スパロボY、ゴジラの扱いが桁外れにヤバイ奴扱いしてて草
そんな訳で初投稿です。
「ヒィィィ……ヒィィ……」
「身体が上下に泣き別れてもまだ生きてる、か。どうやらマジで人間を辞めたみてぇだな」
ベートの放った“気円脚”により、胴体が上下に泣き別れたオリヴァス・アクト。普通なら冒険者でも死ねる状態が、どういう訳か奴はまだ生きていた。
モンスターと同様、胸元の魔石が核となっている為か、痛みに喘ぎながらそれでも地を這いながら逃亡を図るオリヴァスにベートは呆れた溜め息を溢した。
「死にぞこなったのなら調度良い。テメェには聞きたいことが腐る程ある。ガネーシャ・ファミリアの所に連れていって諸々吐かせてやる」
「─────胴体が泣き別れた奴を連れて、却って捕まったりしませんか? それ」
「それは………確かに」
隣に立つリリルカに諭され、ベートは一旦考え込む。その間にも逃げられないようオリヴァスを踏みつけて拘束し、リリルカも改めてヘルメス・ファミリアの護衛に回ったその時。
アイズを孤立させていた肉の壁が突如弾け、赤髪の女が吹き飛んでくる。ベートに向かって吹き飛んできたその女を咄嗟に蹴り飛ばそうとするが蹴りが女に直撃しようとした瞬間、ベートと赤髪の女の視線は交差する。
ベートの蹴りに反応して見せた女は、人外染みた超反応により身体を捻り、僅かにベートの蹴りを回避して見せた。着地間際にベートの眼を潰そうと手を伸ばすが、流石にそれは悪手。
ベートの間合いに入った事で、その腹部に蹴りを捩じ込まれた女は壁へと吹き飛ぶ。瞬きの合間に行われた闘争、先のオリヴァス・アクトとは桁外れな体捌きを見せた女に遠巻きで眺めていたリリルカは感心したように呟いた。
「驚きました。やりますね、今の方。ベート様に一発かましましたよ」
「────へ? 今、何か起こったんですか?」
「えぇ、ベート様の蹴りに対応出来ないと知ると、少しでも傷を付けてやりたかったんでしょうねぇ。もう片方の手で伸ばし、ベート様の頬に掠り傷を負わせました」
見れば、確かにベートの頬に微かだが小さな傷が出来ている。それを手で乱雑に拭うベートは少しだけ不機嫌そうだった。
恐らく、自分の不甲斐なさと知らず慢心してしまった事を恥じているのだろう。何せ、赤い髪の女はベートの頬に傷を刻み付けただけでなく、足蹴にしていた
確かにベートにも油断や慢心があったのも事実、だが一撃を受けてでもやり遂げて見せた赤髪の女にこそ称賛を贈るべきかもしれない。
それとも、奴もオリヴァス同様人外となった事で痛みには鈍くなってたりするのだろうか?
(まぁ、どちらでも構いませんが……)
何が起きているのか分からないヘルメス・ファミリアに解説紛いなことをしていると、弾けた肉壁の向こうから見慣れた金色の剣姫が姿を現す。
「ふぅ、やっと出れた。………あれ? リリルカ、なんでここに?」
「お久し振りですねアイズさん。そちらもご無事のようで一先ず安心しました」
赤い髪の女との戦いがあったにも関わらず、対して疲弊した様子の無いアイズに一先ずリリルカは安堵する。しかし、まだ事は終わっていない。不思議そうに首を傾げるアイズを他所にリリルカはベートとヒト型の怪物達を見据えた。
「成る程な、テメェが例の赤髪の女か。聞いていた以上に厄介そうだな」
「…………何者だ」
「人にモノを訪ねる時は先ずは
「生憎と、そんな立派な生き方をした覚えはない。期待するだけ無駄と言うものだぞ、化物」
ベートはオリヴァス以上に怪物と成り果てた女を、女はそんな自分を容易く蹴り飛ばしたベートをそれぞれ化物と扱き下ろす。
