ダンジョンに超なアイツが来るのは間違いか?   作:アゴン

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勝利の女神ニケ。三周年イベント。

序盤
「グヘヘ、皆さん良い尻しとりますなぁ」

中盤
「忘れるものか、この一分一秒を」

終盤
「もう、何も見たくねぇ……」

大体こんな感じ。

 そんな訳で初投稿です。


物語96

 

 

 

 その人と出会ったのは、遠征を終えて数日のある日。遥か先を行くアイズさん達に少しでも近付く為、一人でダンジョンに向かった時の事。

 

 調子に乗って中層まで潜り、あの時以来となるミノタウロスの群れと遭遇し、危機的状況に陥った時の事だ。

 

 その人は、まるで闇から這い出たように現れ、放たれる雷の魔法はその闇を引き裂くように美しく、鮮烈的だった。

 

 仮面を付けたその人は襲い来るミノタウロスの攻撃を避け、舞うように戦って見せた。超短文詠唱から繰り出される破邪の雷、そして此方を襲ってくるモンスターの攻撃を盾の魔法まで駆使して護ってくれた。

 

 それは私の理想像、戦いながら魔法を放つ魔導士のようでミノタウロスの群れは瞬く間に蹴散らされていった。

 

 その後、その仮面の人から厳しく小言を受けた私は、自分を鍛えて欲しいと願い出た。貴方のように戦えるようになりたい、憧れる人達に追い付けるようになりたい。

 

 そんな、私の我が儘でしかない申し出は当然ながら彼女に断られた。『自分のような醜い存在に頭を垂れるべきではない』と、諦観にも似た言葉と共に。

 

 けれど、それでも私は諦めきれなかった。去り行くあの人に何度も付き纏い、日を跨いでも尚師事する事を諦めなかった。

 

 だって、彼女の戦い方はそれだけ美しかったのだ。

 

 だからこそ、自身を醜いと卑下する彼女が放っておけなかったのだ。貴方は醜くなんかない、そう思って付きまとい続けた私は………遂に、彼女の手を握る事で引き留めることに成功した。

 

 ………我ながら強引過ぎるとは思った。実際、私に触れるなと怒りを込められた彼女の仮面越しでも分かる睨みに泣きそうになったし、実際泣いた。

 

 でも、放っておけなかったのだ。

 

 その後、しつこい私に観念してくれた彼女は自分の存在を他者に漏らさないことを条件に私に平行詠唱の基礎を教えてくれた。

 

 戦い方も、魔法の撃ち方も、学区では教わらなかった冒険者としての戦い方を、彼女は一切惜しむことなく、私に伝授してくれた。

 

 そして先日。次の遠征が決まったその日、彼女は自身の魔法を私に教えてくれた。『これで私から教えることはなくなった、この魔法をお前の冒険の役に立たせてくれ』と、彼女の雷と盾の魔法を教えてくれた。

 

 私は、教わった魔法を自分の魔法として召喚する特殊な希少スキルを持っている。遠征の事を伝える際、友好の証としてその事を伝えた。

 

 余所の派閥に自派閥の情報を教えることは本来ならあってはならない、バレてしまったら大目玉では済まないし、下手したら派閥からの追放だって有り得る。

 

 それでも、今日まで自分の我が儘に付き合ってくれた彼女に対するせめてもの礼儀として、自分のスキルを伝えた。

 

 そんな自分に、彼女は呆れた様に溜め息を吐かれ……。

 

『────仕方ない。そんなお前に何時までも仮面を付けたままでいるのは無作法だな』

 

 そう言って仮面を外し、素顔を露にする彼女に私は息を呑んだ。

 

 綺麗だった。宝石の紅緋の瞳に雪の様な白い肌、同じ女である私ですら息を呑む美しい彼女────フィルヴィスさんは私にその名前を教えてくれた。

 

 けれど、フィルヴィスさんはこの事を絶対に他者に話さないでくれと頼まれた。同じ派閥の仲間だろうと、主神だろうと、決して口を滑らせる事の無いように、と。強い、とても強い決意を滲ませた瞳に射貫かれて私は何故と問う事も出来ず、ただ頷く他なかった。

 

