ダンジョンに超なアイツが来るのは間違いか?   作:アゴン

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教えてくれ五飛(n回目
俺は後何度課金(ry

俺は、ティアマトママを引くぞぉー!ジョジョー!!

そんな訳で初投稿です。


物語82

 

 

 

 今日も今日とてダンジョン探索。早朝の鍛練も終えて朝食を済ませたベルは、支度を整えて迷宮へ向かう。

 

「おはようベル、今日もダンジョン探索か?」

 

「あ、おはようございます団長。はい、朝に団長から教わった立ち回りをちゃんと自分のモノにしたくって」

 

「熱心なのは良いが、自分の限界を見誤るなよー? ダンジョンってのは意外とそういう冒険者の隙ってのを見逃さないからな」

 

「はい!」

 

 良い返事だ。先のベートとベジットの一戦を目の当たりにして、ベルも触発されたのだろう。やる気に満ち溢れているベルを見てベジットは満足そうに頷いた。

 

「それにしても、それが先日エイナちゃんとの散策(デート)で見付けた防具か。見た感じ最低限の急所を守るように設計された軽装備(ライトアーマー)って所か、良い拾いモンしたんじゃねぇの」

 

「そうなんですよ。ヘファイトス・ファミリアの鍛冶師が打った品らしくて、実際装備しても身体に馴染む感じで結構気に入ってるんです」

 

 ベルが身体には胸元や肩、膝など冒険者の動きに阻害されない軽く動きやすい防具が身に付けられている。椿や鍛冶神ヘファイトスの品を見てきたベジットとしては些か物足りない一品だが、ベルや駆け出しの冒険者が身に付けるには悪くない。

 

 敏捷(スピード)重視の戦い方をするベルとも相性が良さそうだし、良く使い手の事を考えていそうである。一体どんな鍛冶師が打ったのか、ベジットは興味本位で訊ねて見ることにした。

 

「へぇ、因みにその装備を打った鍛冶師の名は? 装備に刻まれたりしてないか?」

 

「あ、はい。この軽装備を造ったのはヴェルフ=クロッゾさん、ていう方らしいです」

 

「ヴェルフ………クロッゾ?」

 

 何だろう、クロッゾという名前に何となく既視感を覚える。何処かで聞いたことがあったか?

 

「そういや、ラキア王国にそんな名前の一族がいたような?」

 

 確か、あれは偽・風印の調子を見に行った帰りだったか? ラキア王国の兵士がどれだけ気を覚え鍛練に励んでいるかを様子を見に行った時の事。

 

 なんとかって一族の男が自分を見るなり酷く喚いていたのを覚えている。確か、ソイツもクロッゾを名乗っていたような?

 

「おいベジット、朝食を摂ったらとっとと行くぞ。今日は予定があるんだろう?」

 

 そんな事を考えていると、相変わらず不機嫌そうなアルフィアがベジットの行動を急かしてくる。

 

「あれ? 今日はお義母さんと団長が一緒なんですか?」

 

「あぁ、不本意だが今日の私は予定があってな。そこの馬鹿と一緒に街へ繰り出すんだ。ベル、今日のお前は単独(ソロ)で潜る事になるが……あまり、無理するなよ」

 

「だ、大丈夫だって! もう、あまり子供扱いしないでよ」

 

 義母のアルフィアからの僅かに乱れている髪の身嗜みを整えられ、ベルは恥ずかしそうに振り切って本拠地を後にする。そんな甥っ子を愛しそうに見送る彼女を、ベジットは物言いたげにジト目を向けていた。

 

「────何だ?」

 

「イエ、ナニモ……」

 

 分かっていたがこの女、ベルと自分に対する態度が露骨に変わりすぎている。

 

 確かにベルにも冒険者として接する時は中々に厳しくしているが、それ以外は基本的に甘々。日夜ベルの後を付け回しているし、ダンジョンでも無茶をしないように影から様子を見ている。

 

 本人はベルを厳しく育てているつもりだろうが、見ている側としては明らかにストーキングである。いつかガネーシャ案件にならないかヒヤヒヤしている。

 

 ただ、最近はリリルカやベートとも普通に会話しているし、何ならリリルカとは同じ女性冒険者として時々行動を共にしているらしい。

 

 リリルカはアルフィアを優しいと評しているが、ベジットとしては「え~? 本当にござるか~?」としか思えない。

 

