ダンジョンに超なアイツが来るのは間違いか?   作:アゴン

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みんな、噂のジークアクスはもう見たかな!

藤堂の簡易領域展開を受けた真人みたいな気持ちになれるぞ!

是非とも観て欲しい!

そんな訳で初投稿です。




物語31

 

 

 

 最初は、ちょっとした腕試しのつもりだった。

 

最初で目覚めた森、そこで己をベジットとして自認した自分は、熊に襲われ、熊を倒し、自らに流れる力を自覚し、完全に制御する迄の間人となるべく関わらないようにしていた。

 

 力を御するべく、また森で目覚めた以前の記憶を探るべく各地を放浪。その間に様々なモンスターを狩ってはその度に力の制御の成功を実感した。

 

 時には草原、時には砂漠、時には海と、旅の最中で様々な環境でモンスターを狩り、その経験を己の糧とした。

 

 他にも森、山、沼など、如何なる環境でも戦えるように己を鍛え、進んでモンスターを狩っていった。

 

 え? 狩っていったモンスターの中で印象に残ったのはって? ………そういえば、沼と一体化したモンスターとかいたな。森にも妙にデカい黒い蠍とかいたっけ。

 

 どっちも今まで狩ってきたモンスターと大差ないから、外見以外そこまで気にはならなかったな。

 

 沼地の近辺には他の人はいなかったのか? ………はい、いました。

 

 いや、その………あの頃の俺、まだ力の制御が甘くてさ、その………消しちゃったんだよね、沼地。こう、クンッてやったら……ね。範囲を絞って、威力も絞って。

 

 そしたら丁度良く沼地だけボンッてやって。そしたら遠くから怒号が聞こえてきて………怒られると思い………はい、逃げました。

 

 いやでも! 蠍の方は周りに迷惑を掛けなかったから! 何せ空で仕留めたからな! まだ制御が甘い頃だったが、周囲に迷惑を掛けないよう、空に打ち上げてから終わらせたから!

 

………遺跡は半分吹っ飛んだけど

 

 その後に何やら妙な気配を放つ女性が声を掛けて来たが(後で女神だったと知った)、生憎此方はまだ修行中の身。おいそれと触れ合い、加減を誤って吹っ飛ばしてしまったら目も当てられない。

 

 だから仮令、声を掛けられても基本的に進んで現地の人々と関わろうとしなかった。………いやだって、あの頃の俺ってばマジで力の制御が甘かったんだよ、ほんのちょっとしたコミュニケーションで相手を殺したらそれこそ笑えないだろうが! 実際沼地をまるごと消しちゃったワケだし!

 

 なんて悲しいモンスター? やかましいわ! 本当にあの頃の俺は力加減が下手で色々と危なかったんだよ!

 

 実際それでアフロを吹っ飛ばしてしまったワケだし……え? な、ナンデモナイヨ。

 

 ───コホン。そんな訳で一人旅を満喫していたある日、北の大地で一際大きな気を感じた自分は、遠巻きでも見える何か凄い………風? 竜巻? みたいなものが見え、彼処に何かいるのかなー? って興味本位で少し近付いてみたら。

 

 はい、黒竜ですね。でかくて大きな竜が消えた風? みたいな中から他の竜達を大量に伴って出てきたので、あの数が人里を襲ったりしたら危ないだろうなーって、修行の成果を試す意味合いも含めて戦って……。

 

それで………はい。倒しました。

 

 その後は世界の中心都市でもあるオラリオに向かうようにして、その途中で行き倒れていたコイツ(ヘスティア)を拾ったってワケ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「以上が、俺のオラリオにやって来た経緯だな」

 

 静まり返った廃教会。努めて快活な口調で話していたつもりなのに、話し終わった途端に重くなる空気に流石のベジットも冷や汗が流れた。

 

レオンはただ静かに聞き入れ、ベートは顔を手で覆い俯いてしまっている。唯一眼を輝かせて話を聞いているリリルカだけがベジットの心の癒しとなっていた。

 

「す、凄いですベジット様! 黒竜を、あの黒竜を! お一人で倒してしまうだなんて!」

 

「あ、うん。それほどでも……」

 

