ダンジョンに超なアイツが来るのは間違いか?   作:アゴン

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今年の冬寒くね?

そんな訳で初投稿です。


物語34

 

 

 

「おぉ、よく似合ってんぞ二人とも。サイズもピッタリじゃねぇか」

 

「うんうん。ホント、良い仕事してくれるねヘファイストス・ファミリアは!」

 

 遅れてやってきたヘファイストス・ファミリアの団長、椿・コルブランド。彼女がワザワザ持ってきてくれた武具を早速見てみようと、ベジット達は館の中庭へと移動していた。

 

「うむ、我ながら良い出来栄えだ。どうだ【凶狼】、何処か不備はないか?」

 

「問題ねぇ、見た目以上にしっくり来るぜ」

 

「【槍の寵児(リュース)】の方はどうだ?」

 

「だ、大丈夫です。特に違和感などはありません」

 

 二人が身に付けているのは、ヘファイストス・ファミリア団長が手ずから打った一品。二人とも高機動な前衛スタイルであることから、身に纏う装備は軽装だが、どれも急所を防ぐための防御力が備わっている。

 

 動きに支障がでないか、それぞれ動いて確認しているが………別段阻害されている様子はなく、満足そうだった。

 

 そして……。

 

「【凶狼】の武装“フロスヴィルト”は、特殊金属(ミスリル)を加工した特殊武器(スペリオルズ)。注文通り、例の機能も備え付けといたぞ」

 

「そうかよ」

 

 ベートの脚に装着しているブーツ。外見は脚を保護するプロテクターに見えなくもないが、どうやらこの装備には仕掛けが施されているらしい。

 

「ただ、この様な注文は経験上無くてな。正直まだ未完成感が否めない、もし何か不備があれば遠慮なく言ってくれ」

 

「おう」

 

「そして、そっちのチビ助のが……」

 

「はい。リリルカちゃん、アナタの一振よ」

 

「は、はい!」

 

 椿が主神であるヘファイストスに目配せすると、鍛冶の女神が布に包まれた長物をリリルカへ手渡す。恐る恐る受け取り、ヘファイストスを見上げると、微笑みながら頷いてくる彼女、その笑みを開けても良いと受け取ったリリルカは慎重な手付きで巻かれた布を解いていく。

 

「わぁ………」

 

 出てきたのは一振の槍。鮮やかな蒼の柄の先端に鈍く光る穂先の刃。胴金にはヘファイストスのエンブレムが刻まれていた。

 

 余計な装飾のない武骨な槍。しかし洗練されたその一振は一種の芸術作品の域にあった。

 

「銘は“ニール”。リリルカちゃんに合わせて私手ずから打たせて貰った一品よ。受け取って頂戴」

 

「あ、あわわわわわ………」

 

 これまで、振っていたのは練習用の刃の潰れた槍だった為、いきなりこんな超一流の品を渡されたリリルカは、喜び以上に困惑していた。

 

「リリ、折角だから振って見せろよ」

 

「いぃっ!?」

 

「ほう、主神殿が惚れ込んだという一振、是非手前にも見せて貰いたいな」

 

「あばばばば……」

 

 尊敬しているベジットに無茶振りされ、椿によって逃げ場が失っていく。ヘスティアもそれは良いとその気で、頼みの綱であるベートは……。

 

「いい加減縮こまってんじゃねぇ」

 

 なんて発破を掛けてくる始末。半ばヤケクソ気味に「わ、分かりましたよ!」と返事をして、槍を手に中庭の中央付近に向かう。

 

 クルクルと先ずは軽く振って感触を確かめる。この槍を手にしたのは今日が初めてなのに、やたらと手に馴染む。

 

これが鍛冶神の作品か。改めて自分の恵まれた環境に感謝しながら手元の槍を握り締め、構える。

 

 取り敢えず一刺し。難しい事は考えず、脱力して集中力を上げていく。周囲の音や空気の流れ、その先にいる獲物をイメージして……。

 

「ふっ」

 

 押す。腕だけでなく脚や腰、身体の関節が連動するよう意識して放たれた一刺は───刹那、パンッと空気を破裂させた。

 