 だってコイツ、明らかに自分にだけ敵意が剥き出しなんだもの。

 

(少しだけで良いから、その優しさを俺にも向けて欲しいよなぁ)

 

「何をしているノロマ、さっさと朝食を済ませろ。今日はやることがあるんだろう?」

 

「へーい」

 

 無言で朝食を差し出してくれるザルド。そんな彼の優しさに感謝しながら、ベジットは朝食を頬張る。

 

 そして、そんな二人を見守る二つの影。

 

「────フム」

 

「どうかしたのかいザルド君? ベジット君とアルフィア君を見たりして」

 

「あぁいやなに、あの二人の仲もどうにかならんかなと思ってな」

 

 隣で不満タラタラの様子、なのに離れようとしないアルフィア。天の邪鬼な彼女を困ったと腕を組んで見守るザルドに同じく朝食を戴いていたヘスティアも「あー」と同意見の口を溢す。

 

「たぶん、言う程アルフィア君はベジット君の事嫌ってはいないと思うよ」

 

「それは……まぁ、俺も何となくそう思っているが」

 

 そもそも本気で嫌っていたらアルフィアは相手に対して関心は向けないし、なんなら害虫扱いで周囲の制止を振り切って排除(ゴスペル)してくるだろう。

 

 そうしないのは偏にアルフィアも何だかんだベジットに信頼を寄せているから────。

 

「食ったならさっさと行くぞ」

 

「ちょ、まだ何時もの一張羅に着替えてないんですけど!?」

 

「10秒で支度しろ。でなければ貴様の部屋を吹き飛ばしてやる」

 

「せめて40秒は下さいよ!?」

 

「9……8……7……」

 

「ウッソだろお前、本当にカウントしてる!?」

 

 カウントが進むごとに魔力が高まっていく。相変わらず冗談の通じないアルフィアに慌てて身支度を整える為に部屋へ戻る。

 

「あーもう、朝からバタつかせやがって。耳飾り(ポタラ)の位置がズレちまったじゃねぇか」

 

 それでも流石と言うべきか、瞬間移動で戻ってきたベジットは何時も通りの格好に着替え、両耳にトレードマークのイヤリングを付けている。

 

「───何時も思うが、その耳飾りはお前が選んだものか?」

 

「ん? いや。コイツはヘスティアから貰ったモノでな。俺の唯一の装備品だ、これでも結構大事に扱ってんだぜ」

 

 チリン、小気味良く聞こえる金属音。嬉しそうに語るベジットをアルフィアはうっすらと目蓋を開ける。

 

「────そうか。下らない事を聞いた、さっさと行くぞ」

 

「そっちから聞いてきた癖に……はいはーい。行きますよお姫様」

 

「ゴスペるぞ?」

 

「その文言を脅しに出来るの、お前くらいだよ」

 

 そういいながらアルフィアと共にベジットもまた本拠地を後にする。そんな二人を見送ったザルドとヘスティアは……。

 

ゼウス(親父)から教わった女のタイプの中に“ツンデレ”なるタイプがいるとされているが……ヘスティア、お前から見て今のアルフィアに“デレ”はあったと思うか?」

 

「いや処女神に何を聞いてるのさ」

 

 真面目に聞いてくるザルドにヘスティアはジト目で突っ込んだ。

 

 ヘスティア・ファミリアの何気ない1日の幕間である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんで、ベジットの旦那は朝から疲弊している訳か」

 

 場所はダイダロス通り、オラリオに於ける嘗ての巨匠であるダイダロスと深い関わりがあるとされる迷宮都市の一区画。

 

 幾重もの建造物が犇めき、隠し扉や隠し通路で連なるその区画は地上の迷宮と揶揄する程に複雑に入り組んでいる。

 

 そんな場所で合流したのはアストレア・ファミリアの眷族、その内の一人。【狡鼠(スライル)】のライラと……。

 

「ハッハッハ! 流石のベジットも【静寂】の相手は骨が折れるか!」

 

 ロキ・ファミリア“三巨頭”の一人、【重傑(エルガルム)】のガレス・ランドロックである。

 

「本当、じゃじゃ馬で参るよ。少しでも機嫌が損なえばすーぐゴスペルしてくるんだぜ? お陰で俺の一張羅が幾つ台無しになった事か」

 

「いや、この女の魔法を受けてそれで済ませてるのおかしいから」

 

「黙れベジット。貴様のその21着目の服もビリビリにしてやろうか」

 