 普段、色々とツッコミが激しいのに珍しく純粋に尊敬の眼差しを向けてくるリリルカだが、今は何故かその眼差しで酷く痛む。主に心が。

 

「────心が追い付かねぇ」

 

 ベートはベートで何だか凄く深刻そうに受け取っている。まさか、この男も黒竜を狙っていたというのか。

 

「………女神ヘスティア、黒竜の件を他に知る者は?」

 

「えっと、ヘファイストス……かな。黒竜のドロップアイテムを鑑定しに」

 

「「「黒竜の!?」」」

 

 黒竜のドロップアイテムと聞いて今度は三人揃って驚愕を顕にしている。眼を剥き出し、これ迄冷静沈着な印象だったレオンのキャラが崩壊する程の驚きップリにヘスティアはアッと口許を抑え、ベジットはアチャーと天を仰いだ。

 

「こ、こここここ黒竜のドロップアイテム!? それ、何処にやったんですか!?」

 

「この本拠地(ホーム)にはンなの欠片も見当たらなかったぞ! 何処だ、何処で落とした!?」

 

「なんで落とした事を前提にするんだよ」

 

「んなのテメェだからに決まってンだろうがっ!!」

 

 この駄犬、もっかいギッチリと躾したろうかな。ベジットは思った。

 

 黒竜のドロップアイテム。それは黒竜を討伐し、《救界》の証とも取れる謂わば伝説のアイテム。

 

ベジットの語る話が全て事実で、且つ本当にそんなモノが下界に残されているのだとしたら………万が一その劇物が他の誰かに渡った場合、世界がひっくり返るのは間違いない。

 

 唯一救いなのが、その話を信じる者が今の所この世界には何処にもいないということ。今、この廃教会にいる面々を除いて。

 

「言えやベジット! その黒竜のドロップアイテムは何処にある!?」

 

「ー〉H〈ー」

 

「何だその面は! 嘗めてンのかテメコラァッ!?」

 

 口元をキュッと閉じ、目も閉じて視線を合わせないようにするベジットに、遂にベートの怒りが爆発する。

 

 頑なに口を割ろうとしないベジット、掴み掛かるベートにそろそろヘスティアが止めてやろうと動こうとした時。

 

「────あ」

 

 ふと、何かを思い出したレオンが口を開いた。

 

「───そういえば、ザルドさんが引いていた荷馬車に、布で巻かれた大きなドロップアイテムらしきものがあった気が………」

 

 ダラダラとベジットの顔から冷や汗が流れる。

 

(そうだよね、コイツさっきアルフィアから聞いたって言ってたもんね! ザルドも一緒だったなら知ってるか!)

 

(つーかあの女、何気にチクッてんじゃねぇよ!? 仮にも命の恩人だぞ俺は! アレか、してやられた意趣返しか!)

 

 大正解(ドンピシャ)である。

 

 続々出てくる新事実、黒竜討伐から嘗てオラリオを襲った【暴食】と【静寂】の生存の流れるような話の繋がりに、ベジットでは止められる術がなかった。

 

 ギギギと、油ノリの悪いブリキ人形の様な音を立てて、ベートが再びベジットを見る。

 

「くれたのか」

 

「え?」

 

「テメェが倒した黒竜を、二大派閥の取り残しを奪ったと思って、償いついでにくれてやったのかテメェは!?」

 

「ウッス、その通りっス」

 

 ヘスティア・ファミリアに入ってまだ一年も経っていないのに、スッカリ此方の心情を察せるようになったベートにベジットは嬉しくなった。

 

「あ、あの二人が、オラリオを襲った二人が生きている? ベジット様の手引きで?」

 

 一方で、リリルカは事の重大さに気付き、ガタガタと震え始めていた。

 

「大丈夫だよリリ君。要はバレなきゃいいんだよバレなきゃ」

 

 ヘスティアが精一杯のフォローをするが、リリルカの耳には入っていない模様。

 

「………おいヘスティア」

 

「なんだいベート君」

 

「この件、他に知ってる奴は?」

 

「黒竜の件ならヘファイストスだけ。二人の件はミアハとディアンケヒトも知ってるよ」

 

