ダンジョンに超なアイツが来るのは間違いか?   作:アゴン

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皆はもう劇場版チェンソーマンは見たかな?

物語の終盤に昼飯の腹拵えにって領域展開し、マキマさんを無力化したヒロシには圧倒されましたね(存在しない記憶)

そんな訳で初投稿です。



物語93

 

 

 

「─────よっと、取り敢えず悪神とその眷族達(一味)の拘束はこんなモンでいいだろ。オッタル、そっちはどうだ?」

 

「此方も完了した。暫く身動きは叶うまい」

 

 狩猟と三大処女神の一柱、アルテミスを狙っていた不敬の輩たる悪神ラシャプとその眷族達。ベヒーモスの復活を目論む闇派閥に手を貸し、実際にやり遂げたその一行は唐突に現れた規格外、ベジットと【猛者】オッタルの手によって拘束されていた。

 

「よし、ちゃんと手足だけをへし折ってんな。縄の結び目も確りとしてるし………上手いこと手加減出来るようになったじゃねぇか」

 

「茶化すな。この程度、造作もない」

 

 ラシャプの眷族たる傭兵集団は神の恩恵を受け、その耐久力は尋常の人の枠に収まらない。傭兵という事で毒や抜け目のない反撃を考慮した二人は一先ず傭兵達の手足をへし折る所から始まった。

 

 相手は悪神に見初められた傭兵、下手に反撃の糸口を与えまいと徹底的に捻り潰す事にした二人は、手足を砕かれ、戦意も心も砕かれた傭兵達を更に身動き出来ないように縛り上げた。

 

 手足だけでなく関節部分まで砕かれているのに、その上更に縄で体の上下共にキツく縛られた傭兵達は苦悶の声を漏らす事しか出来なかった。

 

「悪いなぁアルテミス様、折角助けに来たってのに手伝わせちゃって」

 

「気にしないでくれ。私を助けに来てくれた事だけでなく、眷族達(子供達)も連れてきてくれた。本当に、心から嬉しかったぞ。ベジット(オリオン)

 

久し振りの顔馴染みとの再会に、ベジットはにこやかに微笑み、アルテミスもまた笑みを浮かべていた。頬をうっすらと紅潮させ、その瞳は若干潤んでいる。ベジットを見上げるその顔付きは正しく恋する乙女の様だった。

 

「イデデデデ、痛い、痛いって!! もう少し優しくしろぉッ!!」

 

 但し、その手には悪神を縛り上げる縄が握り締められており、その脚は件の悪神を踏みつけている。

 

 乙女のように恥じらっている一方で、小柄な体躯とはいえ悪神を踏みつける女神アルテミス。その中々に苛烈な在り方にオッタルは若干引いていた。

 

「そちらの猪人(ボアズ)は………確か【猛者(おうじゃ)】オッタルだったな。美神フレイヤの眷族、君も助力に加勢してくれるとはな。ありがとう」

 

「いえ、この身は我が女神の為。礼は不要」

 

「………成る程、フレイヤが見初める訳だ。天界にいた頃、彼女とは其処まで親しくなかったがその在り方は聞き及んでいる。彼女は美と力、そして英雄を尊び、愛していると聞く。そういう意味では君はその最たる眷族なのだろう」

 

「………そう在りたいと、願ってはいます」

 

 自身の女神以外、言葉では繕っても決して他の神々を敬いはしないオッタルだが、そんなオッタルの態度を含めて見事と認めるアルテミスに少しばかり罰が悪そうに視線を背けている。

 

 オッタルにしては珍しく照れているようだ。何て言葉にしなかったベジットもまた珍しく空気を読んでいた。

 

「あーもう! 何でよりにもよって【猛者】がここに来てるんだよ!? しかもそっちの黒髪の奴、噂のベジットだろ!? なんでそんな奴がオラリオの外に出てるんだよ!?」

 

「おろ? 俺の事知ってんの?」

 

 悪神ラシャプ。体躯は小さく他の神々とは違い侮られ易い神とされているが、司るモノが疫病や稲妻、『火をつける者』という異名からガッツリヤバい男神ではある。

 

 そんな男神をしてふざけた力を持つ眷族、オッタルとは二度目の邂逅でベジットに至っては噂で時折耳にしていた。

 

「お前の事は、既にこの下界で知れ渡っているよ。一つの派閥を一撃で屠ったりとか、第一級冒険者の人格を破壊したとか、突拍子もないモノばかりだが、ヤバい奴だってのは聞き及んでいるよ」