「そしてなんでこやつもこやつでちゃんと数えとるんじゃ」

 

 アルフィアの魔法の威力はそれぞれその身で味わった二人が嫌と言う程理解している。直撃すれば身体は砕け、僅かに触れただけでも三半規管が破壊される。

 

 音という振動を極限まで高めた破砕魔法。それを一言詠唱(ワンワード)でポンポン放つのだから、敵対してきた身としては堪ったモノじゃない。

 

 そして口振りから察するにどうやらベジットはそんなアルフィアの魔法を日常的に受けているらしい。それでも平然としている辺り、やはりどちらも規格外かとライラとガレスは二人の会話を引きながら納得した。

 

「さて、では行くとするか。アルフィア、案内の方頼むぞ」

 

「あまり期待はするな。私も当時はそこを利用して移動する際は目隠しをされていたからな。正確な位置は分からん」

 

 今回アルフィアがベジットと行動を共にするのは、嘗て彼女が闇派閥に与して活動していた為。

 

 七年前、闇派閥はダンジョンを介して地上にモンスターを運んできた。《大最悪》を討伐する為、アストレア・ファミリアとガレス達を迷宮へ派遣した時もアルフィアが先回りをして待ち構えていた。当時は相当数の冒険者がダンジョンの出入り口を封鎖していたにも関わらずにである。

 

 その時から、フィンや一部の頭の切れる冒険者や神々は危惧していた。この地上にダンジョンへの出入り口が複数箇所───少なくとも、一つは確実に存在している事実に。

 

 そして、その在処を知る唯一の存在が目の前の【静寂】だ。闇派閥の一派が今も生存している可能性が高いことを示唆された以上、無視することは出来ない。

 

「フィンも近々再び遠征を提案するつもりじゃからのう。よろしく頼むぞ」

 

「フンッ、そうかよ」

 

 ダンジョンで冒険する為にも出来るだけ後顧の憂いは片付けておきたい。今回の目的は隠し拠点の割り出しとその出入り口の確保、或いはその情報を持ち帰ること。

 

 よろしく頼むぞと言いながら、どこか確信めいた口振りのガレスにアルフィアはやはり目を閉じたままだった。

 

 そうして、四人でダイダロス通りの下水区画を探索すること数分。

 

「────のぅ、本当にこっちで合っておるのか?」

 

「さぁな。何せ七年前の記憶だ。加えて下水区画に入った時点で目隠しもされている。あまり期待するな」

 

 どれだけ進んでもそれらしいモノは見付からず、時間だけが過ぎていく。本当にこの辺りなのかとランタンを片手に先頭をあるくガレスがつい疑問を口にする。

 

 対してアルフィアはただ答えるだけだった。

 

 絶妙に重くなる空気、下水区画という閉鎖的な空間も合わさって息苦しさを覚えたベジットは、同じく空気を変えたかったライラに話題を振る。

 

「そう言えば、アストレア・ファミリアから来たのはライラだけだけど、他の連中は何かしてるのか?」

 

「アリーゼとリュー、ネーゼにアスタ、リャーナとセルティの六人が主に18階層に出払ってるな。アルフィアが待ち構えていたのも18階層だったし、一先ずリヴィラの街を中心に上の階層を調べている所さ」

 

「上層と中層に絞っとるとはいえ、ダンジョンは広い。小娘達には負担を強いらせる事になるが……」

 

「気にすんなよガレスの旦那、地上ではガネーシャ・ファミリアが頑張ってんだ。こういう調査はアタシ等に任せて闇派閥の拠点制圧の際は旦那達に任せるさ」

 

 先日の話し合いでフィンはまず闇派閥の隠し拠点、そこに通じる階層をアルフィアの待ち構えていた18階層から上と断定した。

 

 恐らくダンジョン内に隠れている奴等の抜け道は複数存在しており、【勇者】はアストレア・ファミリア(正義の眷族)に頼み込んで18階層から上の階層の調査を依頼した。

 

 才ある彼女達も今はオラリオのトップに位置する大派閥。少数精鋭で七年前の大抗争を乗り越えた者達は揃って第一級冒険者となっている事から、根強いファンからは“オラリオの希望”なんて呼ばれたりしている。

 

「やれやれ、あの頃の小娘どもが立派になりおって。眩しくて目が瞑れるわ」

 

「ヤダー、おっちゃんてば年寄りくさーい」

 