今までで一番の手応えと音、それを聞いたヘスティアはパチパチと手を叩き、ベジットは満足そうに頷いていた。

 

ベートだけは何処か不機嫌そうにしているが………彼が不機嫌なのは何時もの事なので流しておく。

 

 そして。

 

「………クァーッ! なんと小気味の良い音を出す! 成る程、これを聞いたから主神殿が手ずから打つと言ったのだな」

 

「そうよ。でも………うん、思ってた以上に良い音を出してくれたわ。打ち込んだ甲斐があったってモノね」

 

「す、凄いです。初めて握った槍なのにまるで自分の一部みたいに軽く扱えて……あ、ありがとうございますヘファイストス様!」

 

「いいのよ。将来有望な冒険者への先行投資と思えば、安いものよ」

 

「あーあ、これなら手前もリリ助(・・・・)に一振打ってやりたかったなぁ」

 

「あ、あはは」

 

 心底悔しがっている椿にリリルカはただ苦笑いを溢すしかなかった。

 

「さて一先ずそちらの要望は全て通したけど……ベジット君、本当にいいの?」

 

「うん、何が?」

 

「アナタの装備よ。二人には私達から提供できる最善のモノを贈ったけど、アナタは何もないじゃない」

 

 横目で、ベートとリリルカには聞こえない声量で言うヘファイストスにベジットはフッと笑みを浮かべる。

 

「あぁ、いいんだ」

 

 自分は必要ない。女神ヘファイストスの思いやりを嬉しく思い、それを知った上でベジットはいらないと豪語する。

 

「───まぁ、先の戦争遊戯の件を思えばアナタに生半可な武器は必要ないと思うけど」

 

「別に、武器を不要と断じているつもりはないんだ。ただ純粋に、今優先する程必要と感じないだけなんだ」

 

「うん、まぁ………でしょうね」

 

 ベジットの言葉にヘファイストスも頷く。そもそもベジットは“気”という力を応用して、変幻自在にその形を変えて状況に合わせる事を可能としている。

 

先の戦争遊戯もそう、槍も剣も、時には鎧の様に纏う事ができる気という力。その力を以てすれば生半可な武具など必要としないのは、ヘファイストスとしても納得の話だった。

「それに、俺が扱ったら折角作った武具を壊しちまうかもしれねぇからな。零細ファミリアとしては余計な出費を抑えたいんだよ」

 

「あら生意気。私達の造った武器を、そう簡単に壊せるもんですか」

 

「例えばの話さ」

 

 生意気な言葉で煙に巻こうとするベジット。その意図と彼なりの気遣いだと知ったヘファイストスは生意気だと頬をつつく。

 

「よし、なら次は手前がベジットの武器を造ってやろう。得物は何が良い? 剣か? 槍か? それとも斧か? なんなら棍や鎌でも良いぞ」

 

「いやいや、今武器はいらないって話をしたばっかじゃねぇか。話を聞いてたか椿さんよ」

 

「それはあくまで今だけの話だろう? 手前もお前が武器を振るう様を見てみたくなった。その気になったらいつでもこい。特別に打ってやる」

 

 胸を張ってグイグイくる鍛冶師にベジットも苦笑う他なかった。

 

 それからも、ベートとリリルカはそれぞれ自身の武器を振り、手入れの仕方を聞きながらヘファイストス・ファミリアとの時間を過ごした。

 

 

 

 

 

「あのさ、ベジット君。くれぐれもヘファイストスにはアフロディーテの事を話さないでおいてくれないか?」

 

「あん? それは構わないが……何でだ?」

 

「アフロディーテとヘファイストスって、天界では付き合ってたんだよ。でも、アフロディーテが浮気をしちゃって、それ以降ヘファイストスの中ではアフロディーテの名は禁句なんだ」

 

「────色々とツッコミ所は満載だが、取り敢えず了解。この事をベートとリリルカには?」

 

「もう話したよ。二人とも了承してくれた」

 

「ホンット、神々ってのは……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして午後、ヘファイストス・ファミリアに館を含めた金額を手渡し、無事に諸々の清算を終えたヘスティア・ファミリア。