 最早ヘスティアも色々と諦めたのか、涼しい笑顔で質問に答え、聞いたベートは頭を抱えた。

 

 この時既に、ベートとリリルカは先の大抗争と正邪決戦の裏側を何となく察し、溜め息を吐いて……。

 

「「聞かなかった事にしよう」」

 

 あの主神()にしてこの眷族()あり。万が一諸々の事がバレた時の事を予見した二人は、聞いてしまった事を全力で忘れる事に努めた。

 

 その目は何処までも虚ろで、二人の様子にレオンはただ苦笑いを浮かべるしかなかった。

 

「───おい、ベジット。因みに聞くが……もう隠し事はしてねェだろうな」

 

「はっはっは、流石にもうネタ切れだ。これ以上の隠し事はもう………」

 

 ふと、脳裏に過る本日のダンジョンにて、言葉を話す理知的なモンスターを思い出す。

 

「……………ナイヨ」

 

「………おい、なんだ今の間は? まだあるのか、世界をブチ揺らす特大の厄ネタが!? ふざけんなよ、おい目ェ逸らしてンじゃねぇぞ!? いい加減にしろやコラァッ!?」

 

 廃教会にて狼の雄叫びが響き渡る。この日、ヘスティア・ファミリアにて貴重なツッコミ役が誕生した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、レオン某さんよ。今の俺の話を聞いて………これからどうするよ」

 

 時刻は既に夕方。日暮れの陽射しが教会を照らされる中で、レオンは口を開く。

 

「───ベジットさん、貴方は英雄だ。数々のモンスターを討ち、影ながら人々を救い、遂には黒竜すら討ち果たした。【最後にして救界の英雄】、誰がなんと言おうとその事実は変わらない」

 

「────」

 

「ですが、貴方はその話を吹聴しようとはしなかった。寧ろ、逆に避けて遠ざけようとすら見える。それはベジットさんが必要以上に注目される事を嫌うから、そうでしょう?」

 

「まぁな」

 

 ベジットは外見や備わった力こそは天下無敵の合体戦士だが、元の中身はただの社会人。過分な栄誉は興味ないし、身に余る栄光は謹んで辞退したい程だ。

 

 特に、下界に降りた神々の性質が自分もよく知る“神”だと知った時、一時はオラリオに来たことを失敗したと内心で後悔した程だ。

 

 今でこそ知られたら知られたで開き直り、どんな荒波が来てもブチのめすつもりでいるが、進んで自らの行いを吹聴しようとは思わないのもまた事実。

 

だから………。

 

「………なら、私から言えることはなにもない。ベジットさん、貴方の軌跡を吹聴する真似はしない事をここで約束するよ」

 

「それは助かるが……いいのか?」

 

「えぇ、あくまで私は世界を救った英雄がどんな人なのかこの眼で見極めたかっただけ。尤も、色々とやらかしていたのは想定外でしたが……」

 

「あ、アハハ……」

 

 ベジットという人物の人柄を知り、微笑むレオンだが、その言葉の節々には僅かな刺が感じられた。

 

「でも、お陰で貴方の人となりは掴めた。貴方は女神ヘスティアと同様にとても慈悲深く、そして優しい御仁だ」

 

「────そうかい」

 

 ベジットの出自、種族。聞いたことも見たこともない力を持つ彼が、一体どうして、どうやってそれ程の力を身に付けたのかは分からない。

 

 彼の人格、或いは内面はある程度計れた。ならば後は………。

 

「だから────ベジットさん」

 

「うん?」

 

「私と、戦って欲しい」

 

 目の前の“最新にして最後の英雄”を知る為に、その実力を体験(・・)するだけ。

 

 そう言って笑うレオンの顔は、紳士の微笑みというより。獲物を見付けた、獅子の如き鋭さを携えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、なんで性懲りもなくウチに来てんだよテメェは!?」

 

 翌日、レオンからの申し出を受けたベジットは、己の主神と二人の眷族(ベートとリリルカ)を伴って、フレイヤ・ファミリアの本拠地(ホーム)である戦いの野(フォールクヴァング)へとやって来た。

 

「いやー、この辺りで広くて戦える場所ってここしかなくてさ。そんな迷惑を掛けないようにするから、良いだろ?」

 

