ダンジョンに超なアイツが来るのは間違いか?   作:アゴン

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ジークアクス、色々と賛否両論あるけど自分は普通に楽しめたです。

そんな訳で初投稿です。


物語71

 

 

 

 時は、遡る事数日前。ロキ・ファミリア遠征時の頃。

 

 遠征前に受けていた冒険者依頼(クエスト)をこなす為、50階層より選ばれた精鋭がカドモスの泉から取れる特殊な水を手に入れる為、アイズ達少数精鋭が男女に別れて51階層に訪れていた。

 

 カドモスは現在確認される階層主を除けば最強と言われている泉の守護竜、力だけならウダイオスを凌駕するとされている51階層最強のモンスター。

 

 苦戦は必至。如何に強くなったと自負するアイズ達も簡単にはいかないであろう相手、しかしそこで待っていたのは思わぬ光景だった。

 

 其処にはカドモスの不在。否、討伐された形跡だけが残されていた。稀少(レア)アイテムである“カドモスの皮膜”だけが残され、不審に思ったアイズ達が周囲を警戒した………その直後。

 

 異常事態(イレギュラー)。これ迄確認された事のない巨大な芋虫型のモンスターが大挙と成して押し寄せてきた。最初は交戦するつもりだったアイズ達だが、芋虫から吐き出される腐食液により武器が溶かされた事で一行は撤退を余儀なくされた。

 

 合流した男性組のラウルが機転を利かせて芋虫達を足止めするが、仮拠点にしていた50階層にも芋虫達は列を成して進攻していた。

 

 その後も紆余曲折があって、芋虫達とその親玉らしい女型の巨大モンスターを一掃し終えると、ロキ・ファミリアの団長であるフィン・ディムナの判断によりダンジョンからの退却を決意。

 

 そうして順調にダンジョンから帰還する運びとなったのだが、ここへ来て思わぬ異常事態へ再び遭遇する事になる。

 

 大量のミノタウロスとの遭遇。それ自体はロキ・ファミリアにとって大した脅威ではなかった。

 

 問題はその後。ロキ・ファミリアに圧倒され、人類の絶対的な敵対者であるモンスターは恐慌状態となり逃走。遠征で疲弊していたロキ・ファミリアはここへ来てモンスターとの追い駆けっこに従事する羽目になった。

 

 そうして今、ミノタウロスも大部分は駆逐し、負傷者もいない状況で残る三体となった時。

 

 三体の内一体を倒したが、目の前に血だらけとなっている如何にも新米な冒険者を前にアイズは目を丸くさせていた。

 

「アイズさん! そっちにミノタウロスは!?」

 

「ッ! ラウルお願い! ポーションを分けて! 負傷した冒険者がいる! 目視確認で重傷相当!」

 

「エェッ!?」

 

 予想していた中でも最悪の状況、自分達の失態で巻き込んでしまった冒険者がいた事に驚くラウルだが、それでも慣れた手付きで自前のポケットから数本の回復薬(ポーション)と秘蔵の万能薬(エリクサー)を取り出す。

 

「アイズさん! それで負傷者は!?」

 

「こっち! 早く!」

 

 端的に、且つ素早く指示を出すアイズにラウルは従い駆け寄ってくる。既にアイズはポーションを使い果たした後、すぐに回復させないと不味いと判断する彼女の下へ駆け付けると……。

 

「────あの、アイズさん。負傷者ってどこッスか?」

 

「─────え?」

 

 ラウルの言葉に今度はアイズの方が戸惑った。目の前の青年の言葉の意味を理解出来なかったアイズは恐る恐る振り返ると……。

 

「いない?」

 

 其処には、先程まで重傷を負っていた少年の姿はなかった。アイズが目を離したほんの一瞬の出来事。

 

 幻覚? いや、そんな訳がない。あの時あの瞬間、確かにあの白い少年は血塗れで自分の前にいた。

 

 それを証拠に……少年がいたであろう場所には、確かな血痕が残されていたのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──────ハッ!?」

 

「やぁ、起きたかいベル君」

 

 目を覚ませば、ベル・クラネルの視界にはこの一週間程ですっかり見慣れた天井が広がっていた。

 

「か、神様? ………ここは僕達の本拠地(ホーム)の?」

 

「そう、僕達の家【竈火の館】さ」

 

 今自分が本拠地にある自室のベッドで寝かされている事と、隣に座るヘスティアを前にして漸く自分がダンジョンから帰還した事を自覚したベルは深い溜め息と共に項垂れる。

 

「た、助かった~……本当に死ぬかと思ったぁ~」

 