 けれど、それが彼女の望みだと言うのなら私は全力でこれに応えよう。それが彼女に対する信頼の応えになるのなら。

 

 だから、またこのダンジョンで出会った時、またお話が出来る場面に備えて、この遠征に貢献しよう。

 

 貴方の魔法のお陰で助かりましたと、胸を張って報告するために……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 迷宮地下、深層52階層。

 

「前方右方向より、モンスター多数!」

 

「対応します」

 

 走る。

 

 立ち塞がるモンスターを瞬く間に撃破し、目標階層に到達するまで【勇者(ブレイバー)】率いる少数部隊は呼吸すら忘れる勢いで疾走する。

 

 “竜の壺”。52~58階層に於ける階層域にて立ち止まる事は死を意味するからだ。モンスターに阻まれ、僅かでも立ち往生してしまえば階層を度外視した狙撃により諸とも焼却される。

 

 故に、58階層までロキ・ファミリアの冒険者達は一切の休憩なく駆け抜けなければならない。

 

 ロキ・ファミリアの幹部、【九魔姫(ナインヘル)】リヴェリア曰く。52階層以降のダンジョンはこれ迄の知識、経験は何一つ意味を為さないという。

 

 そんなある意味、真の意味で振るい落としとされる危険区域の階層にて、リリルカ・アーデの双槍が振るわれる。

 

 選抜された面々の中でもトップレベルの敏捷(スピード)を誇るリリルカの槍捌き、蜘蛛のモンスターの群れが瞬く間に輪切りにされていく光景に、後衛担当のラウル達は目を丸くさせる。

 

「り、リリルカさん凄いッス」

 

「あれが【槍の乙女(デミ・フィアナ)】、神格化された戦乙女の再来ってのは伊達じゃない!」

 

 ヘスティア・ファミリアでも一番槍を担っているとされるリリルカの槍、幼い頃から共に成長してきた二振りの槍。共に激闘を繰り広げ、死闘を乗り越え、その度に気と魔力を注ぎ込んできた槍は正しく魔槍と呼ぶに相応しい変化を遂げていた。

 

 鍛冶の女神ヘファイストスから賜った【ニール】と、同じく鍛冶の神ゴブニュから賜りし【無銘】。

 

 蒼と緋で分けられる二つの槍、等級で現すなら鍛冶女神ヘファイストス曰くどちらとも“第一級”。

 

 ベジットとの鍛練で洗練され、ダンジョンでの死闘で磨き上げられたリリルカ・アーデの愛槍。万軍のモンスターの群れを単騎で捩じ伏せるその戦い方は、いつしか嘗て小人族(パルゥム)達が神格化した“槍の戦乙女(フィアナ)の再来”とすら呼ばれるようになった。

 

 尤も、本人はそんなフィアナと比較されて呼ばれる事に非常に抵抗感があるようだが……それでも、そんな彼女の戦い方を見れば【勇者】たるフィン・ディムナと同格視されるのも納得せざるを得なかった。

 

 蒼と緋の槍が軌跡を描きモンスターを蹂躙する。コントラスト的な画を前にラウル達は勿論、フィンもまた感心していた。

 

(流石はリリルカ・アーデ。此方の意図を読み、最小限の活躍で道を拓いてくれる)

 

 フィンが指示を出す前に反応し、必要最低限の動きでモンスターを圧倒する。正規ルートから外れない事を意識しながら、四方八方から押し寄せるモンスターの群れを蹂躙してくれる。

 

 あの小さく、弱かった少女がよくぞここまで強くなれた。フィンの心境は親戚の子の成長に喜ぶおじさんのそれだった。

 

 そんなリリルカの活躍のお陰でロキ・ファミリアの面々は殆ど消耗せず、迷宮を進んでいける。

 

 そして、活躍しているのはリリルカだけじゃない。

 

「左からも来ます! 数は………一個師団規模!!」

 

「チッ、ウザッてぇ」

 

 悪態を吐き、気怠げな態度ではあるものの、灰の狼────【凶狼(ヴァナルガンド)】ベート・ローガは文字通り目にも写らぬ速度で加速し、モンスターを瞬殺。

 

 ヘスティア・ファミリアの副団長にしてベジットが認める神速の使い手。純粋な速さならば都市最速と謳われるフレイヤ・ファミリアの【女神の戦車(ヴァナ・フレイヤ)】に比肩するとされている。