「良い訳ねェだろうが! 轢き殺すぞ!」

 

 当然、主神第一主義の眷族達が納得出来る筈もなく、門番に通して貰い敷地内に踏み込んだ所でいつもの様に副団長のアレンが颯爽と駆け付け吼えてきた。

 

「そうカタイこと言うなよ。お前が襲ってきた時はちゃんと相手してやっただろー?」

 

「ふざけろ、片手でしか相手しなかった奴の言う事か」

 

 アレンは先の戦争遊戯から、暇を見付けてはベジットに挑んでいる。本気でやれと言っておきながら、その実力を欠片も見せていないと知った彼からすれば、憤慨ものだったのだろう。

 

 尤も、ベジット本人からすれば片手であろうとキチンと相手したのは事実なのだが……。

 

 どんなに説得を試みても唸る事しか返事をしないアレン。第一級冒険者の怒気と殺意を向けられ、リリルカの顔面は蒼白となっていた。

 

 そんな時、リリルカを庇うようにベートが前に出る。

 

「おい、いい加減其処を退け野良猫。話が進まねぇだろうが」

 

「あ”ぁ“?」

 

「ウチの団長が直接顔を出したんだ。だったら同じ団長が出てくるのが筋だろうが」

 

「ほざくな。たかが零細ファミリアに何故一々筋を通す必要がある。身の程を弁えろ駄犬」

 

「ハッ、その零細に構って貰いたくて片手でノされてりゃ世話ねぇな」

 

「殺す」

 

 シンプルな殺意のぶつけ合い。犬と猫がワンワンニャーニャーとじゃれ合っている一方で。

 

「君が【槍の寵児(リュース)】か。噂は聞いているよ。君の様な若く強い同胞が出てきた事、本当に嬉しく思う」

 

「あ、ありがとうございます。リリはまだ未熟で、至らない所が多々ありますが、【炎金の四戦士(ブリンガル)】の皆様の様に強くなれるよう努力します」

 

「いい娘だ」

 

「健気だ」

 

「頑張り屋だ」

 

「「「「でもベジットに一太刀浴びせた化物なんだよな」」」」

 

「バケモッ!? ち、違、違います! アレは、リリの不注意で、事故、事故だったんです」

 

「マジか。事故でベジットに一太刀浴びせたんかよ」

 

「まさか【勇者(ブレイバー)】並みの策略家だった?」

 

「ち、違いますぅぅ!!」

 

 こっちはこっちで小人族(パルゥム)同士で仲良く親交を深めている。ガリバー兄弟も他の眷族達と同様に主神である女神フレイヤ至上主義、他の女になんぞ目もくれないが。

 

 それも自分達やフィンとは違う同胞、それも幼女が力を付けてきた事に小人族の先達として、幾分か汲み取るモノがあったのだろう。

 

 彼等の眼は新たな同胞の進出を純粋に祝福していた。

 

やや弄っているのは彼等なりの照れ隠しなのだろう。初々しく反応するリリルカを微笑む彼等の顔には父兄に似た感情が滲み出ていた。

 

「あらあら、随分と賑やかね。久し振りベジット、また来てくれたのね」

 

「オッス、フレイヤ様。久し振り。ちょっと場所を借りたいんだけど………良いかな?」

 

 外の喧騒に釣られ、団長を引き連れて現れた美の女神。彼女が現れた事により幹部を除いた眷族達が全員頭を垂れて跪く。

 

 其処には、いつの間にか白と黒のエルフの姿があった。

 

「場所を借りたい………ねぇ。それは其処にいる【ナイト・オブ・ナイト】と関係しているのかしら?」

 

 仕草一つが人間を狂わせる美の狂喜。ベートは一瞬意識が蕩け掛けるが歯を食い縛って耐え、リリルカはヘスティアが眼を塞ぐことで回避する。

 

 そして、肝心のベジットはというと、当然ながら一切の変化はなく、レオンも頭を下げて微笑み返すだけだった。

 

「お久し振りです女神フレイヤ。この度は急に押し掛けてしまい、申し訳ありません」

 

「もう、二人とも当たり前に私の魅了を弾くんだから。美の女神のプライドが傷ついちゃうわ」

 

「お戯れを。貴女がその気になれば私の意思など関係無しに傀儡に出来ましょう。その寛大さ、真に恐縮です」

 

(……え、この女神なんかしたの?)

