ダンジョンに超なアイツが来るのは間違いか?   作:アゴン

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今更ながらダンまち21巻と外伝16巻を読了。

なんと言うか……うん。

ダンジョンにはまだまだ未知が一杯で安心したぜ!!


物語94

 

 

 

「さて、準備はこんなもんでいいだろ」

 

 迷宮50階層。深層に於ける安全地帯(セーフティ・ゾーン)にて、遠征に赴いていたロキ・ファミリアは持参していたテントを構築し簡易な拠点(キャンプ)を立てていた。

 

「ベート様、食事の用意が出来ましたよー」

 

「おう」

 

 ヘファイストス・ファミリアに続き、諸々の約束から今回の遠征に参加する事となったヘスティア・ファミリアの二人、ベートとリリルカ。

 

 テントも張り終え、後は食事を嗜んで英気を養いつつ明日に備える運びとなっている。呼ばれたベートが足を運ぶと、簡単ながら食欲がそそられるポトフが置かれていた。

 

 一口頬張ると野菜の甘味だけでなく肉の甘味が口の中に広がり、その中からピリッとした辛味がそれぞれの味を引き立たせる。

 

 閉鎖された空間である地下迷宮に於いて、ここまで手の込んだ料理を提供出来るようになったリリルカにベートは素直に舌を巻いた。

 

「また腕をあげたみてぇだな」

 

「ザルド様の教え方が非常に為になりました。ダンジョンに於ける有用なもの、保存できるものから徹底的に教わりましたので、向こう一週間は味を落とさない自信がありますよ」

 

 胸を張り、ドヤ顔を見せるリリルカだが、確かにここまでの品を出されたら認める他無いだろう。“食”に関してならある意味ベジット以上に拘りを持つザルドから直々に調理法や肉、野菜の保存方法等を伝授されたリリルカはその全てを自分の技術として昇華させ、自分の技としている。

 

「ただ、ザルド様が言うには深層でも美味い肉が取れると聞いたんですけど………ベート様、食べます?」

 

「食べるか。俺の胃袋は其処まで頑丈に出来ていねぇよ」

 

 口に出来るものなら文字通り何でも食べる【暴食】のザルド、リリルカが教わった内容にはモンスターの美味しい食べ方等もあったりしたが、正直それは試したくないと言うのがリリルカの本音である。

 

 デスヨネーと苦笑うリリルカ、それとない談笑を続けながら食事を堪能していると、そんな時ポトフの匂いに吊られた腹ペコ冒険者達が顔を覗かせる。

 

「うわー、良いニオーイ! リリルカ、ベート、何食べてんの?」

 

「あれ、ティオナさん? そちらはもう食べた筈では?」

 

「そうなんだけどさぁ。こっちのご飯ちょっと味気無くてさぁ」

 

「交渉よリリ、材料分けるからあたし達にも作ってくれない?」

 

「今なら、干し芋も付いてくる、よ?」

 

 テント越しからヒョコヒョコ顔を覗かせるのは、ロキ・ファミリアの中でも幹部として名高いアマゾネス姉妹と金髪の【剣姫】。顔馴染み達の登場に既にベートは呆れた顔をしていた。

 

「いや、普通にテメェ等はテメェ等で作って済ませたんじゃねぇのかよ」

 

「そうなんだけどさぁ。今回はレフィーヤとは別の班になっちゃってさぁ、作ってくれる人がいないんだよねぇ」

 

「本当はアンタの言う通り自分達で何とかするべきなんだろうけど………」

 

「ダンジョンでの調理失敗は命の危機、だから………」

 

「「「お願いします!!」」」

 

 巷では第一級冒険者と称され、世界でも有数の実力者と称えられる彼女達。そんな少女達が揃って飯を喰わせて欲しいと素直に頭を下げてくる光景にベートは頭が痛くなってきた。

 

「────」

 

 どうします? 視線で訴えてくるリリルカにベートは好きにしろと手で合図した。

 

「分かりました。お作りしますので材料の方を宜しくお願いします」

 

 了解を得られた事で顔を上げる三人、目をキラキラさせてテントへ戻っていく彼女達の未来を若干危惧しつつベートは冷め始めたポトフを口に含めると、横から木で出来た器が伸びてくる。

 

