寒暖の差がまるでジェットコースターで草
そんな訳で初投稿です。
リリルカ・アーデのLv.3到達の報せは瞬く間にオラリオに轟いた。新たな第二級冒険者、それもロキ・ファミリアの剣姫達と同じ年頃の少女が至ったという事もあり、オラリオに住まう人々は勿論、神々ですら
「おい、聞いたか! ヘスティア・ファミリアの【
「聞いた聞いた。何でもイシュタル・ファミリアの【
街のあちこちにある酒場、酒盛りで賑わう冒険者達の話も、彼女に関する話で賑わっていた。
「はぁ!? 嘘だろ!? 相手はLv.4の化物だぞ!? なんでレベルが二つも上の奴を倒せんだよ!? しかも【槍の寵児】は小人族、フカシにも程があんだろ!!」
「だがロキ・ファミリアのアマゾネス姉妹や剣姫が目撃したって………なぁ、もしかして小人族って俺達が思ってるよりずっとヤバい種族なんじゃないか?」
「ど、どういう意味だよ」
「オレの知り合いにギルドで働いている奴がいるんだがな、ソイツが言うには【凶狼】が血塗れの【男殺し】と犬人の野郎を投げ込んできたって話でさ……」
「………【男殺し】が血塗れって時点で大分ヤベェな」
「それも確かにヤベェんだけどよ。【男殺し】の付き人らしい犬人………玉が二つとも潰されてたってよ」
「「「「………………」」」」
「再起不能だそうだ。冒険者としても、男としてもソイツは終わったらしい。【
盛り上がっていた酒場も、最後はその話で沈静化する。
「…………オレ、明日小人族のサポーターと一緒にダンジョンに潜るんだけどよ、出来る限りソイツの事を気に掛けるようにするわ」
「オレも、ファミリアにいるアイツをからかうのも止めるよ」
「小人族は情けねぇ種族だって聞かされてきたが、それはアイツ等が普段は温厚な性格だからなのかもな。【勇者】しかり、【
「【炎金の四戦士】は温厚か?」
「どちらにせよ、小人族に恨まれるような真似はしないように気を付けよう」
「「「「賛成」」」」
こうして、一人の少女の活躍により小人族の悪印象は変わりつつあった。
◇
「むー……」
「おいおいどうしたリリ、ムスーとして」
ダンジョンへ向かう途中の大通り、一週間の休暇期間を経てLv.3になったリリルカの体を馴染ませる為にベジット共々二人は横並びに歩いている。
ベジットの超サイヤ人状態も既に人々に受け入れられ、好奇の視線も薄まってきた今日この頃、隣に並ぶリリルカは不満な様子で頬を膨らませていた。
「だって、リリ達の
「良いことじゃねぇか」
「良くない!!」
小人族は日頃からその体格の差やあからさまな非力さから他種族から差別される事が多く、オラリオでも下に見られる事が多々あった。
そんな一族の印象が変わったと言うのなら、寧ろ歓迎するべき事の筈なのに、リリルカの様子からどうやらそんなに良いことではなさそうだ。
「リリの事、裏で何て呼ばれてるか分かりますか!? 【
「お、おぉう……」
地団駄を踏んで悔しさを露にしているリリルカ、確かにその渾名は色々と酷いなとベジットは思った。
恐らくリリルカの渾名がそんな物騒な呼び名で広まっているのは、彼女の魔法による所が大きいのだろう。
リリルカ・アーデの魔法は所謂“変身魔法”と呼ばれるモノで、以前は体格が近ければ自身の望んだ種族へと変身できるという文字通りの代物だったのだが、ベジットの手解きを受け、“気”を習得した事で変異してしまった。
何でも古代の力を引き出す影響からか、眼を紅く染めて戦闘力を跳ね上げるリリルカは、ベジットからみても凄まじく、その変貌ぶりはベジットの超サイヤ人とどことなく似ている。
ただ、僅かながら人格にも変化を及ぼし、戦い方はより苛烈なモノになってしまい、手加減が下手になってきている側面があったりする。
そんなリリルカの戦いぶり……より正確に言えば、襲ってきた【男殺し】との戦いを誰かが目撃してしまった事で【殺戮姫】なんて渾名が広まってしまったのだろう。
ベートやアイズ達ではない、偶然目撃した第三者の誰か。容疑者を絞ろうとしてもオラリオの冒険者は多く、オラリオ自体もまた広い。
「お陰でライラ様はからかって来ますし、【炎金の四戦士】のベーリング様に至っては敬語で姐呼ばわりですよ!? リリの方が年下なのに!!」
リリルカ・アーデの活躍は小人族にとっても明るい話題の様で、ライラもガリバー兄弟も彼等なりにリリルカを褒めているのだろう。
