龍拳ゴジータ……だと?
そ、そんな訳で初投稿でしゅ。
「ヨシッ、ステイタスの更新終わり! おめでとうベート君、Lv.7に
「おう」
翌日。ダンジョンから帰還し、朝一で
「驚いたよ。まさか下界の
Lv.7という高みに至った事でベート・ローガのステイタスには新たな《スキル》が発現されている。
スキル名は【
初見であればあのベジットですら見切れなかった
もしこのスキルが露見すれば、オラリオ………もとい神々は騒然となり、大騒動に発展するのは火を見るより明らかだ。
しかし。
「関係ねぇ。そこらの雑魚が何を喚こうが、邪魔するなら蹴散らすだけだ」
そんな事など知ったことかと、ベートは不敵な笑みを浮かべて一蹴する。騒ぎ、此方に目を付けてどこぞの神が良からぬ企みを図ろうともその悉くを噛み砕く。
朝からやる気も元気も満ち溢れている眷族にヘスティアは苦笑う他なかった。
「まぁ、確かに今の僕達に手を出そうとする所なんて早々ないと思うけど………」
現在、ヘスティア・ファミリアの眷族はLv.8が一人にLv.7が二人、更にLv.6が一人と少数な規模に反して保有している戦力はオラリオでも上澄みレベルとなっている。
新入りベルも発現した《スキル》と界王拳という技も合わさって絶賛急成長の真っ只中、入団してから数週間……下手をすれば今月中にも
………まぁ、そんな連中を纏めているベジットが未だLv.1で全ステイタスAll“0”という色んな意味でふざけた事になっているのだが。
と、そんな感じで色んな意味で上澄みな
「眷族が強くなれば成る程、狙われる比率が高くなるのは主神の方だ。ヘスティア、テメェも俺達の主神だと自負するなら、外に出る時は誰か一人護衛を付けろよ」
「勿論その辺りは弁えてるさ。最近はアリス君だけじゃなくザルド君にも護衛を頼んでいるからね。この間だって一緒にジャガ丸くんを販売した仲さ」
「それはそれでどうなんだよ」
仮にも嘗ての最強派閥の一人が呑気にジャガ丸くんを揚げるとか、知った顔の奴が見れば初見殺しなトラップも良いところだ。
「────でも、本当に良かったのかいベート君」
「あ?」
「本当なら君、
「─────あぁ、いい。Lv.8への昇格は
ヘスティアの言う通り、ベートはこのオラリオで更にもう一段昇格を可能とするだけの
経験値の方はこれ迄積み上げてきたベート自身による鍛練と地獄を巡り生還した賜物。
偉業の方は【時飛ばし】という僅かな合間でも時間に干渉するスキルを発現した事、そしてベジットという規格外を正面から殴り飛ばした事。この二つが偉業の判定となり、ベート・ローガは
しかし、ベートは敢えてLv.7に留まり、これ迄通りステイタスを地道に鍛える道を選んだ。
「それに、いきなりLv.8になってそれを公表しても、それこそ要らん騒ぎを起こすだけじゃねぇか。唯でさえザルドやアルフィアの件があるんだ。余り、ツッコミ所は増やしたくねぇ」
「それも今更な気もするけどねぇ」
現状、ザルドとアルフィアは先日のロキ達との会談で暫くは秘匿するべきだという話になっている。万が一二人の存在が第三者によって明らかにされた際の、【
とは言え、自重しろと言われても無意識無自覚にやらかすのがヘスティア・ファミリア……もとい、団長のベジットだ。二人の事が明らかになるのはぶっちゃけ時間の問題だとヘスティアは思っている。
「それに、下手にレベルを上げて派閥のランクを上げたくねぇ」
「あぁうん。それがあったね」
現在ヘスティア・ファミリアの派閥ランクは“C”。ヘルメスが裏で手を引き、ヘスティア・ファミリアの人数が少数という事もあって、公では上位寄りの中堅派閥という扱いになっている。
それ故ギルドに支払う税金も多くなり、
此処でザルドとアルフィアの存在がバレ、そこへベートの更なる昇格の件まで知られたら………うん、考えただけで頭が痛くなる。
「じゃあ、ベート君のLv.8への昇格は暫く保留って事で」
「あぁ、それでいい」
「よし、じゃあ朝ごはん食べにいこっか! 僕はもうお腹ペコペコだよ」
難しいこと、頭が痛くなる事は後回し。今は強くなった眷族を純粋に祝福し、空腹を満たす事から考えよう。