 なんだと思い振り向くと、其処にはニヘラと笑うヘファイストス・ファミリアの団長が鎮座しており……。

 

「いやー、武具の調整してたら食いそびれてな。手前にも一つ頼む!」

 

 なんで女冒険者と言うのは………なんて、思っても口にはしないベートだった。

 

 そんなこんなでダンジョンの深層でありながら和気藹々とした雰囲気で食事を堪能していると………ふとティオナから疑問の声が上がる。

 

「そう言えばさー、どうしてリリルカはこの間一人でウダイオス倒しに行ったの?」

 

「へ?」

 

「「ブッ」」

 

 ティオナの口から出てきた話題、それは明らかに彼女達にとってデリケートな部分。幼い頃から一緒に冒険者として活動してきた彼女達だが、成長するに連れて徐々にその機会は減りつつあった。

 

 それでも、互いに立場や目的は異なれど幼い頃からの縁は今も続いているとティオナは思っている。だからこそ、一人で先んじてウダイオスに挑み抜け駆けのようにLv.6へ至ったリリルカを不思議に思った。

 

 悪意も他意もない純粋な疑問、そんなティオナの問いに対して……。

 

「え、皆さんあの時既にLv.6になっていたのでは?」

 

「「「…………ンン?」」」

 

「なんか愉快な話になってんなオイ」

 

 何やら話の噛み合っていない四人、遠巻きで眺めていたベートは肩を竦ませ、椿は愉快そうに笑っている。

 

「え、いやだって確かティオネさんが以前酒場で顔を合わせた時言ったじゃないですか。今度の遠征の前にステイタスを更新するから、次はLv.6として深層に向かうって」

 

 更に言えば、あの時は珍しく酔っていた為に少し強気だった気もする。

 

「これで団長に振り向いて貰える~って、かなり自慢気に話されてましたよね?」

 

「…………ティオネ?」

 

「…………………………あ~ごめん、言ったかも知れない。その後にステイタスを更新して、一つのアビリティが“S”に届かなかったから、滅茶苦茶凹んだ事も思い出したわ」

 

 寧ろあの時のショックが大きかったから、その時の記憶は消し飛んだのかもしれない。

 

「ですので、遅れてはなるものかと奮起し、一人ウダイオスに挑む事になったのですが……」

 

「なんだよぉ~、ティオネの所為かよぉ~」

 

「ごめんねリリ、ウチのティオネが……」

 

「いえいえ」

 

「うぅ、悪かったわよ!」

 

 どうやら誤解は解けたらしい。和気藹々としながら何処か余所余所しかった雰囲気も今ではすっかりと氷解し、完全に蟠りを無くした四人にベートはフッと笑みを溢した。

 

「さて【凶狼(ヴァナルガンド)】、お主の得物である特殊武装(フロスヴィルト)だが……」

 

「そういや以前よりも軽く感じたな。何かしたのか?」

 

 隣に座り、ポトフをガツガツと頬張っていた椿が、思い出した様に口を開く。内容は調整していた武器の具合、最上位鍛冶師(マスタースミス)の称号を持つ椿に不手際の類いがあるとは思えないが、今ベートが装備しているモノは以前とは比較になら無い程に軽く、そして硬い。

 

 特に何か特別な事はしていないように感じるが、何やら椿は苦笑いを浮かべている。不思議に思ったベートはよくよく注意深く己の装備を見つめると、ふとあることに気付く。

 

「“気”か」

 

「その通り。お前さんの装備には手前の気が練り込んである」

 

 見事言い当てて見せたベートに椿の顔が綻ぶ、ヘファイストス・ファミリアもヘスティア・ファミリアとは主神同士が友神の仲である為、それとなく懇意にしている間柄である。

 

 自身の鍛冶の技術に何か進展があるのかも知れないと、気に付いて教えを請い願う椿にベジットは快く承諾。

 

 普段から精神やら魂やらを込める勢いで鎚を振るってきた椿だが、気を会得し、ある程度気に付いて理解を持った事である実験を試して見ることにした。

 

 即ち、気を用いての武具の精製。普段行っている鍛冶作業の他に気を纏い、練り上げながら鎚を振るった。

 

 お陰で出来上がった作品は以前よりも出来映えが良く、主神からも「中々ね」と、お褒めの言葉を戴いた程でそのお陰か昇格(Lv.6)というオマケまで付いてきた。

 