「おお、ヨシヨシ」

 

 自分が死の淵から救われた事に安堵の溜め息を吐く。その重い溜め息にどれだけの緊張感だったのかは察してあまりある。頑張った眷族の背中をヘスティアは慰めながら撫でた。

 

 ベルはベルで自分がベッドの上で横になっていることから、今までの出来事が夢だったのではないかと疑問に思うが、身体の節々に残る微かな痛みから、あのダンジョンでの出来事は夢でない事を証明していた。

 

「おーベル、起きたか」

 

「あ、団長」

 

「いやー、いきなりミノタウロスに襲われるなんて災難だったな。それも三体。なに? 前世でミノタウロスとなんか因縁でもあるの?」

 

「そんな訳ないじゃないですか」

 

 仮にも後輩が死にかけたと言うのに、この男はまるで気にした様子がない。そこでふとベルは気付く、何故自分が本拠地に戻って来れたのかは別にして、まるで見てきた様に語るベジットにベルはまさかと思いながら目の前の団長に訊ねた。

 

「あの、団長。なんか見てきた様な言い方ですけど……もしかして見てました?」

 

「おう、見てたぞ。最初のミノタウロスとやりあっていた時から」

 

「もっと早く助けてくれてもよかったのでは!?」

 

 自身の疑問にアッサリと答えるベジットにベルは目を剥き出す勢いで抗議する。自分の戦いは見られてた、それもミノタウロスに襲われた割りと最初の方からだと。

 

「団長、言ってたじゃないですか! 僕がダンジョン内で界王拳を使えば一分以内で駆け付けてくれるって!」

 

「おう」

 

「ならなんで!?」

 

「だって、まだあの時点で一分経っていなかったぞ?」

 

「────嘘ぉ」

 

 ベジットの返しに唖然となるベルだが、実際離れた所からベルとミノタウロスとの戦いを見守っていたベジットは時間を正確に計っていた。

 

「最初のミノタウロスは10秒前後、二体目は途中から刃が折れた為に40とちょっと。まぁ、そんな所だ」

 

「えぇ……」

 

 体感で言えばかなりの時間ミノタウロスの相手をしていた筈なのに、実際の戦闘時間は一分に満たないと言う驚愕事実。

 

「尤も、界王拳でゴリ押しした成果ってのもあるがな。実際、一度きりっていう俺の言い付けも破った訳だし、お前の身体のダメージは殆どが界王拳による反動だからな」

 

「うぐっ」

 

 加えて、本来一度きりと言われていた界王拳を二度も使ってしまい、その反動でベルの身体はボロボロ。ポーションを沢山使って回復したのは良いが、完全に治った訳じゃない。未だに身体がアチコチ痛むのはそういう事なのだ。

 

「まぁでも、何にせよ運の良い奴だよ。三体目のミノタウロスに襲われる直前、アイズに助けられたんだからな」

 

「ッ!」

 

「いやー、偶々アイズ君が通り掛かってくれて助かったよ。今度バイト先に来た時はサービスして上げようかな」

 

「────うーん、それはどうかな」

 

「?」

 

 あのミノタウロスの強襲はロキ・ファミリアのミスによるもの、その事を今口に出すのは憚れると思ったベジットは言葉を濁すが。

 

「あ、あの!」

 

「「?」」

 

「アイズ・ヴァレンシュタインさんについて、教えて貰っても良いですか!?」

 

 これ迄とは一変。つい先程まで死の淵を彷徨っていたというのにベルは目を輝かせ、ほんのり頬を紅くして食い付いてくる。

 

 そんなベルにベジットとヘスティアは顔を見合せるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、みんな今日はお疲れさん! 片付けや晩飯食べたらゆっくりきちんと休むんやで、夜更かしは厳禁や! お肌に悪いからなぁ!」

 

 【黄昏の館】ロキ・ファミリアの本拠地。

 

 ダンジョンから帰還し、明日には遠征の成果の為の諸々に勤しむため、遠征での疲れを癒すために今日は早くに休む事にした道化(ロキ)の眷族達。

 

 【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタインもその一人。鍛える時は鍛え、休む時は休む。自身にとって親しい存在でもある彼の助言を取り入れた彼女は仲間と共に風呂と飯を済ませると早々に寝間着へと着替えてベッドに横になる。

 

「────みんな、まだ荷物を運んでいるのかな」

 

 Lv.5となり、ロキ・ファミリア内でも幹部として知られるアイズはその強さもあって派閥内からも畏怖の対象となり、下っ端と呼ばれる仲間達からは少し遠慮される間柄になってしまっている。

 