まぁ、悪ノリしている部分も多々あるのだろうが……。というか、意外とノリがいいのな【炎金の四戦士】。
「ベジット様もベジット様ですよ! なんでイシュタル・ファミリアが喧嘩を吹っ掛けてきたのに呑気にしてるんですか!」
「おっと飛び火した」
プンスコしているリリルカを微笑ましく見守っていると、彼女の怒りの矛先がベジットに向けられる。
「仮にもイシュタル・ファミリアの団長が直々に襲ってきたんですよ! ベジット様も団長として何らかの
「ンなこと言われてもなぁ。そのイシュタル・ファミリアの団長を八つ裂きにしたのはリリじゃねぇか」
「ウグッ」
「向こうの団長が格下と思っていた小人族に倒されたんだ。イシュタル・ファミリアだって暫くは大人しくしてるんじゃないのか?」
「うむぅ……」
リリルカとしては一方的に襲ってきたイシュタル・ファミリアに何らかの制裁を加えてやりたかったが、既に襲ってきた張本人を返り討ちにしている為に強く言えず、ギルドに報告しようにもこの件に関してギルドはとっくに手打ちと認識している。
まぁ、襲ってきた相手をズタズタの八つ裂きにしているものだからさもありなん。付き人の犬人に至っては
仮にもイシュタル・ファミリアの団長が倒されたとあっては、向こうの派閥にとっても痛手である筈。これ以上の制裁は余計な禍根を残しかねないと、ベジットはやんわりと注意する。
「リリが何に怒っているのかは分からないが相手を返り討ちにした以上、手を出すのは止めておけ」
「………分かりました」
理解はしているが納得は出来ていない。Lv.3になろうとまだこういった所は子供らしいと、微笑みながらベジットはリリルカの頭を撫でる。
「でもベジット様、またイシュタル・ファミリアが襲ってきたらどうするのです?」
「その時は俺が相手になるさ。二度と此方に手を出そうと思わなくなる位………徹底的にな」
今回の件はリリルカが勝てた事で水に流すが、再び襲ってきた時はイシュタル・ファミリアは嘗てのソーマ・ファミリアと同じ末路を辿る事になるのだろう。
それが分かっているから、リリルカもそれ以上この件について触れる事はなかった。
「───そう言えばベジット様、ヘスティア・ファミリアって今後新たに団員を募ったりしないんですか?」
「んー? まぁ、そうだなぁ……」
次に移る話題は派閥の拡大。ヘスティア・ファミリアは現在のオラリオにて話題の中心になりがちである。
Lv.5のベート・ローガとLv.3のリリルカ・アーデ、そしてLv.1でありながら既に様々な偉業を積み上げているベジット。
たった三人の少数精鋭。野心ある者や英雄譚に憧れる者達にとって、ヘスティア・ファミリアは所属してみたいと思わせる魅力に溢れており、いま注目の派閥となっていた。
その気になればロキ・ファミリアやフレイヤ・ファミリア、ガネーシャ・ファミリアに次ぐ大派閥にだってなるのも夢じゃない。
しかし……。
「ウチは、そういうのはいいかなって」
しかしベジットは今の所、そう言ったモノに興味はないようだ。
「そうなのですか? まぁ確かにベジット様からすれば数の差なんてあってないようなモノでしょうが……」
「いや、人の数ってのがバカに出来ないってのは理解できるよ? 現にフィンはちゃんと人員を選定し育成に力をいれてるみたいだし、フレイヤ・ファミリアの連中だって女神の一声があれば見事な手足になる」
フィン達は今でこそ暗黒期で失われた人員を補填する為に後進の育成に専念しているが、この行動が実を結ぶ頃にはロキ・ファミリアの陣営は磐石なモノになるだろう。
気の習得等の自分達に出来る事も増え、それと同時にやるべき事も増えているだろうが、それを乗り越えれば嘗てのゼウス達の様な二大派閥にだって負けないくらい強い組織になるだろう。
フレイヤ・ファミリアも………うん、きっと大丈夫だろう。
「なんだかフレイヤ・ファミリアに対して扱いが雑になってません?」
「気の所為、気の所為」
リリルカからの指摘にスルーする。
「俺にはフィンの様に広く多角的な視野は持てそうにないからな。今の俺にはお前ら二人を見るだけで手一杯だ。それに、仮に集めるとしても……」
「集めるとしても?」
「10人。集めてもそれくらいかなぁ、少なくとも俺がいる間はそれ以上募ったりはしねぇよ」
