「それで、一体どういう事なのか、説明して貰おうかな。ベジットさん?」
「その前に、先ずは俺を取り囲むのを止めていただけないだろうか」
混沌とした現場を何とか抑え、アーディと
因みにアフロディーテの眷族達は人数が多い為外で待機して貰っている。夜の寒空の下で申し訳無い。
「えぇっと……取り敢えず被告人は旅の途中で女神をタラシ込んだ。という事でオーケー?」
「何一つオーケーじゃないが? あと被告人じゃないから。無罪放免だからね、俺」
「悲しいわ。私達にとっても恩人と言えなくもないベジットさんが、まさか女神をタラシ込むなんて」
「悲しいがな団長、人間には我々の想像出来ない二面性を持った者も……少なからずいるんだ」
「そんなっ!」
「おいコラ正義の眷族」
悪巫山戯に乗り、しこたま弄り出す正義の眷族達にベジットの蟀谷に青筋が浮かぶ。そして引き際も弁えている輝夜のお陰(?)で、話は漸く進み始める。
「でも、実際問題どうしてアフロディーテ様とアルテミス様がベジットさんを追い掛けて来たのかしら」
「このバカは旅の途中で色々とやらかしているらしくてな、恐らくはその縁だろ」
「【
「腕試しに旅のあちこちでモンスターを狩りまくってたんだとよ。詳しくは知らん」
厳密に言えば、知りたくもない。というのがベートの本音である。深い溜め息を吐いて廃教会の椅子に腰掛ける狼はまだ10代と年若いのに何処か煤けて見えた。
「───あのねベジットさん。恩人である貴方にこんなこと言いたくないんだけど、もう少し仲間は大切にした方がいいよ」
「待って、何で全面的に俺が悪いみたいな扱いなの!? 止めて、そんな哀れみの眼で見ないで!」
アーディにとってベジットは己の命を救ってくれた大恩人。先の大抗争から決戦、そして戦争遊戯の件で彼が尊敬できる人物だという事は承知している。
それらを踏まえて、彼に振り回されている【凶狼】と【
尤も、ベジットからすれば冤罪(?)も良いところなのだが……。
「違うんだって、本当にそんなんじゃねぇんだよ。確かに女神アフロディーテとは多少因縁があるけど、もう一人のアルテミス様はマジで知らんのよ」
どうしてあぁも自分に好意を向けてくるのか、出会っていきなり婚姻を前提に付き合って欲しいとか、初対面の筈なのにグイグイくるアルテミスにベジットは怖くなっていた。
「アストレア様から聞いた限りだと、アルテミス様って天界でも“恋愛アンチ”って呼ばれる程に男女の関係に厳しいらしいけど……」
「そんな女神様が、どうしてベジット様に?」
「それは私から説明しよう」
恋愛アンチと呼ばれ、その女傑っぷりに天界では恐れられてきたという女神アルテミス。そんな彼女が何故ベジットに彼処まで迫るのか、ベジット含め不思議に思う一同に、教会の地下から女神達が現れる。
「アストレア様、お話はもう終わったのですか?」
「えぇ、何とか」
「お疲れヘスティア、夜も遅いのに悪かったな」
「………………」
疲れた様子のアストレアに眷族達が駆け寄っていく、アフロディーテとアルテミスの長い話を聞かされて疲弊しているのだろう。肩を落としているアストレアを尻目に同じく疲れているであろうヘスティアに労いの言葉を送るが……。
「お、おいヘスティア、どうかしたのか?」
「なんでもないやい!」
どういうわけか、頬を膨らませてそっぽを向くヘスティアにベジットは戸惑う他なかった。
「な、なんだぁ?」
どういうわけか不機嫌なヘスティアにベジットは面食らう。そんなベジットを見て、アストレアはやれやれと肩を竦めた。
「さてオリオン。早速で申し訳ないが私の話を聞いて欲しい。君には、返さなければならない恩がある」
「……なぁ女神アルテミス。俺とアンタは初対面な筈だよな? どうしてそこまで俺に拘る。聞けばアンタ、男女の関係については相当厳しい女神様らしいじゃないか」
「そこを含めて、話がしたい」
そう言って語り出すのは、とある森の奥深く。とある遺跡の調査に来ていたアルテミス・ファミリアがとあるモンスターに襲われていた場面だった。
「当時、私達は不自然に草木が枯れたとされる森の調査に来ていたが、そこで大量の蠍型のモンスターに襲われ、その圧倒的数に追い詰められていたんだ」
