ダンジョンに超なアイツが来るのは間違いか?   作:アゴン

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皆さんは冠位槍、誰をグランドランサーにしましたか?

自分は久々にバニー師匠に活躍してもらい、雷神様の括約筋を貫いて貰ってます。

そんな訳で初投稿です。


物語75

 

 

 

 夜の帳が明け、朝日が迷宮都市の街並みを照らしていく。小鳥の囀りを目覚ましに目を覚ました男が自室のカーテンを開く。

 

「ン~~~~良い朝だァ。新しいパンツを履いて正月元旦を向かえた朝の様に、実に清々しい爽やかな朝だァ」

 

 チョイと鼻唄でも(うた)いたくなるような。と、付け加える絶賛有頂天真っ只中なこの男は、自他共に(一部除く)認める天下無敵な男、ベジット。

 

 ヘスティア・ファミリアの団長を務めるこの男は昨日の人生最大の山場を乗り越えた事で、日を跨いだ今も非常に調子に乗っていた。

 

 ロキやアストレア、ガネーシャというオラリオを代表する派閥からの追求も乗り越え、その後急に湧いてでたアミッドへの事情説明も無事に終わった事で、心労やら何やらから解放されたベジットの心はそれはもう踊っていた。

 

 特にフィンが自分が黒竜討伐の意思を明確にした事でアルフィアとザルドの生存に納得してくれたのが大きい、オラリオでも信用と信頼の篤い【勇者】なら、きっと市井にも万が一の時は良い感じに説得してくれるだろう。

 

 その見返りにロキ・ファミリアの遠征の時は此方から最低二人程人数を貸し出す事になっているが……それも無問題。

 

 寧ろ、ロキ・ファミリアの現在の強さや遠征のイロハ学び、肌で感じられるのなら参加自体に意味がある。

 

 仮にいざ黒竜討伐に乗り出しても、事前に黒竜の鱗(ドロップアイテム)を置いておけば、竜の谷へやって来た時に黒竜は既に討伐されていたと演出出来る。

 

 仮に黒竜の鱗が無くても、風印を解いたアリスがアリアとなってみんなの前に降りてそれっぽく後光でも差しながら説明すれば、誰もがその言葉に疑いを持つことはなくなるだろう。

 

 我ながら完璧だと自負するベジット、そんな彼がこの計画がアイズの様に黒竜に故郷を滅ぼされ、恨み辛みを抱く者達の心境を度外視したものであると気付くのはもう少し先の話……。

 

「ザルド君、コーヒーを一つ」

 

「あいよ」

 

 相変わらず気分上々のベジット。アミッドから主神様を宜しくされた程度で特に怒られたり、上段回し蹴りをされて無いことから朝食の席でも終始ご機嫌だった。

 

 結果、必然的に団員へのウザ絡みも普段の五割増し。お陰でベートは朝から不機嫌全開となり、あのリリルカですら若干引いていた。

 

「アハハ、何だか団長朝からご機嫌ですね」

 

 そんな中でもベルは今日も変わらず純朴だった。リリルカですら引くベジットの有頂天ぶりを前にしても気軽に話し掛けてくれるベル君、その慈悲深さは正に神クラス。

 

 その純粋さにベートはちょっぴり心配になった。

 

「いやなに、ちょっと昨日まで抱えていた面倒な案件が片付いてね。ちょっと浮かれてしまったのだよ」

 

「実際ベジット君浮けるもんね」

 

 ジト目なヘスティアからのツッコミも何のその、笑って受け流すベジットの勢いは止まらない。

 

「ハッハッハ! 今なら槍だろうが魔剣だろうが、太陽が降ってきようが軽く吹き飛ばせそうだ! そう、実にHigh(ハイ)ってヤツだ!」

 

「薬でもキメてんのかテメェ」

 

「ゴスペっていいか?」

 

「気持ちは分かるが止めとけ」

 

 いい加減キレそうな二人をザルドが宥める。ヘスティア・ファミリアに属してからすっかりオジさんポジションが板に付いていた。

 

 そんな時、一同が顔を合わせる食堂に来客を知らせる呼び鈴が鳴る。ベルが何だろうと食べ終えた食器を片付けると、「僕が出ます」と言って食堂を後にする。

 

「あっ、そうだザルド君。僕今日ガネーシャに“神の宴”に呼ばれているから、僕の分の晩御飯いらないや」

 

「了解した」

 

「ついでに、ヘファイストスにベル君の新しい武器について相談してくるよ」

 