 

「前者は兎も角、後者の話はコイツも絡んでるぞ」

 

「おい、ややこしくなるから止せ」

 

「てか否定しないのかよ」

 

 隣で素知らぬ顔をしているオッタルに指を差す。ラシャプが口にした後者の件は自分だけでなく横にいるガチムチ猪人もガッツリ関わっている。

 

 今後オラリオの外で噂を流している奴がいたら必ず首根っこを捕まえて情報を是正してやると、ベジットは固く誓った。

 

「───で、そのオラリオ代表格があのベヒーモスを倒しに来たのか? 遠い所から随分とご苦労な事で」

 

「なに、どうせ此方も暇を持て余していたからな。気にするな」

 

 眷族も捕らえられ、ラシャプ自身も抵抗できる意思は打ち砕かれている。せめて嫌味な事を口にしてやろうかと言うが、ベジットは舌戦も得意としたらしく、此方の煽りを更なる煽りで返してきやがる。

 

 生意気な奴だ。あのベヒーモスを相手に本気で勝つ気でいやがると呆れる一方で、ラシャプはそんな自信満々なベジットに一周回って感心すらしていた。

 

「はっ、たった二人で何を言ってやがる。確かにあのベヒーモスはドロップアイテム(・・・・・・・・)から生まれた(・・・・・・)劣化種。内に秘めた力は全盛期程で無いにしろ、世界を脅かすには充分な力を秘めてやがるんだぞ」

 

「──────ちょっと待て」

 

「あ?」

 

「今、何て言った?」

 

 ふと、観念した様子のラシャプが唐突に変わったベジットの雰囲気に反応し、顔を上げる。見れば先ほどまで余裕の顔を浮かべていたベジットの表情は曇り、その顔には若干の焦りが見えていた。

 

「おいアンタ、ラシャプだったか? あのベヒーモスは何処から生まれたって?」

 

 超越然としていたベジットの態度が一変、何処か焦っているようにも見える彼の様子にラシャプの表情が喜悦に歪む。

 

「………あぁ、そうさ。別に口止めとかされてないからゲロっちゃうけど。あれは15年前に打ち倒されたベヒーモス、そのドロップアイテムが元となったものさ」

 

 初めて見せるベジットの焦りの顔にラシャプは喜悦の表情を見せ始める。

 

「やり方は単純。ベヒーモスの外皮を他のモンスターに被せ、喰わせた(・・・・)。取り込まれたモンスターは次から次へと奴の餌となり、1ヶ月も経つ頃にはご覧の有り様よ」

 

 ドロップアイテムからモンスターの再臨。悪夢の様な事実を前に、オッタルもアルテミスもその顔を曇らせる。

 

「………なんて事」

 

 千年続いた厄災の再誕。予想よりえげつない事をしていたラシャプにアルテミスは表情をしかめた。

 

 三大厄災の怪物、その一体を本来の種より劣るとは言え甦らせた。ドロップアイテムがモンスターを喰らい復活する、その事実を知れば世界は更なる混沌に叩き込まれる事になるだろう。

 

 アルテミスもオッタルも戦慄を抱く一方で。

 

(えっ、じゃあ俺が隠している黒竜のドロップアイテム、あれも扱い方次第では黒竜復活もワンチャン有り得るって………事!?)

 

 現在、黒竜のドロップアイテムこと《黒竜の鱗》はオラリオにある元廃教会の地下────今は物置部屋となっている空間に適当にぶちこまれている。

 

 一応念の為に定期的に様子を見に行っているが、基本的に《黒竜の鱗》はベジットが気で補強した布一枚のみ。

 

(一度、扱い方を見直した方が………いいかなぁ?)

 

 アルテミスがラシャプをフン縛っている一方、ベジットは抱えている厄介な爆弾(黒竜のドロップアイテム)の保管方法の見直しを検討し始める。あの黒蜥蜴め、死んだ後の方が厄介とか特級呪物が過ぎるだろう。

 

 ベジットが肩を落とし、辟易としていたその時、大砂漠の方から大気が爆ぜ、大地が揺れる。人の人知を越えた戦い、その発生源に一同は振り返る。

 

「あれは……!」

 

 爆心地。砂漠の大地が抉れた中心に巨大な怪物が姿を現す。

 

「ベヒーモス!」

 

 厳密に言えば劣化種(オルタ)、本来のベヒーモスからはその大きさの時点で遠く及ばず、本来吹き荒ぶ筈だった黒い(毒の)竜巻も見る影もない。

 

