遂にシンデレラグレイが放送開始!
プリティ要素のないウマ娘に、刮目せよ。
そんな訳で初投稿です。
「お、お邪魔しまーす……」
オラリオの
鍛冶の女神ヘファイストスが座する本拠地、『ヴァルカの工房』へ一人やって来たリリルカ・アーデは、オズオズと慣れない様子でオラリオ二大鍛冶派閥の門を潜る。
瞬間、鍛冶の独特の熱気がリリルカの肌を叩く。ここへは既に何回か来ているのに、相変わらずこの空気には圧倒される。
聞こえてくる槌を打つ音、ゴウゴウと燃え盛る炎の元では鍛冶神に少しでも近付こうと、眷族達が日々素材と炎と向き合っている。
「いつ来ても凄いなー、流石はヘスティア様の神友の眷族……」
「おいチビ、ウチに何のようだ」
「え?」
「え? じゃねぇよ。なんでテメェみてぇな
なんか、変な奴に絡まれた。目の前の
「お邪魔をしてしまい申し訳ありません。本日は鍛冶神……女神ヘファイストス様にお目通りしたく、此方の本拠地に伺わせてもらった次第です」
「あ”あ”!? 小人族のガキがヘファイストス様に何の用件があるってんだ!?」
サポーター時代の頃から培ってきた処世術。高圧的な冒険者には兎に角相手を刺激しないようにやり過ごすのがリリルカのやり方だった。
「申し訳ありません、個人的な内容ですのでここで話すのはちょっと……」
「ふざけんな! 此処がどういう所か分かって言ってんのか!? 世界の中心都市オラリオ、その中でも鍛冶界隈でゴブニュ・ファミリアと対を成す天下のヘファイストス・ファミリアの総本山だぞ!!」
「勿論、存じておりますとも」
鍛冶師として名を馳せたいと言うのなら、自分に構わないで剣の1本でも打てばいいのに……。
リリルカに当たり散らして下がろうとしない名もなき新米鍛冶師。さてどうしたもんかなと思考を巡らせて……。
「……ハッ、何処の弱小ファミリアだか知らねぇが、出ていきな。此処はテメェみてぇなカスな小人が来る場所じゃねぇんだ。1丁前に槍なんぞ背中に差しやがって」
(うーん、どうしましょう。そろそろ約束の時間なのに、このままではヘファイストス様を待たせてしまう。せめて受付の人に話が通ればよいのですが……)
目の前の新米鍛冶師は入団して間もないのか、粗野な態度が目立つ。有名な派閥に入れた事で気が昂っているのだろうが、これではマトモに話も出来ない。
無視しても良いがそれではまた禍根が残る。主神同士が仲の良い派閥だから、余り荒波立てたくないリリルカは仕方ないとこの場は出直そうとした時。
新米鍛冶師の背後に、影が伸び……。
「何をしとるんだお前は」
「ドッフェン!?」
新米鍛冶師の脳天に、見事な手刀が叩き込まれた。
凄まじい轟音と衝撃が辺りに響き、新米鍛冶師は床に崩れ落ちる。一応加減されているだろう男はピクピクと痙攣しながら白目を剥いていた。
「よぉ、よく来たなリリ助。待っておったぞ」
「椿様。すみません、お時間を取らせてしまって」
男の背後から現れるのはヘファイストス・ファミリアの団長、椿・コルブランド。ドワーフとヒューマンのハーフとされるオラリオきっての
にこやかに笑みを浮かべて出迎えてくれる椿にリリルカも深々と頭を下げた。
「なになに、此方こそ済まなかった。闇派閥と決着が付き、オラリオの治安が良くなったと聞いて最近はこの手の入団希望者が後を断たなくてな。手前達も難儀していたのだ」
「え、この人ヘファイストス・ファミリアの新入りではないのですか?」
自分で言って気付く。そう言えばこの人、自分の事をヘファイストス・ファミリアの新入りとは言わなかった。此方を捲し立てるだけで名乗りもしなかったから、先入観で決め付けてしまっていた。
「こういう手合いは先ずは下の者達の仕事場を見学させるのが鉄板なのだが………たまに自分が如何にもウチの団員だと振る舞う輩が出てくるのだ。お陰で受付も対応に追われてな」
「あー、それはなんとも忙しい時に……すみません」
「よいよい。手前も、お主が来るのを心待ちにしておったからな。それと………おい、起きんか」
「ハッ! お、俺は……一体なにを?」
椿に気付けをして貰い、気絶から起きた新米鍛冶師(予定)の男。何故自分が意識を失っていたのか分からず、軽く混乱している男に椿は若干の怒気を含めて詰め寄る。