「あっ、その話聞いた事あるかも。何でも太古のモンスターが潜んでいる可能性があるとか」
「そうなの? アーディ」
「う、うん。お姉ちゃんから又聞きして、あくまで噂程度なんだけど……《エルソスの遺跡》、だったかな? でも、何ヵ月か前に遺跡の半分が吹き飛んで何も分からなくな……て……」
周囲の目が、ベジットに向けられる。見れば、顔中から滝のように汗を流しているベジットが、居心地悪そうに椅子の上で正座していた。
何かを察した一同、そんな彼等を見て何故か誇らしげにアルテミスはフッと笑う。
「モンスターの名は【アンタレス】。太古の頃より存在した蠍型の黒い魔獣で、その力は神を取り込み、【
「「「っ!?」」」
【神の力】。それは神々が下界に降りた際に使用することを固く禁じられた………正に超越した力。
その威力は凄まじく、一度解放してしまえば処女神であるヘスティアでさえ、ダンジョンと同程度の大穴を刻み込むという。
その【神の力】をモンスターが行使する。いきなりぶちこまれた特大のワードにその場にいる(ベジットを除く)全員の顔色が変わった。
「も、モンスターが【神の力】を行使するって、そんな事あり得るんですか!?」
「これは【アンタレス】に追い詰められ、取り込まれそうになったからこそ分かった事。信じられないのも無理はない」
我ながら途方もない話だが、あの蠍の魔獣にはそれだけの力があった。太古の昔、倒せず封印に留められていた経緯も恐らくはその特異な能力の所為なのだろう。
「そう、あと一歩だった。あと少しでも奴の手が伸びていれば……今、私は此処にいなかっただろう」
「と、言うと」
何故か頬を紅くさせ、微笑むアルテミスにアリーゼとアーディがキャーッと騒ぎ出す。話の流れを察したベートはベジットを横目で睨むが、当のベジットは混乱した様子で目をパチパチさせていた。
「そう、彼が来てくれたんだ。固く閉ざされた封印の扉を蹴破り、私に迫っていたアンタレスを殴り飛ばしたんだ」
あの時の光景は、今も思い出せる。
迫り、顎を開いて己を喰らおうとしてくるモンスター。その危機に突然現れたベジットは、そのアンタレスを見付けると、雷の如く鋭い速さで駆け抜けてアンタレスを殴り飛ばし、アルテミスから引き離して見せた。
尚、当時のベジットは腕試しに訪れた森の中で何やらモンスターが群れを成して騒いでいるのを見掛けたので、駆除感覚で屠っただけのつもりである。
人助けのつもりはおろか、あの場にアルテミスがいたことなんて今の今まで気付かなかった。
「一撃、二撃、彼の放つ拳で【アンタレス】は吹き飛び、宙に舞った。けれど奴も好き勝手殴られて腹がたったのだろう。開かれる顎から黒く妖しい魔力が迸り、その威力は全知零能たる私でも、ここら一帯が消し飛ぶことは悟れた程だ」
いつの間にか、詩人の様に語り出しているアルテミス。彼女の話にアリーゼとリリルカは釘付けになり、普段冷めている輝夜も聞き入っていた。
「そ、それでどうなったんですかアルテミス様! ベジット様は、どうしたんですか!?」
「無論、迎え撃ったさ。正面から、堂々とな」
『へぇ、そんな芸当が出来るのか。良いぜ、だったら此方もとっておきを見せてやる!』
そう言って黄金の炎を纏い、金髪碧眼の戦士と化したベジットは、宙に浮かぶ【アンタレス】に向けてあの技を見舞う。
両手を重ね、腰に持っていき、力を溜めていくその姿は、引き絞られた弓の様。大地ごと遺跡が揺れ、余波でひび割れ、幾つものひび割れた破片が浮き立つなか、それは放たれた。
“かめはめ波”。そう叫び、放たれた一撃は【アンタレス】を奴の放った魔力ごと瞬く間に呑み込み、天に向かって伸びていく。
それはまるで天に向けて放たれる一筋の矢。【アンタレス】は跡形もなく消失し、エルソスの遺跡はその半分以上が消し飛んでいた。
静寂。辺りは静まり返り、月の光だけが彼を照らしていた。その光景があまりにも綺麗で、私の鼓動は煩く鳴っていた。
気付けば、私は彼に声を掛けていた。知りたいと、はしたないと思いながらも私は彼に声を掛けた。
しかし、彼には私の声は届かなかったのだろう。彼───ベジットは、最後まで私に目を向けることなく、そのまま空を飛んで去っていったよ。
