ダンジョンに超なアイツが来るのは間違いか?   作:アゴン

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あのココロオドルがガンダムの曲だと知ってニャンちゅうになりました。

そんな訳で初投稿です。


物語46

 

 

 

 ──少し前、神塔(バベル)にて。

 

「あらヘスティア、今回も来たのね。アルテミスも」

 

「うん。ウチのリリ君が昇格(ランクアップ)したから、無いとは思うけど一応変な二つ名付けられないか監視にね」

 

「私の所も何人か昇格したからな。是非とも良い名を付けてやりたくて、今回初参加だ。色々と教えてくれると助かるよヘファイストス」

 

「良いわよ、それくらい」

 

 今回行われる神会への道中、偶々遭遇したヘファイストスと一緒に会場へやってきたヘスティアとアルテミス。

 

 今回の議題はどんなモノなのだろうと、期待二割、不安八割の面持ちで会場へと向かう。

 

「あ、そうそうヘファイストス。リリ君が一度武器の調子を見て欲しいって言ってたんだけど、時間ある? 一応教わった通りに手入れをしているんだけど、ちゃんと出来ているか見て欲しいんだって」

 

「確かに、噂を耳にした限り相当な戦いが続いていたみたいだし……えぇ、構わないわよ。いつでもいらっしゃいと伝えて頂戴」

 

「ありがとうヘファイストス」

 

「こんにちはヘスティア、ヘファイストス、そしてアルテミス。出席そうそう君達に会えるなんて幸先が良いな」

 

「ゲッ、ヘルメス……」

 

 三柱共に並んで席に座り議会が始まるのを待っていると、帽子を被った男神が絡んでくる。天界でも胡散臭さで知られるヘルメス。軽薄な空気を纏いながら、これまた胡散臭い微笑みで近付いてくる彼にヘスティアとアルテミスは露骨に顔をしかめた。

 

「おいおい、いきなり“ゲッ”はないんじゃないか? 流石に傷付くぜ」

 

「あ、うん。流石にちょっと酷かったかも……ゴメンネヘルメス」

 

「ダメだぞヘスティア、この男はそうやってこちら側に付け入ろうとするんだ。油断してはいけない、あと余り口も交わさない方がいい。ヘルメスが感染る」

 

「辛辣な罵倒、ありがとうございまーす!!」

 

 如何に蔑まれ、罵倒されようとも相手が美しき女神ならご褒美も同然。アルテミスから向けられる100%の軽蔑の眼差しも、この男神にとってはご褒美でしかない。

 

「全く、相変わらずねヘルメス。最近話を聞かなかったけど、また裏で何か企んでいるのかしら?」

 

「企んでいるなんて人聞き……いや、神聞きの悪い。ここ最近はずっと外で暗躍している残党どもの動きを探っていたのさ、闇派閥は確かに壊滅したけど連中に与していた奴等を全て廃した訳じゃないからね」

 

 闇派閥は先のロキ・ファミリアを始めとした精鋭によって完全に沈黙し、【下層決戦】の件も合わせて闇派閥は壊滅した。

 

 そんなあの日から神知れず外の動きを探っていたと語るヘルメス。相変わらず裏方が似合う男神だと、ヘファイストスは感心した。

 

「ヘファイストスこそ、あのアフロディーテをこき使っているみたいじゃないか。君の事だからてっきり天界に送還するのかと思ってたぜ」

 

「まぁね。最初はそうしてやろうかと思ってたけど、アイツの眷族の子達から泣きながら嘆願されちゃあ……ねぇ」

 

「アフロディーテの眷族(子達)って、今はガネーシャの所で世話になってるんだっけ?」

 

「えぇ、そこの団長さんが全員一人前の憲兵にしてやるって息巻いてたわ」

 

 ヘスティアの手引きでヘファイストスに引き渡されたアフロディーテは、現在店の売り子をやらされており、眷族の子達もガネーシャ・ファミリアにて日夜鍛練をさせられているらしい。

