ダンジョンに超なアイツが来るのは間違いか?   作:アゴン

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今回のスパロボ、あのゴジラが参戦という事でアクシズ落としが怪獣王に対する一兵器扱いなの草生える


そんな訳で初投稿です。


物語53

 

 

 

 【猛者】の昇格(ランクアップ)。先の大抗争での闇派閥との戦いから三年、早くも更なる領域へ到達したオッタルの報せは瞬く間にオラリオ中を駆け巡った。

 

 嘗てゼウス・ヘラの派閥の各々に団長として君臨していたマキシムと【女帝】に続き三人目となるLv.8の到達者。嘗ての最強達と肩を並べるようになったオッタルにオラリオ全土が震撼………する筈だったのだが。

 

 オッタルと同じタイミングでLv.6へ昇格を果たしたとされる【凶狼】、ベート・ローガの話題の方がある意味で知れ渡る事となり、一般市民や冒険者、果てには神々すらもオッタル以上に関心が向けられていた。

 

「───なぁ、【凶狼】の話なんだけどよ」

 

「よせ、その話は表ではしないって約束だろうが」

 

「いやだって、何があったら第一級冒険者が“ああ(・・)”なるんだよ!? Lv.5の冒険者が精神的(やまい)を患うとか、どんな目に遭ったらそうなるんだよ!?」

 

 向けられる感情は嫉妬や羨望の類いではなく、畏怖を超えた恐怖。【凶狼】の人格と人柄を良く知る者であればある程、変わり果てたベート・ローガに愕然としていた。

 

 【凶狼】は弱者を見下し、嘲る嫌な冒険者ではあるが、第一級へ登り詰めただけあって実力は本物。神々もそれを認めているからこそ、先の大通りで見せた豹変ぶりに驚きを隠せなかった。

 

「バカ! 言葉は慎重に選べ! 【凶狼(ヴァナルガンド)】は【戦場の聖女(デア・セイント)】の懸命な治療によって無事に快復されたって、ギルドから通達されただろうが」

 

「問題はそこじゃねぇよ」

 

 発狂したとされる【凶狼】の問題もそうだが、この話の本質はそこではない。最大の問題は【凶狼】を其処まで追い詰めた“奴”にこそあった。

 

「ベジット。マジで何なんだよアイツ、何で仮にも同じ派閥の冒険者を彼処まで追い詰められるんだよ」

 

「ベジット本人から聞いた話だと、何でも深層で無限に湧きだすモンスターの群れに【猛者】を含めた三人で一週間以上戦い続けたらしいぞ」

 

「なんだよそれ、モンスターが無限に湧きだすのもそうだが、なんで深層で戦り合ってんだよ。フレイヤ・ファミリアの連中だってやらねぇだろ」

 

いやそこじゃねぇよ、なにサラリと本人から聞いてんだよお前。前もそうだったけど何気に親しいのか!?」

 

「いや、偶々顔を合わせる機会があったから聞いただけだ。………続けるぞ? ベジットは何もベート・ローガをあそこまで追い詰めるつもりはなかったらしい」

 

 以前もベジット本人から話を聞いたとされる同期。何気に度胸ある同期の冒険者の話を聞く限り、どうやらベートを彼処まで追い詰めてしまったのはベジットにとっても反省するべき点だったらしい。

 

「予想を超えて強くなっていく【凶狼】を見て、つい楽しくなってしまったんだとよ。【猛者】と一緒になって追い詰めても、見事に乗り越えたのが嬉しかったと、ベジットは語っていたよ」

 

「「「……………」」」

 

 酒場に沈黙が降りる。ベジットという規格外とオッタルという怪物、奴ら二人を相手にして人格を生け贄に見事生き抜いて見せた一匹の狼。

 

 心からの敬意、そして畏怖。神々すら静かに黙祷を捧げる程に犠牲を支払った気高き【凶狼】、そんな彼に冒険者達も祈った。

 

「………俺、もう少し頑張ってみるよ。冒険者として」

 

「だな」

 

「私も、へこたれずに踏ん張ってみるよ」

 

 一冒険者の間ではある種の危険物扱いとされている今回の件。触らず騒がず、ベート・ローガが復帰した後もこの話題には触れないようにしようと冒険者達が心に誓った瞬間であった。

 

「───それで、そのベジットはどうしたんだ?」

 

