ダンジョンに超なアイツが来るのは間違いか?   作:アゴン

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ワイルズが楽しくて更新が遅くなりそうで済まない。

そんな訳で初投稿です


物語43

 

 

 

 その日から、ヘスティア・ファミリアの活動は非常に活発だった。

 

 モンスターと出会ってはモンスターを倒し、危機に陥っていた同業者(冒険者)を見付けては助けたり、ダンジョン探索をしては市場に出回る素材を集め、それを資源としていた。

 

 いつも通りと言えばいつも通り。ただ先の【下層決戦】の件でヘスティア・ファミリア……ひいてはベジットにギルドから再びある特例が下された。

 

 それは、ベジットだけに限られた深層への探索許可である。階層主と融合したオリヴァスを一方的に蹂躙したベジットへの細やかな(?)報酬である。

 

 けれどやはりと言うべきか、冒険者となって一年と其処らで深層を探索出来る冒険者など前代未聞。故に以前と同様にこの件はヘスティア・ファミリアだけの特別処置という事になっている。

 

 この事をギルドに呼び寄せたロイマン自ら説明する事になった。当然、反骨精神旺盛なベートはその傲慢な態度のロイマンに最初こそ噛みつき、なんなら脅してやろうかと思ったが……。

 

 目には濃厚な隈が、そしてゲッソリと窶れ、覇気もなくなったギルド長を見て、ベートは初めてロイマンに同情した。

 

『何度も言うが………程々にな』

 

 傲慢なエルフらしい態度は何処へやら。殊勝処か親身に此方の言葉に耳を傾けてくるロイマンにヘスティア・ファミリアは言葉に出来ない怖さを感じた。

 

『やはり社畜は悪い文明』とはベジットの談である。原因はお前だけどな。

 

 そんな日々を過ごしていたそんなある日。

 

「うん。依頼していた素材、全部確認したよ。いつもありがとうね、ベジットさん」

 

「いいって事よ、ダンジョン探索のついでだ。この位お安いご用さ」

 

「ふふ、そう? なら次もお願いしちゃおうかな」

 

 本日ベジットが足を運んだのは主神ヘスティアも天界の頃から縁があるという医神ミアハの派閥。

 

 ミアハ・ファミリアが営む薬局店。ベジット達が回復薬(ポーション)を買うのに頻繁に通っている地元住民御用達の店舗である。

 

「今日も買っていくのかい?」

 

「あぁ、何時もの回復薬と……あと精神回復薬(マインド・ポーション)を10本ずつ」

 

「了解、注文入ったよー!」

 

「「「はーい!」」」

 

 団長のナァーザの指示を受けて、パタパタと店の奥へ向かう数人の眷族達。Lv2にもなってすっかり頼もしくなったと、ベジットは内心嬉しく思った。

 

「相変わらず気前が良いね。この後もダンジョンに?」

 

「あぁ、今は出来るだけ稼いでおきたいからな。リリも近々アイズ達と一緒に階層主に挑むみたいだし、念には念を入れてな」

 

「可愛い子には旅をさせよ。なんて言うけれど、あんまり無茶させないであげてよ? リリルカちゃん、この辺りでは人気者なんだから」

 

「分かってる。万が一の時は俺も加勢するさ」

 

 尤も、その時はベジットは本当に危ないギリギリの所を見極めるつもりでいる為、多少の危険な場面には手を出さないようにしている。

 

これは団員達で取り決めた事。ベジットという規格外がいつでも助けに来てくれると考えては危機感の欠如に繋がり、最悪リリルカ達の冒険の妨げになりかねない。

 

 故に適度な危機感を持たせる為にベジットはリリルカとベートの冒険に基本的には手出しをしない方針を取っている。

 

 勿論、口出しはするし許可が降りた階層までという制限付きではあるが。

 

リリルカもベートも聡く、故にこの時のベジットの意図も察していた為、その方針に異義を唱えることはしなかった。

 

