ダンジョンに超なアイツが来るのは間違いか?   作:アゴン

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全部切るよ、役目だからね。


ワイルズの主人公が4Gのユウタ説好き。

そんな訳で初投稿です。




物語42

 

 

 

 その日は、纏わり付くような重い雨だった。

 

ディオニュソス・ファミリアの壊滅の報せはオラリオ中に瞬く間に広がり、闇派閥と決着が付いて間もない頃だった為、民衆も冒険者達も突然の悲報に動揺した。

 

 原因は異常事態(イレギュラー)と聞いて先の【融合体】の件もあり、ロキ・ファミリアの団長であるフィンはすぐに自身を含めた捜索隊を募り、その中にはヘスティア・ファミリア団長の姿もあった。

 

 28階層。【下層決戦】よりも一つ下の階層、そこはディオニュソス・ファミリアが到達できるギリギリの領域。辿り着いた捜索隊がそこで見付けたのは、血塗られた装備のみ、生存者は異常事態の報告の為に生還したたった二名のエルフのみだった。

 

 彼女達は自分が生きていたのは団長達が逃がしてくれたからだと言う。仲間達を死なせ、絶望に沈んだ彼女達の顔は酷かったと語るのは、当時リヴィラの街を警邏していたボールスである。

 

 異常事態の原因は複数の強化種との遭遇。モス・ヒュージを中心とした大規模な【怪物の宴(モンスター・パーティー)】に幾度となく襲われた事が、事の事態の始まりなのだと言う。

 

 事実、捜索隊はこれら強化種と遭遇し撃破した。モンスターの手や口元にはディオニュソス・ファミリアの眷族達が装備していたと言う布、或いは剣が突き刺さっていたという戦いの痕跡から、生存者の報告は真実であるとフィンは判断した。

 

 派閥の壊滅。冒険者がダンジョンで亡くなるというのはこの街では日常茶飯事、ただ今回は一つの派閥が二名を残して亡くなったという大きな規模だった為、街は少しばかり動揺していた。

 

 その動揺も、差程時間を置かずに沈静化となり、今ではもう一つの悲しい事件として消化されるだけとなっていた。

 

 悲しい事件だった。痛ましい事件だった。けれど元凶たるモンスターは倒され、人々の顔には安寧が宿っていた。

 

 冒険者がダンジョンで死ぬのは良くある事、故にオラリオの街に住む人々はそんな悲しみを呑み込み、背負って進んでいくのだ。

 

 ────ただ一人、納得出来ていない者を除いて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 降り頻る雨、迷宮都市オラリオにある共同墓地にて、ベジットはとある墓に一つの花束を置く。

 

 肩に掛ける傘に雨粒の叩く音が響く。

 

「ベジットさん、此処にいたんですね」

 

「アーディか……」

 

 花を手向け、手を合わせて黙祷を捧げているベジットの下へ、アーディが歩み寄る。その手に添えられた花束を見るに彼女もまたディオニュソス・ファミリアの墓参りに来たのだろう。

 

「リリルカちゃん達も心配してましたよ。あの一件以来ベジットさん、思い詰めた顔をしてるって」

 

「参ったな。気を付けてはいたんだが……」

 

 ポリポリと頭を掻くベジット。先の真剣な顔付きとは異なり、いつもの雰囲気に戻った彼にアーディは安堵した。

 

「ベートさんも、口汚く罵ってはいましたがやはりベジットさんの事を気に掛けているようです。ヘスティア様も、アルテミス様も……」

 

「悪いことをしたな」

 

 ヘスティア・ファミリアは主神含めて仲間想いのファミリアだ。ヘスティアは言わずもがな、リリルカもベートも決して口にはしなくとも誰かを思いやれる人間で、同時に“冒険者故の不幸”も覚悟している。

 

 ベジット(⬛⬛)もこの世界に来て数年を過ごし、この世界が如何に過酷なのかはイヤと言う程理解している。

 

 オラリオの外にもモンスターは蔓延り、神の恩恵を持たない人類が日々その恐怖に怯えて震えている。モンスターにより悲劇的な末路を辿った村や集落は数えきれない。

 

 自分が鍛練ついでにモンスターの討伐をし始めたのも、そういった悲劇を少しでも減らそうというベジットなりの気遣いだ。

 

 この世界はモンスターの悲劇で溢れている。その事実を受け入れざるを得ない生活をしながら、この世界の人々は懸命に生きている。

 

『ベジットさん。今日の事、我々は決して忘れません!』

 

『私達に“冒険”を思い出させてくれて、ありがとう』

 