 

 美の女神の魅了。全く力を出さず、僅かな一滴程度の女神の力。

 

 それを己の意志力だけではね除け、あくまで挨拶程度で留めてくれたフレイヤに、レオンは社交的な礼節で返す。

 

 対するベジットは………よく分かっていなかった。

 

「そうね、アナタ達のお願いなら聞き入れなくもないけど………流石に無償で場を貸すのは了承しかねるわ」

 

「まぁ、流石に余所様の土地で好き勝手暴れるのは普通に考えてヤバイしね」

 

「理解してくれて助かるわヘスティア。それで、今回アナタ達は何を私に魅せてくれるのかしら?」

 

 戦う場所として提供するのはいい。ただ一方的に貸し与えるのはオラリオの最大派閥の沽券に関わるとして、フレイヤは条件を提示する。

 

 本音を言えば前回の一方的なお誘いの件があるがそれはそれ。今回やたらとノリ気なベジットに免じて、ヘスティアは彼に今回の件は全てを任せることにした。

 

 ワクワクした様子のフレイヤ、何処か期待した様子でベジットを見て、それに応えるようにベジットも前に出る。

 

「今回俺が提供するのは他でもない」

 

 拳を握り、全身に力を滾らせる。

 

 瞬間、身体全体から溢れる力の波動……気を解放し、白い炎を纏うベジットにヘスティア・ファミリアを除いた全員が眼を見開く。

 

「今回、俺が教える“気”。これを今からアンタ等に伝授してやる」

 

 フレイヤの隣に控えていたオッタルが瞠目する。幼少期から己を鍛え、愚直に強くなる事だけを目指してきた彼だから分かる。

 

これは、《力》だ。如何なる理不尽を、不条理をはね除け、鏖殺せしめる力の結晶。高め続け、極め続ける程に、再現なく強くなれる力の源泉。

 

 ゴクリと喉を鳴らす。小さく、幹部達も気付かない僅かな音。しかし隣にいたフレイヤだけは満足そうに微笑んでいた。

 

「………成る程、それが最近ロキが上機嫌だった理由ね。確かにこの力をウチの子達が会得すれば、私達は更なる飛躍を遂げられる」

 

「因みに、既に何人か目覚めているみたいだぜ。今度、そいつ等の面倒を見るために向こうにお邪魔する予定だ」

 

「あら、ならウチは一歩遅れているのね」

 

「一歩で済めば良いけどな」

 

 妖艶な笑みを浮かべるフレイヤに対し、ベジットは不敵な笑みで返す。普段なら不敬と断じる眷族達もこの時は何も出来ず、口出しすら出来なかった。

 

「───良いわ、此処での私闘を認めましょう。皆も、それで良いわね」

 

「「「「ハッ!!」」」」

 

「我等が女神の御心のままに」

 

 至上の女神が決定した以上、彼等に否の選択肢はない。幹部も団長も頭を垂れ、そしてベジットへと向き直った。

 

「あっ。そうそう、その前にアルフに頼みがあるんだけどさ。良かったらウチのリリに槍の稽古を付けてやってくれよ」

 

「はぁ? 何故俺が……」

 

「頼むぜ。アレンじゃ萎縮させちまうし、アルフは長男なんだろ? 面倒見良さそうだからさぁ……な、お願い! 気の体験を最初にさせてやるからさ」

 

 後から条件を増やしてくるベジットに僅かに眉を寄せるが……最初に気を体験させてくれると言われたら否とは言えない。

 

 一度だけ主神に目を一瞥すると、フレイヤは頷いた。女神の許しを得た事で渋々しながら了承する。

 

そして、いざ始めにアルフリッグから気を解放させてやろうとした時、オッタルから声が掛けられた。

 

「………分からん」

 

「ん? どうしたオッタル」

 

「その力は、お前にとって切り札じゃないのか? 何より、お前達ヘスティア・ファミリアはロキ・ファミリアに与していたのではなかったのか」

 