「今回の件が流石にアレだったから、主神含めた各方面からお叱りを受けたらしいぞ。特に【凶狼】の治療に当たっていた【戦場の聖女】がドチャクソにキレ散らかして、ベジットに上段回し蹴りをカマしてた」

 

「最後にエグいのが来たな」

 

 ワイワイと賑わう酒場。今日もオラリオは平和であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────一方その頃、今回の騒動の原因の一人であるベジット本人はと言うと……。

 

「はい、西側外壁の清掃終わり。あー、喉渇いた」

 

 今回の騒動の主犯各として、主神直々から罰として社会奉仕の任務を一週間、首に『猛省中』のプラカードを引っ提げた状態で行っていた。

 

 今日で奉仕の最終日を迎え、綺麗になった外壁を見上げて満足そうに頷き、近くのベンチに腰掛ける。そんなベジットの後ろで監視に回っていたアーディが飲料水の入ったボトルを片手に歩み寄る。

 

「お疲れ様ですベジットさん。はいこれ」

 

「おう、サンキューな。……しっかし、ヘスティアも酷いよなぁ。罰は兎も角として何も監視まで付けるこたぁないだろうに」

 

「アッハッハッハ、流石にそれは仕方ないよベジットさん」

 

 今回の騒動、同じ派閥の仲間であるベートを人格崩壊にまで追い詰めたベジットとオッタルの所業を、罪深いモノとして主神自ら沙汰を下した結果、ベジットとオッタルの二人には1ヶ月のダンジョンへの進入禁止と、一週間の社会貢献という強制任務(ミッション)を義務付けられた。

 

 ベジットは壁の内外の北と西、オッタルは南と東各々の清掃を課せられ、本日無事に終わる事となった。

 

 既にお日様は傾き始めている。アーディから手渡されたボトルに口を付けて中にあった水分を飲み込む。冷たい水が喉を潤していく感覚が心地良い。

 

「本当なら今頃お祭り騒ぎなのに、まるで誰もそれに触れようとしない。三人も昇格(ランクアップ)したって言うのにこんなの始めてだよ」

 

「いやもう、その節はご迷惑を御掛けしまして………三人(・・)?」

 

 何て事ないように語るアーディだが、三人も昇格を果たしたという話をベジットは初めて耳にし、不思議に思い訊ねた。

 

「三人って、ベートとオッタルの他にも昇格した奴がいたのか?」

 

 因みに、アイズ達幼女部隊はリリルカを除いて三人ともLv.4に昇格している。彼女達の事も相当話題になっていたのはヘスティアから既に耳にしている。

 

 尚、そんな幼女達の活躍も【凶狼】の話題で消し飛んだが……。

 

「うん。ベジットさん達が遠征に行っている間にね、フレイヤ・ファミリアの【女神の黄金(ヴァナ・マルデル)】───ベジットさんにはヘイズさんって言えば分かるかな?」

 

 あの時は中々に盛り上がってたなーと、空を仰ぎ見るアーディに対してベジットもヘーッと感心の言葉を漏らす。

 

「ヘイズちゃんか。確かにあの娘の料理は美味かったからなぁ、『豊穣の女主人』も美味いけど、個人的には彼女の料理も推したい」

 

 今度お邪魔しようかなー、なんて事を考えているベジットは知らない。ヘイズ・ベルベットにとってベジットという男は不倶戴天の敵で、見付けた瞬間殴り掛かる程の敵意を向けられている事に。

 

 そしてそんなヘイズの怒りもベジットにとっては可愛らしい小動物の威嚇でしかない。諸行無常。

 

 閑話休題。

 

「でも、本当に凄いですよ。ベートさんは今回の遠征でLv.6になりましたし、もしかしたらヘスティア・ファミリアのランクも上がるんじゃないですか?」

 

「うーん、それは別にいいかな」

 

 アーディは我が事のように喜んで語るが、ファミリアのランクについてはベジットとしてはどうでも良かった。

 

何せファミリアのランクは謂わばギルドが定めたオラリオの戦力の目安であり、同時にその派閥に対する楔でもある。

 

 ファミリアのランクが”S“であるロキ・ファミリアとフレイヤ・ファミリアの二大派閥はギルドに少なくない税金を納めていると聞くし、更にギルドから強制任務を課せられる事も少なくはない。

 

 故に、ロキ・ファミリアはオラリオでは他派閥と比べて発言権やら行動力の制限が緩いのだが、ベジットは其処まで魅力には思えなかった。

 