 

 当然ながらアフロディーテはこれに反発したが、ヘファイストスに対して過去にやらかしている為に強く言えず、眷族達もまた穏便に済ませてくれたヘファイストスに何かを言える訳もなかった。

 

 哀れ、オラリオにて色々とこき使われているアフロディーテ・ファミリアだが、住む所と食べる所を無償で提供されている上、眷族に至っては鍛練と称して色々と面倒を見て貰っているのだから、文句など付けよう筈がなかった。

 

 付けさせないが正しいが、同じことである。

 

「だから最近シャクティ君達も忙しそうにしてるんだ」

 

「忙しそうと言えば、ヘスティアの所も色々とあったそうじゃないか。女神イシュタルの所からちょっかい掛けられたんだって?」

 

「うっ、相変わらず耳が早い。何処から仕入れてくるんだい君は」

 

 ヘルメスからの指摘にヘスティアは顔を渋くさせる。面倒事が嫌いな彼女からすればこの話題は避けたい所だが、噂は既にオラリオに出回っているし何なら今回の議題もこの事に触れるだろう。

 

 ニヤニヤと含み笑いを浮かべるヘルメス。観念したヘスティアは深い溜め息を吐き出すのと同時に、頬杖を付きながらポツリポツリと溢していく。

 

「まぁ、ね。何でも向こうの団長が一方的にリリ君を襲ったんだってさ。それを見事に返り討ちにしたって、ベート君が自慢気に教えてくれたよ」

 

「……まさか、噂は本当だったとはね。レベルが二つも上の相手に善戦処か勝っちゃうなんて」

 

「ヘスティアの子は凄いな」

 

「俺は付き人っていう犬人の子に少しだけ同情しちゃったな」

 

 ヘファイストスやアルテミスは小人族(パルゥム)でありながら大金星を挙げたリリルカを称賛し、ヘルメスは顔を青くさせて股間を抑える。

 

 小人族。特に女性の小人族に対して今後は丁重に扱おうという暗黙の了解が誕生した瞬間でもあった。

 

「全く、次から次へとやらかしおって。ホンマ退屈せぇへんなドチビの所は」

 

「あら、楽しそうでいいじゃない。勇敢な勇士は眺めるだけで眼福だもの」

 

 次にやってきたのはゼウス・ヘラの後釜となった現オラリオの二大派閥──ロキとフレイヤ。それぞれ第一級冒険者を多く抱える二柱の女神はヘスティア達の上段へ上りヘスティアを挟むように座っていく。

 

「イシュタルの事なぞどうでもええわ。オイドチビ、ベジットの奴にキツく言っといてくれへんか? フレイヤの所に手ェ貸すのは止めてくれって」

 

「あら、後から介入して随分失礼じゃない。そっちこそ、大人しく手を引くのが無難でなくて?」

 

「あぁ?」

 

「んん?」

 

 いきなりやってきてバチバチと火花を散らす。ロキはメンチを切り、フレイヤは凄味のある微笑みで対抗する。そんな天界でも恐ろしい二柱にヘルメスはとっととずらかる事にした。

 

「あぁもう! 二柱(ふたり)共僕の上でバチバチしないでよ! それに、これに関しては僕にとやかく言えることはないし、ベジット君も両方の派閥に肩入れするのは止めないみたいだよ」

 

「なんやそれ」

 

「どういう意味かしら?」

 

 ヘスティアの言葉の真意にロキもフレイヤも困惑している。

 

「ベジット君曰く、両派閥とも対立してるんだったら、対等に面倒を見るのがフェアだろって。ライバル派閥同士、切磋琢磨した方が組織の為になるからってさ。あとその方が絶対楽しいって」

 

「………それ、絶対最後のが本音よね」

 