「あぁ、そうしてくれると助かる。いつまでもリリルカのナイフを借りたままでは格好が付かんからな」

 

「確かに、リリのは小人族(パルゥム)のサイズに合わせたモノですので、変な癖が付く前に早めに対応した方が良いかと……」

 

「それもそうだが、それだけではない」

 

「?」

 

「いい加減、お前の実力を確かめたくてな。リリルカ、後で中庭に来い。ベジットが鍛えたと言う貴様の力、見定めてやる」

 

「!」

 

「へぇ?」

 

 普段、他の団員とは一歩下がった所で接していたアルフィアが、まさかの模擬戦のお誘い。自分から進んで人と関わろうとする彼女の心境の変化にザルドは感心したように呟いた。

 

 リリルカも【静寂】と恐れられたアルフィアの実力を直で体験できると知り一瞬だけ尻込みするが、自分の実力が嘗ての英雄にどれ程通じるのか試したくなった。

 

「は、はい! 宜しくお願いします!」

 

 元気良く返事を返し、頭を下げる。すっかりやる気を出しているリリルカはベルと同様食器を片付けると、部屋に戻って準備に入る。

 

 そんなリリルカの後を追うようにアルフィアもまた食堂を後にしていく。

 

「やれやれ、良いねぇ若いってのは。俺みたいなオッサンには些か眩しすぎるけどな」

 

「なにバカ抜かしてんだ。【暴食】が、ンな簡単に自分(テメェ)の牙が落とせるものかよ」

 

「ほう、では────お前が相手になるか?」

 

 先程までの人の良さそうなオジさんから一転、超ド級の戦意を滾らせて嗤うザルドにベートも笑みを浮かべる。

 

 冒険者らしいバチバチとした空気、朝から元気だなーとすっかりこの環境にも慣れたヘスティアが締めの味噌汁を啜る。

 

 美味しい、タケミカヅチから教わった極東の朝ごはんを早速マスターしたザルドにヘスティアは満足げに喉を鳴らした。

 

「そうしてぇのは山々だが………悪いが先約だ。ベジット、後でダンジョンの17階層に来いや」

 

「おっ、その様子だともしかして?」

 

「あぁ、遂にテメェの顔面に(コイツ)を叩き込んでやる時が来たぜ」

 

 獰猛な笑みを浮かべるベートに対し、ベジットも不敵な笑みを浮かべる。結局自分だけ省かれたザルドは殺気を解いて少し拗ねた様子で肩を竦めた。

 

「ホント、元気だなー僕の眷族達は。もう少し落ち着きを持っても良いんだぜ?」

 

 けれど、そんな賑やかな日常が心地良い。冒険者らしく少し物騒だが、それでも元気な眷族達にヘスティアが微笑んでいると。

 

「団長ー、ギルドからお手紙でーす!」

 

「あん? ギルドから?」

 

 ベルが手紙を片手に食堂へやって来た。見ればギルドからの捺印が施されており、何だと思ったベジットが受け取って中身を開く。

 

そこに書かれていたのは【大至急ギルドへ来られたし】という一文のみ、但しそこに刻まれた文字には並々ならぬ感情が込められていた。

 

「ギルドからの呼び出しって、一体何をしたんです?」

 

「また勝手に深層に単独(ソロ)で潜ったか?」

 

「してねーし心当たりもねー………」

 

 心当たりなんて無い。そう断言するベジットはここ最近の記憶を想起させる。そもそも、ベジットが本格的にダンジョンに潜ったのはアルフィアとの決闘の時だけ。それ以降は一度もダンジョンにはいっていないのだが………。

 

「──────あ」

 

 思い出す。確かあの時にベジットはアルフィアが人目を避けてダンジョンに入る為に瞬間移動で転移したのだ。

 

 瞬間移動の際は主に座標とする地点に人の気を主軸にしており、その時着地地点の主軸となったのは─────フェルズ。

 

(────そう言えば、ギルドにザルドとアルフィアの事、説明するの忘れてた)

 

 あの時、バッチリとアルフィアの姿は見られている筈、ではこの手紙に書かれた真意は………。

 

「わ、忘れてた………ギルドの事」

 

 ギルドの存在をすっかり頭の中から消していたベジット、ボタボタと口から溢れるコーヒーを拭うこともせずに、固まってしまっていた。

 

 心の踊りも気付けばシュンと落ち着いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「セェアッ!!」

 

「──────」

 