 決戦後、リヴィラの街で労いを交わしたディオニュソス・ファミリアの団長と副団長。恐怖と向き合い、乗り越えた彼等は果たして最期の瞬間まで笑えていただろうか。

 

 やはり恐怖で尻込みしたか、それとも限られた勇気を振り絞って前のめりに倒れたのか。

 

今となってはもう、誰にも分からない。

 

「───アーディ、ディオニュソス・ファミリアの生き残りはアレからどうなった?」

 

「主神、ディオニュソス様と共に昨日オラリオから出ていかれました。此処には思い出が多すぎて辛いからと……」

 

「そっか」

 

 彼等は負けた。負けて、命を落として死体すら残らずにダンジョンの深淵に呑まれて消えた。

 

 それでも、残された命があった。今は絶望に沈み、膝を折ろうとも、彼女達ならきっと……。

 

「───帰るか」

 

「送りますよ」

 

「馬鹿言え、女の子にそんな事をさせたらそれこそベートにどやされる。本拠地まで送ってやるよ」

 

「えへへ、役得ですね」

 

 ならば、自分もいつまでも固執する訳にはいかない。自分はヘスティア・ファミリアの団長、天下無敵のベジットなのだから。

 

 ────ただ。

 

誰か(・・)は知らないがこの借りは必ず返さなきゃな)

 

 その胸中に根拠のない確信を秘めて……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オラリオから出たい?」

 

 翌日、ディオニュソス・ファミリア壊滅の報せを自分なりに呑み込んだベジットは、ヘスティア達と一部の例外(・・・・・)だけを自室に招き入れ、オラリオからの外出を言い出した。

 

「一体何を言い出しやがんだコイツ」

 

「ベジット様、流石にオラリオの生活を飽きるには早すぎます」

 

「まだ新居を建ててそんなに経っていないのに、何を言い出すんだ君は!?」

 

「取り敢えず落ち着け」

 

 三者三様の反応、特にヘスティアはオラリオに来てまだ一年ちょっとしか経過していないのに、いきなりオラリオから出たいと言い出したベジットに酷く動揺していた。

 

勿論、ベジットはそんなつもりは毛頭ないわけで。

 

「ちげーよ。ベートもリリルカも順調に腕を上げているし、そろそろ俺も本格的に自分の鍛練に集中したくてな」

 

「だから、オラリオの外へ?」

 

 取り敢えず、オラリオから出ていくのではなく、一時的な外出という意味合いだと理解したヘスティアはホッと胸を撫で下ろす。

 

「あぁ、俺が本格的に修行するにはオラリオは狭すぎる(・・・・)。ダンジョン内も閉鎖的だし、下手に傷を付けたりしたらそれこそ例のジャガ丸が出てきちまうからな」

 

「……仮にもダンジョンの異常事態(イレギュラー)をオラリオのファストフード呼ばわりするのは如何なものかと」

 

「止めとけ、コイツにそう言った常識は当てはまらねぇよ」

 

 一つの派閥を壊滅せしめる恐ろしいモンスターを、オラリオで人気の食べ物で隠語にするのはリリルカもどうかと思ったが、ベートの言う通り相手は規格外のベジット。彼の言葉にリリルカはそれもそうだと納得した。

 

「うーん、でも聞いた限りだと冒険者がオラリオから出る時はギルドとかなり面倒なやり取りがあるみたいだからなぁ」

 

「ゲッ、そうなのか?」

 

「冒険者はオラリオの戦力。自分達の戦力となる者を、ワザワザ外へ出そうとはしませんよ」

 

 リリルカの補足説明にベジットの顔は嫌そうにしかめる。冒険者に冒険をするなと、如何にも名訓として遺してある癖に、冒険者に昇格する事を促してくる。

 

 他にもロキ・ファミリアやフレイヤ・ファミリアの様な巨大な派閥には税金として毎月結構な額をギルドに寄付させているのだとか。

 

「………最近思ってたけどさ、ギルドって結構阿漕な事をしてね?」

 

 幾らギルドの機能やオラリオの維持の為とはいえ、少々やり方が狡い気がする。しかもギルド長のロイマンを見る限り、それなりに後ろめたい事もやっているみたいだし………。

 

 もしこれで万が一冒険者側の不満が爆発したら、それこそオラリオは崩壊するのではないか?