「ただな、それらの武具は確かに以前とは隔絶した業物にはなったが、同時に一つ問題が起きてな」

 

「問題?」

 

「うむ。どうやら手前が気を込めて打った一振は手前が認めた相手ではないと真価を発揮しない様なのだ」

 

「あぁ? なんでまたそんなキテレツな仕様になってんだ?」

 

「主神殿も言っていたが、やはり気を込めた事で手前の造る作品が全て一種の特殊武装(スペリオル)化となったのだろう。少なくとも第一級相当の冒険者でないと、切れ味等が恐ろしく落ちるらしいのだ」

 

 恐らくは気を込めた事で武具の求める基準値みたいなモノが出来てしまっているのだろうと、鍛冶女神ヘファイストスは語る。

 

「ほー。なら、別に関係ねぇだろ。元々テメェの打つ得物はそこいらの雑魚に扱える代物じゃねぇからな」

 

 事実、貴族や金持ちといった装備の力を自分の力と誤認して変に死に急ぐ輩は出てこなくなるだろう。

 

 自分の実力と噛み合った装備、そういう意味ではベートの辛辣な言葉にも説得力はある。

 

 ただ、それはそれとして椿には他にも懸念点があるようで……。

 

「勿論、それはそうなんだがな……」

 

「まだなんかあるのか?」

 

「いや、仮に手前が死んだら、この得物達はどうなるのかと思ってな」

 

「呪いの武器になるんじゃね?」

 

「アッハッハッハ! しばくぞ貴様」

 

 笑いながらキレ散らかす椿、ダンジョンでの夜は更けていき翌日、ロキ・ファミリアは深層の進撃を開始するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────神会(デナトゥス)

 

 それは、数ヵ月に一度行われる神々による議会。

 

 それまでに起きた出来事、昇格した人類(こども)達に対する二つ名の命名式など、情報を交換したり共有したりする場。

 

 しかして、その実態は────。

 

「そんじゃあ、タケミカヅチん所の命ちゃんの二つ名は【絶†影】に決まりやな」

 

「「「異議なーし」」」

 

「スマン命ォォォーッ!!」

 

 神々による井戸端会議である。

 

「うわぁ、相変わらず酷い」

 

「タケミカヅチも気の毒ね。桜花君や千草ちゃんは比較的マシな二つ名なのに……」

 

 神々による痛々しい二つ名を付けられ、断末魔を上げるのは天界時代から友神関係だった武神タケミカヅチ。

 

 彼の悲痛な叫びをゲラゲラと笑い転がる神々を前にヘスティアはゲンナリとした様子で見つめていた。

 

「ごめんよぉタケ、僕が二つ名を付けられたら良かったんだけど………」

 

 ヘスティアの眷族は揃いも揃ってオラリオでも上澄みな第一級冒険者として知られている。人数こそ他の派閥と比べて見劣りするが、純粋な戦闘力という点で言えば英雄の都と呼ばれるオラリオでも群を抜いている。

 

 極め付きは一つのファミリアを一撃で粉砕するという桁外れの怪物なベジットがいる。そんな色んな意味で触れたくない派閥の眷族達の二つ名なんて、ふざけて付けたらその時点で彼等に目を付けられる事になる。

 

 最悪戦争遊戯(ウォー・ゲーム)を仕掛けられ、戦争という虐殺されかねない。そういう意味では数ある派閥の中でもヘスティア・ファミリアは別格だった。

 

 尤も、それはあくまで二つ名を付けられる(・・・・・)場合の話。

 

「いや、ヘスティアの【つよつよくノ一】も大概だろ」

 

「…………え?」

 

「なんならそれを回避した俺達の英断ですらある」

 

「え?」

 

「実際それを聞かされたタケミカヅチ、メッチャ嫌そうな顔をしてたの、気付かなかったの?」

 

「えぇ?」

 

 悲しいかな、眷族(こども)達への二つ名の付ける(・・・)側としてはヘスティアも他の神々と大して変わりはなかった。

 

 しかも本神(ほんにん)は至って真面目で、出力された二つ名も本気で悩んで考え抜いた結果これだと言うのだから、ある意味で他の神々より質が悪かった。

 

「桜花くんの時は【つよつよ侍】だっけ?」

 

「俺の眷族()の時は【つよつよアックスマン】だったぞ」

 

