ダンジョンに超なアイツが来るのは間違いか?   作:アゴン

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ライドウシリーズ、超力兵団だけプレイしてなかったから、リメイクが楽しみ。

そんな訳で初投稿です。


物語54

 

 

 

 神時代。それは、モンスターとの戦いで日々窮地に陥っていた人類を見かねた神々が暇潰し(一部除く)に下界へ降臨した事から始まった。

 

 神々の恩恵(ファルナ)を授かる事で超人的な力を引き出せる様になり、モンスターとの戦いは数よりも質を重要視される事になる。

 

 そして、その事実は現代まで当てはまり、仮令(たとえ)万軍を相手にしても第一級の冒険者が一人いるだけで覆ってしまう理不尽が罷り通る事となる。

 

 それを、是としない神がいた。軍神と謳われ、自分がいるラキア王国こそが最強なのだと、自身の眷族たる王の世界制覇を共に夢見て今回もラキア王国の主神アレスはオラリオに宣戦布告した。

 

 有志を募り、集めに集めた40万の兵力。全国民の約三分の二という大軍勢。

 

 如何にオラリオと言えど、この数の差は覆し様がない。ガハハと笑いながら勝利を確信していたアレスだが……。

 

「………うっそぉーん」

 

 目の前に広がる地獄とも呼べる光景に口を半開きさせて唖然としていた。

 

 オラリオへ続く大平原。40万もの軍がたった数人の冒険者によって蹂躙されている。

 

 右を見れば筋骨隆々の猪人(ボアズ)が刃の潰れた大剣を振るえば竜巻が巻き起こり、数百から千人規模の兵が巻き上げられ。

 

 左を見ればたった四人の幼女が見事な連携で兵士を次々に薙ぎ倒し、瞬く間に配置した大隊を崩していく。

 

 なんだこれは、地獄かな?

 

「………おいマリウス」

 

「なんですか」

 

「彼処で物理的に竜巻を出している猪人は誰だ?」

 

「【猛者】のオッタルですね。オラリオでも最強と名高いフレイヤ・ファミリアの団長ですよ。闇派閥との決戦の際、敵主力の一人を倒してLv.7になったっていう」

 

「そいつラスボスじゃん!? 何でラスボスが初っ端から出てきてんだよ!?」

 

「知りませんよ」

 

 因みに、オッタルは既にLv.8という新たな領域へ足を踏み入れているが、其処まで新しい情報はまだ入手していなかったアレス達が知る由もなかった。

 

 知らぬが仏、とも言う。

 

 仮に知っていたとしても、目の前のアレス(脳筋)が聞き入れる訳がないので、結果は変わらない。

 

「アイツが大剣ブンブン振るう度に竜巻が起きてるんだけど!? ウチの兵士が塵みたいに吹き飛んでるんですけど!?」

 

「アレス様も体験したらどうです? きっと素敵な経験になりますよ」

 

「送還しちゃうわ!!」

 

 他にも言いたいことがあるのだろう、鼻息荒くアレスは次にオラリオの左側へ無双する四人の幼女へ指を差す。

 

「なにあの娘達、可愛らしい外見とは裏腹にエグい位強いんだけど?」

 

「あの四人はロキ・ファミリアの秘蔵っ子と名高いアイズ・ヴァレンシュタインですね。双子のアマゾネスは闘国(テルスキュラ)出身。三人ともLv4ですよ」

 

「小人族の娘は違うの?」

 

「あの娘は最近噂になっているヘスティア・ファミリアの【槍の寵児(リュース)】。リリルカ・アーデですね。レベルこそ第二級(Lv.3)ですが……なんでも、当時Lv.2の時にレベルが二つも上の冒険者を返り討ちの血祭りにしたとか」

 

「なにそれ怖い」

 

 冒険者はレベルが一つ上がっただけで別次元の強さになるとされているが、その差が二つも開いている相手を血祭りにするなんて、最早一種の悪夢である。

 

Lv4の三人に混じって、違和感なく連携出来ている事から、リリルカの怪物振りを目にしたアレスはブルリと身震いをしてしまう。

 