「お前、誰に喧嘩を売ったか分かっておるのか? 貴様が嘲りを向けたのは、
「へ? …………エエエエエッ!?」
そんな驚く? リリルカに向けて先程まで高圧的だった男が酷く青ざめ、震えている。
「へ、ヘスティア・ファミリア!? あのファミリアを一撃で壊滅させたベジットってバケモンがいるっていう
「そうよ。そしてこのリリルカ・アーデはそこの派閥の一番槍……お主、此処がダンジョンでなくてよかったのう? であればその身、一切原型を留めておらず、八つ裂きとなってモンスターの餌になっていたであろうなぁ」
「あば、アバババババババババ……」
幾らなんでも脅しが過ぎる。如何にリリルカであろうと見ず知らずの相手をいきなり八つ裂きにしようだなんて思わないし、モンスターの餌にだってしない。
精々少し驚かせるだけでそんな真似は絶対にしないと言うのに、椿は愉しそうに笑っている。
「ご、ごごごごごめんなさぁぁぁい!! 許してぇぇぇぇっ!!」
椿の脅しが骨身に染みたのか、新米鍛冶師(予定)だった男は椿から飛び退き、鼻水と涙を撒き散らしながら『ヴァルカの工房』を出ていく。
あの様子だとオラリオからも逃げ出すつもりだろう。これではまた自分の悪評が広まってしまうと、リリルカはやり過ぎた椿にジト目を向ける。
「……もう、やりすぎですよ椿様」
「ナハハハハ! ああいう手合いにはあのくらいの脅しが丁度良いのだ。防具の点検、割り引きで見てやるから許してくれ!」
「もう、仕方ないですね。半額で手を打ちましょう」
「……意外とちゃっかりしとるなお前も」
やはり小人族は強かだ。肩を竦め、やれやれと呆れるリリルカを伴って、二人は主神の待つ執務室へと向かった。
◇
「主神殿ー、リリ助が来たぞー」
「来たわね、待ってたわよ」
椿に案内されて、主神がいる執務室へと通される。扉の先で椅子に座っていた紅い髪が特徴的な
「申し訳ありませんヘファイストス様、時間に遅れてしまって……」
「気にしなくて良いわよ。私も少し仕事を片していた所だし…………」
「主神殿、やはりもう少し希望者を厳しく選定した方が良いぞ。アレではウチの派閥の名を得たいが為に半端な奴しか来んぞ」
「……一応、やる気のある
困ったように頬へ手をやるヘファイストスだが、椿の方は少々ご立腹の様だ。眉をへの字に曲げて主神に進言する椿にヘファイストスも溜め息を溢す。
「やる気のある者であれば、尚の事自分の力で何かを為そうとするであろう。鉄屑であれ何であれ、心身込めて打てばそれは其奴の作品。それすら打てないとあれば、どのみち其奴に先はない」
「そうねぇ、確かにその通りだわ。以後の志願者には貴女の意見を採用させてもらうわね」
「おう」
間違っているとあれば相手が主神でも意見を通す。神と眷族としての彼女達の在り方はリリルカにとっても大変勉強になる間柄だった。
「っと、ごめんなさいリリルカちゃん。貴女の前でつい仕事の話をしちゃって……」
「い、いいえ! ヘファイストス・ファミリアの忙しさはリリも素人ながら理解しているつもりですので、寧ろそんな忙しい時期にお邪魔しちゃって、却って申し訳なく……」
「もう、子供がそんな気を回さなくて良いのよ。ヘスティアも大変ね」
リリルカの生来の気質なのだろう、物腰が柔らかく丁寧な態度は子供らしくなく、主神であるヘスティアも気にしている部分でもある。神友の気苦労を察したヘファイストスは苦笑う。
それはそれとして。
「さて、それじゃあ早速貴女の槍を見せて貰いましょうか」
「はい。此方です」
背負った槍を下ろし、刃の部分を守る袋を外す。
この袋もヘファイストス謹製、槍を購入する際に渡してきた【ニール】専用の護り袋である。
そうして取り外された袋の中から鈍い光を放つ穂先が顕になる。相変わらず凄まじい一品、我が主神ながら恐ろしい腕前であると、椿が生唾を呑んでゴクリと喉を鳴らす。
見たところ、良く手入れされている。鍛冶神であるヘファイストスの言葉を良く聞き、一つの手順も欠かさず丁寧な手入れを心掛けているのだろう。自分の命を預ける武器を丁寧に扱えるのは鍛冶師としても嬉しいモノだと、椿は満足そうに頷く。
だが、主神はそうでもないのかその表情を少しだけ険しくさせている。リリルカも心当たりがあるのか、少し緊張した面持ちでいるから、椿迄もがどうしたのかと困惑する。