 オッタルやベジットからすれば少々毛色の異なる階層主程度。しかし、その内に秘めた神への憎悪は一度ドロップアイテムとなり、何もかもが生まれ直した所で何一つ変わらない。

 

 いや、寧ろ一度死を経験し甦った事でその思念は更に増幅、怨念と呼ばれるにまで成長したベヒーモス・オルタの遺志は瘴気となって世界を蝕み始める。

 

「へぇ?」

 

 気とは違う。溢れだす怨念の瘴気に砂漠の大地は再び汚染されていく。

 

 その様子を目の当たりにしたオッタルは一度だけベジットに問う。

 

「────加勢するか?」

 

「うんにゃ、その必要はねぇよ」

 

 怨念を纏い、瘴気を振り撒く嘗ての陸の王者。本来とは違う形で災厄を撒き散らす存在にオッタルも加勢する旨を伝えるが………ベジットは、一切危機感を持たずにやんわりと断った。

 

「オッタル、お前だって知ってんだろ? あの怪物を相手してんのは自分の知る限り最強の男だって事は」

 

「それは………」

 

「まぁ見ててやれよ。お前が目標にしていた【暴食】はあの程度の残飯軽く平らげるさ」

 

 ベジットの瞳に焦りは無く、在るのはただ純然たる信頼のみ。

 

 オッタルも視線を向ければ、怪物に比べ矮小とも呼べる小さな存在────ザルドが首を鳴らして前に出る。

 

 その足取りには微塵も翳りはなく、その闘志には些かの見劣りもない。嘗て【猛者】が幾度と挑み、そして破ってきた全てを平らげる【暴食】が其処にいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「団長め、『一度勝った相手だから楽勝だろ?』とか、ふざけた事を言いやがって」

 

 ひび割れた兜の隙間から古き疵と共に鋭い眼光が覗く。ザルドが思い返すのは自分が戦う直前、自身が団長と認めた男とのちょっとしたやり取りだ。

 

 一度勝った相手なのだから、次も勝つのは当たり前。そう笑って宣う団長(ベジット)にザルドは久し振りに蟀谷(こめかみ)に青筋を浮かべた。

 

 確かにベヒーモスは一度倒した相手であり、今回に至ってはその劣化版。嘗てのような暴威には及ばず、纏っている毒の嵐や竜巻は精々鎧の表面を軽く溶かす程度。

 

 以前ほどの脅威でないのなら、必然的に討伐するのも容易────ンな訳ねぇだろ。

 

「ふざけるなよバカが! 幾ら劣化種(オルタ)と言えど陸の王者(ベヒーモス)だぞ!? そこいらの階層主なんぞ目じゃねぇわ! それと一対一(タイマン)で勝てとか、頭湧いてんじゃねぇの!?」

 

 当時、三大冒険者依頼(クエスト)に挑んだ際はヘラとゼウス二つの派閥で対処して打ち倒したのだ。しかも決して楽勝等ではなく、十全たる準備をしてからの勝利だから、内容的にはどちらかと言えば辛勝寄りである。

 

 実際あの戦いの後、自分は戦闘不能となり後の戦いには参加出来なかった。それだけの激戦であり、それだけの死闘でもあった。

 

 それを………今度は劣化種だから一人でも楽勝だろ? とか、どう考えてもイカれポンチな思考である。

 

「そもそも俺はもう50を越えた爺だぞ。虐待反対、年寄りイジメんな!」

 

「■■■■■■ッ!!」

 

 愚痴を溢し、泣きそうになっても目の前の怪物がそれを配慮すること無く、ベヒーモス・オルタはザルドに対して容赦ない突進を行う。

 

 大質量による突撃(チャージ)。瘴気を振り撒き、滅びを撒き散らす怨念の猛追、触れただけで砕かれそうな突進を前に。

 

「────けど、まぁ」

 

「■■■■■ッ!?」

 

 止める。山と見間違う巨体な黒き怪物を、ベヒーモス・オルタの足元にも満たない矮小な人間が、振り下ろした剣により阻み完全に受け止めて見せた。

 

 瞬間、衝撃で大気が弾けて大地が砕かれる。

 

 あり得ない事象を前に、理性なき獣の目が見開かれる。すると、ザルドの肉体から白く輝ける炎が吹き出し………。

 

「可愛い甥っ子が根性見せたんだ。なら、俺も意地を見せなきゃ───ならんよなぁ!!