 まぁ、正当な権利という意味合いでは税を納める意味もありそうだが、ヘスティア・ファミリアは個人の強さは兎も角として人数は未だ三人の弱小派閥。

 

 必要以上の税金を納めるのは、現状少し待って欲しいのが本音である。

 

 因みに、フレイヤ・ファミリアは税金は兎も角、それ以外のギルドからの要請をブッチしており、その分の負担をロキ・ファミリアに押し付ける形となってしまっている。

 

 その為、ロキ・ファミリアとフレイヤ・ファミリアは対立関係にあると、以前担当のローズから聞かされた事がある。

 

 故に、そういった組織特有の生々しい事情を回避する為に、ベジットとしてはファミリアのランクを上げたくないのが本心であった。

 

「でもベジットさん、ベートさんがLv.6になった以上オラリオに住まう者として最低限の義務はあると思うよ?」

 

「だよなぁ。あー、いやだなぁ、ランク上げたくないなー」

 

「そんな君に良い報せを持ってきたぜ!」

 

 ファミリアのランクアップを渋るベジット。税を納めると聞くと頭が痛くなる彼の耳に、声高に叫ぶ神の声が届く。

 

 誰だ? 何処かで聞いたような神の声に顔を上げると、水色の髪の少女に抱えられ胡散臭い笑みを携えた男神がオラリオを囲む市壁の上から降りてきた。

 

「あれ、ヘルメス様じゃねぇか。随分と久し振りだな」

 

「やぁベジット君。相変わらず君の活躍を聞いているよ。随分とやらかし───もとい、活躍しているみたいじゃないか」

 

「別に気を遣わなくて良いッスよ?」

 

 人受けする気安い笑みを浮かべてヘルメスは隣に座る。アーディとヘルメスの眷族であるアスフィが軽く会釈しているのを見て、ベジットはヘルメスに忠告した。

 

「なんかアスフィちゃん、疲れてないか? 彼女が優秀なのは分かるけど少しは労ってやれよ」

 

 アスフィ・アル・アンドロメダ。神々から【万能者(ペルセウス)】の二つ名を賜り、その手腕で数々の魔道具を開発してきた稀代の魔道具製作者(アイテムメーカー)

 

 そんな彼女はベジットからみて前世のある人物とダブって見えた。

 

「大丈夫、俺のアスフィは凄いんだ。俺の注文なんて軽く超えて───」

 

「終わらない無茶振り」

 

 ピクリ、ヘルメスは固まった。

 

「追い付かない作業、繰り返される残業」

 

「べ、ベジット君?」

 

「重なる仕事の日々、潰される時間。費やされる日常、消費される婚期」

 

 冷や汗が止まらない。胃が痛みだす。

 

「ミスをする新人、苛立つ感情、抑えきれない衝動。追い詰めて、泣き出す新人に悦を見いだす人格破綻」

 

「──────」

 

 どうしよう、胃痛が酷くなっていく。

 

「その果てに待つのは……婚期を逃した完璧で究極のお局。そして彼女はこう言うのだ」

 

『責任、とって下さいね?』

 

わ、わぁぁぁぁっ!! 分かった! アスフィにはちゃんと休みを用意するから、お願いだから止めてくれェェッ!」

 

 顔を青ざめて両手をバタバタと振るうヘルメス。まるで予言のように語るベジットに懇願しながら頭を垂れる主神を当人であるアスフィは首を傾げるしかなかった。

 

 アスフィ・アル・アンドロメダ。優秀な魔道具製作者だが、優秀であるが故に主神であるヘルメスに無茶振りをされてきた少女。先の闇派閥との決戦で暫定的に団長となり、その後は前任者が引退したことによりそのまま正式に団長となった少女。

 

 そんな彼女の在り方は前世で世話になった先輩に何処と無く似ている。せめて彼女のようにならないよう、釘を刺したベジット(⬛⬛)は満足そうに笑みを浮かべてサムズアップをするが……やはり、アスフィには何の事か分からず、首を傾げるだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ラキア王国が攻めてくる?」

 

 その役割から何かとオラリオの外で活動しているヘルメス、彼の口から聞かされる内容はベジットにとって少し気になるものだった。

 

「ああ、本神から直接宣戦布告されたからね。アイツの性格上確実に攻めてくるだろうね」

 