そして、後から駆けつけてきた
「───以上が、私から見た彼の軌跡の一部だ」
オオーッ。アルテミスの語りに終始聞き入っていたアリーゼ達は、満足そうに息を吐くアルテミスに拍手でもって返した。
英雄譚の様な物語。それもお伽話ではなく女神自身の口から聞かされる体験談に、アリーゼとリリルカは目を輝かせて事細かく尋ねていた。
その一方で。
「おい、一から十までお前が原因な訳なんだが………どうすんだオイ?」
「怖いってベート、頼むから落ち着いてくれ! 本当に腕試し以外の意図はなかったんだよ!」
話に聞いていた以上にやらかしていたベジットの行いに、流石のベートも激おこである。青筋を浮かべ、メンチ切ってくる【凶狼】にベジットは勘弁してくれと懇願する他なかった。
「ふん、何よ、別に大した話じゃないわね。私なんてベジットに抱っこされたんだから!」
話を遮り、目立つように声を出すのは美の女神アフロディーテ。そう言えばこの女神もいたんだったと、アリーゼは思った。
アルテミスの話を聞いて、何故か対抗心を燃やしている彼女。次は自分の番だなと自身とベジットの馴れ初めを語ろうとするが……。
「悪いんだけどアフロディーテ。今日の所はもう遅いから話はまた今度にしてくれない」
「え?」
「だな、リリルカもそろそろお眠の時間だし」
「う、うーん……リリはまだ眠くないで……グゥ」
「あぁホラ、此処で寝ちゃったら風邪引くぜリリ君」
「私が抱えていくから、ヘスティアは寝床の準備をお願い」
「助かるよアストレア」
「え、え?」
時刻は既に深夜。辺りも静まり返り、一番幼いリリルカは既に眠気でリタイア。寝落ちするリリルカを抱え、アストレアと共に地下へと戻ろうとするヘスティア達を見送ると、一先ずこの場はお開きの空気となった。
その際、ヘスティアは一度アルテミスへ向き直り。
「悪いけどアルテミス、今日の所は……」
「あぁ、夜分遅く済まなかったなヘスティア。そして
「あ、はい」
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ! 私の話、まだ始まってすらいないんですけど!?」
当然アフロディーテは納得しなかったが、幼い子供が眠たそうにしているのと、アルテミスが首根っこを掴んできた為、抵抗虚しく廃教会から去っていった。
嵐のごとく現れて、そして消えていった二柱の女神。今後もアイツらと関わりがあるのかとゲンナリとするベジットであったが。
「んで、そっちはまだ用があんのかよ」
ベートもいい加減ウンザリしてきた所だが、先程と違い真剣な顔となっているアーディと正義の眷族達を見て、何かを察したベートとベジットもまた態度を改める。
「実は、折り入ってヘスティア・ファミリアに頼みがあるの」
話を切り出したのはアリーゼ。アストレア・ファミリアの団長から切り出された話に、二人は静かに聞き入れた。
◇
「───さて、一応要望に当てはまる物件なんだけど、取り敢えずこれでどうかしら」
翌日、ヘスティア達は要望通りの物件が見付かったという事で、予定通り女神ヘファイストスの案内の下、その物件の下見へと来ていた。
やって来たのは、大通りから少しだけ外れた所にある大きな館。パッと見ただけでも100人は出入りできそうな大きな館にベジット達は感心………というより、少し戸惑った様子で見上げていた。
「中庭付きの館、というと今はこれくらいしか条件が合っている物件はなくてね。闇派閥とのイザコザの所為であまり管理が行き届いていないんだけど、一通り視た感じ痛んでいないし、建築年数は10年も建っていない新品よ。どうかしら?」
「いやどうって、これだけ立派な建物だとは」
「凄く、おっきいです」
「絶対値段もバカになんねぇだろ」
立派な門もあり、敷地も広い。立地も大通りから少し外れただけで其処まで不便でもないし、なんなら変に目立つことがない分好ましい条件である。
但し上記の件から、相当金が掛かるのではないかと訝しむベートだが、ヘスティアが胸を張って説明する。
「ふっふーん! なんとこの物件、驚きの5000万ヴァリス! ローンも可という親切価格なのさ!」