「私の子は危うく【つよつよプリンセス】を付けられそうになったわ」

 

「なにこのつよつよシリーズへの飽くなき信頼感」

 

「な、なんだよぉ! 良いじゃないか! 眷族(こども)達が強くなったっていう分かりやすい指針になるだろぉー! ベジット君は呆れてたけど」

 

「「「呆れられてんじゃねぇか」」」

 

 ベートやリリルカ、ベジットという強大な眷族達に囲まれ、昇格=強くなった=つよつよというのが最近のヘスティアの認識だったりする。

 

 尚、関係ないがアルフィアには【つよつよサイレント】、ザルドには【つよつよパックマン】なんて二つ名を既に用意してたりしている。

 

 恐怖の象徴たる【静寂】や【暴食】よりもずっと可愛らしく親しみやすいだろうという善意しかないヘスティアの二つ名を、後にあらゆる方面から止めに入るのは少し未来の話。

 

 閑話休題。

 

「ホレホレ、ドチビのネーミングセンスが壊滅的なのはどうでもええから、次行くでー」

 

 はーいと、今回の神会司会進行役のロキに促され口を閉ざす神々達。次に犠牲になる眷族は誰か、舌舐りをしている神々の前に出てきた名前は……。

 

「ベル・クラネル。ドチビの所の子やな。所要期間は………一ヶ月と少し、か」

 

 ザワッ。とてつもない記録を打ち立てたヘスティア・ファミリアの新入り。ベル・クラネルの一ヶ月と少しというLv.2に至るまでの出鱈目な程の短時間に全ての神々がざわつき始める。

 

 通常、眷族達の昇格は一年から数年、遅ければ10年単位の時間を必要とし、最悪の場合Lv.1のまま一生を過ごす────なんて冒険者も少なくはない。

 

 今までLv.2への昇格で最短記録を立てていたのはロキ・ファミリアの【剣姫】、アイズ・ヴァレンシュタインの一年である。

 

 その【剣姫】の記録を大きく塗り替えた異例なまでの異例、当然神々はヘスティアの不正を疑うが……。

 

「なぁ、リリルカちゃんの時はどうだったんだっけ?」

 

「期間は………一年とちょっとだっけ? 偉業判定はベジットに一太刀浴びせた、だったか?」

 

「………なら、Lv.3になった時は?」

 

「…………Lv.4の【男殺し】を血祭りに上げた時かな」

 

「なら、其処まで騒ぐ事じゃなくね?」

 

「それもそっか」

 

「「「「「まてまてまてまてまて」」」」」

 

 比較対象がおかしいことに気付いていない男神二柱(ふたり)に周囲の神々が総ツッコミする。

 

「バカ、幾らなんでもリリルカちゃんを比較するのは色々と可笑しいだろうが、リリルカちゃんだってLv.4になる時はロキの所の幼女部隊と一緒に四人で階層主(ゴライアス)をブチのめしていただろうが」

 

「いやそれもそれで可笑しくね? 何で幼女四人で階層主を倒せんだよ」

 

「因みに、その後は下層の階層主(アンフィス・バエナ)単独(ソロ)討伐してLv.5になってますね」

 

「そんで先月の終わり頃、同様に階層主(ウダイオス)単独(ソロ)討伐し、晴れてLv.6になりましたね」

 

「「「「「…………………」」」」」

 

「…………やっぱ一ヶ月の昇格(ランクアップ)って言う程じゃなくね?」

 

「そうかな、そうかも?」

 

「おっ、そうだな」

 

 悲しい事に、ヘスティア・ファミリアの異常な偉業の内容にすっかり感覚を麻痺している神々、ベル・クラネルの異常な成長速度に疑問を抱く筈が、ヘスティア・ファミリアの眷族という事で変に受け入れられてしまっていた。

 

 果たしてこれは良いことなのだろうか、ヘスティアは苦笑いを浮かべるしかなかった。

 

 とは言え、流石になぁなぁで済ませる訳にも行かないので司会進行役のロキはヘスティアに念押しする。

 

「………まぁええ、ベジットが気なんてモンを流行らせた時点でこうなる事は何処か覚悟しとった。ただ一つ聞かせろやドチビ」

 

「な、なんだよぉ……」

 

