今回は地味回。
エリザママは私の母になってくれたかも知れない女性なのだ!
そんな訳で初投稿です。
「はぁ? アポロン様から
その日の夜、ギルドへの報告やら何やらを無事に終え、
全員が舌鼓を打つ中、前祝いとはいえ折角の祝いの席に水を差すようで申し訳ないと前置きしたヘスティアから今日の出来事について話し出す。
その内容は勿論、自分達に戦争遊戯を申し込んできた神アポロンに付いてだ。
「そうなんだよ。どこぞの神が唆したみたいだけど、一ヶ月で昇格したベル君をベジット君が虐待した結果だと言い張ってさぁ、取り付く島もなかったよぉ」
「あー、成る程」
相手が悪意マシマシで喧嘩を吹っ掛けてきたならヘスティアも威勢よく応じる所だったが、今回の相手の言い分はヘスティアにとって否定しづらいもの。
普段からベルに課している特訓はそれはもう地獄もかくやという程の苛烈な内容ではあるが、14歳の少年がダンジョンに挑む事を考えればそれもやむ無しというのがヘスティア・ファミリアの眷族達の共通認識だった。
「それで、アポロン様からの申し出を受けたんか?」
「まさか。あの時は眷族の誰もいなかったし、僕だけじゃあ判断出来ないから後日出直してって追い返したよ。少しばかりアリス君の力を借りてね」
「そうなんか?」
「そうだよー。あのアポロンって神、こっちの言うことマトモに聞きもしないで捲し立てるから五月蝿くてさぁ、眷族共々私の風で吹っ飛ばしておいたよ」
アッサリとそんな事を口にするアリスだが、相手は一応この街に住まう神だ。向こうの言い分も見当違いの戯れ言で無い以上無碍に扱う訳にはいかないし、吹き飛ばした際は力加減に気を付けてはいたのだろう。
隣の席に座る風の大精霊の頭を撫でつつ労っていると、ふとベルが手を上げる。
「あのー、そのアポロンって神様は具体的にどんな神様なんです?」
「なんだベル、アポロン・ファミリアが気になるのか?」
「そうなのかい!?」
アポロンという神がどうして自分にそこまで拘るのか、不思議に思ったベルが素直に疑問を口にすると、ベジットは悪戯な笑みを浮かべて揶揄する。
天界でアポロンという神格をよく知るヘスティアとしては割りと洒落にならないのだが。
「ち、違いますよ! 僕はもうヘスティア・ファミリアの一員のつもりですし、この派閥で強くなるって決めたんです! 余所のファミリアに移籍だなんて考えられませんよ!」
「よ、良かったぁー……」
即座に否定するベルにヘスティアは心底安堵する。ジト目で睨んでくるベルに軽く謝罪しつつ、ベジットはアポロンという神に対して簡単に説明する。
「神アポロンってのは………まぁ簡単に言えば愛の多い神様って所だな」
「あ、愛の多い?」
イマイチ要領の得ないベルにベジットは頷いて続きを説明する。
「自分が気に入った相手にはトコトンまで拘る質で、相手が嫌がろうと無理矢理自分の
「む、無理矢理自分の眷族に!?」
そんなのアリなの!? そう言いたげなベルにヘスティアは深い溜め息と共に続きを口にする。
「そんな神の無茶を通すのが、眷族達による代理戦争。戦争遊戯さ」
「懐かしいなー、俺達も良く色んな派閥に喧嘩を吹っ掛けたっけ」
「私の場合は殆どあの
「「………………」」
「おい、何故そこで目を逸らす」
「「いえ、何も………」」
眷族達による代理戦争は、暇潰しで下界に降りてきた神々にとって最上級の娯楽の一つとして数えられている程である。
尚、そんなヘスティア・ファミリアは近い未来でオラリオ最強派閥の一つであるフレイヤ・ファミリアと戦争遊戯をする予定があったりする。
そしてその事実をベル・クラネルはまだ知らない。
閑話休題。
当時の事を染々と思い出して頷くザルドに対して、心底うんざりした様子のアルフィア。当時のゼウス・ヘラの戦争遊戯に巻き込まれた被害者達に黙祷を捧げつつヘスティアが続きを紡ぐ。
「そんな訳で、アポロンのしつこさは折り紙つきなのさ。僕も天界にいた頃に被害にあってさぁ、そりゃあもう酷かった」