「………リリルカちゃん。アナタ、この
「あ、あう………」
やはり見破られたと、睨みを利かせるヘファイストスにリリルカは口ごもる。それを見てヘファイストスは慌てて違うのよと手をパタパタと振って誤解を解く。
「ごめんなさい。別に怒っている訳じゃないのよ。ただ、ゴブニュから聞いた話と酷似したモノが出てきたから、ちょっと驚いちゃって」
「ゴブニュ? 我等のライバル派閥の主神が、何か言ってたのか?」
ゴブニュとはオラリオ最大鍛冶派閥であるヘファイストス・ファミリアに次いで、多くの鍛冶師を抱えた鍛冶派閥。
ロキ・ファミリア内でも愛用している者が多いとされ、その中には彼等の長であるフィン・ディムナの名も連なっている。
「【
「変異、ですか?」
「えぇ、ゴブニュも言葉にするのに難儀していたけど、要するにより
「うん? 元々
【勇者】が扱う武器も、彼の希望によって作られた特注品。故にヘファイストスの言葉に椿は首を傾げるが……。
「ごめんなさい。私も何て言葉にすればいいか分からなくて……でも、理解はした。リリルカちゃん、アナタの槍である【ニール】は正真正銘アナタの一振になるわ」
「は、はぁ……」
少し興奮した様子のヘファイストスにリリルカは気圧される。
「だから聞かせて頂戴。アナタはこの槍にどんなことをしてきたのか」
「わ、分かりました」
それからと言うもの、ヘファイストスからの指示によりリリルカはこの槍を得てからの経緯と戦いの記憶を余すことなく語り始めた。
普段のダンジョン探索から闇派閥との決戦、【男殺し】との死闘と友達と挑んだ
中でも【男殺し】との戦いは椿も興味を抱いたのか、時折細かく説明を求めてきた。
そうして話をする事一時間、お茶を戴きながら語り終えたリリルカはこれで終わりですと締めくくり話を終える。
「あの、一通り全部話しましたけど……何か分かりましたか?」
「いや、あっただろう。一つだけ明確におかしいのが」
「え?」
呆れた様子の椿だが、リリルカとしては心当たりがない。首を傾げる彼女に対してヘファイストスが答えを言い当てる。
「階層主との戦いよ。良い? リリルカちゃん。普通槍に力を込めて投げただけでゴライアスの上半身を吹き飛ばしたりは出来ないわ」
「──────あ」
言われてリリルカも気付く。そう言えばあの時、確かに自分は己の愛槍に魔力と共に気を流し込み、弾け飛びそうな力の奔流を抑え込みながら槍を投擲した。
気持ちが昂って、テンションも高めだったから気付かなかったが、今にして思えば【
「因みにだがな、階層主を吹き飛ばす一撃なんぞ手前の魔剣でも難しいぞ。確実に何本かは砕く羽目になる。可能性があるとすれば“クロッゾの魔剣”位だが……」
暗に、お前の投擲槍はその魔剣に匹敵すると言われ、リリルカも頬をひきつらせる。私、いつの間にそんな戦略兵器になってたの? リリルカは訝しんだ。
「リリルカちゃん、先程アナタは言ったわね。力を込めたと。具体的には何を込めたのか、説明できる?」
「その、“気”と“魔力”を思いっきり捩じ込んじゃいました」
明らかな原因を口にするリリルカだが、ヘファイストスと椿は考え込んで何かを思案している。別段怒っている訳ではない様子の彼女達にリリルカはホッと安堵した。
「気……か。よもやベジットが教えるとされる力にそんな作用があるとはな」
「“魔力を込める”と言うのも中々凄いと思うけどね。ロキ・ファミリアの【九魔姫】はこの事を知っているのかしら」
ベジットという規格外が側にいるから気付きにくいが、目の前の小人族も徐々に逸脱した使い手と化している。
この分だと噂の遠征に出向いているベートも帰ってきたら相当な怪物と化してそうだと、ヘファイストスは楽しみ半分不安半分な笑みを浮かべる。
「兎も角、貴女の槍は今すぐ壊れる様子はないし、手入れも充分すぎる程行き届いているわ。余り不安にならず、いつも通り使いこなしなさい」
「は、はい! ありがとうございます!」
それから次は手前の番だなと、リリルカの防具を見る為に椿は彼女と共に部屋を後にする。自分の予想を超えて大きく羽ばたきつつあるリリルカにこれからの期待を込め、微笑みながら見送った後。
