ダンジョンに超なアイツが来るのは間違いか?   作:アゴン

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早くベル君出したいなー。

そんな訳で初投稿です。


物語35

 

 

 

 その日から、私達はその炎に焼かれた。

 

 押し寄せる悪意を、覆い被せてくる闇を、その炎は瞬く間に塵一つ残さず焼き尽くした。

 

 黄金の炎。彼は、その光であまねく全てを救い上げて見せた。蒼白の極光は怪物を退け、黄金の剣は一人の少女を救済し、その力を惜しみ無く振るい続けた。

 

 【救世の英雄】。力無き者達が密かに呼ぶその名は、いつか黒い竜を打ち倒す事を願って付けられた。

 

 いつの日かあの黄金の炎が、黒き終末を焼き尽くすのだと。

 

 彼が最弱(Lv.1)であろうと関係ない。あの光に我等は希望を見たのだ。

 

 だから……そう、だからいつの日か。あの英雄と肩を並べる様に我等も決して歩みを止めてはならない。

 

 あの炎に導かれ、我等は乞い願う。

 

 どうか、我等を導いて欲しい……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、それじゃあ行くとするか。ベート、準備出来たか?」

 

「こっちはとっくに出来てんだ。武器を持たないテメェが、何で俺より遅ぇんだよ」

 

「イヤだって、出掛ける前って妙に催したりするじゃん? 漏らす訳にはいかないし事前にお花詰みをだね」

 

「死ね」

 

 ベートからのシンプルな罵倒を受け流して、二人は玄関の扉に手を掛ける。此処はヘスティア・ファミリアの新たな拠点、先日ヘファイストスを通して購入した館。

 

百人は入れそうな巨大な館、たった三人と主神だけの少数精鋭の派閥。そんなヘスティア・ファミリアが迎えた作戦決行の日、仕度を終えた二人は館をでていこうとするが……。

 

「あの……やっぱりリリもご一緒してはダメなのですか?」

 

 唯一、今日は留守番を命じられているリリルカ・アーデは、ダンジョンに向かおうとする二人に自分も行きたいと口にする。

 

 滅多に口にしないリリルカの我が儘、普段なら彼女の要望を聞き入れて、存分に可愛がるベジットであったが……。

 

「なに言ってんだよリリ、お前は昨日散々俺と組手やって疲れてるんだから、今日一日は大人しくするようにしろって言っただろ」

 

 フィン達と話し合いをしてから、ベジットはリリルカに対して今日という日に備え、気を配ってきた。ダンジョンに連れていって先日購入した槍で試し斬りをさせたり、時には組手をしたりと普段の日常と変わらない態度で接し、彼女の底上げを行ってきた。

 

 その甲斐あって、リリルカのステイタスは殆どが“E”を超えて幾つかは“D”に至っている。

 

 Lv.2になってまだ一月程度しか経っていないのに凄い躍進ぶりだなとベジットが感心する一方で、ヘスティアとベートは異常な成長をしているリリルカに色んな意味で戦々恐々としていた。

 

閑話休題。

 

 自分達は極力態度に出さず、リリルカに勘づかれ無いようにしてきた。それでも僅かな異変を察知して来るのは、やはり彼女なりに自分達の変化を感じ取っているのだろう。

 

子供というのは、意外とそういう変化に目敏いという。出掛ける二人に置いていかれたくないと、必死に訴えてくるリリルカにベジットは苦笑いを浮かべて言い聞かせた。

 

「今日はヘスティアもバイト休みだし、主神だけを家に置いておくのも不用心だろ? リリも今日はゆっくりしていていいから、仲良く留守番頼むな」

 

「うぅ……」

 

「そうだぜリリ君。いつも君は頑張ってるんだから、たまの休みくらいゆっくりしようぜ」

 

 ヘスティアからのフォローでも中々納得しようとしないリリルカ、仕方ないから強引でも話を切ろうかと頭を悩ませていた所で……。

 