「か、神様にまでそんな感じなんですか!?」
「そうなんだよー。あっ、でもでも! 別に僕とアポロンはそんな関係になったこと無いから! 僕は清いままだからねベジット君!!」
「いや、お前は処女神なんだからそれは当然だろう。なに言ってんだお前」
当時、天界にいた頃に一時期アポロンからしつこく言い寄られたと話すヘスティアだが、途端に慌て出してベジットに言い繕っている。
焦りに焦っている彼女にベジットはそれはそうだろうと一蹴。処女神であるヘスティアが他の神に体を許すわけがないという絶対の自信から来るベジットの言葉に、ヘスティアは「そうだね……」としょんぼりと肩を落とした。
そんな主神を不憫に思ったザルドは女神の前にデザートのプリンを置いてやる。ヘスティアは喜んだ。
「だが、そんな神アポロンの愛に嘘はない」
「え?」
「力尽くで眷族にしようとも、あの神の愛に偽りはない。自分が嫌われていることを知った上で相手に尽くし、なに不自由なく生活を守り、その眷族が命を落とした時は三日三晩大泣きして遺品を肌身離さず持ち歩いているらしい」
他にも、その眷族の墓から木が生えたら自身の聖木として扱ったりする等、眷族に対する愛情は確かなモノであると、ベジットは語る。
「神々ってのは往々にして悠久の時を生きる自分達の生活のスパイス………所謂暇潰し目的で下界に降りている奴が殆どだ」
“下界にしかない未知”。天界には介在せず、混沌に満ちた下界にのみ存在している可能性の坩堝。それを見る為、体験する為、時には眷族を玩具扱いする神も少なからず存在している。
「中には自分の趣味にかまけて
実際、アポロンに関する評判は迷惑な神という認識であっても眷族から憎まれたり、恨まれたりしているなんて話はあまり聞かない。
その迷惑さもアポロンの悪癖による弊害から来るもので、平時の時の彼の神は割りと善神寄りだったりする。
眷族でない人類に対してだって、困っているなら親身に話を聞くし、助けられる範囲であれば眷族達の力を借りて助けたりしている。
と言うか、先の黒い竜巻の件もオラリオの外に出た時は自ら率先して避難民の誘導だったり、集落の防衛に努めたりと、割りと普通に良い神しているのだ。
そもそもな話、下界に降りた神々の中で真に人類に寄り添っている善神というのは神々の中でも少数だったりする。
アポロンは悪癖なまでに愛を振り撒くが、それに見合った人類に対する愛情の深さも持ち合わせている。故にそんな神を崇拝している眷族も一定数存在している。
それがベジットなりのアポロンに対する見解である。
「フンッ、どんな意図があろうと挑んでくるなら蹴散らしてやるまで」
しかし、アルフィアとしては神の神格など至極どうでも良く、相手が善神寄りのアポロンだろうと容赦はない。
そんな、ヤル気満々な彼女に対して……。
「あっ、言っておくがアルフィアとザルドは仮に戦争遊戯になっても不参加な」
「…………は?」
何気ないベジットの一言、それを耳にしたアルフィアは信じられないと言った様子で両目を見開いてベジットを射貫く。
「当たり前だ。Lv.8を二人もとかどんな地獄だよ、相手は人数は多くても精々Lv.3がトップの中堅派閥だぞ」
「そういう団長はLv.1じゃないか」
「詐欺師め」
「アレンみたいな事言うなよ」
レベルが全てのこの世界にとって、Lv.8の冒険者の存在はオラリオにとっても上澄みの中の上澄み。
唯でさえヘスティア・ファミリアには
フ○ムにだってもう少し温情があるぞ。多分。
そもそもザルドとアルフィアは未だ表には大っぴらには出せない存在、公に出すにはまだまだ時間が必要だ。
「そもそも、お前らの存在が公になって一番困るのはベルだろうが、子供の足枷になるのがお前らの望みか? あぁ?」
「うぐぅ………」
「それを言われると何も言い返せんなぁ」
コソコソとベルに聞こえないように小声で話す三人、そんな彼等を不思議に思ったベルだが、ヘスティアとアリスがそれとなく意識を逸らすように会話をしている。