「ほーん」

 

 ラキア王国。オラリオに来るまでの旅の中で何度か耳にした事のある国。緑豊かで肥沃な大地を有して60万の国民が生活しているという豊かな国。

 

 本来なら他所に戦争を仕掛ける必要など無い国の筈、そんな国が何故オラリオに攻めようとしているのか。

 

「彼処の団長………いや、国王が世界制覇を掲げていてね。主神アレスの指揮の下、何度かオラリオに戦争を吹っ掛けているんだ」

 

「それはまた───でも、仮にもオラリオに攻めて来るって事は向こうも名の知れた冒険者………いや、相手が軍隊なら兵士か。そんな奴がいるんだろ?」

 

「いや全く」

 

「へ?」

 

 オラリオに何度も宣戦布告をしていると言うから、てっきり武力には自信があるものだと思っていた。さぞ勇猛な兵士がいるのだろうと、少しワクワクしたベジットが訊ねるも、ヘルメスから返ってきたのは全くの真逆の言葉だった。

 

「ラキアにはオラリオのダンジョンみたいに強くなれる要素がないからね。兵士の殆どが下級(Lv.1)、良くて上級(Lv.2)、最強と称される将軍がLv.3だね」

 

「嘘ぉ……」

 

 寧ろ、あの環境で良くLv.3になれたよねと、ヘルメスはハハハと感心する。

 

「で、でも、【学区】のレオンみたいに何かしらの切り札とか……」

 

「ないね。以前はクロッゾの魔剣のお陰で勝ち星も挙がってたけど、今ではその栄光は過去のものさ。なんならクロッゾの魔剣が健在だった頃からオラリオ(ウチ)には手も足も出なかったし」

 

「えぇ……じゃあ、一体どんな勝算があってオラリオに宣戦布告を?」

 

「さぁ?」

 

 アレスという神は前世から知る軍神。文字通り軍の神であるから戦を有利に進めるロキ・ファミリアの【勇者(ブレイバー)】をして超越した軍略を用いるのかと思ったが、それもないとヘルメスは断言する。

 

 唯一勝っているのは数だけ、これ迄幾度となく挑んできたのも数によるゴリ押しのみ。そんな戦略も糞もない戦い方にベジットは目を丸くさせていた。

 

「────ハッ! まさかそう思わせるのが軍神アレスの目的なのでは!?」

 

「そうだねー、そんな目論見があればいいのにねー」

 

 スッゴい棒読み。折角ベジットがアレスの策略を足りない頭で考えて捻出したというのに、ヘルメスはやって来た猫と戯れるだけ。おい、話聞けよ。

 

「残念だけどベジット君、君の考える最強で格好の良いアレスは存在しない。天界からの顔馴染みの俺が断言するよ」

 

「………ウソダドンドコドーン」

 

 ベジットの中にある格好いいアレス像が砕け散った瞬間である。ガクリと項垂れるベジットにヘルメスはやはりハハハと笑うのだ。

 

「そこで、だ。今後オラリオには様々なイベントを控えていてギルドやそれに連なる派閥は忙しいから参加出来ない。けど、数だけはあるラキア王国相手に下手な小規模派閥を送っても怪我人が増えるだけ」

 

「数“だけ”って強調するの、やめません?」

 

「これは失礼」

 

 ジト目を送るベジットにヘルメスは肩を竦めるだけ。

 

 ───まぁ、話の意図は分かった。

 

「つまり、ラキア王国の相手は俺がすればいいんだな?」

 

「出来れば君達(・・)で対応して欲しいかなぁ。君の手によって鍛えられた精鋭、一度下界(俺達)に見せつけて欲しい」

 

「……………」

 

 成る程、それが狙い(本音)か。ベジットを含めてヘスティア・ファミリアが有する戦力を此処で一度正確に推し量ってやろうというヘルメスの意図。

 

話しやすい雰囲気から会話の流れまで、交渉の上手さは流石は神といった所か。尤も、今回はこちらに対する純粋な興味が大半を占めているだろうが……。

 

(フィンやヘスティアが警戒するの、分かる気がするな)

 

「もし君がこれを受けてくれるのなら、ギルドには俺から掛け合って君達の派閥ランクの査定を待ってくれるよう口添えしよう。どうかな?」

 

 他にも色々と相談に乗るよ。相変わらず良い笑顔(・・・・)で話を持っていくヘルメスにベジットはふむ、と一瞬だけ考え込んで……。

 