  【竈火の館】の中庭。眷族達の鍛練の為に広く造られたその場所で、無数の打撃が飛ぶ。

 

 リリルカが振るうのは、刃の潰れた訓練用の槍。並みの者が扱えば当たっても精々骨が折れる程度の代物。

 

 しかし手にしているのは先日Lv.6へ昇格(ランクアップ)を果たしたリリルカ・アーデ、昇格から日が浅くとも日頃からベジットやベート相手に鍛練している今の彼女には昇格による肉体のズレは既に解消されている。

 

 迷宮都市オラリオの数ある冒険者の中でも上澄みに位置する彼女が振るえば、刃の潰れた特訓用の得物でも並みのモンスターを軽く屠れる威力を持つ。

 

 軽く触れただけでも骨を粉砕する一撃、それを一呼吸の間で無数に撃ち込まれる槍の雨を、灰の魔女アルフィアは涼しい顔で受け流す。

 

 僅かでも力加減が誤れば骨は砕ける攻撃、それを最初は避けていたアルフィアも徐々にリリルカの動きを見切り始め、遂には最小限の手の動きで簡単に逸らしていく。

 

 槍の尖端をなぞり、逸らす。自分の攻撃が通じないと早々に判断したリリルカは、次に別の技に移行する為に一度後ろへ下がる。

 

 獣のように身を低くさせ、アルフィアとの距離を測る。動きはない、元より彼女の目的は己の力量を計ること。

 

「────行きます」

 

 静かに告げる。相手の言葉はなく、また聞くつもりはない。相手は先日Lv.8へ昇格を果たしている紛れもない格上。

 

 ならば自分の持てる技を全て出し切るつもりでなければ意味がない。脚に力を込め、駆ける。風よりも、雷よりも疾く走るリリルカは更に分身をし始めた。

 

「ほう?」

 

 多重残像拳。嘗て何処ぞのカエル(フリュネ)を血祭りにした際に使用したリリルカ・アーデの得意技。気を以て生み出される虚実入り交じる乱舞。

 

 技の精度はあの時を遥かに上回る。現れる六つの残像、見切るにはたとえ第一級冒険者でも初見では難しいだろう。

 

 されど、相手はLv.8。それもその出自ゆえ才能のみでLv.7へと至りし【才禍の怪物】。四方八方から繰り出される槍の切先を最小限の動きで回避する。

 

 一つ、二つ、三つ、繰り出される一撃、その全てを避ける。微かに開かれる灰と翠のオッドアイ、その視線の先には虚像に混じるリリルカの実体を捉えていた。

 

「それなり、か」

 

 強さはある。技量も高く、若さ故の勢いもある。だがそれだけ(・・・・)、ベジットの愛弟子と聞いて期待しすぎたかと失望………というよりも、どちらかと言えば己を諌めるつもりでアルフィアはリリルカに向けて手刀を見舞う。

 

 まだリリルカ・アーデには“先”がある。結論を急かず、義息子同様長い目で見守ってやろうと、終了を告げる手刀は────しかして虚しく空を切り。

 

「────なに?」

 

 目を見開く。アルフィアの気の探知は間違いなくリリルカを捉えていた。なのに欺かれた。驚嘆し、アルフィアが瞠目する中。

 

「捉えました」

 

 背後から声が届く。視線だけ向ければ、微かに瞳を紅く光らせるリリルカが其処にいて。

 

「“舞────朱雀”!!」

 

 死角から振り抜かれる刃は、確かにアルフィアを捉えていた────筈だった。

 

「ッ!?」

 

 しかし、一撃を見舞う筈だったリリルカの一撃は空を切り、代わりに首元に手刀が添えられる。見れば今の一瞬まで目の前にいた筈のアルフィアが其処にいた。

 

「─────参りました」

 

 素直に負けを認めると、アルフィアの手刀も下ろされる。分かっていたがやはり強い、格上相手とは言え一太刀すら浴びせられなかった事実にリリルカは久し振りの悔しさを感じた。

 

「─────流石はアルフィア様です。リリの動きを全て読み切るとは」

 

「そういうお前は、最後まで本気では無かったようだが?」

 

「うえ?」

 

「惚けるな、魔法を使わなかっただろう。お前の魔法の一つは変身魔法の亜種。身体能力を著しく向上させ、絶大な力を発現させると(ベジット)から聞いている」

 

「え、えっとぉ……」

 

 どういう訳か、勝利した方のアルフィアの方が不服そうにしている。リリルカは何故アルフィアが不機嫌になっているのか理解できず、アタフタと弁明する。

 