「疲弊しているバカを連れていける程、ダンジョンは甘くねぇ。いい加減聞き分けろクソガキ」

 

「っ!」

 

「べ、ベート君……」

 

 相手が年齢一桁の子供でも相変わらず一切の容赦なく、鋭い言葉を投げ掛けるベートではあるが、彼の言葉は荒さは兎も角としてその真意は実に的を射ていた。

 

「………分かりました。我が儘を言ってごめんなさい。お二人とも、どうかお気を付けて」

 

リリルカ・アーデはこれ迄育ってきた環境の所為か年齢にそぐわない賢さを持ち合わせている。ベートの言葉の真意を読み解き、それが正しいと分かっているからこそ、ベートの言葉に反論出来る余地などなかった。

 

 肩を落とし、トボトボと自室に向かって去っていく。ベジットはリリルカのフォローをヘスティアに頼んだ。

 

「悪ぃヘスティア。リリの事……」

 

「分かってる。任せておくれよ、リリ君のフォローは僕が確りやっておくから……君達も無事にちゃんと帰ってくるんだよ」

 

「あぁ、いってきます」

 

「帰ってきたら、僕達の家の名前とエンブレム。一緒に考えようぜ!」

 

 今回の作戦の件は、ヘスティアにも伝えてある。大抗争で闇派閥を捨て置けない連中だとヘスティア自身理解できるから、ロキ・ファミリアやアストレア・ファミリア達の要請に応えたベジット達の判断を否定したりはしない。

 

 けれど、それでも心配なモノは心配だ。如何に二人が強かろうと、家庭を司る処女神のヘスティアが不安に思わない事にはならない。

 

 無事に帰ってきて欲しい。そう願いながらヘスティアは二人の背中が見えなくなるまで見送った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで【槍の寵児(リュース)】を凹ませたまま来たのかよ。流石【凶狼(ヴァナルガンド)】、幼女にも容赦ねぇー」

 

「うるせぇよ【狡鼠(スライル)】、そもそもこのバカがいつまでも甘やかすのが悪ぃんだろうが」

 

「これに関してはそこの狼が正しいな。ベジット、あなたの気持ちは分かるが、それでもちゃんと分別は付けさせるべきだ。優しさと甘さは似ているようで違う。線引きを間違うと割りを食うのはあの娘だぞ」

 

「ぐふぅ、面目ない」

 

 作戦開始前、ダンジョンの18階層のリヴィラの街。もうじき作戦が始まり闇派閥との決着が控えていると言うのに、ベートとアストレア・ファミリアの面々に囲まれてベジットのメンタルは既にボロボロだった。

 

 戦えば天下無双、一度その腕を振るえば対峙する全てを破壊する強力無比のLv.1。

 

誰も口にしないだけで、オラリオに浸透しつつある新たな最強(頂点)。そんな天下無敵のベジットも、子供相手にはタジタジだった。

 

 ベートと輝夜、それぞれから鋭いダメ出しを受けたベジットはグゥの音も出せず、泣きそうな涙腺を必死に抑えていた。

 

「まぁまぁ二人とも、その位にしときなさい。ベジットさんが泣きそうになってるわよ」

 

「寧ろ泣かす。それくらいじゃないとコイツは理解しねぇよ」

 

「(´・ω・`)」

 

「しょんぼりしちゃった」

 

「ホンット腹立つなコイツ」

 

 ベート・ローガ(暫定副団長)の叱責を甘んじて受け、今後子供を育てる際の対処法をリヴェリアに相談しようと、ベジットは心に決めた。

 

 そして待つこと数分、リヴィラの街に今回の作戦の眷族達がやって来た。

 

「お待たせしました! ディオニュソス・ファミリアの団長のバークスと副団長のロフィナ、以下主力団員。ただいま現着しました!」

 

「おぉう、凄い熱気」

 