「それなら良いけどさ………所でベジットさん、話は変わるけど一ついい?」

 

「ん、なんだ?」

 

「どうして金髪碧眼になってるの?」

 

 来店してきた時は驚きつつも、相手がお得意様な事もあり今まで指摘しなかったナァーザだが、流石に我慢出来なかった。

 

 金髪碧眼。先の【正邪決戦】や【戦争遊戯】でしか公にしてこなかったベジットの変身形態。本気となったベジットが見せる姿がどういう訳か目の前にいる。

 

 え、何処かのファミリアを潰しに行くの? ナァーザは訝しんだ。

 

「あぁこれ? 修行の一環さ。超サイヤ人って強くなれる代わり消耗が激しいからな、なるべくこの状態でいる事で身体に馴染ませようとしてるんだ」

 

「へ、へぇー……」

 

 超サイヤ人ってなに? 当然出てくる疑問だが、ここで突っ込んでも意味がないと悟り、ナァーザは言葉を呑み込んだ。

 

「というか、まだ強くなるつもりでいるの?」

 

「まぁな。ベートもリリも頑張ってるし、団長の俺がいつまでも足踏みしてはいられないだろ?」

 

「まぁ、それはそうかもだけどさ……」

 

 ベジットはLv.1でありながら埒外の力を有している。恐らくは神々にとっても異常(イレギュラー)な存在なのだろうベジットが、現状に満足せず更なる研鑽を積み上げようとする事がナァーザにはよく分からなかった。

 

「んー、やっぱり分かんないや。ベジットさんは今の時点で凄く強いと思うんだけど」

 

 最早、神恩恵によるシステムは破綻されたと言っても良い。神々からの恩恵を必要とせず、独力で力を付けたベジットは端から見れば古代の英雄達に近しいだろう。

 

仮にベジットの力に目を付けた厄介な神が手を出してきても、ベジットならば簡単に振り払えるだろう。

 

 そんな彼が、これ以上強くなって何と戦うつもりなのか。そんなナァーザの至極当然な疑問に。

 

「そりゃあ、天下無敵のベジット様は常に最強でいなければならんからな。最強は常に上を目指すものだよ、君ぃ」

 

「あっそ」

 

 子供みたいな理屈に、ナァーザは肩を竦めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁて、買い出しも終わったし一旦本拠地に帰ろうかね」

 

 両手に購入した物を持ち、ベジットは呑気に街を行く。

 

 金髪碧眼の姿にすれ違う人々がギョッと驚きを顕にし、避けるように道を開けていく。

 

 流石にちょっと奇抜かなぁ。【超サイヤ人】の壁を超えるにはこの修行は必要不可欠、本当は【超サイヤ人2()】でこの修行を行いたかったが、更に強さと迫力が増すあの形態は日常での修行には向かない。

 

(やっぱどっかで専用の修行場見付けないとダメかなぁ)

 

 身体を思い切り動かすにはやはりオラリオやダンジョンでは狭い。特に破壊行為に気を付けなければならないダンジョンには、以前よりも閉塞感が増した気がする。

 

 いっそのこと、【竜の谷】を自分の修行場にするか? 廃棄世界なんて呼ばれるだけあって人口は極端に少ない地域みたいだし、なんてベジットが考え事をしながら歩いていると……。

 

「ベジット」

 

「───ん? あぁ、オッタルか。なんか用か?」

 

 目の前に立っているのはベジットが見上げる程の巨漢、フレイヤ・ファミリアの団長オッタル。

 

「珍しいな。お前が街に来てるなんて」

 

「少し良いか。お前に聞きたい事がある」

 

 相変わらず素っ気ない………否、無駄の無い奴。女神に己の強さを捧げるだけあって性格も在り方も武人なオッタルにベジットはやれやれと肩を竦めた。

 

「まぁ買い出しも終わったし、別に良いけどよ」

 

「時間は取らせん。こっちだ」

 