「カーッ、なんちゅう戦闘脳(バトルマニア)や! 伊達に戦闘民族やないっちゅう事か!? 勘弁して欲しいわホンマ」

 

 ロキもフレイヤも、今はオラリオを担う二大派閥。その二つが対立関係にあるのなら、互いに成長し切磋琢磨するのが理想的。

 

 どちらか一方に肩入れするのではなく、両派閥を強くさせる。“気”という新しい力の概念を取り入れた両派閥が今後どのような成長をしていくのか、それを楽しみにしているとベジットは語っていた。

 

 ヘスティアの口からベジットの伝言を聞かされたロキは天を仰ぎ、フレイヤは呆れた様に息を吐いた。

 

「全く、カーリー辺りが聞いたら喜びそうな話やでこれ。ったく、……まぁ今はそれでええわ。取り敢えず近い内にまたベジットを寄越してくれや。ウチのリヴェリアが聞きたいことがあるみたいなんや」

 

「私の所のヘディンも難儀しているみたいなのよ。暇な時で良いから、ベジットを貸してくれないかしら?」

 

「ハイハイ分かったよ。帰ったら本人に聞いてみるから、喧嘩は止めておくれよ」

 

「お前はウチのオカンか」

 

 二大派閥からの要請を軽くいなすヘスティア。ベジットという規格外の眷族と出会った影響もあるのだろうが、最近のヘスティアからは妙な貫禄を感じる時がある。

 

(と言うか、こうしてみると二柱共ヘスティアの傘下みたいだよなぁ)

 

 ヘスティアというよりベジットの、か。此方から見える彼女達のやり取りを眺めていたヘルメスは、そう思っても口にはしなかった。

 

 そうして、続々と神々がやって来て遂に神会が始まると思われた矢先。

 

「ベジットを私に寄越せ。あの男はお前の手に余る」

 

 爆弾が放り込まれる事となる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────何故?」

 

「何故とは?」

 

 凍り付く神会。神々の誰もが固く口を閉ざす中、絞り出すようなヘスティアの声が響く。

 

「何故、君は其処までベジット君に執着しているのさ」

 

「あの男が哀れだからだ」

 

 ガルルと唸り、敵愾心を剥き出しにしてくるヘスティアに対して、イシュタルの眼は冷ややかだった。

 

「ヘスティア、お前はベジットを眷族にしてどれくらい経つ?」

 

「……なんで、そんな事を君に言わなくちゃいけないんだよ」

 

「一年か二年か、多く見積もっても三年足らずと見たが……どうだ? 合っていたか?」

 

 ヘスティアの言葉を無視して、ニヤニヤと笑みを浮かべながら訊ねてくるイシュタル。フレイヤやアフロディーテと同じく美の女神と言われるだけあって、その笑みは何者よりも妖艶で美しかった。

 

 周囲の男神が目をハートにしている一方で、アルテミスの顔がエライ事になっている。いつでも弓を取り出せるようにと準備する彼女を、ドウドウとヘファイストスが必死に宥めていた。

 

「それが、何だっていうのさ」

 

「我々神にとっては取るに足らないが、下界の人類(子供)から見ればそうもいかない。奴がお前の眷族に甘んじているのは、お前が奴の優しさに付け込んでるからなんじゃないか?」

 

「…………!」

 

 優しさに付け込む。それはヘスティアにとって最大の侮辱であり、同時に反論できない台詞でもあった。

 

 ベジットの嘘は神々でも見抜けない。これ迄何度も自問自答しながら、結局聞けなかった。

 

『君は、僕の眷族で良かったのかい?』

 

 あの日、初めてベジットを自身の眷族にしたのもそうせざるを得ない状況だったからだ。断る事も逃げることもしない彼の強さと優しさに付け込んで、済し崩し的に眷族にしてしまった。

 

 仮にヘスティアがこれを訊ねても、ベジットは当然の様に是と答えるだろう。しかし、ヘスティアが怖いのはそんなベジットの言葉の真意が見えない事ではない。

 