 街の広場には既に多くの派閥の眷族達が集合し、多くの冒険者がベジット達を見て眼を輝かせている。

 

特にベジットを見る目、その瞳に秘められた熱量は凄まじく、その眼差しは期待と羨望で溢れていた。

 

 アストレア・ファミリアとヘスティア・ファミリア。共に先の闇派閥との戦いで目覚ましい活躍を見せた彼等を英雄視する者は数多い。

 

 中でもベジットは大通りで見せた蒼い極光(かめはめ波)や、戦争遊戯で見せた黄金の剣(スピリッツ・エクスカリバー)の件もあり、既に一部では彼を英雄として語られている。

 

 アストレア・ファミリアは引いた。団長を除いたほぼ全員が、その熱量に充てられ引いている。

 

 ベジットに至っては、苦手意識マシマシだったエルフですら羨望の眼差しを向けてくる事実に軽く眩暈を覚えた程だ。

 

「ハッ、随分と持て囃されているじゃねぇか。手ェ振って応えてやれよ英雄殿?」

 

「おいやめろ。ホンットに今は止めてくれベート。お願い、後でご飯奢るから」

 

「ガチで嫌がるのかよ」

 

 前世から目立つことはしてこなかったベジット(⬛⬛)、彼等からの視線から逃れるようにそっぽ向くが、いつまでもその態度が通用する訳がなく、遂にその時はやって来た。

 

「───刻限よ。よく来てくれたわ勇気ある者達よ。アストレア・ファミリアを代表して、団長のアリーゼ・ローウェルが感謝するわ」

 

「作戦は単純にして明快。我等はこのまま20~27階層に赴き其処に潜む闇派閥を討伐、或いは捕縛する」

 

「此処で奴等を仕留めて、この暗黒期を終わらせる。───行くわよ!」

 

 雄叫びがリヴィラの街に響く。作戦の詳しい概要はロキ・ファミリアの団長フィン・ディムナから通達を受け、既に準備は完了している。

 

先ずはベジット達の部隊を先行させて下層へ送り、最も戦力が多い部隊で其処に待つ闇派閥を掃討する。

 

 道中邪魔をしてくるであろう闇派閥………ルドラ・ファミリアを相手にするのはアストレア・ファミリアの全員とヘスティア・ファミリアのベート・ローガが担当となっている。

 

 18階層から駆け出して数十分、既に階層は21階層を突破。流石この時を備えて集まった精鋭だけあって、全員がこの程度の行軍に音を上げる事はなかった。

 

 時折モンスターの群れと何度か遭遇したりもしたが……特にこれ等も苦戦したりせず、闇派閥との戦いの前の前哨戦としてアストレア・ファミリアはこれ等を軽く撃破していく。

 

 副団長の輝夜とエルフのリュー・リオンが切り込み、ライラが崩し、最後に団長のアリーゼが決める。他の団員も同じ様に役割分担を徹底し、最小限の消費でモンスター達を撃破していく。

 

 強い。ベート・ローガは洗練された連携を行うアストレア・ファミリアの面々を見て、彼女達を自分が守るべき弱者ではないことを思い知る。

 

「────どうやら、足手まといにはならねぇみたいだな」

 

「抜かせ【凶狼】、今は貴様が上なのは認めよう。だがすぐに我等が追い抜かしてやるから楽しみにしていろ」

 

「ハッ、やれるもんならやってみろ」

 

 ベートの呟きを耳にしたエルフの少女が言い返す。このままでは終わらない、自分達はもっと上に行くのだと、そう断じる彼女にベートは笑って受け止めた。

 

「うんうん、二人とも仲良くなってなによりだわ」

 

「だが、男の趣味は笑えんな。リオン、お前そんな奴が好みなのか?」

 

「流石にキレますよ輝夜。私がこの男に好意を抱く等と、万回生まれ変わっても有り得ません」

 

「…………」

 