「一度、ファミリアの皆と相談してからでいいか? 一応俺、やらかしている身でね。主神から厳命を受けている立場なんだわ」

 

「………此処に来るまでにチラッと聞いたけど、本当に何をしてるの君。言ってはなんだけど君の方がよっぽど酷いことしている気がするんだけど」

 

「おっとぉ、急な正論止めてくれません?」

 

 その正論は俺に効く。そう締めくくり、神との密談を終えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────それから数日後、オラリオ近辺にある大平原。霧が立ち込める朝、日の出が上がっていない薄暗い時間帯。

 

 オラリオを見渡せる丘の上にて、ラキア王国による大軍勢が既に陣を敷いていた。

 

「どうだマリウス、オラリオに何か動きはあったか?」

 

「いえ、オラリオの方は未だこれといった動きは見えず、沈黙を保っております」

 

 陣の最奥に構える天幕。軍神アレスが座する天幕にて、ファミリアの副団長でありラキア王国第一王子でもあるマリウス・ウィクトリクス・ラキア、彼の口から聞かされる報告に紅の鎧を身に纏う金髪の男神───アレスは愉快そうに笑みを浮かべる。

 

「ふっふっふっふーーーん! やはり、勇猛溢れるオラリオといえど闇派閥との戦いから未だ建て直せてはいないようだな! マリウス、予定通り日の出と共にオラリオに攻め入るぞ! 今度こそ、オラリオにふんぞり返る神々に目にモノを見せてやる!」

 

「…………」

 

 切っ掛けはオラリオが闇派閥との決戦を征したと、運悪く目の前の脳筋(主神)の耳に入った事が全ての始まりだった。

 

 嘗ての最強派閥(ゼウス・ヘラファミリア)と闇派閥の強襲により、小さくない犠牲を払ったとされるオラリオ。そんな弱ったオラリオ相手なら万が一にでも勝ち目があると知ったアレスは周囲の反対意見を押し退け、団長である国王と一緒になって今回の戦争の口火を切る事になった。

 

 腰に手を当てて高笑いする主神、そんな主神に対して副団長兼王子であるマリウスの心境は暗かった。

 

(オラリオが疲弊している? 一体何時の話をしてるんだこの脳筋は)

 

 既に、オラリオは闇派閥との決戦を征してから以前のような盛況さを取り戻し、なんならゼウス・ヘラの生き残りを降したことで、一部の冒険者は此方とは比較になら無い程飛躍していると聞く。

 

 神時代が始まり、戦いが数より質を重視するようになった今の時代、未だに数でしか上回れていないラキア王国はオラリオに対して有効な一撃を入れた試しがなかった。

 

 当然、この事はアレスにも伝えた。それはもう分かりやすく、脳筋(バカ)にも理解できるよう懇切丁寧に。何度も、何度も何度も何度も何度も何度も。

 

 しかし、その度にアレスは言うのだ。

 

『であれば、そのオラリオを打ち倒した我等ラキアこそが真の最強国家である!』

 

 この始末である。どれだけ、幾度も、何度も! 事細かく詳細とオラリオの状態と自分達の戦力の差を説明しても、目の前のクソボケ神は全く聞く耳を持たない。

 

 これ迄何度もオラリオの冒険者に痛い目に遭わされても、決して挫けず、次こそはと捨て台詞を吐き捨て、倒れる兵士を尻目に逃げ帰ってきた。

 

もう止めようとどれだけ進言しても、世界制覇を盲信する国王()と一緒になって勝手に話を纏めるのだから始末が悪い。

 

(いっそのこと、オラリオの神々から邪神認定されて送還されたりしないかなぁ)

 

 アレスの眷族にあるまじき背信的思考。けれど、側近を含めた大多数の国民が似たような事を考えているのだから仕方がない。

 

 しかし、こんな神でも子供達には人気で、ラキア王国が建国されてから此処まで大きくなれたのもこの神のお陰な一面もある為、無下には出来ない。

 

 割りと真面目にオラリオの神々の手で送還されたりしないかなと、マリウスが深いため息を吐き出した時、天幕に一人の兵士が駆け込んでくる。

 

「アレス様、マリウス様! オラリオに動きあり! 冒険者が現れました!」

 

「なんと! オラリオは満身創痍ではなかったのか!? おのれぇオラリオの神々め、謀ったな!」

 