互いに凶暴な笑みを浮かべて牽制し合う両者、尚ヘルメス・ファミリアからすればどっちもどっち。正直こんな魔窟からさっさと抜け出したいと言うのが彼等の本音である。
「おぉ、レヴィス! 良く来てくれた!」
にらみ合いが続く二人、高まる緊迫感の中で髪の毛を捕まれていたオリヴァスが声を嬉々としてあげる。
「さぁ、早く
「────彼女、ねぇ。そしてレヴィスか」
「チッ」
ベートに文字通り一蹴され、されるがままだったオリヴァスは自分を抱える赤髪の女────レヴィスに余程命拾いをしたと感じたのだろう、感極まって情報をベラベラと口にする。
そんなオリヴァスに苛立ち、髪に掴む手に力を込めると………。
「黙れ」
「────はぇ?」
トスッ。手刀で貫き、オリヴァスの剥き出しとなった胸元の魔石を抜き取ってみせた。
「れ、レヴィス……?」
「いらん事をベラベラと。貴様はもう黙れ、邪魔だ」
「あ、あぁぁぁぁぁぁ………」
オリヴァスの胸元から魔石を抜き出し、呑み込む。瞬間、オリヴァスの肉体は灰と変わり消え去り、変わりにレヴィスの力が格段に増していく。
「魔石を喰って成長……か。確かにこりゃ怪人と呼ばれるのも頷ける。で、強さを得られたテメェはどうする? ここで俺とやり合うか?」
「………貴様等が」
「あ?」
「貴様等が扱っている“キ”なる力、確かに面倒かつ脅威だ。これを使いこなすには私もまだ時間が必要だな」
そう言ってレヴィスは
“ドワォッ!!”
「「「「ッ!?」」」」
突如、頭上から降り注がれる桁違いの圧に、ベートを含めた全員が戦慄する。
「こ、この気は………!?」
「間違いありません、ベジット様です!!」
「あんのクソボケ、今度は何をやらかした!?」
頭上から天体が降ってきた様な圧、アイズとリリルカは動揺し、ベートは苛立ちを剥き出しにして頭上を見上げる。ヘルメス・ファミリア?
そんな彼等が見せた一瞬の隙、当然レヴィスが見逃す筈もなく、遥か頭上から感じるバカみたいに強大な力の圧を無視し、懸命に身体を動かして大結晶を砕く。すると、ひび割れた大結晶は瞬く間に砕け散り、それに合わせて食糧庫が崩壊を始める。
寄生され、緑肉に覆われていた為か、崩壊のスピードが速い。その様子に目の前の怪人の無力化を諦め、ベートとリリルカは脱出を選択する。
「待って!」
その中で唯一、アイズだけが脚を止める。まだ自分は何も聞いていない。問い詰める彼女の声にレヴィスは一度だけ振り返り……。
「───アリア。気になるのなら59階層へ来い。今頃、面白い事になってるだろうよ」
それだけを言い残し、レヴィスはダンジョンの闇へと消えていく。59階層、そこでは一体何が待っていると言うのか。
後ろ髪を引かれる気持ちは多々あれど、ベートとリリルカの自分を呼ぶ声に我に返ったアイズは彼等と共に食糧庫を後にするのだった。
◇
「エッホエッホエッホエッホ」
「手に入れた素材を本拠地に運ばなきゃ」
「エッホエッホエッホエッホ」
人造迷宮。推定闇派閥の根城とされる奈落の底から場違いな程に能天気な声が響く。
「いやぁ、大漁大漁。この迷宮、人の手で造られただけあって色んな素材がてんこ盛りだぜ」
「しかも使われている多くの素材が高額な値打ちモノと来た。いやー、冒険者稼業ってのはこうでなくちゃ!」
ホクホク顔でそう語るのはベジットとライラの二人、調達した荷車には今回の
アダマンタイトを始め、稀少価値の高い素材をこれでもかと詰め込んだ二人は偉く上機嫌だった。
「全く、仮にもここは闇派閥の拠点だと言うのに、呑気な奴等じゃわい」