 輝夜の煽りにリオンは真顔で返す。一番の被害者であるベートはビキビキに青筋を浮かべて抗議したかったが、そうしたら自身の敗北だと察してギリギリの所で堪えた。

 

 仮にも大きな作戦の最中である筈なのに緊張感が欠けている空気。だが、それも仕方がなかった。

 

 何故なら───。

 

「み、右からデッドリー・ホーネットの群れ、来ます!」

 

「ホイホイ、頭下げてなー」

 

 アストレア・ファミリアが一つのモンスターの群れを打ち倒す頃には、ベジットが倍以上の数のモンスターを全て打ち落としているからだ。

 

 ベジットの指先から放たれる小さなエネルギー、所謂気弾をマシンガンの様に連射し、小型から大型のモンスターを悉く蜂の巣にしていく。

 

 リュー・リオンは言葉を失った。ベジットの放つ小さなエネルギー、その一つ一つが自分が放てる魔法の威力を軽く超えている。

 

 それを長文詠唱処か短文詠唱ですらなく、何なら余所見しながら的確にモンスターを駆逐しているベジットに、リューはつくづく彼と自分の力の差を思い知っていた。

 

「なぁ、今のマンモス・フールだったよな?」

 

「あぁ、アリーゼ達以外では私達ですら単独での討伐は難しいデカブツだ」

 

「………穴だらけになってたな」

 

 21階層に出現するモンスターの中でも、一際巨大なモンスターが物言わぬ肉塊となっている。

 

「相変わらずヤベーなベジットの旦那、今日まで色々と準備してきたってのに、これじゃあ肩透かしも良いところだ」

 

「だね」

 

 ライラのボヤキに狼人のネーゼが苦笑いを浮かべる。今回のベジットの役割は指揮官だが、現場に辿り着くまで他の面々の体力を無駄に消費させないでいるつもりなのだろう。彼等が先行する後には、同様に風穴だらけのモンスターの死体が幾つも転がっていた。

 

「……なぁ、なんかモンスターの数多くね?」

 

「言われてみれば……確かに」

 

「みんな、散って!!」

 

 余りにも転がっているモンスターの数が多い事から、違和感を覚えたライラが呟き、嫌な予感がしたアリーゼが散開するよう指示を出す。

 

 団長の指示に従い、アストレア・ファミリアとベートが地を蹴り四方に飛ぶ。

 

 その際、ベートが遅れたエルフのセルティの首根っこを掴んで跳躍。瞬間、火の付いた魔道具が投げ込まれ、大規模な爆炎が辺りを呑み込んだ。

 

「全員無事!?」

 

「な、何とか!」

 

「今の、大抗争の時の!」

 

「奴等、性懲りもなくふざけた真似を」

 

 それは大抗争の時、オラリオを一度は火の海に沈めた火の魔道具。闇派閥が自決用として作られた罠が、今度は明確な武器として使用された。

 

沸き上がる怒りを呑み込みながら、今の魔道具が飛んできた方へ視線を向ければ、目的の集団が下卑た笑みを浮かべて見下ろしていた。

 

「よぉ、よく来たなぁアストレア・ファミリアの糞女共」

 

「ジュラ・ハルマー!」

 

 闇派閥の一角、ルドラ・ファミリア。猫人(キャット・ピープル)の団員が挑発的な笑みを浮かべ、歓迎するようにその両手を開く。

 

「嬉しいぜぇ、ワザワザテメェ等が来てくれるとはよぉ。今日此処でテメェ等をぶち殺し、俺達が新しい地上の解放者になるんだ」

 

(解放者?)