 ベジットの言葉を疑ってしまうかもしれない、そんな自分自身が怖いのだ。

 

「嗚呼、奴は強く優しいのだろうよ。だからこそ奴はお前の下で戦うのも文句を言わん。仮令(たとえ)、なんの見返りが無くともな」

 

「っ!」

 

「なぁヘスティア、お前はそんなベジットに何をしてやれる? ただ奴に縋るだけのお前が、ベジットという男に何を返してやれる?」

 

「まるで自分ならベジットを満たしてやれる。そんな口振りね」

 

 したり顔で責め立てるイシュタルにもう一柱の美の女神が横入れする。その眼には呆れと侮蔑、こんな奴と同じ美の女神と見られる事に心底嫌気がさした……フレイヤの軽蔑の眼差し。

 

 普段ならそんな眼差しを受けただけで激昂するイシュタルだが、その顔には喜悦の笑みが浮かぶ。

 

「勿論だとも。ベジットが私の下に来るのであればこの肢体、余すこと無く奴に捧げよう。求めるのならば何時だって何処でだって、だ」

 

 妖艶に微笑むイシュタル。美の女神の一柱なだけあり、その美貌は神々すら誑かす。ベジットを満たせるのは自分だけ、そう言って憚らないイシュタルに対し、フレイヤはただ深い溜め息を溢した。

 

 アルテミス? 弓を取り出した所でヘファイストスとアストレアが羽交い締めし、ミアハとディアンケヒトが矢を取り上げております。

 

 完全にとばっちりである。

 

「それに、私の下にベジットが来れば奴を独占したりはせん。奴が扱う力、聞けば万人が扱える奇跡の様な力なのだろう? 私ならばベジットに命じ、オラリオに住まう全ての冒険者に授けることを約束しよう」

 

 イシュタルの宣言に今度は周囲の神々がざわめきだす。ベジットの操る“()”、それは神々の恩恵に縛られず、けれど合わされば新たな力と未知をもたらす“下界の可能性”。

 

 それを一部の大手派閥だけでなく自分達もその恩恵を受けられる。明らかに変わった場の空気に、ロキは忌々しそうに舌を打つ。

 

(阿呆が。それは実質自分がこのオラリオを牛耳ると言っている様なもんやないか。ヘスティアは天界きっての善神、野心なんて微塵もないノータリンやからベジットという規格外がいても誰も文句言わないんやろが)

 

(けれど先の戦いを見てきた神々からすればイシュタルの提案に迷うのも事実。そうなったら最後、誰もイシュタルに逆らえなくなると言うのに……)

 

 二柱の女神が沈黙を守り、ヘスティアの方へ視線を向ける。俯き、何も言葉を発しない彼女の動きを見守っていると、イシュタルは更に続けた。

 

「なぁヘスティア、これ以上ベジットを縛るのは止せ。あの男に対してお前の様な女神が何をしてやれる? その幼稚な体を使って媚びてみるか? 無理だな、お前は処女神。男の肉欲に応える事はどうあっても叶えられん」

 

 優しく、諭すような口振りだがイシュタルの言葉には悪意しかない。同時に真実でもあった。ヘスティアがベジットにしてやれる事なんてたかが知れている。

 

 故に……。

 

「そうだねイシュタル、君の言う通りだよ」

 

「ほう?」

 

「おいドチビ!」

 

 ヘスティアはイシュタルの言葉を肯定する。

 

「ベジット君は凄い子なんだ。僕が彼に恩恵を授けるより前から、ずっと彼は戦って冒険をしてきた。彼の頑張りに何時だって僕はぶら下がっているだけだった」

 

 最初に出会ってオラリオに辿り着く迄の間、何時だって自分はベジットに迷惑を掛けるだけの存在だった。

 

「旅の途中で何回も助けられた。森の中で迷子になった時も、崖から落ちた時も、バイトで体力が尽きた時も、いつも僕は助けられてきた」

 