 

そんな彼等が午後に訪れたのは、ロキ・ファミリアの本拠点である【黄昏の館】。先のアストレア・ファミリアの二人の件で、ファミリアの代表としてベジットとベートが詳しい話を聞きに来た。

 

 アストレア・ファミリアの団長(アリーゼ)、普段明るい彼女がやたらと神妙な顔をしていたから、恐らくは相当ヤバい話だと思って来てみたら……。

 

「オリヴァス・アクトが消えた?」

 

 通されたのは来賓対応の客間。そこで待つこと数分、やってきたフィン、ガレス、リヴェリアのロキ・ファミリア三巨頭だった。

 

 昨夜のアリーゼと同様、神妙な顔のフィンに嫌な予感を感じていると、早々にぶちこんできた厄介ごとに早くもベジットはゲンナリしていた。

 

「あぁ、三日程前の未明にディアンケヒト・ファミリアに預けられていたオリヴァス・アクトの身柄が、何者かによって強奪された」

 

「強奪とは穏やかじゃねぇな。治癒師(ヒーラー)どもに被害は?」

 

「幸い、ディアンケヒト・ファミリアに死傷者はいなかったみたいじゃな。怪我人こそはいたもののいずれも軽傷、今はもうとっくに治って事情聴取の後、業務を再開しておるようじゃ」

 

「そうか」

 

 オリヴァスの身柄が奪われたのはどうでも良いとして、ディアンケヒト・ファミリアに被害が出なかった事にベジットは安堵した。

 

「しかし解せねぇな。そのオリヴァスってクソ野郎はウチの団長が再起不能にしたんだろ? そんな死に損ないを今更拉致って何をしようってんだ?」

 

「あぁ、奴は俺が文字通り足腰立たねぇ様にブチのめしたからな。アミッドからも褒められたんだぜ? こんなに丁寧に人体を破壊したモノを見るのは初めてだってな」

 

「それは多分褒めてないね」

 

 ニコニコと微笑んではいるが、明らかにドン引きしているフィン。人間を構成している骨格、その殆どが粉状に砕かれていると聞かされたら、その反応もやむ無しである。

 

「………奴らの目的は不明だが、単に駒の埋め合わせとして強奪した訳ではなさそうだ」

 

「それって、例の作戦と関係があるって事か?」

 

 リヴェリアの言葉で頭に過るのは、アリーゼから伝わってきた例の作戦。つまりは、闇派閥との最後の戦いについてである。

 

 闇派閥の大抗争と正邪決戦からもうじき一年。いよいよ決着の時だと有志を集めての戦い……の、直前に起きたオリヴァス・アクトの身柄強奪。

 

相手に此方の情報が筒抜けとは考えたくないが、それでも無関係とは思えない出来事だ。

 

「恐らくは【殺帝(アラクニア)】の指示。僕達の動きを敏感に察知して、先手を打ってきたみたいだ」

 

「それ、大丈夫なのか? 此方の動きに気付いて先に仕掛けて来たり、逃げようとしたりするんじゃあ……」

 

「その為に、既に攻め手を二つに分けてある。地上は僕達ロキ・ファミリアが、ダンジョンは有志のファミリアがそれぞれ協力する運びとなっている」

 

「今奴等が動かないのは、此方の網に引っ掛からないように身を縮めているからだろうと、儂らは読んでいる」

 

「些か楽観的だがな」

 

 オリヴァス・アクトの身柄が奪われ、作戦に悪影響が出るのではないかと危惧していたが、どうやら目の前の【勇者】は既に手を打っていたらしい。

 

とは言え、それでも此方の網を掻い潜ってまでオリヴァスの身柄を奪った事だから、闇派閥にまだ何らかの思惑があるというのが、フィン達にとっての懸念事項なのだろう。

 

「────成る程、その懸念事項に対するカウンターとして、俺達の参加を呼び掛けた訳ね」

 

「理解してくれて助かるよ」

 

 要は、オリヴァス・アクトを再起不能にしたのはベジットだから、最後まで責任を取れという事なのだろう。

 

その事に関してはその通りだし、ベジットとしても作戦に参加するのは構わない。が、それでも気になる事はあった。

 