 言われるがままに付いていくこと数分。その間何故か増した奇異の視線に晒されながら、二人が辿り着いたのはとある飲食店。

 

まだ昼前なのに盛況なその店は、つい先日世話になった【豊穣の女主人】

 

 店の中には入ると、誰だと不躾な視線を向ける冒険者達だが、相手がオッタルとベジットだと知ると途端に青ざめて俯き始める。

 

賑わっていた店内が一気に静まり返り、まるでお通夜の様だった。

 

「ミア、空いてるか」

 

「この惨状を見てそれを言うのかいアホタレ坊主」

 

 賑わっていた自分の店がいきなりお通夜となったのだ。そりゃ店主であるミアにとっては憤慨モノだろう。

 

「アンタみたいな不躾な奴は来るなって、散々言ったはずだが?」

 

「その非礼は詫びよう。だが、コイツと内密の話をするには本拠地(ホーム)では些か騒がしくてな」

 

「そうなの?」

 

 そもそも内密の話なんて今初めて聞いたが? 相変わらず段取りを知らない【猛者】にベジットは目を丸くした。

 

「はぁ、この分だとそっちの兄ちゃんも知らなかったみたいだね。良いさ、適当な所に座りな」

 

「なんかスンマセン女将さん。あ、オススメ二つで」

 

「あいよ。エールは?」

 

「それも一緒で」

 

 前世では昼間から酒など滅多に口にしなかったが、生憎ここは異世界。店に来た以上礼儀として幾つか注文して、二人は空いている席へと移動した。

 

 内密の話だと言うから聞き耳立てられないか心配していたが、有り難いことに宛がわれた席は店内の端。清掃も行き届いており、座ることになんの抵抗感も抱かなかった。

 

 

 座ると店の賑わいも徐々に取り戻し始める。相変わらず好奇の視線は向けられているが、オッタルが睨めば蜘蛛の子を散らすように視線は霧散する為其処まで気にならない。

 

(今日あの子は……いないか。成る程、女神のお墨付きって訳ね)

 

 銀髪のウェイトレスの少女はどうやら今日はお休みらしい。その時点で色々と察したベジットはオッタルに話を促した。

 

 因みに、茶色の猫人はフシャーと威嚇してました。解せぬ。

 

「それで話って?」

 

「先ずはこちらの急な呼び掛けに答えてくれた礼を言わせてくれ」

 

 そういって頭を下げてくる【猛者】。一瞬店内が静まり返る。気まずくなる空気、それでも冒険者達は関わってはならないと懸命に話を続けた。

 

 出来上がる喧騒の中、オッタルは続ける。

 

「レオンから聞いた。ベジット、近々お前は【凶狼】をLv.6にするそうだな」

 

 再び時が止まる。この下り何回やるんだよと、ベジットも二度目の睨みを利かせた。

 

「んだよレオンの奴、話しちまったのか」

 

「俺が無理に聞き出した。非があるのはあくまでも俺だ」

 

 現在、レオンは既にオラリオから離れて“学区”に戻っている頃合いだろう。一瞬ベジットはレオンの口の軽さを批難したが、オッタルの言う通り無理に吐かせた可能性がある。

 

 というかこの猪人(ボアズ)、割りと強引な所があるから実際にレオンから無理矢理に聞き出したのだろう。実際レオンが人に話を吹聴する質もでもないし、詳しい話は学区ごとオラリオに寄港した時に事情を聞けば良いだろう。

 

「まぁ、ベートも順調に成長しているし、リリが昇格したらその後本格的に鍛えるためにダンジョンに潜る予定だな」

 

「その時、俺も同行させてはくれないか?」

 

「はぁ?」

 

 いきなりのダンジョン探索への同行要求に流石のベジットも目を剥いた。オッタルはフレイヤ・ファミリアの団長、一つの派閥の長がそんなに身軽でいいのか?