 

 重厚な鎧が軋み上げる程に筋肉が肥大化し、【暴食】の化身が力を振り絞ると

 

 吹き飛ばす(・・・・・)。振り抜かれた大剣の一振が、遥か巨大な怪物の体躯を宙へ吹き飛ばしてみせた。

 

 その光景に悪神ラシャプは口と両目を大きく見開き、アルテミスは口元を抑えて驚嘆を顕にしている。

 

 オッタルも目を見開く一方で、ベジットだけはカラカラと愉快そうに笑っていた。

 

「俺は悪食だ。あらゆる汚物を喰い漁り、あらゆる異物を飲み干してきた。だが………」

 

 嘗て、【暴食】だった男は一度は自ら死を望んだ。己の死がいつか英雄達の一助となるのだと信じて。

 

 あらゆるモノを貪り、あらゆるモノを平らげてきた。人もモンスターも区別無く。

 

 それが男の生き方、それしか知らないザルドという男だった。

 

 明日なんて知らない。モノを喰い尽くし、全てを平らげる【暴風】に明日を夢見る事はなかった。

 

 ────そう、思っていたのに。

 

『叔父さん見て見て! 今日はゴブリンを三体も倒せたよ!』

 

『お、叔父さぁぁん! 助けて! オバサ………じゃなくてお義母さんが、お義母さんが無茶振りしてくるのぉぉ!!』

 

『叔父さん、大丈夫? お婆ちゃんから意地悪されてない?』

 

『叔父さん。僕、叔父さんみたいな………うぅん、叔父さんより凄い冒険者になって見せるよ!!』

 

 何時からか、明日を迎えるのが楽しみだと、そう思える自分がいた。

 

 明日なんて要らないと、そう断じていた。後に続くヒヨッコ達の為にこの身を捨ててやると考える程度には、明日に未練なんて抱いてなかった。

 

 なのに……。

 

『わっ、今日は随分と豪勢ですねザルド様』

 

『今日は三人の入団祝いだ! 金の事は気にせずジャンジャン喰え! 作るのは俺じゃねぇけど!』

 

『なら威張るなよ。………いや、普通に旨ェなコレ』

 

『そ、そうなんですよ! 叔父さんの作る料理はどれも美味しくて、僕も必ずおかわりしちゃって!』

 

『やれやれ、食事くらい大人しくしてられんのかこの派閥は』

 

『それがウチの良いところさ! ようこそ三人とも! 我等ヘスティア・ファミリアへ!』

 

 何時しか、空腹に喘ぐ事はなくなった。悪食に沈むことも、強食に溺れる事もなく、ただ在るのは満たされた心地だけ。

 

 自分は弱くなったのか? 何かを喰らう事無く、何かを()む事も無い。そんな自分はもう強くなれる事はないのだろうか。

 

 それは────きっと違う。

 

 腹が満たされ、次の獲物を喰らう事はなくとも、力は不思議と沸いてくる。この力をなんと呼ぶかは今は分からないが………。

 

「さぁ、ケリを着けるとしよう」

 

 ヘスティア・ファミリアの一人として己の今を証明する為に、【暴食】のザルドは剣を天へと突き立てる。

 

「【父神(ちち)よ、許せ、神々の晩餐をも平らげることを】」

 

 極大の焔が【傾国】に灯る。それは全てを燃やし尽くす劫火であり、全てを平らげる焼滅の炎であった。

 

 しかし。

 

「………違う」

 

 オッタルは、その焔の輝きを見て以前と何処か違うことを確信する。ザルドの魔法は万物を灰塵に帰す劫火の炎、だが今放たれている炎の色は以前とは何処か違っていた。

 

 言うなれば………浄化。対象を燃やし尽くす筈だったザルドの劫火には以前とは異なる浄化の光が混じり合っていた。

 

「■■■■■■ッ!!」

 

 ベヒーモスが吼える。天に向かって吼え立て、それに呼応するように再び空が暗雲に包まれていく。

 

 逆巻いた黒い竜巻が幾つも折り重なり、巨大な暴風となって大地を汚し始める。

 

 鎧の表面が溶けていく。手足を蝕み、息を吸えば臓物を忽ち腐食させる。そんな猛毒の瘴気を前にして………ザルドは笑っていた。

 

「【貪れ、炎獄(えんごく)の舌。喰らえ、灼熱の牙!】」

 

 砂漠の大地が瘴気の嵐に包まれる中、その炎は輝きを放っていた。

 

 喰らい尽くす炎ではなく、燃やし尽くすだけの炎ではない。

 