「………なぁ、その作戦なんだけどよ。フレイヤ・ファミリアの連中は呼ばなくてもいいのか? 闇派閥との決着はアイツらにとっても他人事じゃないだろ?」

 

「あー、うん。それはそうなんだけどね」

 

「まさか、既に袖にされたとか?」

 

 都市を脅かす闇派閥。連中を駆逐し、オラリオに安寧をもたらすのはそこに住まう人々にとって必要不可欠な話である筈。

 

 だがフィンの様子を見て、まさかと思い追求すると、返ってきた苦笑いという返事にベジットはマジかよと天井を仰いだ。

 

「嘘だろ。オラリオの趨勢を決める一大決戦なんだろ? なんで足並み合わせようとしねぇんだアイツ等は」

 

「彼等にとって女神フレイヤの意志こそが絶対の指針だからね。多分、こればっかりは君でも曲げられないんじゃないかな」

 

 ロキ・ファミリアとフレイヤ・ファミリアが一時的に手を組めば、それこそ闇派閥程度すぐに制圧出来そうなものなのに……。

 

 世界の行く末よりも仕えている女神の意志。彼等の狂信的な部分を垣間見た気持ちになった。

 

「なら、俺はダンジョンの方に向かった方が良さそうだな。ベート、お前はアストレア・ファミリアと合流しろ」

 

「チッ、面倒クセェな」

 

 作戦における部隊は三つ、地上のロキ・ファミリアとダンジョンの派閥連合で、その内一つはアストレア・ファミリアが最近追っていたルドラ・ファミリアの捕縛を目的としている。

 

 ルドラ・ファミリアは現在下層にある大樹の迷宮を根城にしているらしく、他の闇派閥と結託される前に捕える必要がある。

 

 アストレア・ファミリアは先の正邪決戦で全員がLv.4となった強豪派閥。しかし相手は手段を選ばない闇派閥。万が一の状況に合わせてベジットはファミリア唯一の第一級冒険者であるベートの参戦を決定した。

 

「じゃあ、俺がそれ以外の部隊……派閥連合の一員に加わればいいんだな?」

 

「それなんだけど……ベジット、君は今回の作戦の指揮を執るつもりはないか?」

 

 【勇者】からのまさかの提案、他派閥の眷族達を纏めてほしいという彼からの誘致に……。

 

「いや無理だろ。オラリオに来て一年そこらの新参者が、いきなり指揮官とか絶対纏まらないだろ」

 

 下手したら禍根すら残るんじゃないか? と、ベジットは語る。

 

「どうせなら俺一人に任せてくれた方がずっと良いんじゃないか? 人を集めるという事はそれだけ被害を被る人員が増えるという事。碌に連携の取れない他派閥が組んだら尚更だろ」

特に、ダンジョンという不確定要素の塊みたいな場所なら、よりその危険性が高くなる。もし僅かでも歯車が食い違えば、それだけで未曾有の惨劇になってしまう。

 

 それならば己一人で対処すれば良い。この身は天下無敵の最強、如何なる状況に陥ろうとも片手間で切り抜ける自信はある。

 

 通常なら大言壮語、自惚れ、自意識過剰と捕えられるが、ベジットの強さを知るフィン達にとってそれは強ち間違いとは断言出来なかった。

 

 しかし、だからこそベジットが彼等の手綱を握る必要があるのだ。

 

何故なら───。

 

「ベジット、今回闇派閥の捕縛に名乗りを上げたのは、前の決戦の時に何も出来なかった者達なんだそうだ」

 

「───は?」

 

「彼等の大部分はあの日、戦いの裏方に回る事しか出来なかった者達ばかりで、中でも君の活躍を直に目の当たりにした者達が殆どなんだ」

 

 リヴェリアから告げられるのは憧憬に焦がれた者達の発露。あの日の戦いを、英雄達が奮戦する中で自分達は何も出来なかった不甲斐なさに消沈し、今回の件でその汚名を返上できる機会が巡ってきたと何処からか聞き付けた有志達なのだそう。

 