「抜かせベジット。………しかし、そうなると一つ心配事があるのう」

 

「………え、何か不安要素あったか?」

 

 ベジットからの揶揄も軽く流すガレスだが、それはそれとして気になる事があるようだ。立派な顎髭を撫でて溢すガレスにライラは何らかの不安要素があったかと訊ねるが……。

 

「いや、お主等揃って第一級じゃろ? 更にはアリーゼや【大和竜胆】、【疾風】はLv.6とオラリオの冒険者の中でも上澄みと来た」

 

「いやー、強くなったよなぁアイツ等も。けど、それが何が不安なんだ?」

 

 今ガレスが呼んだ三人はアストレア・ファミリアの中でも主力として抜きん出ており、彼女たちと比肩するのは獣化を解放したネーゼくらい。

 

 そんな彼女達がどんな不安要素があるのか、訊ねるベジットだが、何となく言い辛そうなガレスを見て何となく察した。

 

「いやな、そんなに強くなるのはいいが………嫁の貰い手とかどうするのかと思ってな

 

「「「──────」」」

 

 時が止まった。ベジットもライラも、アルフィアすらもガレスの溢した疑問につい脚を止めてしまう。

 

「いや、別に責めとる訳ではないぞ? 恋愛や結婚願望なんぞ人それぞれ、他派閥の人間が口出しするのは間違っとるのはワシだって重々承知しておる。ただ……」

 

「あー、そういやおっちゃんは駆け出しの頃からアリーゼ達を見てたんだっけ?」

 

 何故そんな話題がガレスの口から出てくるのか、不思議に思ったベジットだがそう言えば以前アリーゼから聞いたことがある。

 

 アリーゼ達アストレア・ファミリアはその正義感の強さから結成当時から何かと話題になっていた派閥で、当時駆け出しだった彼女達の事をガレスは何かと気に掛けていた。

 

 特に、アリーゼはガレスを慕っている為、リヴェリアではないがついつい親心、或いは老婆心に似た感情を出してしまうのだそう。余計なお世話だと分かっていながら、日夜活躍する彼女達を見て別ベクトルの心配をしてしまうという。

 

「あの娘達も今ではすっかりオラリオの一大勢力。故に誰かと結ばれるのに難しい立場になっておる。無論、そんなものは本人の自由なのはワシも理解しているが……」

 

「Lv.6という強さに位置する彼女達に、釣り合える男がいないと?」

 

 ベジットの言葉にガレスは小さく頷いた。アストレア・ファミリアの面々は新入りを除いて皆強くなっている。特に上位三名はやり方によってはフレイヤ・ファミリアの幹部にすら食らい付ける実力者、オラリオ全体からみても強者に位置する彼女達に果たして釣り合える男はいるのだろうか。

 

「あ、アタシはフィンがいるから大丈夫さ! 今は位階(レベル)に差があるけど、もうすぐ耐久はAに上がるし! 俊敏だってもうS間近だ! まだ追い付ける! 追い付ける筈だ!」

 

「いや、そういうのなら別にええんじゃ。ライラ、お主の健闘をワシは応援しとるぞ。フィンの気持ちは別にしてな」

 

「でも、問題の三人は………」

 

「「「うーん………」」」

 

 アリーゼ、リュー、そして輝夜。オラリオの女性冒険者の中ではトップクラスの実力者。他の面々はまだワンチャンあるとしても、正直彼女達が恋愛出来そうな相手が現れるとは思えなかった。

 

 もしかしたらこのままではあの三人………行き遅れ確定?

 

(あれ? そうなるとヤバイのはリリルカも?)

 

 脳裏に浮かぶのは特定の相手がいなく、途方に暮れているリリルカ・アーデ。他の面々が結婚していく中、取り残されるリリルカにベジットはこれ迄感じたことのない悪寒を感じた。

 

(い、いやリリルカはまだ若い! 容姿も悪くないし、器量も良し。大丈夫、リリルカは行き遅れない!)