「おっ、来たなベート。そんじゃあ朝飯食ったら早速ダンジョンに向かおうぜ、【時飛ばし】今度は完璧に見切ってやる」
「待てベジット、昨日は貴様が相手をしたんだ。ならば次は順番的に私の番だろうが」
「えぇ!? そりゃあねぇぜアルフィア、俺がベートを此処まで育てたってのに……」
「黙れ。貴様に一撃与えたという初見殺し、何としても手に入れてやる。そらベート、今日は私が相手をしてやる」
「まぁ待てアルフィア、たまには俺も参加させろ。団長を殴り飛ばしたという副団長の技、俺も是非堪能してみたくなった」
「ベート様、慣らし運転が必要ならリリもお手伝いしますよ?」
「ぼ、僕もベートさんと鍛練したいです!!」
「あぁもう五月蝿ェ!! 朝から騒いでんじゃねぇよ!!」
食堂に来るや否や、纏わり付いてくる団員達にベートは牙を剥き出しにして怒鳴る。
相変わらず騒がしくも楽しそうな眷族達にヘスティアは微笑ましく思いながら席に座り、眺め続けるのだった。
◇
それから数日後、迷宮都市オラリオは何時にも増して賑わいを見せていた。行き交う人々、露店などがいつもより多く増えている今日は年に一度の【
主催は群衆の主たるガネーシャ・ファミリア、モンスターのテイムという日頃のオラリオでも滅多にお目にかかれない催しに迷宮都市の雰囲気はすでに大いに盛り上がっていた。
「うわぁ! 凄く賑わってますね、団長!」
「怪物祭はオラリオでも有数のイベントだからな。普段目にしないモンスターをガネーシャ・ファミリアがテイムする光景が市井には大ウケするんだと」
そんなオラリオ有数の催しに便乗して普段は表に出てこない露店も出てくるのだから、迷宮都市の街は何時もより五割増しで賑やかになっている。
人が多く集まればその分トラブルも絶えない。今頃はガネーシャ・ファミリアだけでなくアストレア・ファミリアの眷族達も出払っている事だろう。
「しかし、アルフィアの奴も勿体ねーな。折角甥っ子からのお出掛けの誘いを断るなんて」
「アハハ、お義母さんは昔から賑わいのある所は苦手でしたから」
まぁ分かる。普段から騒々しいのは嫌いと断じ、二つ名が【静寂】と付けられる程の女だ。祭りとかそうこう言うイベントはトコトン忌避するのは理解できる。
今頃は自室に籠もって読書でもしてるのだろ。
ベートもどちらかというと静かな方が好きな方だし、無駄な騒ぎには苛立つ性分だ。アイツも自室で昼寝でもしてるのだろ。
ザルドは……なんか珍しい食材が無いか街の探索に出ている。
前々から思ってたけど、今のヘスティア・ファミリアで一番人生エンジョイしてんの、アイツだよな。
「でも、神様が来れないのはどうしてなんでしょうか? 神様も今日のお祭りの事楽しみにしていたみたいですけど……」
「あぁ、それは……」
現在、ヘスティアはベルの折れた
勿論、この事はベルには内緒だ。サプライズなんだそうだ。
んで、そろそろ完成という事で今日はベジットが怪物祭の案内をしつつ、合流場所に向かおうと言う運びとなっている。
「あ、白髪頭にゃ!」
「ん」
「あ、あなたは豊穣の女主人の……」
呼び止めてくる声に振り返ると、其処にはウェイトレスの猫人が一人、【豊穣の女主人】の前で手招きしていた。
何だと思い人の良いベルと一緒に近付くと、
「丁度良かったにゃ! おミャーにはこれから強制任務を言い渡すにゃ!」
「え、えぇ?」
「おミャーはこれをシルに渡して欲しいのにゃ、シルはそそっかしいからきっと今頃困っている筈なのにゃ!」
「え、えっと……」
渡してきたのは一つの財布、突然渡された人の貴重品に戸惑っていると、店の中から同じくウェイトレス姿の金髪エルフがやって来た。
「アーニャ、それでは伝わりませんよ。申し訳ありませんクラネル氏、ベジットさん。いきなり声を掛けてしまって」
「あぁいえ、僕は大丈夫です」
「と言うか、そっちは本業の方は良いのかよ? 確かアストレア・ファミリアも総出で警備に当たってるんだろ?」
新たにやって来たのは正義の眷族の一人、【疾風】のリュー・リオン。アリーゼ達がガネーシャ・ファミリアと連携して街のトラブル対策に出回っているのに、人一倍正義感の強い彼女が大人しくしているのは珍しい。