 因みに、彼女は既に次の昇格(ランクアップ)を控えている状態である。

 

 他にも、数を駆使して策を実行しようとした工作部隊は事前に察知した戦車に轢かれ、その反対側ではなけなしの魔剣で試みた特別部隊が突然現れた狼の蹴りによって文字通り一蹴されている。

 

 理不尽を通り越して喜劇。不条理を通り越して愉快痛快、最早笑うしかない状況のアレスだが、そんな彼でもどうしても我慢できない事があった。

 

「………【猛者】が強いのは認めよう。フレイヤの眷族もロキの眷族も、へ、ヘスティアの眷族も我が精鋭達より強いのは認めてやる。けど、けどな!!」

 

「おっし、良い感じだぞ。後はそれを長時間維持して自分の動きと同調するよう心掛けるんだ」

 

「は、はい!!」

 

 いつの間にか自分達の本陣に紛れ、10人程の兵士を集めて何やら道場擬きを開いている奇妙な輩を指差して……。

 

「さっきから何してんのお前!?」

 

 流石の脳筋(アレス)も見ないことには出来なかった様だ。

 

「あ、お邪魔してます。勝手にやってますのでどうかお構い無く」

 

「あ、これはご丁寧に何のお構いも出来ず───じゃねぇよ!? 流石にそれでハイドウゾとはならねぇよ!?」

 

「お、今のは良い打ち込みだったぞ。その感覚を忘れるな」

 

「は、はい!」

 

「話を聞いて!?」

 

 兵士の一人と軽く組手をし、兵士の動きを矯正しながら褒めて伸ばす。この短時間でスッカリ師弟関係を構築している男───ベジットにアレスのツッコミが炸裂した。

 

「ん? どうしたアレス様、何か気になる事でもあったんか?」

 

「いや、それ以前に何で此処にいるの? 俺の眷族じゃないよね? オラリオ側の眷族だよね? 何で俺の所にいるの? そんで何で俺の眷族はソイツと師弟関係築いてるの? ………え、これ俺がおかしいの?」

 

「落ち着いて下さいアレス様、私も動揺しています」

 

 後ろに控えるマリウスを見れば、ラキア王国第一王子も困惑している様子だった。良かった、自分だけじゃない。普段は反発ばかりしてくるマリウスに親近感を抱くアレスだった。

 

「そ、そうだ! お前【猛者】達と一緒にいた奴だろ! 何で敵が我等の陣地にいる!? どうやってきた!?」

 

「どうやってって………空から?」

 

「はぁ?」

 

 一体何を言っているんだ? 目の前の男に戸惑うのも束の間、実際に宙に浮かぶ男を見てアレスとマリウスは他の兵士達と同様にアングリと口を開いて唖然となる。

 

「ハッ! そ、そうだ! コイツですアレス様! この男がベジットです! 下級(Lv.1)でありながら一つの派閥を腕の一振で壊滅に追い込んだって言う!」

 

「ダニィッ!?」

 

「あ、言われた」

 

 正気に戻ったマリウスの説明に激しく動揺を見せるアレス、一つの派閥を一撃で屠る冒険者なんて聞いたことがない。

 

 ベジットの名を聞いて露骨に警戒を顕にするマリウスとアレスだが、ベジットとしては戦うつもりがなかったので構えることはしなかった。

 

「まぁ落ち着けよ。俺はアンタ達を別にシトメに来た訳じゃない。そっちから手を出さない限り仕掛けることはないから安心してくれ」

 

「安心できる要素が何一つ無いんだが?」

 

 ファミリアを一撃で壊滅させたと言う怪物を相手に、安心しろと言われても納得できる訳がない。だが、逆を言ってしまえば目の前にベジットがいるのに自分達がこうして無事でいられているのもまた事実。

 

 不安と恐怖の板挟みに震える神とその眷族。プルプルと小鹿のように震える彼等にベジットは仕方がねぇなと頭を掻いて自身の意図を口にした。

 