「……………」
先の巨大な牡牛のモンスターはベジットの一撃によって消滅し、闇派閥からの横槍は無くなった。相手の動きを阻害できる程のダメージを負わせたと判断したガレスは、一時人造迷宮からの撤退を提案した。
マッピングもライラの手によって滞りなく進められ、ベジットによって破壊された階層を除きある程度の中身は掴められた。後は此方を監視していたとされる趣味の悪い像を壊しながら帰ろうと提案するガレスに、ベジット達は同意した。
いい加減手に入れた素材も回収したかった事もあり、特にベジット達が異を唱える事もなかった。本音を言えばライラの言う“鍵”、それに値する物品を回収したかったのが本音だが……。
「次も俺が同行すれば、取り敢えず出入り口は確保出来るぞ?」
そんなベジットの一言により、ガレスは押し黙るしかなかった。
なんだか他人の家を土足で蹂躙してしまっている様でガレスは若干罪悪感を抱くが、そもそも闇派閥自体が人の尊厳や命を踏みにじっている連中なんで気にするのを止めにした。
そんなこんなで一時迷宮から脱出する事にした四人、その道中でベジットは「入り直したら元に戻ったりしてねぇかなぁ」と、一人おかわりを熱望していた。
「アルフィア、何か気に障る事でもあったか? いや、お主からすれば今回は気に障る事ばかりだと思うが……」
そんな中、唯一これまで沈黙を続けているアルフィアに気になったガレスがどうしたのかと訊ねた。
アルフィアは生来の暴君気質、少しでも自分の機嫌が悪くなる事が起きれば相手が誰だろうと手を出すし、その恐ろしい魔力が牙を剥く。
目の前の二人の能天気さを前に随分と大人しいアルフィアをガレスは不思議………というより、不気味に感じていた。
「─────別に、目の前の阿呆に心底呆れているだけだ」
あの時、ベジットが見せた“力”。圧倒的で絶対的。黄金の炎と稲妻を身に纏い、牡牛を瞬殺する姿を見てアルフィアは確信した。
この男、手を抜いている。アダマンタイトやオリハルコンで造られた人造迷宮を素手で粉砕し、あのバカみたいに軽い見せ掛けの大剣で暴れまわっておきながら、ベジットという男はそれでも尚、実力の片鱗しか見せてはいなかった。
ベートやリリルカ同様、気の習得を成し遂げたアルフィア。“才禍の怪物”と恐れられた彼女だからこそベジットが未だ全力を出していない事に気付いていた。
あれだけの力を示し、あれだけ暴れておきながらベジットにとっては遊びの範疇。それを理解してしまったアルフィアは少しばかり苛立ってしまう。
それはそれとして……。
「それよりもベジット、貴様一体どれだけ気という概念を広めている」
「んあ? 何が?」
「お前はこれまで、多くの冒険者に気を教え触れ回っていただろう。その中に今回みたいな怪物にも広めてたりしてないだろうな?」
アルフィアやガレスが気になっていたのはベジットが瞬殺したあの巨大牡牛のモンスター。奴の全身から放たれた黒い炎は見た目こそ違えど、本質は自分達が扱う気と同じもの。
流石に無いと思うが、念の為に指摘しておく。するとベジットは眉を寄せて明らかに不機嫌な顔付きで……。
「見くびんなよ、流石の俺だってあんな化け物に教えたりしねぇよ」
「────そうか」
だろうなと、ベジットの返答にアルフィアは安堵する。如何に相手を選ばないベジットであろうと、流石にオラリオに害を及ぼす真似はしないと、安心したアルフィアは内心で胸を撫で下ろす。
その一方で。
(────どうしよう、そう言えば
………違うよな、巡り巡って的な奴じゃないよな!?)