 

当然ながらの疑問。しかしオッタルはその質問を既に予知していたのか。

 

「フレイヤ様からは既に許しを得ている。ベジット、お前が同行を許してくれるのならば、【凶狼】の昇格に協力しよう」

 

「それは有り難いが………目的は?」

 

「俺をLv.8にしてくれ」

 

 その呟きは幸いにも店内の喧騒に搔き消され、誰にも聞かれる事はなかった。オッタルの企み、それもシンプルで分かりやすい。

 

 強くなりたい。あの日、初めて廃教会に来た時と変わらない願いを抱く【猛者】にベジットは呆れながら肩を竦ませて……。

 

「はぁ、仕方ないな。良いぜ、その時が来たら声を掛けてやる」

 

「ッ!良いのか?」

 

「ただ、必要なアイテムは自分で持参しろよ。ウチは今そんなに資金が無いんだから」

 

「あぁ、それでいい。礼を言うベジット」

 

 そういって再び頭を下げてくるオッタルにベジットは良いよと承諾した。

 

(まぁ、俺とばかり組手してもベートも飽きるだろうし、相手がオッタルなら文句はねぇだろ。問題は、この事をこの猪はちゃんと同じ派閥の皆に伝えているのかどうかだが……)

 

 先の件もあるし、流石にその辺りの事はちゃんと考えているだろう。相手はフレイヤ・ファミリアの団長、そういった仲間に対する礼儀は最低限備えている事を信じて、ベジットは口出しをすることはなかった。

 

その時、ちょうどタイミングよく料理が運び込まれてくる。

 

「お待たせしました。エール二つとオススメ二つになります」

 

「あぁ、こりゃどうも………って、【疾風】? なにやってんのお前」

 

「バイトです。輝夜に嵌められてしまい、先日からここで働くようになりました」

 

 料理を運び込んできたのはアストレア・ファミリアのリュー・リオン。店の制服に着替え、店員らしく振る舞うリューにベジットは少しだけ困惑した。

 

 そこへ、二人の女性が店内へと入り、ベジット達に近付いてきた。

 

「嵌められたとは人聞きが悪い。一般社会に溶け込めていないコミュ症ポンコツエルフに社会勉強の機会を与えてやったんだろうが」

 

「わ、私はポンコツではないと、アレ程……!」

 

「黙れポンコツ! 気を教えてくれようとしたベジットさんを、あまつさえ投げ飛ばした事をもう忘れたのか!?」

 

「はうッ!?」

 

「────そうなのか?」

 

「あぁ、アレはビビった」

 

 戸惑いながら訊ねてくるオッタルにベジットはシミジミと語った。アレはアストレア・ファミリアの皆にも気を教えてやろうと彼女たちの本拠地にやってきた時だ。

 

 気を教えるには手っ取り早く本人達に体験させるのが一番で、その為には相手の身体に触れる必要性がある。その為、ベジットはアリーゼ達の手や肩、時には背中にと不快に思われない程度でその身体に触れてきた。

 

 そして、いよいよエルフであるリューに触れようとした時に……。

 

『わ、私に触れるなー!!』

 

 つい、反射的に背負い投げをぶちかましてしまい、ベジットを投げ飛ばしてしまった。

 

 勿論、ベジットがそのまま地面に叩き付けられる事はなく、その身体能力を充分に生かして身体を捩り、見事着地して見せたが、ファミリア内は一瞬やっちまった空気で満たされてしまったのだ。

 

以降、リューはファミリア内に於て【ポンコツエルフ】と揶揄されるようになってしまったのだそうな。

 

「次にまた同じことをしてみろ。次の神会(デナトゥス)の時にアストレア様と掛け合い、貴様の二つ名を【ポンコツ】にして貰うからな」

 

「や、止めなさい輝夜! それはあまりにも無体が過ぎるぞ!!」

 

 ジト目の輝夜、あれからよっぽどファミリアのみんなからポンコツ呼ばわりされたのだろう。エルフの瞳には涙が浮かんでいた。

 

「ベジットさん、貴方からも何か言ってくれ! 私は決してポンコツではないと!」

 