「あ、あのリリの魔法はちょっと特殊みたいで、戦い方とか癖とか無意識レベルで変わってしまって、リリの戦い方………というより、“魔法を使った(・・・・・・)戦い方(・・・)”になってしまうんです」

 

 勿論、魔法を使っての戦い方もリリルカは覚えており、その時の経験も糧として受け入れ通常のリリルカに落とし込んでいる。

 

 今回アルフィアの手合わせで使用しなかったのは、あくまで手合わせであり実戦ではないことと、折角の機会だからリリルカ自身の実力で競いたかった。と言うのがリリルカの弁明である。

 

「というか、それを言うならアルフィア様だって本気ではなかったですよね? 噂の【合一】、使いませんでしたよね?」

 

 【合一】と言うのは、アルフィアがベジットに披露した【魔力と気の合一】のこと。いい加減長ったるいからベジットが適当に付けた技名である。

 

 されど、雑に付けたわけで無し。気と魔力という二つの異なる性質の力を融合させた力はまさに破格。使用者がアルフィアという事もあるが、その底上げ具合はリリルカの魔法である【槍の戦乙女(ナイツ・オブ・フィアナ)】に勝るとも劣らない。

 

「当然だ。私はこれでもLv.8。Lv.6(格下)相手に本気になる馬鹿が何処にいる」

 

「えぇー……」

 

 剰りにも理不尽な物言いに引いてしまうリリルカだが、そっぽを向き、不機嫌さを隠そうとしないアルフィアにふと不思議な感情を抱いてしまう。

 

 この感情は何と言ったか。そう、確かかの道化の女神は“萌え”と言っていた筈。

 

 確かにアルフィアの言い方は理不尽な物言いだが、何と言うか一種の可愛さを感じる。だからつい、リリルカは噴き出してしまった。

 

「クスッ」

 

「…………何が可笑しい?」

 

「あ、ご、ごめんなさい。別に悪気は無いんです。ただ、リリよりずっと強いアルフィア様の今の態度が────ちょっと可愛くて

 

「んなっ!?」

 

 それは、アルフィアにとって未知の台詞だった。これ迄罵詈雑言の雑音と畏怖し震える雑音しか耳にして来なかったアルフィアが初めて耳にした言葉。

 

 普段閉じられたオッドアイが過去類を見ない程に大きく見開き、耳まで紅く染めていく。

 

 もしここにとある【勇者】がいれば驚嘆し、【九魔姫】がいればこれも驚嘆するだろう。

 

 【静寂】を知る正義の眷族の面々がいればガチ目にリリルカを尊敬し、美の女神の信奉者である同胞達に至っては、確信した様子で悪ノリをかますだろう。

 

 一歩間違えれば神々から偉業判定を受けかねないやらかし。しかし、幸いにも今のリリルカが昇格するには諸々のステイタスが足りなかった。

 

「こ、小娘が生意気言うんじゃない!」

 

 口は荒いが、決して痛くはない拳骨。甘んじてそれを受けたリリルカは笑みを浮かべながらアルフィアの後ろを付いていく。

 

「えへへ、ごめんなさいアルフィアさん(・・)。それよりも、また手合せお願いします!」

 

 黒竜は倒され、既に下界は救われている。それでも弛まぬ鍛練を築いていくリリルカに……。

 

「────全く、調子の良い奴だ」

 

 煩わしいと思いながらも、それでもアルフィアはこの音を振りほどこうとはしなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁ参った。ギルド────ウラノス様への説明にすっかり遅くなっちまった」

 

「ったく、相変わらず詰めが甘い野郎だ。長いこと待たせやがって」

 

 ダンジョン。階層は上層の七階層と浅い階層、されど人の気配はない区画にてベジットとベートは対峙していた。

 

「悪かったって。でも、その間ベートがベルの相手をしてくれたんだろ?」

 

「コイツが冒険者として剰りにも未熟だからだ。アルフィアもザルドも表面上は厳しくしているみたいだが、単独(ソロ)でダンジョンに潜るにはまだまだ足りねぇ」

 

「う、す、スミマセン……」

 

 ベジットが合流するまでの間、ベルを暇潰しに面倒を見ていたベート。

 

 ベートから見ても【静寂】と【暴食】に鍛えられたお陰か、他の同レベル帯の冒険者と比較すれば確かにベルは遥かに動けている方だろう。

 

 例のスキルと合わさって、ステイタスの成長具合も凄まじい。だが、逆を言えばそれだけだ。

 