「それもそうなんですが……その、先程話に出てきたシル………バイト仲間のウェイトレスなのですが、その娘が今日休みでして、そのピンチヒッターとして私が……」
「今日は年に一度の怪物祭! 大忙しなのは間違いなしにゃ! Lv.6のウェイトレスを遊ばせておく訳にはいかないにゃ!!」
「と、そういう訳でして。一応アリーゼ達にも話は通しています」
「あぁ、成る程……」
【豊穣の女主人】は普段から提供される料理が旨いと、連日大盛況の店だ。それがオラリオ中を巻き込んでの催しの日となると訪れる人の量も倍増、ウェイトレスの娘達はたとえ冒険者であろうとも音を上げる事だろう。
殆んど助っ人で入ったリュー・リオン本人は自分だけ別の担当であることに少し引け目があると言った所か。
「えっと、じゃあこの財布をシルさんに渡せば良いと、そういう事なんですね?」
「はい。その通りです」
「態々説明しなくても普通分かるにゃ。白髪頭はアホにゃ」
まぁ、日頃から何かと世話になっているし、その程度のお使いくらいは別に構わないだろう。祭りを楽しむついでにシル某を探せばいいし、最悪店に戻り無理だったと諦めればいい。
「それじゃあ、宜しく頼むにゃ!」
「は、はい!」
「じゃ、今晩は此処で夕飯を済ませるとしようか。腹空かせて来るからって、ミア母さんに伝えといてくれ」
「に゛ゃっ!?」
「そんなっ!?」
お使いを頼まれてやる代わりに今日の夕飯は【豊穣の女主人】で済ませよう。そんなベジットの一言は二人にとっては死刑宣告されたように衝撃的で、評判の美人ウェイトレスは揃ってガックリと肩を落とす。
そんな二人を尻目に街を行く事数分、前方から先程まで話題になっていたヘスティアが人混みの中から顔を覗かせてきた。
「あれ? ベル君にベジット君じゃないか。二人で今日は祭りの散策かい?」
「神様! はい、ベジットさんに誘われて一緒に来ちゃいました!」
「ベルはオラリオでの祭りは初めてだからな。人混みに慣れさせるって意味も兼ねてアチコチつれ回してたんだ」
「そうなんだ」
相変わらず慈愛の深い女神らしく、祭りを楽しんでいるベルを微笑ましく見ているヘスティア。ふと彼女の格好に違和感を抱くとベジットは彼女が何やら小さな袋を背負っている事に気付く。
「ヘスティア、もしかしてそれって……」
「うん、ヘファイストスの所に依頼を出していた品が今日完成してね。帰ったらベル君に渡すんだ」
ベルに聞かれない様に小声で訊ねるとヘスティアは嬉しそうにニコニコと笑いながら返す、その顔には若干の疲れが滲んでいるが、頑張っている可愛い眷族には極力手を貸してあげたいのだろう。
そんな相変わらずなヘスティアにベジットも笑みが溢れる。
「じゃあ、折角合流したし皆で屋台巡りでもするか?」
「あ、良いですね」
「ワーイ! 屋台だァー!」
「わっ、アリスさんもいたんですか」
屋台と聞いて姿を現す風の大精霊。風の結界を解き、それは一見すれば突然黒髪の少女が現れた様に見えるというのに、周囲の人間は人混みの多さの故か、特に気にした様子はなかった。
アリスも揃った事だし、改めて屋台を巡ろうとした時、何かを思い出したヘスティアが待ったを掛ける。
「あ、そうだベジット君、ヘファイストスが君の事を呼んでたぜ。剣の修理が終わったから早く取りに来いって」
「そうなのか? んー……じゃあ顔を出しにいくか。後回しにすると後が怖いし。ベル」
「あ、はい!」
「ヘスティアの事、頼むな。ヘファイストス様から剣を受け取ったら合流するからよ」
「わ、分かりました!」
唐突にベジットから主神の護衛を命じられ、緊張した様子で返事をする。
「そんな肩肘張る事無いさ。アリス君も一緒なんだから、ベル君も今日は祭りを楽しもうぜ!」
「は、はい!」
「アハハー、ベルってばガチガチー」
実際、アリスが護衛をしている時点でヘスティアの安全面はそれなりに約束されている。ベルも頼まれた以上必死で仕事を全うしようとするだろうが、ヘスティアが言うように今日は折角の怪物祭。
初めて経験するベルには存分に楽しんで欲しい所だ。
じゃあ後で、そう言い残しベジットはヘファイストスが待つ本拠地へ向かうのだった。
◇
「はい、アナタの大剣は無事に修理が完了したわよ。確認のために見て頂戴」