 

 ……いや、そうならない為にそう言った見極めの目もあのギルド長には備わっているのか。やるな、ロイマン。

 

「今更ですよ」

 

「今更だな。あの豚野郎は自分(テメェ)の既得権益に余念がねぇが、同時にオラリオの維持にも注力している。ベジット、テメェがバカ正直に外に出たいと言い出した所で、あの手この手で煙に巻くのがオチだ」

 

「えぇ~……」

 

 確かにオラリオで生活する分、何かと保証されていると思うし、それに見合った見返りとしてオラリオの戦力として冒険者を囲うのも分からなくもない。

 

 けれど、たかが一時的な外出の為に其処までやるというギルドにベジットは早くもウンザリしてきた。

 

「────もう勝手に外へ出て行こうかな。女神フレイヤとか、割りとそうしているみたいだし」

 

「そのフレイヤの眷族が大慌てで追い掛けて、その都度オラリオは大混乱みたいだけどね」

 

「傍迷惑過ぎる」

 

 当然、ベジットの言う通り自由奔放な女神にはそんなオラリオという籠の鳥は窮屈でしかなく、自由気ままに飛び出してはオラリオを大混乱に陥れている。

 

 勿論、女神フレイヤにそんな意図は毛頭ないが、彼女を心酔している眷族達にとっては一大事に変わりなく、過去にそれが原因でロキ・ファミリアと激突し、危うくオラリオは物理的に崩壊しかかった事がある。

 

 そんな過去を以前フィンから直接聞いたベジットはロキとフレイヤの対立もそれが原因の一つではないかと察してしまった。

 

「ま、別に勝手に出ていく分には問題ねぇだろ。そもそもテメェは空を飛べるんだ。帰りも【瞬間移動】で一瞬なんだろ?」

 

「それもそうだが……俺の修行にはヘスティアの力も必要なんだ」

 

「僕の?」

 

「正確に言えば“神威”ってヤツに、だ」

 

 神威を修行に利用する。曾て聞いたことのない言葉に、これ迄壁に寄りかかりいい加減な態度だったベートも姿勢を糺す。

 

「神威だと? ベジット、テメェ何を考えてやがる」

 

「そんな大した話じゃない。ヘスティアには可能な限り神威を解放し、俺に負荷を掛けて欲しいんだ」

 

「ふ、負荷ぁ?」

 

 この男、よりにもよって神威を負荷トレーニングとして利用しようとしてやがる。初めて聞いたトンチキ修行にベートもリリルカも唖然とした。

 

「神々の神威って、下界の人類では抗えない力があるんだろ? なら、その力で出来るだけ俺の力を削いでくれたら、その分の経験値が溜まるんじゃないかって」

 

「う、うーん。まさか神々(僕達)の神威を負荷トレーニングとして利用するとは……」

 

「というか、ベジット様はその修行で昇格するつもりなのです?」

 

 オラリオに来て早一年弱、ベジットのステイタスは相変わらずオールIのオール0である。

 

 背中の恩恵に唯一刻まれているのは、スキルである【瞬間移動】ただ一つ。そんなベジットが果たしてその修行で何に至ろうとするというのか。

 

 リリルカの当然の疑問に、ベジットは己の手を握り拳に変えて……。

 

「【超サイヤ人】を超える」

 

 己の超えるべき壁を静かに語る。

 

「【超サイヤ人】? それって……」

 

「例の金髪碧眼の姿のヤツか」

 

 ベートの言葉にベジットは頷く。

 

「正確に言えば、【超サイヤ人】の二つ先(・・・)を目指す。最初の壁は既に超えているからな」

 

 ドンドン出てくるベジットの………いや、サイヤ人に関する新情報にリリルカは息を呑んだ。

 

 【超サイヤ人】。あの黄金の炎を纏い、何者よりも強大な力を持ったベジットにまだ“先”があるのだと、聞かされた者は好奇心半分、畏怖が半分の感情で埋め尽くされていた。

 

「なぁヘスティア。俺のステイタスは相変わらずオールIのオール0だけど、経験値も溜まっていないのか?」

 

 そんなベート達の反応を余所に、ヘスティアへ問う。オラリオに来てから刻まれた神の恩恵(ファルナ)、神の眷族で冒険者である人類は様々な経験を経る事で経験値(エクセリア)を貯めていく。

 

ダンジョンでモンスターを戦うだけでなく、フレイヤ・ファミリアの様に団員同士で戦って力を付けたり、時には闇派閥の様に誰かを殺したり等の経験を経て強くなっていく。

 

 ならばベジットは? これ迄誰かを救い、理不尽を打ち倒し、数多の化物を倒してきたベジットが全く経験値を獲得していないのか。

 

 答えは───

 

「───溜まってるよ。それはもう凄く、並みの子ならレベルが幾つか昇格してもおかしくない程の………ね」

 

 否。ヘスティアの重くなった口から語られた事実にベジットとヘスティアを除いた全員が本日何度目かの驚愕に染まっている。

 