 

 更にその理屈で言えばアイズやティオネ、ティオナも徐々に危険域へ達している気がする。

 

 モンスターが蔓延るこの時代、20代での未婚は色々と危ぶまれている。相手が冒険者(神の眷族)である為に敢えて誰も指摘することはないが。

 

 

「─────止めよう、この話。何か胃がキリキリしてきた」

 

「うむ、そうだな。余計なことを言った。忘れてくれ」

 

「この話、絶対アイツ等には言わないでおこう」

 

 絶対面倒くさい事になる。そんなライラの一言で幕を降ろした雑談は、封印される形となって三人の間で禁忌の話題とされるのだった。

 

「おい、付いたぞ馬鹿ども。さっさと調べるぞ」

 

 そして、唯一話に混ざらなかったアルフィアに対しては絶対振ってはいけない話題であると三人の間で暗黙のルールになるのだった。

 

「さて、調べるとは言えどうするか」

 

「先ずは軽く壁を叩いてみようぜ。この辺りに隠し通路があるなら材質の違いで音が違う筈だ」

 

「闇派閥の連中がその辺り手を抜くとは思えんが………いや、先ずは実践じゃな」

 

 辿り着いたのは長いT字の水路。暗く、向こうまで長く続いている水路に若干ゲンナリしながら三人は気持ちを固める。

 

「んじゃ、ガレスのおっちゃんとライラは向こうから。俺とアルフィアはあっちから調べるわ」

 

「あいよ」

 

「ではまたの」

 

 そうして二つの方向から挟み込む様に壁を調べることになる。コンコンとノックをする要領で音の違いを一つ一つ確認する。恐ろしく手間だが闇派閥の居場所を割り当てるのに必要な事の為、四人による手探りの作業は続いた。

 

 水路の流れる音だけが耳に響く静寂に満ちた時間、集中して作業に勤しんでいると……。

 

「ベジット」

 

「ん? なんか見付けたか」

 

「いや、それよりもお前には一度聞きたいことがある。答えろ」

 

 なんか今日は何時もより圧があるなー、なんて明らかに不機嫌な彼女に分かったと応えると。

 

「───何故、お前は私を拒絶しない」

 

「は? なに言ってんのお前」

 

 若干の間を置いて出てきた台詞に思わず素で返してしまう。

 

「お前にとって、私達は最早爆弾以外の何者でもない筈だ。なのに、何故」

 

「いや、押し掛けて来たのはお前らじゃん」

 

「だとしても、だ。お前程の力があれば私とザルドを一蹴する事くらい訳はない。そうだろ?」

 

 それはそう。確かにザルドもアルフィアも気を習得した事で七年前よりも強くなっているし、アルフィアに至っては技術面に関してはオラリオ全体を見渡しても頭一つ抜けている。

 

 ベートだってアルフィアと鍛練する時は正面切って“時飛ばし”を使わない程に慎重になる程、【才禍の怪物】と謳われ、病を克服したアルフィアと正面から戦える強者はこのオラリオにどれだけいるだろうか。

 

 今のアルフィアなら、嘗ての海の覇者(リヴァイアサン)相手にも単騎で挑めるだろう。多分。

 

 だが、それだけ。幾ら才能に溢れていても、どれだけ力を付けても覆らない力の差がベジットとの間に存在している。

 

 あの時、ベジットと戦ったアルフィアは知った。ベジットがアルフィアに対して一度も仕掛けなかったのは、当時のアルフィアの心情を慮った為である。

 

 殺すことも出来た。気絶させる事も出来た。あの時のやり取りで一方的に攻撃していたアルフィアは、その実生殺与奪の権利をベジットの掌の上で転がされていただけだ。

 

 そんなベジットが、何故オラリオにとっての災いとも呼べる自分達を囲っているのか。単に戦力の為? 否、戦力などそれこそベジット一人で事足りる。

 

 であるならば、一体どうしてなのか。不思議に思ったアルフィアは何となくベジットに問いを投げ掛けた。

 

「いや、お前はベルの母親だろ。代わりとは言えお前はアイツの母親だ。子供から母親を引き離すとかどんな鬼畜野郎だよ俺は」

 

 さも当然のようにベジットは答える。

 

「ザルドは単純に料理が旨いし、面倒見も良い。最近はお前もベートとリリルカと親しげにしてるし、ファミリアの関係が上手くいってるなら、俺から言うことはねぇよ」

 

「お前は……」

 

「あん?」

 

「お前は………どうなんだ? 私のような女が近くにいては、ウンザリしてるんじゃないのか」

 

 視線は向けない。壁を叩き、闇派閥の拠点に続く隠し通路を見付けなければと言い訳して、アルフィアの視線は壁だけに向けられていた。

 

 対してベジットはというと……。

 

『何故、7年前なんだ。どうして、15年前じゃないんだ!』

 