但し、ザルドがLv.8になった事はバッチリ聞かれたみたいで………。
「え! ザルド叔父さん、Lv.8になったの!?」
「ん? おぉ、この間外のモンスターを狩った時にな」
「ど、どんなモンスターだったの!?」
「そうだなぁ………」
「ベル、お前の叔父さん強かったぞぉ。まるで御伽噺に出てくる英雄みたいだったぞ」
「そうなの!? ねぇ叔父さん、話を聞かせてよ!」
「ホラホラ、折角の料理が冷めちゃうよ。小難しい話は後にして、先ずはご飯を食べようよ」
「そうだ。有象無象の神などどうでもいい。ベル、今日もダンジョンに潜ったのだろう? お前の話を聞かせておくれ」
「う、うん!」
そんな彼等をヘスティアが
確かに今は食事の団欒を楽しむべきだなと、その他諸々の話は今は横に置き、ベルの昇格を祝いながらヘスティア・ファミリアの食卓は恙無く進み、夜は更けていくのだった。
あ、因みに今回の実行犯である悪神ラシャプは女神アルテミスの一矢により恙無く天に送還されました。
「良い音だったよな」
「あぁ、スコーンッ! って眉間をぶち抜いてたな」
「相変わらず容赦ないなぁアルテミスは」
RESULT
ベル・クラネル《最終ステイタス》
Lv.1
力 :SS1156
耐久:SSS1368
器用:SS1340
敏捷:SSS1400
魔力:I0
《魔法》
【】
【】
【】
《スキル》
【
「そうだベル君、君の最初の二つ名、【リトル・ルーキー】に決まったぜ!」
「そ、そうなんですか!?」
「本当は僕の【つよつよラビット】にしたかったけど、今回はまぁ初めてでって事で無難な二つ名になったけど………次こそは君に相応しい二つ名をプレゼントするね!」
「えっ? あ、はぁ………よろしくお願いします」
「因みにザルド君とアルフィア君にも二つ名用意してあるから! その時を楽しみにしていておくれよ!」
「「っ!?」」
「御愁傷様」
どうやらヘスティアの命名のセンスは下界の人類にとってもナンセンスらしい。珍しく驚愕を露にしている【暴食】と【静寂】にベジットは憐憫の眼差しを向けるのであった。
◇
一晩の休憩を取り、遂に更なる階層への進撃を開始したロキ・ファミリア。
団長である【
他にも【剣姫】アイズや【
「流石はロキ・ファミリア、連携が上手いですねー」
「【最優】派閥の名は伊達じゃねぇな」
そんな彼等を一歩下がって後続部隊と一緒に走るのはヘスティア・ファミリアからの助っ人、【
自分の前を走るのは次代の英雄と称される人々、そんな人達と冒険に挑める自分は中々の幸運の持ち主では無いだろうか。
「これ迄の行軍もそうですが、フィン様の指揮能力はやはり凄まじいですね。彼の言葉一つで皆様がまるで一つの身体のように自在に状況に対応する様子は、見ていて心地よさすら感じられます」
「ウチの団長が称賛する程だからな。リリルカ、テメェもアレくらい出来るようになれや」
「幾らなんでもムチャ振りが過ぎますよベート様、今のリリでは精々盤面を四手先程度しか俯瞰出来ません。フィン様とはそもそも経験してきた場数が違いすぎます」
ロキ・ファミリアの強み、引いてはフィン・ディムナの強さを冷静に分析している二人にラウルは心底恐ろしく感じると共に頼もしく思えた。
色々と逸話を残し、フィン達から一目置かれているヘスティア・ファミリア。まだ彼等の実力を測れてはいないが、自分達が敬愛しているフィン達と同じ
「フィンさんの頭脳が埒外な分、ラウルさんの指揮が分かりやすいのは助かりますね」
「え?」
「あぁ、確かに凡庸で読みやすい所もあるが、それだけ連携も取りやすい。上に残したロキ・ファミリアの下っ端どもも落ち着いて対応してたしな」
「じ、自分がですか!?」
ラウルにとっては意外な事に、二人からの評価は中々に高いようだ。何をやっても二流、魔法もスキルもなく、目立った才能が無いことから神々も皮肉を込めて【
誰よりも自分に自信のないラウルがオラリオでも上澄みの強者に認められている。その事実が、どうしてもムズ痒くて頬が緩んでしまう。
「おーいラウルー?」