10人。一つの派閥が有する眷族としてはそれほど多いとは呼べない人数。数に限って言えばアストレア・ファミリアよりも少ない。
単に面倒を見るのが面倒なのか、それとも他に理由があるのか、今のリリルカには分からない。
「それに、大人数でダンジョン探索とかすると、出費とかエライ事になりそうだしなぁ。フィンも頭を悩ませていたし、俺はそういうの死ぬ程無理ッス」
書類仕事はもうしたくない。前世のトラウマからそう言ったモノを毛嫌いするベジットはなるべくそう言った代物に関わりのない生活を送りたいと願ってたりする。
いや、中世ヨーロッパ的な世界観にまで書類仕事とかなんの罰ゲーム? というのが
「───まぁ、リリ達はまだまだやるべき事がありますし、当分はその方がいいかもしれませんね」
「だろ? せめてリリがLv.6になるまで今の人数でやっていきたいよ俺は」
「何年先の話をしてるんですか」
ガハハと笑うベジットにリリルカは呆れて溜め息しか出せなかった。
だが、確かに今はまだ団員を募ったりしなくても良いかもしれない。人が増えればそれだけベジットが自分に構う時間が割かれてしまうのだから……。
恐らくはヘスティアも似たような意見なのだろう。眷族を増やすのに其処まで積極的でないのはそう言った理由も少なからずあるようだ。
「まぁ、アルテミス・ファミリアの皆さんが実質ウチの傘下みたいになってますからねぇ。向こうの団長さん、この間Lv.4になったって喜んでましたよ」
「彼女、何気に物覚えが良いからなぁ。俺が教えた“気”もすっかり馴染んでるみたいだし」
ヘスティア・ファミリアの
その甲斐あってアルテミス・ファミリアは眷族の多くが成長し、団長を含めた何名かは昇格すら果たしている。
「皆さん、本当にウチに馴染みましたよね」
「有難い話だよなぁ」
そんな彼女たちの稼ぎもあり、ヘスティア・ファミリアの資金は結構な額に届きつつある。お陰で本拠地にそろそろ“アレ”を付け加える目処が立つかもしれない。
「お陰で、ゴブニュ・ファミリアに檜風呂の建設依頼を出せそうだ」
「楽しみですね、ベジット様」
オラリオにも共同の大浴場があるみたいだが、ベジットは自宅でゆっくり湯船に浸かりたい派。この世界に来てから水浴びしかしてこなかった為に、お風呂のある環境を切望していた一人である。
「男女別々に作るから金も掛かるし、管理にも手が掛かる。それでも俺は風呂にゆっくり浸れる時間が欲しい!」
「切実ですね」
リリルカはお風呂というモノを経験したことが無い為に其処まで理解できていないが、ベジットやヘスティアの反応を見るにあって困るようなモノではないようだ。
(………前々から思ってましたけど、ベジット様は色々と博識でいらっしゃいますよね)
不思議に思うリリルカだが、相手は最早なんでもありになりつつあるベジットだ。今更気にする事は無いだろうと思い、それ以上深く考えることはしなかった。
「───さて、リリルカも次の昇格に向けて頑張ろうな。今日は結構追い込んでいくぞ」
「は、はい! 宜しくお願いします!」
次なる目標を定め、二人はダンジョンに向かった。
◇
「───えっと、聞き間違いかな、イシュタル。今、君は何て言ったのかな?」
数ヵ月に一度の
「ならば何度でも言ってやろう。ヘスティア……」
凍り付く神会の中、苛立つ処女神に対してその女神はほくそ笑む。
「ベジットを私に寄越せ。あの男はお前の手に余る」
再び、神会は凍り付いた。
Q.アルテミス・ファミリアは現在どんな扱い?
A.主神であるアルテミスがヘスティアに友好的で同じ処女神なので扱いは同盟。
しかし眷族達が全員ベジットに鍛えられ、気を習得している事から実質は傘下派閥と認識されている。
Q.リリルカの友好関係はどんな感じ?
A.アストレア・ファミリアのライラやロキ・ファミリアの幼女達とは仲良くして貰っている。
ライラも妹が出来たみたいで可愛がっており、からかうのも愛情表現の一つとして接している。
ガリバー兄弟は【男殺し】と付き人の犬人の末路を聞いて密かに戦慄している。
「リリルカの姐さんチーッス!」
「次は何処のファミリアを沈めましょうか!」
「止めてくださいひっぱたきますよ!?」
みたいな?(笑)
次回、勇者の挑戦。
「お義父さん、娘さんを僕に下さい!!」
「俺に勝てたらいいよ」(超サイヤ人2)