「え、そこで俺に振るの?」

 

 投げ飛ばした相手に訊ねるとか、このエルフも中々にアレである。具体的な事は彼女の為に口を噤んでおくが……。

 

 しかし、彼女はエルフらしく器量も良く、他人を思いやれる優しさもある。自分の知るエルフより潔癖ではあるが、それでも種族で他人を見下さない辺エルフとしては真面目(異端)なのだろう。

 

「まぁ、流石にポンコツ扱いは…………あ」

 

 仕方なく擁護してあげようと口を開き掛けた所で、ベジットの頭にある光景が思い浮かぶ。人気の無い廃工場、覆面エルフと幼女が斬り合う現場、王族の前で正座になる少女………。

 

今になって思う。あれ、ガネーシャ・ファミリアにチクったらこのエルフ、逮捕されるんじゃね?

 

「………まぁ、皆から愛されていると言う事で」

 

「そんなッ!?」

 

 ガーンッとショックを受けているエルフだが、正直ポンコツ扱いされている内はまだ大丈夫だと思う。

 

 これでもし幼女と本気の斬り合いをしていたと告発されてみろ。最悪、この潔癖エルフなら自己嫌悪で死にたくなるぞ。

 

 本人もどうやら当時の事は忘れているみたいだし、公でのツッコミは止めてやろうとベジットは情けを掛けてあげる事にした。

 

 肩を落とし、仕事へ戻っていくエルフ。頑張れ、君のその称号(ポンコツ)はきっとこれからも変わらないだろう。

 

「それにしてもベジットさん。なんでその姿になってるの?」

 

 当然の様に相席をしてくるアリーゼと輝夜、オッタルが隣にいるのに(おくび)にも出さず自然体で訊ねてくる彼女にベジットは今更かよと突っ込んだ。

 

「あぁこれな。まぁ修行だよ、この姿は結構エネルギーを使うからな。“次”に至るまでの必要な段階って奴だ」

 

「次、その姿が更に進化すると言うのか」

 

 オッタルの言葉にアリーゼと輝夜も瞠目する。

 

「貴方は、まだ強さを求めるのか」

 

「当然、俺は戦闘民族サイヤ人だぜ? 強さを求める事こそ俺の存在意義だ」

 

 不敵な笑みで輝夜の問いに答えるベジット。その何処までも上を目指す上昇志向にオッタルは何故か嬉しく感じた。

 

「全く、ベジットさんと同じ派閥の二人も大変ね。余り無茶はさせないであげてよ」

 

「あの駄犬は兎も角、【槍の寵児(リュース)】は将来有望な逸材だ。どうか、壊す事のないように」

 

「わぁーってるよ。心配性だなぁ」

 

(むぅ、会話の流れが読めん……)

 

 その後も四人(?)の談笑は続き、この奇妙な組み合わせに酒場の冒険者達は色々と気が気でなかった模様。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 【槍の寵児(リュース)】ことリリルカ・アーデは本日、ヘスティア・ファミリアの団長の許しを得て上層限りの単独での探索を行っていた。

 

 借金はなく、後の事を考えて少しでも派閥の資金を稼ごうとサポーター時代のノウハウを活かしてダンジョンの探索を進んでいく。

 

Lv.2となり、二つ名も与えられた事で一端の冒険者となったリリルカだが、ベジット達の役に立てる様に少しでも強くなろうと、資金稼ぎのついでにモンスターを蹂躙した。

 

 ただやはり上層程度では得られる資金も経験値も微々たるモノ、これではベジットに稽古を付けて貰った方が余程有意義だなと、若干後悔し始めた頃。

 

「ギャウッ!?」

 

 突然、横からの衝撃に受け身を取ったリリルカが吹っ飛ぶ。壁に激突し、肺から強制的に酸素を吐き出され、噎せる彼女の前に一つの影が落とされる。

 

「アギャギャギャ! なんだいこの小汚い小人族(パルゥム)は、鼠かと思ったじゃないか!」

 