「安ッ───いや、安いのか?」
「知るか、俺に聞くな」
「す、スミマセン。リリもその辺りの物価価格はあまり知識がなく……」
五千万と聞いて、1億ヴァリスも届いていない事に最初こそ驚くが、ベジット達は三人ともオラリオの物件の相場価格というモノを知らない。
その為、ヘスティアの提示する五千万に素直に驚けないでいると、女神ヘファイストスが解説してくれた。
「実はこの物件、本来別のファミリアが入居する筈だったんだけど………その、先の大抗争で少なくない犠牲者が出たでしょう? 神も含めて」
「まさか、入居する派閥が全滅して曰く付きだから!?」
「いえ、怖くなって逃げ出したから、宙ぶらりんのままなのよ。奇跡的にここら辺は戦火が及んでないから、勿体なくてね……」
一瞬、ベジットの頭に事故物件の文字が過るが、続いてヘファイストスから明かされる真実にずっこける。
なんでもそのファミリアは所謂商隊的な派閥で、世界の中心であるオラリオで一儲けしようとしたのだが、先の闇派閥との戦いで眷族達はすっかり怯えてしまい、決戦後の次の日には荷物を纏めてオラリオから出ていったらしい。
「で、本当なら3億で売りに出していたんだけど、闇派閥の被害が癒えていないオラリオにそんな財産を持っている派閥なんてある訳がなく、2億、1億とドンドン日ごとに価格は暴落していって」
「遂には五千万で買って欲しいと、ギルドから言われたと?」
ギルドは外の商隊や派閥との仲介役を担った一面がある。外に逃げ出したファミリアの物件を、連中を通して例のごとくヘファイストスに押し付けたのだろう。ベジットの問いにヘファイストスは苦笑いを浮かべた。
相変わらず面倒見が良く、その所為でいらない苦労を抱えているヘファイストスにベジットとヘスティアは極力迷惑は掛けないようにしようと、心に誓った。
「そんな訳で五千万でこの館を提供したいんだけど……どう?」
「買った」
中も一通り見て、問題も別に見当たらなかった。精々埃が目立っているだけで、備え付けの家具もある。価格も申し分も無いし、ヘスティア達が断る理由はなかった。
「さて、それじゃあ一緒にあの件も事も済ませちゃおうかしら」
あの件。そう告げると玄関の扉が開き見慣れた人物が顔を覗かせてきた。
「持ってきたぞ主神殿! そしてヘスティア・ファミリアよ!」
「お、椿が来たって事は……」
本拠地に来訪してきたのはヘファイストス・ファミリアの椿・コルブランド。彼女が背負う荷物には幾つもの武具がちらついていて。
「おぉ、完成したぞ。お主達の得物が!」
新たな得物の完成。それを目の当たりにしたベートは凶暴な笑みを、リリルカは緊張しながら何処か喜びの笑顔をそれぞれ浮かべていた。
◇
「そうか。ヘスティア・ファミリアが承諾してくれたか」
「でも、本当に良かったの? 確かにベジットさんの戦力は規格外で頼りになるのは分かるけど、彼処にはまだ小さな女の子もいるのよ?」
「その辺りの采配は彼に任せるさ。……まぁ、ベジットを慕う彼女が自分だけ除け者にされて我慢出来るとは思えないけど」
「それは経験か? 【
「かもね」
人気がなく、人払いがされたとある一室。
ロキ・ファミリアの団長フィン・ディムナは集まった者達に告げる。
「来る日、地上と地下……ダンジョンへ。僕たちは生き残った闇派閥を狩る。これが奴等との最後の戦いだ」
「アストレア・ファミリアはルドラ・ファミリアを」
「それ以外の者達は27階層に潜んでいる闇派閥を」
「そして僕達ロキ・ファミリアが地上を」
大抗争からもうすぐ一年。戦力は揃い、準備は整った。
「やるぞ。この一戦で暗黒期に終止符を打つ」
生き残った闇派閥を完全に押し潰し、オラリオに完全な平穏をもたらせる。
闇派閥との最後の戦いはもうすぐそこまで来ていた。
◇
─────その日、私は黄金の炎を見た。
その日、歌劇団を率いて興業の為の遠征に来ていた時。私達は偶々出会したモンスター達に襲われていた。
迂闊だった。最近モンスターが誰かに討伐され、この辺りもすっかり安全になったという話を鵜呑みにして、森を横切ってしまったのが過ちだった。