 ベジットはこれ迄多くのモンスターを片手間に薙ぎ払い、多くの者達の運命を変えてきた。

 

 全ては大抗争の日、あの日に本来なら失う筈だった命は救われ、本来死すべき運命にあった者達をその力で問答無用に救ってきた。

 

 それは明確な“偉業”となってベジットの経験値として刻まれているのだ。

 

「ごめんね。今まで黙っていて」

 

「別に良いさ、お前の事だ。俺が変に期待して落ち込ませない為に気を利かせてくれたんだろ」

 

 ベジットの言葉にヘスティアは申し訳なさそうに頷く。

 

「ベジット君には経験値がたんまり溜まっているのは分かる。でも、ステイタスには一切反映されていないんだ。まるで神の恩恵とは別の所で溜まっているというか……」

 

 ヘスティアが黙っていたのはベジットの経験値の特異性によるものが大きい。本来なら神の恩恵にステイタスとしてアビリティが上昇したり、唯一ベジットが発現しているスキルである【瞬間移動】の様に何らかの形として刻まれるのが普通である。

 

 だが、ベジットの経験値はそもそも溜まっている場所が違うとヘスティアは言う。

 

「なら、ベジット様はその経験値を消費して【超サイヤ人】を超えるというのですか?」

 

「ありていに言えばそうだな」

 

 言葉にするには簡単だが、ベジットの言う【超サイヤ人】を超えるというのはそう簡単な事ではない。きっとベジットの修行は苛烈を極めるのだろうと、リリルカは素人ながらそう思った。

 

 なら、今回も自分は留守番か。未だLv.2でしかない自分がベジットの修行に付き合っても邪魔にしかならない。今回は大人しく身を引こうと、リリルカは子供ながら配慮するが……。

 

「あぁ、因みにベートもリリルカも参加な。ヘスティアの面倒も見て貰わなきゃならんし」

 

「ケッ、だと思ったぜ」

 

「………え?」

 

 ベジットからの参加要求にリリルカは言葉を失った。

 

「なんだリリ、また自分は留守番かと思ったか?」

 

「え、いや……でも」

 

「言ったろ。もう置いてったりはしないって、お前には特等席で俺の活躍を拝ませてやるよ」

 

「ベジット様────はい! リリルカ・アーデ、粉骨砕身の覚悟で挑みます!」

 

 小さいのに難しい言葉を知ってるな。ピンと背筋を伸ばし、敬礼してくるリリルカにベジットは嬉しそうに微笑んだ。

 

「で、テメェが修行に出る日時は決めてんのか?」

 

「あぁ、それについてなんだけどな………」

 

 盛り上がっている所にベートの冷ややかな意見が差し込まれ、リリルカがジト目を向けるがベートは関知しないで話を促した。

 

 言葉尻を濁し、ベジットは視線の先を()に向けると、その人物は納得した様に頷き席を立つ。

 

「成る程、私が所属する“学区”の大点検大修理(オーバーホール)に合わせてオラリオから抜け出す算段か」

 

 一部の例外の一人、レオン・ヴァーデンベルクがベジットの誘いにのって話に加わってきた。

 

「“学区”って、教育機関なんだろ? だったら体験入学的な催しもあったりしないか?」

 

「一応派閥体験(インターン)という学区の生徒がダンジョン攻略に参加させるという試みもあるが……その逆か。確かに隠れ蓑には悪くないかもな」

 

 “学区”は創設されてからその歴史は浅く、その全貌と全容を把握している者は少ない。ベジットを含めたヘスティア・ファミリアがその広告塔になってくれるというのなら、その申し出は悪いモノではなかった。

 

 それに、外部施設とはいえ学区も厳密に言えばオラリオと関わりのある組織。そこに体験入学ならばギルドも深く干渉はしてこないだろう。

 

「期日は学区の大点検大修理が終わるまで。どうだ?」

 

「なら、一度私自身学区に戻った方が良いな。バルドルにいい加減話をしておきたかったしね」

 

「悪いな。お前も此処のところ色々あっただろうに」

 

 ベジットの指摘通り、レオンはフィン達ロキ・ファミリア同様に闇派閥に対して活動を行っていた。

 

 主な目的はオラリオの外で闇派閥に与する者達の検挙。ガネーシャ・ファミリアと協力し、証拠集めと連中が雇った冒険者崩れの用心棒を相手にそれはもう大立ち回りをしたのだとか。

 

「気にしないでくれ、ガネーシャ・ファミリアもそうだが、こちらには情報収集に長けた神ヘルメスとその眷族達も一緒だったんだ。言う程大変ではなかったよ」

 