「一ヶ月で昇格なんて無茶も良いところや。そんな無茶をやらかして、ベル・クラネルの人格は無事なんやろうなぁ?」

 

 ジト目で睨んでくるロキに神々はハッと息を呑む。

 

 何せヘスティア・ファミリアのベジットは眷族を高成長させる代わりに色々とやらかす節がある。ベート・ローガという嘗て起こしてはならない悲劇を起こした前例として、ロキはその事を強く追求するのだった。

 

「か、過去の件に付きましては本人も深く反省しておりまして、今回の件とは無関係であるとこの場では言わせて戴きたいかなぁと思っております」

 

 なにやら政治家みたいな事を言い出すヘスティアだが、彼女としてもベルに発現したスキル【憧憬一途(リアリス・フレーゼ)】を隠し通しておきたい所。

 

 今のヘスティア・ファミリアに正面から喧嘩を売る派閥はいないが神々とは往々にしてしつこいもの、もしスキルの件が公にされたら、様々な搦め手を使って何らかの介入をしてくるファミリアも出てくるかもしれない。

 

 そうなったらその派閥はもれなく【静寂】の逆鱗に触れる事となり灰塵に帰す事だろう。そうなったらもう大惨事、超オラリオ大戦の開幕である。

 

 ロイマンを筆頭にヘスティア・ファミリアの裏事情を知る様々な協力者が胃痛と過労で天に召される事態にまで発展しかねない。

 

 あれ? もしかして自分達、割りとヤバい爆弾抱えてる? ヘスティアは今更ながら自覚した。

 

 どうかこれ以上の追求は止めてくれー! ヘスティアは泣きそうな気持ちを必死に堪えていた。

 

「………はぁ、まぁええ。その辺りはドチビの責任やからウチは関与せん。精々眷族達を大事にしいや」

 

「そ、それは当然そうするよ! 皆僕の大事な眷族なんだ! 無益な扱いなんて絶対にしないよ!」

 

 ヘスティアへの追求(主にベジットの所為)も程々に終わり、神会はその後も恙無く進行。

 

 ただ、ベートの昇格について話題が出た時、スキル以外の詳細を説明した際は多くの神々から喝采と拍手が巻き起こるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー疲れた! 本当に疲れたー!」

 

「お疲れーヘスティア、お茶飲むー?」

 

「飲むー!」

 

 神会が終わり、護衛であるアリスと本拠地へと戻ってきたヘスティア。食堂の椅子へ力無く座り込むと、アリスからお茶を渡される間、テーブルの上にグダーッと身を乗せる。

 

「ベル君はダンジョン、アルフィア君とザルド君、ベジット君の三人はギルドに報告中、かぁ。後はベート君とリリルカ君の帰りを待つばかりだ」

 

 例の黒い竜巻の件、ベヒーモス・オルタの件は表向きベジットとオッタルが打ち倒したという事になっている。

 

 ザルドとアルフィアの存在は未だにオラリオでは秘匿扱い、嘗ての恐怖の存在たる二人の事はロキ・ファミリアを中心に様々な派閥から隠しておくようにと厳しく言われている。

 

 まぁ、それは別に良い。ヘスティア・ファミリアは探索系の派閥ではあるが、別に力を誇示したり争い事を自ら進んで起こそうとも思わない。

 

 天界にいた頃………とは言わないが、程よくのんびり過ごせればいいや。と言うのがヘスティアの細やかな望みだったりする。

 

「ま、ダンジョンの攻略とか色々あるし、そう言うのはもう少し先かも知れないけどサー」

 

 体を伸ばして凝りを解す。アリスから差し出されたお茶に舌鼓を打ちつつ、皆が帰ってくるのを待っていると……。

 

「ヘスティア、お客さん来たよー」

 

「お客?」

 

 外からの来訪者を感じ取ったアリスからの報告、折角美味しいお茶を嗜んでいたのにと眉を寄せた瞬間、凄まじい勢いでノックの音が聞こえてくる。

 

「な、なんだいなんだい神会直後に」

 

「ヘスティア、アタシが対応しよっか?」

 

「うーん、もしかしたらギルドからの急ぎの連絡かもしれないし………僕が対応するよ。アリス君も一緒に来てくれるかい?」

 

「分かった!」

 