 

 普段から何を考えているか分からない闇派閥だが、ジュラと呼ばれる男の言葉は輪に掛けて意味が分からなかった。

 

 地上を混沌……血と争いと憎悪を撒き散らすのが彼等の目的で、解放などと抽象的な表現は口にしてこなかった。

 

何かが変わった? いや、どちらにせよ此処で会敵した以上仕留めるのみ。脳裏に過る疑問と違和感を振り払い、輝夜は鞘に収めていた刃を解き放つ。

 

「ゴチャゴチャと御託をほざいてんじゃねぇ。クソ共、テメェ等は全員此処で噛み殺す」

 

「【凶狼】、ヘスティア・ファミリアのテメェが此処にいるのは想定外だが……関係ねぇ。ベジットのクソ野郎共々、今日ここで死ね」

 

 笑える冗談だった。ベジットを殺す? あの人外魔境の規格外の塊を? 仮に目の前のイカれた闇派閥の言葉が本当なら、是非ともその算段を教えて欲しい所だ。

 

「随分と自信家じゃねぇか。アイツを殺せる手段があるなら、是非とも教えて欲しいもんだ」

 

 言外にやれるものならやってみろ。そんなベートの意思をアストレア・ファミリアの面々は少し引いた様子でベートから距離を取った。

 

 既に、ベジット達先行組は次の階層に向かっている。今頃は目的地に辿りつき、そこで暗躍している闇派閥を追い詰めている頃だろう。

 

しかし、そんなベートの思惑とは別にジュラ・ハルマーの笑みは崩れない。どこまでも狂喜的な笑みを張り付けて、愉快そうに笑う奴の顔には、他の団員と同様に正気が薄れているように見えた。

 

「へ、へへへ。テメェ等は全員此処で死ぬんだよ。ベジットも、俺達も! あの化物────オリヴァス・アクトになぁ!!」

 

「「「ッ!?」」」

 

 それは、本来此処で出てくる筈のない者の名だった。

 

 オリヴァス・アクト。曾てベジットに追い詰められ、ベジットの手で再起不能となった筈の男、先日のディアンケヒト・ファミリアの本拠地襲撃の際に身柄を奪われたと、全員が周知していたが……まさか、ここで出てくるとは。

 

「チッ、どうやら生かして吐かせる必要が出てきたか」

 

「みんな、やるよ。注意して!!」

 

「来いよ、クソ共がっ!! 此処がテメェ等の死に場所だっ!!」

 

 嘲笑と殺意を滲ませ、悪意が嗤う。後の【下層決戦】なる戦いが遂に始まった。。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして。

 

「─────嘘」

 

 その光景を見て、黒髪のエルフが絶望に沈む。アレだけ気炎を発し、如何なる苦難も乗り越えるつもりでいた数々の冒険者がその光景に絶望し、そして後悔した。

 

 【巨蒼の滝(グレートフォール)】。荘厳な蒼い滝で覆われた下層が、一面の朱に染められていた。壁も、地も、流れる水も、その悉くが血の様に赤く染まり、眼前の黒き海竜からは嘲笑が溢れ落ちていく。

 

 アンフィス・バエナ。27階層の階層主が変異したモンスターを操るように其処にいた。

 

「嗚呼、嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼! 素晴ラシイ! 素晴ラシイゾ!! コレガ新タナ肉体! 死二掛ケダッタ我ガ魂ヲムスビ、新生サセタ!!」

 

 海竜が吼える。階層を震わせ、水が逆巻き、その声は他者に絶対的な恐怖を与える。

 

 来るんじゃなかった。

 

 モンスター………階層主と融合し(・・・・・・)、未知なる怪物と成り果てたオリヴァス・アクトだったモノ(・・・・・)

 

 奴を前にマトモに戦えるものはいなかった。

 

 遠くから聞こえてくるモンスターの足音、迫る脅威の前にこのまま体勢を立て直さなければ全滅も避けられない。

 

死の恐怖が冒険者を追い詰める。イヤだ、死にたくないと、震えて声も出せない彼等を前にして。

 

「うーん、実にバイオチック」

 

 彼───この世界唯一の戦闘民族は、何処までもいつも通りだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────良かったのか? アレは仮にもお前の分身だろう。よりにもよってあんな滓に与えるとは………」

 

「まだ予備もある? 他にも沢山? そうか………ならば、私から言うことはない」

 

「精々足掻け冒険者。絶望と死の泥沼に沈み、私達の贄となれ」

 

 

 

 





Q.アンフィス・バエナに異物混入してるんですが?