 全知零能だから、なんて言い訳はしない。地上に降りたら如何なる神々でも力を失うのは、地上の決定権が地上で生きる者達のモノだからと分かっているからだ。

 

 特に、自分の力は他の神々よりも地味なモノ。神の力を失ったヘスティアは間違いなく何も出来ない無力な少女だ。

 

 旅の最中でベジットに助けられた回数なんて、それこそ数えきれない程であり、そんな彼に何かをしてやれた事なんて……たった数回も無かった。

 

 だから……。

 

「だから、僕は彼に全てを預けた(捧げた)。僕の意思も、心も、全てはベジット君のモノだ」

 

「──────は?」

 

 全て。そう口にするヘスティアは微笑み、慈愛に満ちた笑みはイシュタルを硬直させ、他の神々も言葉を失った。

 

 ロキは細かった目を見開き、フレイヤは「あらまぁ」とそれぞれ驚きを露にする。

 

「イシュタル、君は僕にベジットを寄越せと言ったな。過大評価も良いところだ。そもそも僕にベジット君をどうにか出来る権利は無いんだ」

 

 助けられてばかりで何も出来ない自分。そんな自分に、ベジットは気にするなと笑った。

 

 アルテミスの様に狩りは出来ず、アストレアの様に武術に優れた訳でもない。

 

 ミアハやディアンケヒトみたいに人類を助ける薬も作れないし、ヘファイストスの様に槌を振るえば、翌日には筋肉痛だ。

 

 断言する。地上に降りた神々の中で自分こそが零能なのだと。

 

「僕に出来るのは、ただ寄り添うだけ。だからイシュタル、君がベジット君を欲しいと言うなら僕は止めないし止められないよ」

 

「なんだ……それは、お前は、お前は女神としての矜持を持ってないのか!?」

 

「そんなの、地上に降りた初日に棄てたよ。君、一人で旅をしたこと無いのかい?」

 

 あの時の事は今でも忘れない。右も左も分からず、着の身着のまま降りてきたヘスティアは頼れる者が誰一人いない下界にて一人泣きそうになっていた。

 

 当時の記憶を思い出して苦笑う。そんなヘスティアにイシュタルは忌々しそうに顔を歪めた。

 

「ナッハハハハハハ!! コイツは傑作や、ドチビがイシュタルを言い負かしとる!」

 

「もう、はしたないわよロキ。でも……フフ、確かにこれは滑稽ね」

 

「ロキィ、フレイヤァァァッ!!」

 

 ギリィッ。歯を食い縛り怒りを顕にするイシュタル、そんな女神にヘスティアは一言だけ言い返す。

 

「イシュタル、君がベジット君に言い寄ると言うのなら止めはしない。けれどね、これだけは言わせてもらうよ」

 

「彼が、君に靡く姿は──悪いけど想像出来ないや」

 

 その言葉が止めとなった。ロキは堪え切れず爆笑し、フレイヤも顔を埋めて痙攣している。アルテミスはドヤ顔を晒し、ヘファイストスとアストレアは肩で息をし、ミアハとディアンケヒトはそれはそうだと腕を組んで頷いている。

 

 空気が弛緩し、笑いに変わる。それもそうだと笑う神々にイシュタルの顔はドンドン赤くなっていき……。

 

「クソがっ!」

 

 そんな捨て台詞を最後に座っていた席から立ち上がり、神会を退出していく。

 

 言いすぎたかな。頬を掻くヘスティアにヘファイストスは気にするなと肩に手を置いた。

 

「さて、余興はもう充分でしょう。いい加減、神会を進めましょう」

 

「ヒーヒー、あかん腹痛い。ったくドチビめ、ウチを笑い殺そうなんて中々やるやないか。……ほな、司会はウチで始めんでー、先ずは新しくLv.4になったっちゅうアルテミスの所の団長ちゃんからや」