 現れたのは巨大な蛙───もとい、褐色肌のアマゾネス。下卑た笑みを浮かべてリリルカを見下ろすその女はおぞましい程に強大だった。

 

「……何を?」

 

 何者ではなく、何故自分に攻撃をしてくるのか。その意味を問うリリルカに対し………。

 

「き、キヒヒヒヒ、テメェは餌だよリリルカァ、イシュタル・ファミリアにベジットの糞野郎を献上する為の、汚ねぇ餌なのさ!」

 

「カヌゥ・ベルウェイ!」

 

 アマゾネスの影から追加で現れるのは、嘗ての同じファミリアに属していた男。己を痛め付け、蔑んできた男。

 

 先の戦争遊戯でベジットに敗れ、散りぢりとなった派閥の残滓。そんな男がまさかイシュタル・ファミリアに流れていたとは……。

 

「おいおい、世話になった先輩に対して随分と失礼じゃねぇか。Lv.2になってスッカリ一端の冒険者気取りかァ!?」

 

「……逆恨みを果たす為だけに他派閥に与するとは、分かっていましたけど本当にクソッタレな人ですね。貴方は」

 

「違うね、コイツはアタシの奴隷さ。イシュタル様の恩恵を受けちゃいるが、アタシの側でなきゃ生きられない哀れな男。余りにもコイツが懇願してくるもんだから、今日は主神の願いついでに仕掛けたのさ」

 

「女神イシュタルの……願い?」

 

「ベジットさ! あの雄は極上さ! あの強さあの輝き! そしてあの眼光! ()ならば誰だって跪くさ!」

 

「ウチの女神はそんなベジットを大層気に入っちまってね。あの芋臭い女神から近々取り上げるつもりなのさ」

 

「ベジットを己に傅かせる。そう意気込む女神にアタシも久し振りに震えちまったよ!」

 

 ………下らない。目の前の牛蛙の話をリリルカはそう断じた。

 

 余りに稚拙、余りにも幼稚、そして余りにも………ベジットを甘く見ている。

 

彼が女神に傅く? 有り得ない。彼はこの世界での唯一にして頂点、文字通りの世界最強。

 

 不遜。目の前の宣う牛蛙を最早許してはおけないと、リリルカは槍を握る手に力を込める。

 

「あ、姐さん、話はもう良いでしょう。さっさとあの生意気なクソガキをシメてやって下さいよ」

 

「せっかちだねぇアンタは。早いのはベッドの上だけにしな」

 

 とは言え、無駄に時間を掛けられないのも事実。アマゾネス───通称【男殺し】は舌舐りをしながらリリルカへと近付き……。

 

「────舐められたモノだな」

 

 その違い(・・)に息を呑んだ。

 

「彼を、あの人を、よりにもよって傅かせる? 宣うなよ有象無象、あの人の意思はあの人だけのモノ、あの人の隣はあの方(・・・)のモノ。気色悪い色狂いが、気安く触れようとするな」

 

 紅くなる瞳。その眼に確かな意思と誓いを携えて……。

 

「貴様等ごとき、あの人の手を煩わせるまでもない。ここで果てろ、色ボケども」

 

 槍を構える。リリルカ・アーデの冒険が始まる。

 

 

 

 

 

 





Q.ここでカヌゥ……だと!?

A.ベジットにやられた後、リリルカへの逆恨みで復讐を決意。
流れ流されて辿り着いたイシュタル・ファミリアで遂にその芽を掴む。
ここで終わっても良い、たとえ【男殺し】の性なる奴隷に堕ちたとしても。

リリルカ・アーデ、お前だけは……!


あれ、ちょっと格好いい?


Q.なんかリリちゃん過激じゃない?

A.前世の魂と良い具合に混ざってますね(笑)

因みに彼女はベジ×ヘスガチ勢。

他の女性との絡みは……まぁ、英雄色を好むと言うし多少はね。

ただしイシュタル、テメーはダメだ。





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