「俺が此処にいるのは他でもない。アンタ等にはちっとばかしお願いをしに来たんだ」

 

「───はぁ?」

 

「オラリオの冒険者が、我々に?」

 

 普段、オラリオの神々を敵視しているアレスだが、何もその眷族(子供)達まで憎い訳ではない。それが噂に名高いベジットからの願いとあれば、神として聞いてやるのも吝かではなかった。

 

「────聞くだけ聞いてやる。言ってみろ」

 

 とは言え、他の冒険者とは明らかに纏っている空気が違うベジットに及び腰になってしまうのも事実。未だ震える脚だが、主神らしく腕を組み、視線を泳がせてベジットに訊ねる。

 

「アンタ達には、オラリオの外で闊歩している対モンスターの一団になって欲しいんだ」

 

「なに?」

 

「我々が、対モンスターの一団?」

 

「あぁ、出来る範囲で良いから、アンタ達には自国周辺以上に広範囲のモンスターを狩って欲しいんだ」

 

 神々が地上に降臨して早千年。未だ地上には多くのモンスターが跋扈し、ラキア王国や闘国といった神々が降りていない地では今もモンスターによる被害が多発しており、悲劇と惨劇は日常的に起きている。

 

「今彼処でお宅等の兵士を吹き飛ばしている連中な、全員俺が教えた“気”って力を扱えてんだよ」

 

「────つまり、その“気”という力を我々に授ける代わりに、地上のモンスターを討伐しろと?」

 

「有り体に言えばそうなるな」

 

 現在、“気”の力に目覚めているのはベジットが筋が良さそうと戦場で見繕ってきた10人。彼等彼女等をこの闘いの間に集中的に鍛えれば、そこそこの戦力になるだろうとベジットは語る。

 

「だ、騙されるなマリウス! その男は言葉巧みに操って我々を騙す腹つもりだぞ!」

 

「因みに、“気”を覚えてそれなりに極めれば空を飛ぶことだって出来るぞ」

 

「分かりました。呑みましょう、その提案」

 

「マリウス!?」

 

 アレスの忠告虚しく、マリウスはベジットの提案に即座に受け入れた。空を自由に飛べる、その文言は男の子であるマリウスには美の女神の微笑み張りに抗いがたい魅力を秘めていた。

 

「もし地上からモンスターが一掃されればそれは有史以来初の大偉業だぜ? 世界制覇も良いが、世界平和だって同じくらい凄い事だと俺は思うが?」

 

「ぐ、グヌヌヌ………」

 

 世界制覇も良いが、確かに世界平和という名誉も悪くない。軍神アレスは戦争や破壊的な一面もあるとされているが、同様に誇りや名誉にもうるさい一面があった。

 

 世界平和という結果は軍神アレスにとってあまり価値の無いモノではあるが、それに至る名誉は無視できない。

 

 しかし、それでもオラリオ側の人間の意見に賛同するのはオラリオと敵対する神として受け入れ難い。

 

 そこへ……。

 

「それに、もしそんな世界が実現したとあればラキア王国の名声は不変のモノになるだろうよ。それこそ、オラリオなんか目じゃない位にな」

 

「良いだろう。乗ってやろうじゃないか!」

 

 チョロイ。オラリオを引き合いに出せばアッサリとノッてくれたアレスにベジットは心の中でガッツポーズをした。

 

「じゃあ、先ずは最初に選んだ連中にトコトン気の扱いについて叩き込んでやるから、第一王子だっけ? アンタも帰国後に教えて貰え」

 

「あぁ、よろしく頼むよ先生」

 

 その後、吹き飛ぶ大多数のラキア王国兵士の断末魔を背景にしながら、ベジットによる“気”のレクチャーが行われた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、アレスは当分オラリオには攻めて来ないんだね?」

 

 数日後。今回もラキア王国は大敗し、アレス率いる40万の軍勢は満身創痍で自国へ帰っていった。いつもと変わらぬやられっぷりでオラリオの神々は終始笑っていた。

 