A.外伝要素エントリー!

Q.どんな見た目?

A.アンフィス・バエナの双頭にオリヴァス君がそれぞれ(・・・・)生えてる状態です。

 色は黒よりの紫。澱んでいて実にバッチぃー色合いです。






オマケ


もしもヘスティア・ファミリアが15年前からいたら?Final

 その日、その子供は街を彷徨っていた。冒険者に憧れ、英雄に憧れた子供はその脚でオラリオに赴き、様々な派閥の門を叩いた。

 だが、期待に胸を膨らませていたとは裏腹に、現実は非常だった。どんなに食い下がっても弱そうだからと理由で門前払いを受け、時には騙されてなけなしの小遣いも失い、既にその子供は明日も知らない不安を抱える事になった。

このままでは最悪、義母や叔父が所属していた派閥に引っこ抜かれるハメになる。それはイヤだ。普段から弱気で幼い頃から過保護に育てられてきた自分が、初めて自分の意思で自分のやりたいことを決めたのだ。

 今更頼りにするわけにはいかない。ギリギリまで頑張ろうと、改めて覚悟を決めて一歩前に出た時。

「キャッ!?」

 情けない。こんな時でも自分は格好が付かないと、躓いた自分を呪い、地面と熱烈なキスを覚悟して……。

「おっと、危なかったな。大丈夫かいお嬢ちゃん(・・・・・)

 気付けば、大きな腕に抱き抱えられていた。

「見かけない顔だな。新米か?」

「ひゃ、ひゃい! あ、あの私今日オラリオに来たばかりで……!」

「おぉそうか。君みたいな若い子が冒険者志望とは。中々度胸があるな。何かあったら俺達の派閥───ヘスティア・ファミリアに声を掛けな。アドバイス位してやるぜ」

 そう言って、その人は優しい手付きで僕を地面に下ろしてくれた。………か、格好いい!!

「あ、あの!」

「うん?」

「あなたのお名前を教えて下さい!」

 なけなしの勇気を振り絞って、名前を訊ねる。すると、その人は格好いい不敵な笑みを浮かべて……。

「俺はベジット。ヘスティア・ファミリアで団長をしている」

 じゃあな。と、ベジットさんはオラリオの街へ消えていく。彼の大きな背中を見て僕────ベル・クラネルは決意する。

決めたよ、お爺ちゃん、お婆ちゃん。

「僕、あの人のお嫁さんになる!!」








「う、ウワァァァッ!? ゼウスとヘラが眷族総出で押し寄せてきたァァッ!?」

「アイツ等、やる事がないって言って世界中のモンスターを狩りに行ってたんじゃないのか!?」

「まさか、またベジットの野郎がなんかやらかしたのか!?」

「ゴスペル! ゴスペルゴスペルゴスペルゴスペルゴスペルゴスペルゴスペルゴスペルゴスペルゴスペルゴスペルゴスペルゴスペルゴスペルゴスペルゴスペルゴスペルゴスペルゴスペルゴスペルゴスペルゴスペルゴスペルゴスペルゴスペルゴスペルゴスペルゴスペルゴスペルゴスペルゴスペルゴスペルゴスペルゴスペルゴスペルゴスペルゴスペルゴスペルゴスペルゥゥゥゥッ!!

「オッタル、吹っ飛んだぁァァッ!?」

「【勇者】ァァァッ! 早く来てくれェェェ!!」

「………おいベジット君、これどうするんだい?」

「俺が悪いの!?」




もしもヘスティア・ファミリアが15年前からいたら?

ベル“君”はおしまい。


完。




この後、無事にベジットが全員黙らせて事なきを得ましたとさ。

めでたしめでたし。

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