アルフィアに強く反論したのは良いものの、万が一の経路を想像してベジットの額に脂汗が滲み出てくる。この後リド達に話を聞かないと、そう結論する頃には四人は人造迷宮の出入り口を越え、水路も越えて地上へと帰ってきた。
「よっしゃあ! 出口到着っと! ベジットの旦那、早速今日の報酬の分配を頼むぜ」
「わぁったからそう急かすなよライラ。先ずは出入り口のオリハルコン製の扉はそれぞれ俺とお前で均等に分けるとして……」
明るい地上へと戻り、二人は早速今回の人造迷宮で手に入れた物品達の品定めを始める。扉が
この分なら価格も素材としての価値も高いだろう。煌びやかに輝く素材達を前にベジットもライラも顔が綻ぶ。
「あ~、二人とも。折角の気分に水を差す様でスマンが……」
「なんだよおっちゃん。心配しなくともおっちゃんの分の素材もちゃんと用意してるって」
「いや、そうではなくてだな」
目の前に燦々と輝く素材達を前に二人はガレスの話を聞こうともしない、呆れるしかないガレスとアルフィア。
そこへ……とある一団が近付いていく。現れた彼等に二人は深い溜め息を溢すと同時に譲るように道を開ける。
「随分と景気が良さそうじゃないか。えぇ? ベジット」
「そりゃあ、お宝がこんなにザクザクじゃあ景気も良くなるって……もん………さ………?」
聞き馴染みのある声に振り返ると、ベジットとライラは笑顔で固まる。振り返った先にいるのはこのオラリオの治安を護る憲兵達。
屈強なガネーシャ・ファミリア眷族数名と彼等を束ねる団長とその妹、そして女神アストレアもそこにいた。
「あ、アレー? な、何でシャクティさんがここに?」
「【
「ち、違うぞ! これは闇派閥の拠点、地下の人工的な迷宮があったから其処から戴いてきたモノなんだ!!」
「そ、そうだぜ! これは闇派閥の戦力を削ってきた謂わば証の様なもの! 決して追求されて疚しくなるモノじゃあないんだぜ!」
明らかに不機嫌な様子のシャクティ、彼女の並々ならぬ様子から嫌な予感を感じた二人は懸命に身の潔白を証明しようと口を滑らせる。
「………アストレア様」
「えぇ、ライラの言っている事に嘘はないわ。闇派閥の拠点、人工的な迷宮が地下に広がっていると言うのも、ね」
神は下界の人類の嘘を看破する。ベジットは見破れなくとも、己の眷族であるライラの言葉に嘘偽りは無いと断言するアストレアにシャクティは納得したよう
に頷いて見せた。
「成る程、それは大変だったな。ではそちらの物品を押収させて貰おうか」
「──────え?」
すると、指示を受けたガネーシャの眷族達がシャクティから指示を受けるとベジットから荷馬車を押収する。
「ちょ、ちょちょちょちょ、ちょ待てよ」
「それ、アタシ等が集めた素材だぞ!」
「あぁ、そうだ。ベジット、これはお前達が闇派閥の拠点で見付け、破壊したと言った。つまりこれ等は裏で闇派閥と繋がりのある組織と繋がっている重要参考品、証拠の裏取りが終えるまで此方で預からせて貰うぞ」
過去に闇派閥は外の商人たちと裏で通じ、資金や素材を横流ししてきたという事実がある。現在も証拠隠滅を図り上手く誤魔化してきた連中も少なからずいる為、ベジット達が持ち運んできた物資は今後それらを追求出来る良き材料となるだろう。
正論過ぎるシャクティに言葉を詰まらせるベジットとライラ。
「チクショウ、チクショウ! 俺のバスターソードが、夢の大剣二刀流がぁぁぁッ!!」
両手両膝を地に、慟哭の様に叫ぶベジット。拾った素材を使って今度こそ男の子が喜ぶ大剣を手に入れようとしたその野望は、脆くも崩れ去った。
一応、後でギルドから何かしらの報酬は受けられるとシャクティから告げられるが、それで納得できる筈もなく、ベジットの涙は止まらない。
そんなベジットを不憫に思ったガレスが背中を撫でて宥めていると………。
「あぁ、それともう一つ聞きたいことがあった。先にオラリオを襲った地震、その原因について何か知っていたりしないか?」
ピタリ。シャクティから告げられる言葉に四人の挙動は停止する。ライラとアルフィア、ガレスは無表情に固まり、ベジットから距離を取る。
「………え、あ、あれ? お前ら?」
顔を上げれば、顔を背けたまま指を差してくる三人。そんな彼等にシャクティはニコリと笑みを浮かべ……。
「オラリオ騒乱の容疑者、確保。アーディ、連れてこい」
「え?」
シャクティからの無情な一言に呆けているのも束の間、手慣れた手付きで手に縄を掛けていくアーディ。
「ゴメンねベジットさん。一応規則だから」
そう言って手綱を引くアーディにベジットは今度こそ顔面蒼白となり……。
「う、嘘だ、嘘だァァァァァァッ!!」
日が傾き夕焼けに染まるオラリオに一人の冒険者の慟哭が虚しく響き渡っていく。
「────今、何か悲鳴聞こえませんでした?」
「気にするな、バカの断末魔だ」
「アハハハ……」
ダンジョンで合流したベルとベートとリリルカ三名、遠くから聞こえてきた悲しき雄叫びに白兎はビクリと肩を震わせる。
尚、その後身元引受人としてベートが迎えに行くのだった。
次回、偉業。
ベル・クラネルの冒険が始まる。