「……帰ってきたら、少し問い詰めなくちゃいけないわね」
鍛冶神ヘファイストスは眼を細くさせて執務室から見えるバベルを見る。ベジットの操る気、アレを周囲に教えてから少しずつ何かが変わりつつある。
下界の未知の覚醒か、それとも何らかの暴走の予感か。期待と不安を胸に抱き、それでも少しワクワクしているヘファイストスは遠征に出ている彼等の無事を願っていた。
尚、後日ヘファイストスがこの件をベジットに追及した所。
『え、何それ知らない……恐っ』
ベジット本人も全く心当たりがないという大真面目な一言に、
◇
──────地獄を見た。
モンスター達が跋扈し、互いに貪り喰らい合い殺し合う地獄。
──────地獄を見た。
そんなモンスターを一方的に蹂躙し、尚笑う
──────地獄を見た。
疲労困憊な自分を、それでも尚追い詰める鉄面皮な猪を。
──────地獄を見た。
時折現れる例の黒い破壊者を、生まれてきた事を知らずに消し飛ばす二人の化物を。
幾度も地獄を体験し、寝ても覚めても終わらない無間地獄。それでも狼は吼え続けた。
吼えて、吼えて、吼えまくり、もう何に対して吼えているのか分からず、それでも狼────ベート・ローガは自分を保つ為に挑み続けた。
心が折れたら、自分はもう引き返せなくなる。オッタルが剣を振り抜く度に
あれ程溢れていたモンスターが、今ではもう此方の様子を伺ってばかりで仕掛けてこず、何なら時折モンスター同士で助け合ったりしていた。
何度も一方的に殺されてダンジョンから産み落とされるのを繰り返して、自我でも芽生えたのだろうか? 俺も生まれ変わったら鳥になれるかな? 何て、アホみたいな考えが芽生える程度にはベートも余裕が出始めていた。
思考がイカレ始めたとも言う。
そんな地獄の日々を乗り越えて、遂にベート・ローガは其処へ辿り着く。
【
“ウダイオス” 深層最初の巨大な骸骨の階層主にして第一級冒険者がパーティーを組んで挑まなければならない、深層探索への最初の試練。
全高10Mという体躯を誇り、周囲には大量のスパルトイが王に傅く兵士の如く控えている。
そんな恐ろしく巨大な怪物を相手に、ベート・ローガが前に出る。久しく見なかった仇敵、冒険者を相手に一切怯える事なく【凶狼】は見据えている。
「さて、俺達に出来ることは殆どやりきった」
「後はお前次第だ」
送り出すのは二人の団長。腕を組み、階層主を相手に怯みもしないベートの背中を満足そうに見ていた。
やれることは全てやり遂げた。ベートを徹底的に追い詰め、彼の現段階の潜在能力を全て出しきってやったと確信するベジット。
オッタルもまたこの数日の間に自身も随分と力を付けたと自負している。故に、出てくる言葉こそ素っ気ないが【猛者】は【凶狼】を高く評価していた。
この男なら近い将来、自分と同じ高みまで昇ってくると、新たに芽生えたライバルに胸中は期待感で溢れていた。
さぁ、行ってこい。そしてお前の力を見せてくれ。そんな期待を込めて送り出す二人に……。
「OK! このスーパーウルフのベート様に任せんシャイ☆」
「「……………………」」
【凶狼】と恐れられるベート・ローガは、キラキラと輝きながらウダイオスへ吶喊していく。
追い詰められ過ぎて人格すら変わってしまったベート、そんな彼を前にして……。
「ちょっと……やり過ぎた、かな?」
「………………むぅ」
バカ二人は腕を組んだまま固まっていた。
Q.世間から見たヘスティア・ファミリアってどんな存在?
A.
主神ヘスティア。
神々「まぁ、天界にいた頃から善神だしね。引きこもりだけど」
人々「我々人類に寄り添う慈悲深き女神。物凄く良い女神」
知人&友神「普通に良い神、自慢の友神」
ベート・ローガ
神々「ツンデレ狼」
人々「性格クソ狼」(尚類義語で性格クソ猫がある模様
知人「なんだか苦労人の気質を感じる。気のせい?」
リリルカ・アーデ
神々「薩摩系
人々「なんかヤベー小人。下手に煽らないのが吉」
同胞「リリルカさんチーッス!!」
勇者「あの娘そんな、ヤバイの?」
ベジット
神々「何だこいつ」
人々「何だこいつ」
知人&知神「何だこいつ」
主神「僕の自慢の眷族だい!」
Q.これ、ベート大丈夫なの?
A.でぇじょうぶだ(ry