 だが、闘いも終えて撤退の時になるといつもは負け惜しみと捨て台詞を吐いて逃げるように去っていったアレスだったが、何故か今回は異様に落ち着いた様子で帰っていった。

 

 不気味に思ったヘスティアがベートとリリルカと一緒に本拠地へ戻ってきたベジットに訊ねると、予想していた通り何かをしたらしい。

 

「ああ、気を教えてやるのを条件にな。これで連中は修行と自分の力を試す事も兼ねて、地元以外のモンスター討伐に乗り出すだろうよ」

 

「成る程、だから向こうの主神は矢鱈と上機嫌だったんですね」

 

「ああ、ラキア王国はウン十万って兵力を持ってるんだろ? マリウスって王子も切れ者みたいだし、“気”を覚えて鍛練すれば一端の軍隊位にはなるんじゃないか?」

 

 正直言って、現在のラキア王国軍は烏合の衆も良い所。主神アレスの意向なのか正面からの突撃しかしてこないし、フィンの様な策謀を巡らせたりもしないから全く苦労する事もなかった。

 

 唯一、マリウスの独断で工作部隊を派遣しても鼻の利くアレンやベートに悉く看破され、潰されている。

 

 そんな彼等も最初に教えた10人がある程度“気”を習得していれば、次にオラリオに攻めてきた時に少しはマシな闘いが出来るかもしれない。

 

「相変わらず思い付きで敵を増やすなテメェは。ロキやフレイヤの所から何も言われなかったのかよ?」

 

「ロキ・ファミリアの団長(フィン)にはさっき言った通り地上のモンスターへの対抗策という事で納得して貰ったよ」

 

 ロキ・ファミリアとは対照的にフレイヤ・ファミリアからは特にこれと言った追及は無かった。代わりに、次来た時何も変わってなかったら轢き殺すというアレンからの特大な殺気を向けられたりしたが……。

 

「はぁ、もうすぐ【学区】が来るって言うのに、話題の種を持ち込むね君って奴は」

 

「仕方ねぇだろ。人手もあってその上肥沃の土地とか、そんな恵まれた土地を守る意味でもラキア王国は強くなって貰わなきゃ困るだろ」

 

 聞けば、ラキア王国の食卓事情は殆ど自給自足で賄えるという。60万人というこの世界にとって大規模な国力を支えられるという事実は日々モンスターの脅威に晒されるこの世界にとって、ラキア王国の存在は他の神々が思っている以上に大きいとベジットは睨んでいる。

 

それを理解しているからこそ、フィンもラキア王国に“気”を教える事に反対はしなかったのだろう。

 

 ラキア王国の自己防衛力が強くなれば、その庇護に入れる人類は多くなる。人が増えればそれだけ出来ることが増え、ラキアはより大きくなるだろう。

 

 問題はその事をアレスや向こうの王が解っているのかどうかだが……。

 

「ま、その辺りはマリウス君に任せるとするよ。流石に自国の事を考えればあの猪突猛進な神も足踏みするだろうさ」

 

「………そうだと良いんだけどなぁ。アイツ、マジで猪だから」

 

「おい止めろよ、折角話をまとめてきたってのに不安になっちゃうだろ」

 

 染々とアレスのアレっぷりを語るヘスティアにベジットも若干不安になる。

 

 ラキア王国には面と向かって気を教える機会が殆どないので、選んだ10人には戦争が終わる数時間の間にみっちりと教えてやった。

 

 せめてあの10人がマトモに気を纏って戦える様になるまでラキア王国は攻めて来ないと思いたいが、アレスという神はベジットが思っている以上にアレな神らしい。

 

 あの神を主神として仰がなければいけないマリウスにベジットは心底同情した。

 

「ま、まぁそこは向こうの事情だ。あまり深く考えないようにしよう」

 

「逃げたな」

 

「逃げましたね」

 

 あくまでラキア王国の問題はそこに住まう人々が対処するべき事、ならばこれ以上の介入は却って不和を招きかねない。

 