 流石に他所の派閥からの攻撃は無いだろうが、万が一に備えて風の大精霊は連れて歩く。今更ながら、大精霊を護衛に回すとか贅沢な采配である。

 

 さて、と気を取り直して玄関の扉を開けると……。

 

「やぁ、久し振りだなヘスティア」

 

「ゲッ、アポロン……」

 

 月桂冠を被った緋色の髪の男性、神と思われる男性がお供の眷族を引き連れ佇んでいた。

 

「何か用かい? 僕は神会で疲れてるんだけど?」

 

「フン、良くも白々しい事を口にする。可愛い眷族を自らの名誉の為に地獄に突き落とす邪神め!」

 

「は、はぁ?」

 

 唐突に訪れるなり、いきなりの邪神呼ばわり。怒りよりも戸惑いの方が大きいヘスティアは目をぱちくりさせ。

 

「愛しのベルきゅんを救う為、ヘスティア! 君に戦争遊戯(ウォー・ゲーム)を挑ませて貰う!!」

 

 ビシリと指を差してくる男神、自信満々に宣戦布告をしてくる天界での顔見知りに……。

 

「えぇ……」

 

 ヘスティアは非常に面倒臭そうに呟いた。

 

 

 

 





Q.ザルドとアルフィアの存在は秘密なの?

A.秘密です。基本的には。
 それでも基本的に自由人な二人ですので、喩え気付かれても関与しませんし、相手も気付いた所で何も出来ません。

故に、事実上の秘匿扱いみたいになっております。

Q.なんでアポロン様喧嘩腰なの?

A.一応アポロン側からすれば全うな理由。
大体ベジットが原因。



次回からはロキ・ファミリアメインのお話となっております。

お楽しみに。








オマケ

もしもベジット&ヘスティアが15年前からいたら。

三大腕試し編その3。


 ────廃棄世界。

 そこは、文字通り棄てられた世界。見捨てられ、淘汰され、何もかもが死滅した死の世界。

 汚染された瘴気で満たされた世界にて。

「いやぁ、まさかこんなにもドラゴンで一杯だったとはなぁ。素材用の袋、もう少し持ってくるんだった」

 終末が封じられし風印の内部にて、その男はいた。

 汚染された瘴気、佇むだけで魂すら蝕む死の大気の中を一切異にも介さず。

「右を見てもドラゴン。左を見てもドラゴン。オマケに正面にはヌシらしきデッカイ黒いドラゴン。いやぁー、テーマパークに来たみたいだなぁ」

「テンション、上がるなぁー」

 一体一体が国をも滅ぼす厄災の竜。世界の人々にとって恐怖の具現化であり、黒い隻眼の竜は古くから伝わる終末の厄災そのもの。

 にも関わらず、男は全く動じる様子はなかった。

 ドラゴンが吼える。愚かにも一人でやって来た男を嘲笑う様に。

 しかし黒い隻眼の竜だけは男の異様さに気付いていた。

「さて、楽しませて貰おうか」

 火が灯る。漆黒の瘴気が渦巻く世界で燦々と輝く黄金の火が。

 竜が吼える。黒竜が猛る。目の前の存在を倒すべき怪物と認識し。

「さぁ、始めようか」

 竜の軍勢と終末の竜、世界の行く末を決める戦いが始まった。





「いや、ベジット君さ。流石にこれは………やりすぎじゃない?」

「そうか? これでも加減した方なんだけど?」

 星が抉れた軌跡。世界の命運を別つ戦いはホンの数分で終わりを告げた。

 但し、歴史上最も濃厚な数分間であると後にヘスティアは語る。

「大丈夫だって、ちゃんと巻き込まないよう射線角とか調節したし、ここ以外目立った被害はない筈だぞ」

「うん。いや………うん、それだけじゃあないんだけどね」

 薄々とだがヘスティアは思った。この男、もしかしたらとんでもない奴なのではないかと。

「さて、素材も回収したし、次はいよいよオラリオだ! 噂の迷宮都市どんな所なんだろうなぁー! なぁヘスティア!」

「そうだね。楽しいところだと良いなぁ」

 色々と言いたいことは多々あるが、ここまで楽しそうにしている眷族を前に小言を言うのは野暮か。

 やれやれ仕方ないと肩を竦め、ベジットの引く荷馬車に乗り込む処女神なのであった。




 馴れ初め編に続く。
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