そうしてやって来た【ヴァルカの紅房】、受け付けから殆んど顔パスで女神ヘファイストスのもとへ訪れたベジットは、其処で無事に修理を終えた愛剣『ドラゴンころし』を手にする。
軽く一振、手の馴染み具合や重心を今の一振で確認し終えたベジットは以前のままだとヘファイストスに告げる。
「完璧だ。流石はヘファイストス様だ。相変わらずいい仕事してくれる」
それはベジットから贈られ、ヘファイストスにとっては聞き慣れた称賛の声。ただ、今回その台詞には些か別の意図が滲んでいるようで………。
「なんか含みのある言い方ね」
「イヤだってさ、ワンチャンこれで大剣らしい重さになるかと期待していたのに、モノの見事にそのまんま直ってんだもん」
ヘファイストスが言うように、ベジットは確かに不満を抱いていた。
ベジットの鍛冶の女神ヘファイストスから賜ったドラゴンころしは“DX”の付くなんちゃって大剣。
その軽さからマトモに振るってもゴブリンすら斬れず、外見にクオリティが特化した見てくれだけの一品。
キャッチコピーは《子供でも安全に扱える大剣》なんだとか。お値段は500万ヴァリス、貴族の子供向けに近年発売予定なのだとか。
「仕方ないでしょ。アンタがマトモな剣を握ったらそれこそ一振で大災害よ」
「失敬な、幾ら俺でも其処まではならないぞ。多分!」
「自信ないんじゃない」
正直、テンションに任せて振るえばオラリオを壊滅させてしまう自信はあった。目を逸らし、口笛を吹いて誤魔化すベジットにヘファイストスはジト目で睨んだ。
「そ、そんなことよりベル………ウチの新入りにも一振打ってくれたそうじゃないか。悪いな、色々と頼んじゃって」
「別にこれくらい構わないわよ。ただ、鍛冶師としてはちょっと複雑でね。まぁ、それも例のベルって子の事を考えれば複雑なんだけど……」
「?」
何やらベルに打った武器に思う所があるのか、何処と無く伏し目がちになるヘファイストス。一体どんな一振を打ったのか、興味本位で訊ねるベジットに鍛冶の女神は深いため息を吐いて………。
「端的に言えば、持ち主と一緒に成長する短剣よ」
「へぇ……!」
成長する短剣。その言葉の意味を察したベジットは興味深そうに目を光らせる。流石は鍛冶の女神、その手腕は正に神域のソレである。
「凄いじゃないか。それは理論上、この世界のどの武器よりも硬く、切れ味も鋭くなる一品て奴だろ?」
「あくまで理論上の話よ。それに制限もある。私としては邪道も良いところよ」
それでも神友の
「ホラ、アンタも用が済んだら行った行った。後で請求書送るから、修理費揃えて払いなさいよ」
「へーい」
照れんでも良いだろうに。なんて口を滑らしたら割り増しで請求されそうだ。大剣を背負い、部屋を後にしようとした時ベジットはふと違和感を感じた。
「─────ん?」
「ベジット、どうかしたの?」
窓から見えるオラリオの街、何時もと変わらない筈なのに何だかいつもより“違って”見える。
何だと思い、不思議に思ったベジットが窓の外を凝視した瞬間。
爆発。大通り、それも人混みの多い所での爆破にヘファイストスは驚愕に目を見開く。
「ば、爆発!?」
「それだけじゃない」
聞こえてくる悲鳴、舞い上がる砂塵の中から蠢く影、それを目にしたベジットは窓を開けて窓ぶちに足を上げる。
「モンスター!?」
砂塵の中から現れる異形の怪物、突然現れるモンスターにヘファイストスが動揺するのと同時に。
「ヘファイストス様、大通りの避難誘導を頼んでも?」
その言葉に直ぐに落ち着きを取り戻し、ヘファイストスは頷く。
「えぇ、こっちは何とかするからアンタは向こうで暴れてきなさい」
窓ぶちに足を乗せて行儀が悪いのを無視し、ヘファイストスはベジットに命じる。
その言葉に従うように頷き返すと、ベジットは窓から飛び上がり、現場に向けて文字通り飛んでいくのだった。
次回予告(嘘)
さぁーて、来週のダンまち超は?
「エイナです。ここ最近ドンドン暑さが酷くて、仕事中も水分補給は欠かせません。
次回は『ベジットの雑草狩り
ベル君対白猿
オラリオの崩壊!? ヘスティア・ファミリアVSフレイヤ・ファミリア』
の三本です。
来週も見て下さいね、ジャン、ケン、ポン! ウフフフフフ……(白目)」