 特に、あの日のベジットが見せた黄金の炎と蒼い閃光が今も脳裏に刻まれている者達は、先のベジットによる戦争遊戯の戦いを通して、よりやる気を出してしまっている。

 

「今度こそ自分達も戦わせて欲しい。何も出来ないままでいるのは嫌だと、皆そう口にするのだ」

 

 憤りというより困惑。憧憬を理由に参戦を要求してくる者達をどう対処したら良いか、流石のフィン達も否定できず言葉に詰まらせてしまう程だ。

 

「幸い、参加者の殆どがLv.2。中には最近Lv.3になった強者もいる。が、それでも勢いのある者達を御せるのかと言われると……」

 

「厳しい。と言うのが本音じゃな」

 

 言葉を濁していたリヴェリアにガレスがトドメを刺す。今回の作戦は慎重な連携が鍵となるのに、足並みを揃える処か暴走しかねない彼等の手綱を握らせるのは、並みの者じゃ敵わない。

 

「………成る程、だから俺が手綱を握る必要があるのね」

 

 憧れは止められない。何処かのナ○チ(カワイイ!)が言っていた様に、憧憬というのは簡単に制御出来るモノではない。

 

「ケッ、下らねぇ。ごちゃごちゃ言ってねぇで雑魚がでしゃばんなとハッキリ言えばそれで済む話だろうが」

 

 相変わらず口が悪いベートだが、今回ばかりは彼の言う通りであると、フィン達三巨頭もベジットも反論出来なかった。

 

 ダンジョンでは弱い者から淘汰され、また弱者だからこそ救いの手を求め、今を生きる強者の足を文字通り引きずり込んでいく。

 

 一つを掴めば十の手が、十を掴めば百の手が、自分も助けてくれと手を伸ばしてくる。

 

その恐ろしさを熟練の冒険者であるフィン達が知らない筈がない。ベジットも経験こそないが、救いを求める手を救い上げる大変さは知っているつもりだ。

 

 だからこそ、他派閥の眷族と連携するよりベジットが単身で向かって闇派閥を撃滅するのが一番確実なのだと言うのだが……。

 

「多分、言葉だけじゃ止まらないと思うよ。【凶狼】」

 

「ああ?」

 

「恐らく、あの様子だと仮に止めたとしても勝手に行動し出すだろう。あくまで善意で、あくまでも自分達の意志でと言い張って」

 

 呆れ、何処か疲れたように語るフィンにベートも事の厄介さを認識する。今、名乗りを上げている有志達の殆どはベジットという強い憧憬に酔った(・・・)いわゆる酩酊状態。

 

そんな彼等の酔いは自身の命の危機に瀕して漸く覚めるのだろう。こんな筈じゃなかったと吐き捨てて。

 

 面倒臭い……処の話ではない。突然現れた時限爆弾の対処に追われる事になったフィンは、申し訳ない気持ちでヘスティア・ファミリアの……強いてはベジットに救援を求める事になったのだ。

 

「……わぁーったよ、連中の指揮は俺が執る。但し、暴走したり勝手な行動をしたら即座にソイツをブチのめすからな」

 

「あぁ、それでいい。なんなら指揮をする時は他の者も巻き込んだ方がいい。君に頼られると思えば彼等の手綱を握りやすくなるだろう」

 

「アドバイスどーも。………はぁ、どうしてこんな事に」

 

「多分、テメェがはっちゃけたからだな」

 

 横から飛んでくるベートの茶々が刺さる。グゥの音も出ない正論に辟易としていると、今まで閉めきっていた扉が開かれた。

 

「話し合いは終わったかー?」

 

「ロキ。あぁ、今終わった所だ」

 

「お、ならちょうどええな。ベジット、例のラウル君を連れてきたでー」

 

 にこやかにやってきたロキと、ギチギチに固まっている黒髪の少年。彼等の登場に心が和み始めたベジットは一先ず厄介事を棚上げして、ラウルと呼ばれる少年に歩み寄った。

 

「ほうほう、君がラウ・○・クルーゼ君かね。名前の割には至極真っ当そうな少年だ」

 

「じ、自分はラウル・ノールドっス。本日は宜しくお願いするっス!」

 