「他派閥の方に褒められたからって弛み過ぎでは?」
「こりゃあ、後でアキに報告だな」
「な、なんでそこでアキが出てくるっスか!?」
ラウルを含めた四人の何気ない談笑、先程まで張り詰めていた顔が良い感じに解れた様で一先ずリリルカは安堵する。
そうしている間に51階層を攻略し。
「全体、一度止まれ」
52階層に続く階段の前、そこで最初で最後のミーティングが開かれる。
「ここから先、補給は無しだ。【凶狼】と【槍の乙女】も前に出て欲しい」
「了解」
「うぐ、りょ、了解しました」
フィンから説明されるのは58階層の“竜の壺”に至るまでの道筋、正規ルートとダンジョン………否、モンスターの
昨夜の50階層でのミーティングを今一度フィンは簡潔に説明する。疑問も否定の言葉も上がることはなかった。
ただ、フィンからは一つだけ疑問点があるようで………。
「ベート・ローガ、リリルカ・アーデ。直前になってしまったが君達に聞きたい事がある」
「あ?」
「私達に、ですか?」
「あぁ。これから僕達が向かう59階層。それ以降の領域に
フィンの言う彼等とはザルドとアルフィアの事を指しているのだろう。
二人が嘗て所属していたゼウス・ヘラファミリアの最高到達階層は71階層、そんな二人を抱え込んでいるなら何かしら当時のダンジョンについて話を聞いているのかもしれない。
微かな表情の差で、得られる情報がごく僅かでもファミリアの為、引いては自分の野望の為にダメ元で活用しようとするフィンだが…………対する二人は何とも言えない表情を浮かべていた。
「………あー、なんつうか」
「申し訳ありませんフィン様、実はそう言った情報はネタバレになるからと、ベジット様自らお二人に対して箝口令を敷いておりまして……」
「そ、そうなのかい?」
「はい。ベジット様曰く『冒険とは未知を前に自らの意思と力で踏破するモノ、答えの分かる冒険程つまらないモノはない』だそうなので」
「俺達もその方針に賛成だ。だから此方の腹を探っても無駄だぜ?」
リリルカは苦笑い、ベートは悪い笑みを浮かべてフィンの目論見を看破する。あの二人から情報を抜き出そうとしても無駄だし、何よりベジットがそれを許さない。
あの二人が素直に情報を吐かないのは予想できたが、ベジット自らそれを固く禁じているとは思わなかった。
…………いや、想像は出来ていた。あの物事において公平さを重要視しているベジットが彼等の歴史そのものであるダンジョンの情報を強引に聞き出すことはしない事くらい。
ただ、改めて自分と彼との差を見せ付けられている気がして……。
「………本当に、苦手だな」
フィンは自嘲の笑みを浮かべるのだった。
◇
みんな、すごい人達ばかりだ。
私なんかよりずっと先を走ってて、気を抜けばあっという間に置いていかれそうで………。
いや、事実私は置いていかれているのだろう。如何に【学区】で優秀な成績を修めようとも、このオラリオではそんな経歴も殆ど意味を為さないのだから。
魔力という自身の唯一のアドバンテージも、この派閥ではあまり意味がない。自分がノロマに詠唱を唱えている間に、彼等はずっと先へと進んでいる。
進まなきゃ。でも、皆との差が開きすぎて私一人じゃ何もできない。
「………私、才能ないのかなぁ」
杖を握り締め、弱気を振り払うように首を振る。このままではダメだ。折角団長が自分の同行も許してくれたのだから、何としても自分も活躍しなければ!
「私、頑張ります。だから、見てて下さい─────フィルヴィスさん」
小さく呟くのはつい先日ダンジョンで知り合った黒髪の
強く、優しく、気高い。まるでアイズさんの様な私の友達。
彼女が教えてくれた魔法で、仲間達を守って見せる。
そう意気込む山吹色の妖精を、狼は冷ややかな目で見つめていた。
Q.レフィーヤ、いつフィルヴィスと接触してたの?
A.次回以降!
Q.ベジットの最大到達階層は?
A.52階層。
「最近は“狙撃”してくるドラゴンの火球を蹴り返すのが趣味です」
「そんな趣味あってたまるか」