『お前なら、お前なら………メーテリアを、妹を………救えた、筈なのに……!』

 

 脳裏に過るのは涙を流す女の姿。あの日、あの時ベジットの前にいたのは恐ろしき【静寂】でも周囲と隔絶する【才禍の怪物】でもなく。

 

 ただ、助けてくれなかったと泣いて縋る少女しかいなかった。

 

「───別に、背負った以上簡単に降ろす訳にはいかねぇだろ」

 

「…………そうか」

 

「安心しろ。お前もザルドも、ベルも俺がちゃんと面倒を見てやる。俺は天下無敵のベジット様だからな」

 

「そうか」

 

 それ以上、ベジットが口を開く事はなかった。端的で、明らかに言葉足らずではあるが、それでも一つの覚悟を示したベジットに………。

 

「ベジット、ありが───」

 

「おーい! 旦那ー!」

 

「妙な音がする壁を見付けた! ちと此方に来てくれんか!」

 

「おー! 今いくー! ………あ? アルフィア、何か言い掛けたか?」

 

「死ね」

 

 突然の罵倒。やはり、この女は自分に優しくないと愚痴を溢しながら、呼び掛けてくるガレスとライラに合流するのだった。

 

「んで、ここがそうか」

 

 それから二人に合流したベジットとアルフィアは呼び掛けてくるガレスとライラの示す壁へ向き直る。

 

 一見すれば先程ベジット達が調べている壁と全く同じの所、しかし試しに軽く叩いてみると確かに二人が言うように僅かではあるが他とは違う感触が返ってきた。

 

「確かに、ここだけが妙に音が高いな。アルフィア、お前から聞いてどうだ」

 

「瞭然だな。そしてこの場所、微かだが覚えがある。恐らく“当たり”だろう」

 

「よし、じゃあ試してみるか」

 

「えっ、旦那?」

 

「お主、何をしようと?」

 

 どうやらアルフィアの記憶にも合致したようで、例の地点はここで間違いないようだ。

 

 ベジットは拳を鳴らし、壁の前に立つ。嫌な予感がしたライラが止めに入ろうとするも。

 

「せい」

 

 バギャンッ。振り抜いたベジットの拳は周囲の壁を吹き飛ばし、甲高い金属音が当たりに鳴り響く。

 

 やっちまった。やらかしたベジットに頭を抑えるライラに対し、ガレスは相変わらず思い切りが良いと半ば諦めの気持ちで笑っていた。

 

「どうやら、ビンゴみてぇだな」

 

「明らかに人工的な通路。こりゃ深そうじゃわい」

 

「うわ、擬装していた壁の中にある扉、これ最硬金属(オリハルコン)じゃねぇか!?」

 

「マジで? お宝じゃん。これ、俺が貰っても良い?」

 

「これ、がめついぞベジット。後にせんか」

 

 擬装されていた壁の奥には、人の手で造られた通路が奥深くへと続いている。明らかな人工物、アルフィアの証言と照らし合わせてここが目的の場所であると確信した一行は改めて方針を話し合う。

 

「さて、一応奴等の出入り口は抑えた。これからどうする?」

 

「ふーむ、ワシとしてはフィンに手土産を持たせてやりたいし、多少進んでみるのもアリじゃと思うが」

 

「アタシは撤退を進言しとくぜ。初見だし、何よりこの手入れ具合。恐らく連中は相当罠を仕掛けていると見て良さそうだ。一度引いて、みんなと情報を共有するべきだと一応言っておく」

 

「どうでもいい」

 

  進むに1つ、撤退に1つ、無関心が1つ。一見バラバラに見える分かれ方だが、ライラは何処か諦めた様子で肩を竦めていた。

 

「ベジットの旦那、念の為に聞くけど……アンタはどうする?」

 

 ライラの問いにベジットはニヤリと口を歪め。

 

「逃げれば一つ、進めば二つ。奪えば全部。昔の人は良いことを言ったもんだ」

 

「なんだそれは、賊の台詞か?」

 

「アタシ、一応正義の眷族なんだけど?」

 

「─────はぁ」

 

 方針は決まった。魑魅魍魎が跋扈し、闇が蠢く万魔殿。

 

 悪意で満ちる人工の迷宮に四人の冒険者が突入する。

 

 

 

 






すみません。長くなりそうなので話を分けます。

次回は一方その頃なベート&リリルカ+@組の予定。





闇派閥「えっここから入れる保険があるの?」

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