 尤も、ヘスティアやリリルカの言う通り逃げでもある為、ベジットはこれ以上この話題に触れる事は無かった。

 

「さて、ベートもLv.6になったし、リリルカも目標のLv.4へと届いた。ここから先はいよいよ俺の番だな」

 

 予定外の出来事もあったりしたが、概ね予定どおり事が運んだ。いよいよ自分の番だと拳を鳴らすベジットにリリルカは息を呑んだ。

 

「い、いよいよ向かうんですね。ベジット様と黒竜が戦ったとされる地───【竜の谷】へ」

 

「ああ、【学区】が到着次第、レオン達と合流する。準備は進めておけよ」

 

「はい!」

 

 まだ【学区】がオラリオに到着する期日まで間があると言うのに、既にリリルカは緊張した面持ちでいる。まぁ、この世界に生きる人々にとって竜の谷は終末機構である黒竜のお膝下へ向かうと言うのだ。緊張するなと言う方が無理と言う話だろう。

 

「おいヘスティア、女神ヘファイストスには話を通しているのか?」

 

「うん、【学区】の大点検大修理(オーバーホール)に合わせて予定を調整しているみたいだし、椿君にも大事な所を敢えてぼかしているから、多分大丈夫だろだって」

 

「……今更だけど、本当にヘファイストス様も来るつもりなのか? 眷族に秘密にしたままで」

 

 もうじき【学区】がオラリオへ戻ってくる。その時、表向き【学区】を修理点検する一員として鍛冶派閥の主神であるヘファイストスも此方に合流し、現場を椿や他の眷族達に任せて同行する手筈となっている。

 

「流石に黙って出ていく訳にはいかないから、椿君には暫く席を外すって伝えているみたいだよ。流石に怪しまれたけど、主神の命令なら仕方がないって呑み込んでくれたってさ」

 

「椿、少し良い奴過ぎん?」

 

 恐らく椿にはヘファイストスを通して何か大きな隠し事がされていると薄々気付いているのだろう。それでも深く追及せず、寧ろ“気を付けて”と労ってくれたらしい。

 

 そんな器の大きな椿に内心で感謝しつつ、ベジットは告げる。

 

「よし、なら【学区】が来たらすぐに動けるよう明日から準備をしておこう。俺とヘスティアはアルテミス様へ留守の説得、ベートとリリルカは遠出の準備だ」

 

「チッ、仕方ねーな」

 

「リリ、オラリオの外へ出るのは初めてなんですよね。回復薬(ポーション)とかどれくらい買い貯めればいいのでしょうか?」

 

「はしゃぐんじゃねぇ、遠足じゃねぇんだぞ」

 

 手を叩いて解散を促すと、ベートもリリルカも部屋を後にする。残されたのはヘスティアとベジット、ファミリア結成時から一緒の二人は久し振りの旅にワクワクしていた。

 

「………なにニヤニヤしてんだよ、ヘスティア」

 

「エヘヘ、久し振りにベジット君と旅ができるなーって思ってさ」

 

「俺だけじゃねぇ。ベートやリリルカ、ヘファイストス様やレオンも一緒だ。賑やかになるぞ」

 

「うん、楽しみだね」

 

 ギルドに内緒でのオラリオからの脱出。バレたら罰が降されるのを承知の上で、ヘスティアはいけない事だと知りつつも、その時が来るのを楽しみにしていた。

 

 隣で笑うヘスティアを見てベジットも笑う。

 

 今日まで、ベートもリリルカもよく自分の無茶振りに応えてくれた。二人の頑張りに応える為、次は自分の番だと意気込みを新たにし……。

 

「ヘスティア」

 

「ん?」

 

「修行の件、宜しく頼むぞ」

 

「うん、任せてよ!」

 

 ベジットもまたその日が来るのを楽しみにしていた。

 

 そして、数日後。

 

 【学区】来航。

 

 

 

 

 

RESULT

 

リリルカ・アーデ《最終ステイタス》

 

Lv.3

 

力 :SS1210

 

耐久:S952

 

器用:SS1256

 

敏捷:SSS1580

 

