも基本的に良い子だけど、睨まれること山の如しだよ!」
「………俺も、最近マキシム達から狙われてる感じがするんだよな。アルフィアだっけ? アイツとアイツの妹の病を治してから、やたらと絡んでくるんだよなぁ」
「メーテリアちゃんだっけ? 彼女の旦那君もスッカリ君に懐いているよね。何かした?」
「前にダンジョンでミノタウロスに襲われてたのを助けた」
「そうなんだ。って、ちがーう! 問題はそこじゃないよ! どうするんだいこれから!」
「何らかの奇跡が起きて、モンスター達が復活している可能性は……」
「ないね」
「実は寿命が尽きていた説」
「君が尽きさせたんだろ」
「ヘスティア」
「なんだい」
「バレたら逃げよう」
後に、二大派閥と一つの派閥による世界を股に掛けた盛大な鬼ごっこが始まるのは………また別のお話。