 実際、相手の内部調査や証拠集めはヘルメス・ファミリアの新団長である【万能者(ペルセウス)】のお陰で恙無く行われ、レオンは戦力として物理的に組伏せただけである。

 

「ただ、話を通す代わりに君が目的を達成した暁には学区に立ち寄って欲しい。君の扱う“気”の力を是非とも教えて欲しいんだ」

 

「あぁ、いいぞ」

 

 レオンの条件に即答する。相変わらず判断の速いベジットにベートもリリルカも肩を竦めた。

 

「勿論、ベート君とリリルカ君もだ」

 

「あぁ? なんで俺が……」

 

「り、リリもですか?」

 

 戸惑う二人にレオンは勿論と頷いた。

 

「君達二人はベジットから“気”の事で直接的に指導を受けている謂わば先駆けだ。君達二人の見解を伝え聞くだけでも、我々にとって大きな財産となる」

 

 実際、気の扱いに関して言えば二人は他の派閥と比べても頭一つ抜きん出ている。ベジットと合わせて指導してくれればそれだけ学区の生徒達は大きく、そして強くなれるだろう。

 

「り、リリで良ければ……あまり、自信はありませんけど」

 

「チッ、後で文句抜かすんじゃねぇぞ」

 

 二人の了承を得て、賑やかに微笑むレオン。学区に関する件は一先ずこれで良いだろう。

 

 残すは………。

 

「私からもいいかしら?」

 

「おう、なんだって聞いてくれヘファイストス様」

 

 赤髪で右目に眼帯を付けた鍛冶の女神。この部屋にいる例外の一柱、ヘファイストスが挙手をする。

 

「学区の大点検大修理まで凡そあと半年、その間にそちらは何かしらの準備をするの?」

 

「基本的にはこれ迄通り。ベートとリリルカはいつも通りの日々を送って貰う。但し……」

 

「但し?」

 

「ベートはLv.6、リリルカはLv.4を目指して貰う」

 

「ッ!」

 

「─────ファッ!?」

 

 あまりにもアッサリと告げてくる衝撃的な内容に、二人も流石に動揺した。

 

 特にリリルカは現時点でLv.2だと言うのに二つも昇格する事になっているから、その動揺は凄まじかった。

 

「何だよ、そんな驚くことか」

 

「逆になにを根拠に確信してるんだテメェは」

 

 驚いている二人をキョトンとしているが、言われているベートとしては憤慨モノである。

 

この男、自分が昇格(ランクアップ)出来ていないからって、僻んでいるのではないか? ベートは訝しんだ。

 

「根拠がなきゃ俺もこんな事はいわねーよ。二人とも半年後まで確りと仕込んでやるから、安心しろ」

 

「寧ろ安心できる要素が皆無なのですが……」

 

 不敵に笑うベジットの顔は今は階層主より恐ろしく見えるのは、きっとリリルカ・アーデの気の所為ではないだろう。

 

 ただ、一度経験のあるベートはベジットのやることを何となく察し、思い出したように体が震え出す。これは武者震い、決してトラウマを想起させられたからではないと、自分に言い聞かしながら、ベートも渋々承諾した。

 

 そんな阿鼻叫喚の二人をヘスティアは苦笑いしながら見守った。

 

「………なら、最後の質問よベジット。アナタ、修行するって言ってるけど、何処でやるつもりなの?」

 

 最初にベジットは言った。オラリオでは狭いし、ダンジョンは尚の事だと。冒険者にとって強くなる手段が揃っているこの地をベジットは自分には合っていないと断じた。

 

 では、彼の向かう修行場は何処なのか。………いや、何となく分かる。今日集められた面々を見ればヘファイストスも何となく察してはいた。

 

ただ、確信を得たいが為の質問。そんな女神の問いにベジットはフッと笑みを溢し………。

 

「【竜の谷】。彼処なら広いし、多分イケるだろ」

 

 出てきた単語に、一同はやっぱりそうかと天を仰いだ。

 

 

 

 

 

 





そんな訳でベジットの経験値はこんな解釈になりました。

あまり深く考えず、そういうものかと納得してくだされば幸いです。


オマケ

会議前。

「ヘファイストス様、この度は此方の呼び掛けに答えて下さり、誠にありがとうございます」

「ヘスティア様、どうしてベジット様はヘファイストス様に対してあぁも低姿勢なのです?」

「ベジット君はアフロディーテ絡みでヘファイストスに大変お世話になっているからね」

「………あー」

「アイツ、仮に結婚する時になったら戦争が起きるんじゃねぇか?」


後に、ベートの懸念は現実のモノとなる模様。

「俺の所為かよ!?」




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