魔力:SSS1700

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────ほい、これでステイタス更新は終わり。おめでとさんラウル、晴れて自分も今日からLv.2や」

 

「あ、ありがとうございますッス! ロキ、自分はこれで失礼します!」

 

「おー、昇格してはしゃぐのも良いけど、あんまムリせんようになー」

 

「はいッス!」

 

 ステイタスの写しを手に、バタンと扉を閉めてバタバタと主神の部屋を後にする眷族を見送って、アレはこの後も鍛練するんだろうなーとロキは呆れた溜め息を溢す。

 

「────やっぱ、異常やな」

 

 ここ最近、眷族の昇格が早まっている感覚をロキは肌で感じていた。ステイタスの異様な延び、本来なら一度の遠征で各アビリティが10延びれば良い方なのに、最近は少しダンジョンに潜っただけでアビリティ項目一つで30は延びる事がざらにある。

 

 これが初期のLv.1なら分かるが、アイズ達中堅層からフィン達上澄み組までもが似たような成長を見せている事から、ロキはこれが“気”による飛躍だと確信した。

 

 ベジットから教わった“気”を習得した事で、眷族達は軒並み凄まじい成長を遂げている。それこそ、潜在能力が(・・・・・)解放されていく(・・・・・・・)様な感覚。

 

 特に自分達の長であるフィンに至っては、Lv.6へ至って数年も経っていないのに、アビリティが殆どAにまで至っている。

 

ガレスもリヴェリアも、それに追随する形でステイタスを伸ばしているし、この分なら数年後には三人揃ってLv.7になることも夢ではない。

 

「どうやら、ホンマに来とるらしいな、“インフレ”が」

 

 唯一の不満点はこれをもたらしたのがヘスティアの眷族であるベジットで、そのベジットがフレイヤ・ファミリアにも手を貸している事。

 

 お陰で【猛者】がLv.8へと至ってしまい、フレイヤとは少し差を付けられた結果となってしまった。

 

 とは言え、今は下の子らも懸命に鍛練を続け、そう遠くない未来にはラウル達もロキ・ファミリアの二軍として充分な活躍を見せてくれる事だろう。

 

 アイズもベジットと知り合った事で、今では年相応の娘に成長しその上で強さに直向きになっている。一人で強くなれば良い、のではなく。みんなで一緒に強くなり、共に成長する仲間に巡り合えた。

 

 聞けば、アストレアの娘達も近々昇格(ランクアップ)するだろうという話を耳にしている。

 

 これから先、オラリオは様変わりするだろう。未知に満ち、可能性の塊の未来に想いを馳せて……。

 

「ホンマ、下界はオモロイなぁ」

 

 ロキという女神もまた、見通せぬ未来にワクワクしていた。

 

 

 

 

 

 

 






Q.ラキア王国、気を教えるのは良いけどオラリオの脅威になったりしない?

A.
「それならそれで良いライバルになりそうだし、みんなも楽しめるだろ?」

「うーん、これは戦闘民族」


Q.ベートやリリルカ、無事に昇格したけど何かスキルとか魔法とか出てきてないの?

A.近い内に発表しようと思います。

 あと余談ですが今回の地獄巡りでベート君は並行詠唱も覚えました。

やったね!



Q.なんかインフレ加速してるみたいだけど?

A.これならリリルカや後のベル君の急成長も「ほーん、凄いやん」で済ませられるぞ!

やったね!





オマケ


「Lv.3への昇格。おめでとう、アミッド」

「ありがとうございます。ディアンケヒト様」

「……………」

「……………」

「あまり、こういう事は言いたくないのじゃがな。その、慎みは忘れぬように、な」

「うっ、も、申し訳ありません……」

 後に、アミッド・テアサナーレは二つ名とは別の異名として【狂乱治癒師(バーサーカー)】と各派閥に畏れられる事になる。

「全部、全部ベジットさんのせいですッ!」

「分かる」

 尚、後にオラリオの二大治癒師が打倒ベジットを掲げる事になるのは……また、別のお話。

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