 

「アルテミスの眷族だから【狩り名人】とかは?」

 

「いや、Lv.4だから【狩り鉄人(アタランテ)】じゃね?」

 

「じゃあ第一級(Lv.5)になったら【狩り超人(デア・オリオン)】?」

 

「捻りが足りん。やり直し」

 

「「「まさかのダメ出し!?」」」

 

 退出していくイシュタルへの話題もほど程に、移行するのは名付けの儀式。やいのやいのと騒ぎ立てる神々にヘスティアは自分の言葉の意味に今更気付き、赤面して小さくなっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、そろそろ【嘆きの大壁】だ。階層主(ゴライアス)は俺が片付けておくから、リリはその間に準備運動して、いつでも始めるようにしておけな」

 

「ワンパンで終わるのに準備運動出来る暇はあるのでしょうか?」

 

 ナハハと笑うベジット。既に通いなれた正規ルートを通り、二人は階層主が居座る【嘆きの大壁】へと辿り着く。

 

 ベートとの特訓で使われた空間。鍛えられる場所としては悪くない場所で、さっさとゴライアスを始末しようとベジットは辺りを見渡すが……。

 

「あり? ゴライアスがいない。なぁリリ、ゴライアスの出てくる時期ってもうそろそろだったよな」

 

「はい。その筈ですけど……」

 

 階層主の姿がない。ギルドの公開情報を調べてそろそろダンジョンから再誕する時期の筈が、ゴライアスの姿は愚か、出てくる気配すらない。

 

 まさか情報を誤ってしまった? なんて考えが一瞬脳裏を過るが、それは間違いであると次に現れた人物を見て確信する。

 

「やぁ、ベジット。そしてリリルカ・アーデ、こんにちは」

 

「あ、フィン様。ご、ご無沙汰しております」

 

「よぉフィン。階層主はお前が片付けてくれたのか?」

 

 二人に歩み寄ってきたのはロキ・ファミリアの団長こと小人族(パルゥム)の【勇者(ブレイバー)】フィン・ディムナ。

 

 オラリオ二大派閥の片割れの長が単身でダンジョンに潜っているなんて珍しい。

 

 一人でやらせてしまった事に若干の申し訳なさを感じつつ、ベジットはフィンに礼を言う。

 

「なんか悪いな。一人で片付けてくれたのか?」

 

「……まぁ、これからの戦いの前に軽くウォーミングアップを済ませておこうと思って、ね」

 

 槍を肩に担ぎ、何処か影のある表情でそう語るフィンにリリルカだけが違和感を抱く。

 

「フィン様?」

 

 どうしたのかと訊ねようとするも、それよりも速くフィンは槍の切っ先をベジットに向けて……。

 

「ベジット、君に勝負を挑ませてもらうよ」

 

 覚悟を決めた様子のフィンに……。

 

「分かった。受けるぜ、お前の挑戦」

 

 ベジットもまた即答で応えた。

 

 

 

 

 

 






次回、【勇者】の意地。

圧倒的力の差を前に、勇者の勇気が試される。




オマケ。

各派閥に於けるヘスティア・ファミリアへの好感度。


フレイヤ・ファミリアの場合。

主神フレイヤ:ベジットがヘスティアの眷族であることに安堵している神の一柱。

尚数年後、最もベジットに頭を悩ませる事となるのは流石の神でも読めなかった。

現在「まぁ、面白い子ね」

未来「グギギギ……!」


団長オッタル:強さに対して何処までも実直なベジットにある種の尊敬すらしている。

「いつか、お前に一太刀浴びせて見せよう」

「因みにリリルカちゃんは既に一太刀浴びせているぞ」

「エッ?」


副団長アレン:ベジットぶっ殺す

「ベジットぶっ殺す」


料理長ヘイズ:おのれベジットォォォッ!!

「おのれベジットォォォッ!!」




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