「──────はぁ」

 

 一方的に宣戦布告しておいて謀ったも何も無いだろうがと、内心呆れながらもマリウスは兵士に続きを促す。

 

「それで、数と所属は?」

 

「そ、それが………」

 

 告げられる内容、それを耳にした瞬間アレスの顔が怒りで真っ赤に染まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お、それが例の大剣か。やっぱウダイオスの剣だけあって全体的に真っ黒だな。銘はあるのか?」

 

「あぁ、ゴブニュ・ファミリアに造らせた。銘は【覇黒の剣】、昨日漸く完成した」

 

 ラキアの大軍勢と向かい合うように佇む複数の影。霧が晴れ、朝日が平原を照らしだして影の正体が顕になる。

 

「おい駄犬、テメェまた無様を晒すつもりじゃねぇだろうな? 次にまたあのバカみたいな姿を晒してみろ、その時は指を差して笑いながら殺してやるよ」

 

「噛みつくんじゃねぇよ駄猫。ベジットとオッタルに構って貰えねぇからって俺に当たるんじゃねぇよ間抜け」

 

 人数はたったの八人(・・)。万を有するラキアに対してそれは最大の挑発だった。

 

 しかし、彼等はまだ知らない。自分達を前にしているのがオラリオ屈指の精鋭だと言うことに。

 

「へー、じゃあリリルカがまだLv.3なのは魔力のアビリティが成長しきってないからなんだ?」

 

「あ、はい。とはいっても今回の戦いでそれも満たせる筈ですので、直ぐにみんなに追い付ける筈……だから」

 

「そっか。うん、じゃあその時を楽しみにしてるね! ね、アイズ!」

 

「うん。また一緒に冒険しよ、リリルカ」

 

「ティオナさん、アイズさん。はい!」

 

「ほらアンタ達、お喋りはそこまでにしなさい。さっさと終らせて団長に褒めて貰わなきゃいけないんだから!」

 

 男四人少女四人の少数部隊、万軍のラキア王国を相手に彼等は何処までも自然体だった。

 

 そんな中、霧も完全に晴れて互いの姿を認識してきた所で八人の中から代表格であるベジットが前に出る。

 

「さて、本日はお日柄も良く、客は満員御礼。日々磨いてきた自分達の実力を発揮………出来るかは定かではないが。折角向こうから来て下さったんだ、最後まで怪我なく楽しんで貰う事にしよう」

 

 アレスらしき神が鼓舞をする。王国の兵士が雄叫びを上げて地を鳴らす振動が心地よく響いてくる。

 

「アイズ達は何時もどおり四人一組でな。相手は数にモノを言わせて来る。苛ついてつい加減をミスらない様にな」

 

「だってさティオネ」

 

「うっさい!」

 

「オッタルは悪いけど今回もその剣の出番は無しな。予定どおり、刃の潰れた方を使ってくれ」

 

「(´・ω・`)」

 

「ベートはまだLv.6の体に馴れていないだろうが、手加減の方、頼むぞ」

 

「おう」

 

「アレンは……うん、血の雨を降らさないことを意識してくれればなんでも良いや」

 

「おい、俺に対してだけ雑じゃねぇか?」

 

「気の所為気の所為」

 

 必要最低限の指示、それしか言えないしそれだけで充分。事前情報通りに正面から突っ込んでくる万軍にベジットは不敵に笑う。

 

「さぁ、お客様の到来だ。歓迎してやろう、盛大にな」

 

 “戦争遊戯”以来のオラリオ中に中継される戦いが幕を開ける。

 

 





Q.あの後、アレンは謝罪に来たの?

A.

「菓子折りを持って頭を下げてくれたよ。直接面と向かってベート君に謝った訳では無いけど、彼の謝意は本物だったから、僕は素直に受け取ったよ。勿論ベート君もね」


Q.ベジットとオッタルはどれくらい怒られたの?

A.主神であるヘスティアとフレイヤ、各々からお叱りを受けています。二人とも真面目に反省している事から其処まで強く言いませんでしたが、代わりにとある治癒師(ヒーラー)が雷を落としました。

オラリオでも屈指の実力を誇る二人を圧倒する彼女、この出来事は後の
狂乱の治癒師(バーサーク・ヒーラー)】誕生の瞬間である。

「お二人とも、いい加減にして下さいね?」

「「ウッス」」

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