「確かにこのガキの成長具合は大したもんだ。そこは素直に認めてやる。だがな、本来必要な冒険者としての中身がコイツにはまるで備わってねぇ!」

 

 そう、ベルの眷族としての強さは件のスキルと合わさって凄まじい勢いで成長しているが、肝心の冒険者としての強さが欠如していた。

 

 冒険者とはダンジョンを探索し、未知を踏破する開拓者。確かに未知を踏破するには純粋な力も必要だが、ダンジョン探索では探索する知識という強さもまた求められるのだ。

 

「どんなに強さを磨いた所で、それだけで攻略できる程冒険者は甘くねぇ。知識と知恵、これ等を合わせて初めて冒険者は冒険者足り得るんだろうが」

 

「は、はいぃ……」

 

 故に、ベートが今回ベルに求めたのはダンジョンに於ける対応力。モンスターを狩るだけでなく、如何にしてダンジョンというものを知り、自分の攻略法を見付けていくのか。その辺りを徹底的に教え込ませた。

 

 ────正直に言うと、ダンジョン探索に於けるそういった心持ち、或いは覚悟はLv.2に至り、中堅の冒険者となってから求められるモノだ。ベルは未だLv.1(下級)の冒険者、流石にそれは求めすぎだと思わなくもないが。

 

「………おいベル。テメェ、強くなりてぇんだろ?」

 

「は、はい! 強くなりたいです!」

 

「だったらあの程度、笑って乗り越えて見せろや。そんなザマで、あの【剣姫】が振り向いてくれると思うなよ」

 

「ッ!!」

 

 言葉を失い、愕然としているベルにベートはフンッと鼻息荒くベルから踵を返す。

 

 ………前に向き直れば、ベジットはニヤニヤしていた。

 

「────ンだよ」

 

「いや、ウチの副団長はやっぱお前だなと思ってな」

 

「ケッ」

 

 照れ隠しの舌打ち、とは指摘しない。元より今ここに立っているのは、単にじゃれあいをする為ではないのだ。

 

「────御託は終いだ。始めるぞ」

 

 構え、気を滾らせる。滑らかな闘気、知る者がいればベートの放つ気を前に誰もが驚きを顕にするだろう。

 

 それもその筈。リリルカ・アーデがベジットから一番目を掛けられて育てられてきた愛弟子ならば、ベート・ローガはベジットに一番扱かれてきた愛弟子である。

 

 無駄とされてきた全てが削ぎ落とされ、研磨され、自身の手で磨き上げてきた。今日は、その総決算。自身の全てをぶつける勢いで狼は静かに牙を研ぎ澄ます。

 

「ベルも一応見ておけよー、見れる……かどうかは分からんが、見るだけでも勉強にはなるかんな」

 

「は、はい!」

 

 ベルもベートの気配に何となく気付いたのだろう。額に大粒の汗を流し、唾を呑み込むベルを見てベジットは満足そうに頷く。

 

「さて───それじゃあ始めるか」

 

 ズッと、ベジットも気を解放する。それに伴い普段はおちゃらけたベジットの雰囲気がガラリと変わり、その威圧にベルは再び目を剥いた。

 

「行くぞ、ベジット!」

 

「来いよ、ベート」

 

 駆け抜け、迷宮を疾走していくベートにベジットは笑みを浮かべて迎え撃つ。

 

 

 

 

 

 





Q.リリルカから見たアルフィアはどんな感じ?

A.最初は近寄りがたく、ベルやザルドを除いて人との関わりを断じていた孤高の女。位の認識。

今回で「あ、この人も血の通った人間なんだ」と改める。
以降、リリルカは何かとアルフィアに関わる様になる。

Q.アルフィアから見たリリルカは?

A.昨日までは若い割に随分と腕の立つ小人。普通にこれからに期待。

現在
「フフ、お可愛いこと」
「グッ……ヌゥ……」

若干苦手意識が芽生えた模様。


Q.ベート、ベルに何をしたん?

A.冒険者として足りていないアレコレ。本来ならベートの語る覚悟や決意はLv.2になってから求められるものだが、ベートは近い内にベルがその域に到達すると察しており、すぐに認識の矯正に乗り出した。

後に、この教えがベルの後押しになる。………多分!



強くなりたいと、あの【剣姫】に憧れると言うのなら。

「焦れろ、クソガキ。あの女は待ってちゃくれねぇぞ」

「はい! ベートさん!!」



次回、時を超える狼。

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