 そんな自分の今の立場に若干の息苦しさと、雑用を押し付けてしまった罪悪感から少しだけ眠気が覚めてしまう。

 

 だから、アイズは眠りに就く迄の間、遠征で起きた出来事を想起させる事にした。

 

(色々……あったなぁ)

 

 ダンジョン51階層に現れた謎の芋虫型のモンスター。強い酸を吐きこちらの装備を溶かしてしまう厄介な敵。“気”を体得していなかったら、被害はもっと深刻なものになっていただろうと団長(フィン)は語っている。

 

 その時に現れた巨大な女型のモンスター、芋虫の発展型とも言える怪物の遭遇と撃破。

 

 他にも、ダンジョンから撤退する際に遭遇したミノタウロスのモンスターだって……。

 

「そうだ、あの子……」

 

 上半身だけ起き上がり、窓に映る月を見上げる。最後に思い返してアイズの脳裏に現れたのは、血塗れの白い少年。

 

 酷い怪我だった。全身はボロボロで、手にした武器は折れていて如何にも死闘の後だと言うような風体。

 

ラウルは幻覚だったのではないかと言うが、長年冒険者をしているアイズが、今さら現と幻を見違える事はしない。

 

 あの日 あの時、確かにあの白い少年はいたのだ。

 

 それに……。

 

『し、白い髪のガキが俺達を庇ってミノタウロスと一緒に奥へ行っちまった……』

 

 恐らく、ミノタウロスを倒したのはあの少年だ。当時、逃げ惑うミノタウロスの群れを狩りまくり、その最中で討伐が追い付かなかったのは三体。

 

 内一体はアイズがこの手で両断した。残るは二体………だが、どれだけ探しても二体のミノタウロスの姿はなかった。

 

 被害者もゼロ。あの時はロキ・ファミリアが浅い上層を総出で捜索したから間違いない。

 

 なら、考えられるべき結論は状況的に一つしか考えられない。あの時自分達の不手際で逃がしてしまった三体の内二体のミノタウロスはあの少年の手によって倒されている可能性が高い。

 

(───でも、どうやって?)

 

 初めて目にした時、白い少年はとてもベテランの冒険者には見えず、如何にも駆け出しな新米の冒険者の様だった。

 

 とてもミノタウロスを倒せるとは思えない程の………純朴そうな少年。

 

(フィンは、この事は黙っていろって言ってたけど……)

 

『………分かった。その白い少年については僕の方も探ってみるよ、アイズ。君はその間決してこの事を周囲に漏らしてはいけないよ?』

 

 それでも気になる。あの子供が、純粋そうな子供がどうしてミノタウロスを倒せたのか。その強さの秘密は、一体何なのか……。

 

 それとも……。

 

「───貴方に聞けば、答えは分かるのかな」

 

 思い浮かぶは、逆立つ黒髪の人。

 

「ベジット」

 

 一緒にダンジョンに入ったあの日から、もう随分と時間が立っている。曾て冒険者として後輩だった彼。

 

『知らね。取り敢えず明日考えれば?』

 

 そんな無責任な言い分なベジットに吹き出しながら、アイズは眠るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ─────その頃、ヘスティア・ファミリアは。

 

「─────ベルの奴、アイズにほの字だってよ」

 

「ちょっとロキ・ファミリア行ってくる」

 

「いつの間にか完全武装してやがるだとっ!?」

 

「誰かアルフィアを止めろォォォッ!!」

 

 【静寂】さんの怒りが人知れず頂点に達し。

 

「【祝福の禍根、生誕の呪い、半身喰らいし我が身の原罪】【禊はなく。浄化はなく。救いはなく。鳴り響く天の音色こそ私の罪】」

 

「ちょ、詠唱が早い早い早い早い早い!?」

 

「何だその高速詠唱ッ!?」

 

 ヘスティア・ファミリアは人知れず崩壊の危機に瀕しており。

 

「【以下省略】!!」

 

「「「省略すんなぁぁぁぁっ!?」」」

 

 この日、オラリオでもトップを走る冒険者の男共は一人の女性の暴走に翻弄されていた。

 

 

 

 





次回予告(嘘)

 さぁーて、来週のダンまち超は?

「ヘスティアです。最近めっきり暑くなってきましたね。僕も経口補水液を常備するようにしましたし、今度ヘファイストスの所にも差し入れに行こうと思います

そんな訳で次回は
・ベルの初恋
・お義母さんの強襲
・ベジット「もう、どうなってもいいや」

の三本です。

来週もまた見て下さいね、じゃん・けん・ぽん!(グー


ウフフフフフフ
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