 それはオッタルにとって当然の疑問。派閥においてその派閥にしかない突出した《力》というのは何に変えても秘めるモノだ。

 

 歴史の浅い派閥ならなおのこと。しかし目の前の男は自分にとってその力は他者を寄せ付けない絶対的な力である筈。

 

だが、ベジットはそんなオッタルの疑念にも笑って応える。

 

「別に、ロキ・ファミリアに与した訳じゃねぇさ。アイツらは俺達が持っていないモノを持っている。それを知る等価交換として差し出した」

 

「……………」

 

「それに、“気”ってのは別にそんな特別な力じゃねぇ。命を持つモノなら必ずソレを持ち合わせていると言えるくらい、当たり前のモノなんだ。俺が教えるのは、そんな当たり前に気付かせてやるってだけのこと」

 

 だから、そんな深く考える必要はないのだとベジットは言う。

 

そして……。

 

「それに、ロキ・ファミリアにだけ贔屓にするのは対等(フェア)じゃねぇだろ?」

 

「なに?」

 

「聞けば、お前らはロキ・ファミリアと対立関係なんだろ? なら、片方だけに肩入れするのは良くないし……なにより」

 

“面白くないだろ?”

 

 ゾクリ。この時、不敵に笑うベジットの顔がオッタルには恐ろしいモノに見えた。

 

ふと、彼の脳裏に女神フレイヤから神会で行われたという話を思い出す。

 

 戦闘民族サイヤ人。自らを戦う種族と称し、アマゾネスと同じ戦うことを是とした存在。

 

(いや、戦う事を目的としているのなら、アマゾネスよりも遥かに……)

 

 それ以上の思考は巡らせない。どうせヘディン辺りが見当を付けているだろうし、なにより強くなれるのは自分も望む所なのだから。

 

ベジットの思惑がどうであれ、己はまだまだ強くならなくてはならない。それがあの日、嘗ての最強に挑み、打ち勝った己の責務なのだから………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぜぇ、はぁ、ぜぇ、はぁ、よ、漸く。漸く此処に辿り着いたわ!」

 

 迷宮都市オラリオ。市壁に囲まれた世界の中心都市を一望できる丘にて、その女神が現れる。

 

「山を越え、谷を超え、時には吹き飛び山へ戻り、それでも歩き続けて三千里! 遂に私は帰ってきたわ!」

 

 金色の髪を靡かせ、その女神は謳いあげる。

 

「待ってなさいよベジット!! 今、アナタの女神が逢いに往くわ!!」

 

 ドーンッ!! そんな背景を背に愉快な美の女神が己の眷族達と共にオラリオに降り立った。

 

「邪魔だ。退いてくれアフロディーテ」

 

「ンゲッ!? アルテミス、貴女今私を足蹴にしたわね!?」

 

「仕方ないだろう。邪魔なのだから。……それに、お前には彼を渡しはせんぞ。彼は然るべき神の下にいるべきなのだからな」

 

「ぬぅわぁんですってェェッ!?」

 

 二人の女神と二つの派閥。そして……。

 

「────あの芋臭い女神には勿体無い。ベジット、お前には私こそ相応しい」

 

 裏で妖しく微笑む性愛の女神が、黄金の炎を思い出し、その輝きを瀆そうと嗤っていた。

 

 ────今、オラリオに新たな嵐が吹き荒れようとしていた。

 

 

 

 






Q.このベジット、過去にどれだけやらかしたの?
A.以下箇条書き

1.某とある国にて、勝手に沼地の魔物を周囲のモンスターごと沼地を消滅させた。

 尚、この時に出来たクレーターが 新たな泉……もとい湖がその国の新たな名物になった模様。やったね!

2.なんか遺跡にいたデカイ黒い蠍を発見。此方を見付けた途端襲ってきたので返り討ちにした。

尚、この時遺跡を半壊させた模様。やっちゃったね!



Q.最後に出てきた女神二柱、どうやってベジットを追って来たの?

A.その後もベジットはモンスターを狩っていたりしたので、その情報を頼りにきました。

因みに、どちらも黒竜討伐の事は知りません。







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