「なぁ、前も言ってたけど、そのラウ・ル・某ってなんやねん。どういう出自の子?」

 

「生まれから弄くり回され、自棄を起こして世界もろとも滅びようとした奴」

 

「とんだヤバい奴やんけ!? え? まさかラウルにそんなヤバい願望が?」

 

「何の話ッスか!?」

 

 ロキ・ファミリアに相応しい良いツッコミだ。将来有望なラウルに気の矯正をするべく、ベジットは一先ず客間を後にするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから暫くして。無事にラウルの気の矯正を終え、黄昏の館での晩餐をご馳走になったベジットとベートは新しい我が家に向かって足並みを揃えていた。

 

「ロキ・ファミリアも中々良いもん食ってんだな。フレイヤ・ファミリアは揚げ物多かったが、アッチは蒸し料理が多かった印象だ。やっぱエルフを多くかかえているからかね」

 

「テメェは少し遠慮と言うものをしやがれ。エルフの連中、スゲェ睨んでいやがったぞ」

 

「知らんな。こちとら唯でさえ面倒な指揮を押し付けられてんだぞ。ラウルに気の矯正をしてやった事を踏まえれば妥当な報酬だろうが」

 

「それは……まぁ、そうだろうけどよ」

 

「そもそも、何でエルフってのはドイツもコイツもあぁも高慢ちきなんだよ。王族のリヴェリアが一番道理を弁えているとか、一体なんの冗談だよ」

 

「それについても概ね同意だがな。………それよりもベジット、テメェどうするつもりだ?」

 

「何が?」

 

ウチのチビ助(リリルカ・アーデ)の事だ。俺達二人が担ぎ出されるのは……まぁいい。俺も闇派閥のクソ共には落とし前をつけてやりたいからな。だがアイツはまだガキだ。境遇から他のガキよりかは物事を分かっているが、それでも………」

 

「当然、置いていく」

 

 ベートの言いたいこと、その全てを察してベジットは呟く。

 

仮令(たとえ)冒険者で、Lv.2になってもアイツにこんな血腥い事に関わらせるつもりはねぇよ。アイツには俺達の家と主神という大事なモノを守って貰わなきゃならんしな」

 

「────ならいい」

 

 ベジット(団長)の決定にベートはそれ以上追求してくる事はなかった。こう見えてベート・ローガは他者を思いやる事が出来る男、口が悪いのは相手を思いやっている事の裏返し。

 

 相変わらずツンデレな奴だと思いながら、仲間思いなベートを嬉しく思う。

 

「こんな些末ごとに時間を食うのも癪だ。作戦が始まり次第、速攻で終わらせるぞ」

 

「当然だ。全員噛み殺してやる」

 

 獰猛な笑みを隠そうとしないベートを頼もしく思いながら帰路に就く。

 

「時にベート君、一つお願いがあるんだけど……」

 

「テメェとの入れ換えはごめんだぞ」

 

「せめて最後まで言わせて!?」

 

 訂正。この狼、やっぱり優しくない。

 

 

 




Q.ヘスティア・ファミリアの現在の資産は?

A.館と装備の購入で総資産の八割近くが消し飛びました。
しかし、館が予想を遥かに超えて安かった為、ローンを組まずに一括購入できたのが幸いだった。

Q.なんかベジットのエルフに対する当たり強くね?

A.オラリオに来るまで何度かエルフと出会い、総じてアレなのを痛感したから。
これでもリヴェリアや事案エルフを通じて多少偏見は無くなっている。

Q.何で27階層の悪夢が起きたの?

A.闇派閥がパスパレードしたり、階層主が乱入してきたりしたから。

Q.ロキ・ファミリアや他の強い派閥に任せないで他の派閥に任せたの? 連携出来ていないのに。

A.分かりませぇん(界王)

 きっと、理由があったのだと思います。ロキ・ファミリアやフレイヤ・ファミリア、アストレア・ファミリアの様な強い派閥の救援を待っていられなかった理由が。

 本作品ではベジットに脳を焼かれた一部の冒険者達の暴走という無理矢理な理由になりました。

 違和感マシマシですみません。

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