後で知った事だったが、そこはモンスターの巣で中にはダンジョン産のモンスターに匹敵する凶暴な怪物もいたそうで、それを知らない私達はまんまとあの商人の言葉に騙され、その罠に引っ掛かってしまった。
今思えば、アレは私達歌劇団の活躍に嫉妬した何れかの神の手の者の仕業なのだろう。私は女神アフロディーテ、万物を魅了して愛される美の女神。
だから、私達は狙われたのだろう。モンスターの大群に襲われ、連中の餌になるのだと、覚悟を決めた私は魅了を振り撒き、モンスターの視線を全て私に向けさせた。
嗚呼、モンスターすら魅了してしまう私、なんて美しいのかしら。そんな自画自賛の現実逃避をしていた時、気付いたら私は───空を飛んでいた。
何が何だか分からなかった。突然起きた暴風にモンスター共々空へ吹き飛び、混乱で思考を停止していた時。
彼が───現れた。
『あっぶね。間一髪だったな』
いつの間にか、私は彼の腕に抱かれていた。大きく、強く、武骨。可愛らしさなど欠片もなく、どちらかと言えば武神どもが好みそうな体躯の青年。
『悪かったな女神様、巻き込んじまってよ』
そう言いながら、爪牙を振り下ろしてくるモンスターの一撃を片手で抑えながら……彼は不敵に笑った。
『お詫びに見せてやるよ。下界の、人間の未知って奴を』
そして、次の瞬間私は見た。黄金の炎を身に纏う、金髪碧眼の戦士を。
その瞬間、私の心は射貫かれた。モンスターを片手間に両断するその勇姿に。
『おっ、お仲間がやられて親玉が出てきたな』
その瞬間、私の心は鷲掴みにされた。強大なモンスターを前にして、それでもなお不敵に笑う彼の横顔に。
『喰らえ、コイツが超ベジットの───ビッグバンアタック(弱)だ!』
瞬間。モンスターは光に呑まれ、気付いた時は何もかもが終わっていた。
その後、彼は私を歌劇団の皆のところへ下ろし、去っていった。
何も語らず、何も言わせず、ただ彼は『無事で良かった』の一言を告げて、何処かへ消えていった。
私は、この出会いを忘れない。
私は、彼の名前を忘れない。
久しく抱かなかった恋心。久しく感じなかった胸の高鳴り。
気付けば、私は彼の軌跡を追っていた。
『待ってなさいベジット! アンタは必ず私のモノにするんだからー!』
Q.アルテミスとアフロディーテ、結局どういう理由でベジットに惚れたの?
A.いわゆる吊り橋効果。その場かぎりの話なのでその内飽きて帰るだろ。と、ベジット本人は思っている。
Q.ベジット君は、好きな人とかいるのかい?
A.それよりも強くなったり、強い奴と戦ってワクワクしたり冒険したい。
Q.27階層の悪夢とアストレア・ファミリアの全滅時期って違くね?
A.ベジットのバタフライエフェクトの一つ、順番的には27階層の悪夢の次がアストレア・ファミリア全滅らしいですが、諸々の諸事情により同時期になりました。
オマケ。
もしもヘスティアとベジットが15年前からいたら。
「へぇ、メーテリア達オラリオの外で子育てするのか」
「あぁ、私も今日から向こうに行く。お前と顔を合わせるのは暫くはなさそうだ」
「ま、外にはオラリオ程手強いモンスターはいないだろうし、お前やザルドが向かうならそこまで心配はいらないな」
「───お前は来ないのか?」
「そうだなー。闇派閥の連中を一掃したら、一度顔を出してみるか。ベルだっけ? 二人の子供の名前は」
「あぁ、メーテリアによく似た可愛い子だ。あの赤い目だけは、くり抜いてやりたいが」
「猟奇的な発言はやめてもろて」
「兎も角、気が向いたらお前も顔を見せにこい。メーテリアも、ベルも喜ぶ」
「……今更だけど、何であの夫婦は俺に拘るんだ? 生まれた子供を父親より先に抱かせるか普通。ヘスティアも呆れてたぞ」
「その後は私に抱かせて来たがな。……何故お前よりも後なんだ」
「知らねぇよ」
「ふん。……では、私はもう行く。精々夜道には気を付けるんだな」
「どういう忠告? おう、そっちも気を付けてな」
「────あれ? お姉ちゃん、ベジットさんは誘わなかったの?」
「…………あぁ」
「まさか、あの静寂が男を誘うのに躊躇した!? これはビッグニュース! すぐに
「ゴスペル」
「ぶっはぁ!?」
「もう、いい加減素直になりなよ。お姉ちゃん」