「レーア・アムブロシア」

 

 振り下ろされる絶剣。覇撃となり、波状に広がる炎の光は砂漠の大地を覆う怨念の嵐を切り裂いていく………。

 

 そして───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「悪いな、ベヒーモス」

 

 最初に口にしたのは、謝罪の言葉。

 

「俺はもう、昔の様に【暴食】になりきれん」

 

 両断された嘗ての大敵、自らと引き換えにして討ち果たした仇敵。崩れて霧散していく巨大な怪物を前に【暴食】だった男は空を見上げる。

 

「もう、腹ぁ一杯だ」

 

 これ以上はいらない。満たされる為に喰らってきた男はこの日一つの答えを見つけた。

 

 独り貪り喰らうのではなく、仲間と分け合う方が意外と満たされるのだと言うことを。

 

 遠くから、団長の声が聞こえてくる。振り返るとニヤニヤと腹立つ笑みを携えたベジットが此方に向かって歩いてくる。

 

「これからは【美食】のザルドと名乗るのもアリかな」

 

 一先ず、此方の戦いは終わった。後はオラリオに戻り腹を空かせた連中にウンと旨い飯を喰わせてやるとしよう。

 

 ザルドの戦いは終わらない。腹を空かせた仲間がいる限り、彼の冒険も終わらないのだから。

 

 ………と、その前に。

 

「ご馳走さまでした」

 

 完全に消滅したベヒーモス・オルタ。亡骸もなく、存在すら許されなかった厄災の獣の残滓に向けて手を合わせる。

 

 舞い上がる灰の行き先には、暗雲が穿たれ、青空が広がっていた。

 

 

 





Q.なんか、ザルド君の魔法の中身変わってね?

A.死に損ない、生き長らえてしまった獣は甥っ子や新たな仲間達を知り、人に至った事で発現した焼滅の炎は異なる浄化の炎。

 それはベジットが治療する際に使用した対病の仙豆擬きを食した事で会得した浄化の剣。

勿論、対穢れた精霊にもドチャクソに有効。ヘスティア・ファミリアに於ける第二の浄化の使い手となったザルド君でした。

拍手。





オマケ。

もしもベジット&ヘスティアが15年前からいたら。

三大腕試し編その2。





 荒ぶる大海。水飛沫は悉く命を刈り取る刃となり、触れた命を無惨に咬み千切る。

 陸の王者と対を成す海の覇者。生態系を破壊し、人界を蝕む三大厄災の一角。

 リヴァイアサン。大海原を支配し、大海を操る権能を持つ海の大怪物は現在、たった一人の人間を打ち破る為にその機能をフル稼動させていた。


「ガボッ、ガババババババッババ!」

 海を操る事で海底へと叩き付け、その逆を行って空へと巻き上げ、解放した大海の大砲を惜しみ無く浴びせた。

 しかし、その人間は無傷だった。荒れ狂う海に呑まれても、大海を操り押し潰そうとも、目の前の人間はまるで堪えた様子はなく、それ処か楽しそうに笑っていた。

 海の覇者、リヴァイアサンは吼える。ここまで虚仮にしてくれた人間を滅ぼそうと、大津波を引き起こそうとその力を解放する。

 下手をすれば陸の王者を刺激しかねないが………構うものか。諸とも滅ぼしてやると、リヴァイアサンはその力を解放しようとして。

「いや、それはライン越えだろ」

 いつの間にか目の前に現れる金髪碧眼の男、その両手には光る刃が瞬いていて……。

「スピリッツ────クロスカリバーッ!!

 振り抜かれた刃は、大海諸とも海の覇者を切り裂くのだった。



「それで、今回はどうだったんだい?」

「今回は割りと楽しめたかなぁ、水着を持ってこなかったことが悔やまれる」

「ずぶ濡れだもんねぇ。はいベジット君、イカ焼き」

「おっ、サンキュー」

「それで、次はどうするだい?」

「これから夏真っ盛りみたいだし、ちょうど残る相手も北にいるみたいだから、そこへいこうと思う」

「廃棄世界かぁ、やっぱり人気とか少ないのかな」

「道中、荷物は多めに買っとくか? 念の為に暖かい毛布とか」

「そだね。………所でベジット君」

「うん?」

「このドロップアイテム………どうする?」

「なんかでかいし、嵩張るし………記念碑って事で置いとくか」

「そだね」





 その後、異変を感じたポセイドンが駆け付けると鎮座するドロップアイテムに腰を抜かすのだった。



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