 

 あの【暴食】や【静寂】すらも認めるヘスティア・ファミリアのNo.2。その実力は同じLv.7のフィン達ですら時折図れずにいた程だ。

 

「ハッハッハ! 【凶狼】も【槍の乙女】も派手に暴れるのぉ、見ていて気持ちが良いわい」

 

「少数派閥ゆえか、視点も広く連携も取りやすい。やや突出気味ではあるが、常に周囲に気を配ってくれているのがより有り難みを感じるな」

 

「流石はベジットの内弟子、気の先駆者の面目躍如といった所か」

 

 自分達の後輩にあたる冒険者が、メキメキと実力を付けて頭角を露にしている。特にフィンにして見ればリリルカが単騎で暴れるだけでなく、アイズやアマゾネスの双子と協力して連携し、体力の消耗を最小限にしていたり、団体行動に意識している事が非常に有難い。

 

 ベートも戦闘自体はリリルカ以上に単騎を望む癖があるが、それは何時だってラウル達だけで対処しきれない場面、死角を付いてくるモンスターの不意打ちに対して誰よりも速く駆け付けてフォローに回ってくれている。

 

 更に言えば、時折フィンですら認識出来ない速度でラウル達を守ってくれたりしている。しかも、本人達が護られた事に気付かないレベルで。

 

 あれは最早単なる速度の問題じゃない。点から点へ移動する瞬間移動みたいな代物だった。恐らくは何らかのスキルが発動している様に見受けられるが、そんな強力そうなスキルを連発しているにも関わらず、ベートの顔には一切の疲弊した様子はなかった。

 

 相変わらず頼もしさを感じると同時に、少しばかりの畏怖すら感じてしまう。これがヘスティア・ファミリア、ベジットが自ら数年かけて育て、鍛えてきた者達の強さ。

 

 今回の遠征、もしかしたら目的以上の記録にも手が伸ばせるのではないか? なんて、微かでも欲を見せたのがいけなかったのか………。

 

「っ! この気配………団長!!」

 

「っ!」

 

「狙われました。“狙撃”が来るッス!!」

 

 ラウルの声にフィンも目を見開く。遥か下から感じ取れた力の胎動、そのエネルギーの奔流を気という力の波で感じ取ったラウルが直ぐ様警戒を呼び掛ける。

 

「総員! 下からの狙撃に留意! 一気に加速するぞ!!」

 

「つ、遂に来るか! ドラゴンの砲撃が!!」

 

 ラウル達も、初めて50以降の階層に同行してきた椿も警戒心を最大限にして走り抜ける。

 

 しかし。

 

「「「「………………………」」」」

 

「────あ、あれ?」

 

「砲撃が………こない?」

 

 ラウルの警戒を呼び掛ける声から、10秒以上経過しても変化は起こらなかった。ラウルの気の感知のミス? 不気味にすら感じる静寂、ラウルも自身の気の精度に自信を無くしかけ、レフィーヤが最初に気を抜いてしまった…………その時だ。

 

「─────え?」

 

 熱線がレフィーヤの背中を掠める。足下が崩れ、熱線によって生まれた穴へと落ちていく。

 

「レフィーヤ!?」

 

「団長! レフィーヤが穴に落ちました!!」

 

「バカな、時間差攻撃だと!?」

 

「ヴァルガング・ドラゴン、いつの間にそんな知恵を!?」

 

「よもや、強化種か!?」

 

「フィン! 行くね!!」

 

「スミマセン団長、私も行きます!」

 

 レフィーヤが落ちたのを見て動揺するラウル達、直ぐにティオネもティオナが救出の為に後を追って空いた穴へと飛び込んでいく。

 

 58階層、竜の壺の底であるヴァルガング・ドラゴンによる狙撃。通常なら狙われて即座にこのモンスターによる大火球で階層を無視した砲撃が飛んでくるというのに、今回はまるで此方の動きを泳がせていたかのようだった。

 

 ガレスが強化種となったヴァルガング・ドラゴンの存在に危惧しているが、ベートとリリルカは何かを察した様で、その口をキュッと閉じていた。

 

 フィンが指示を出す────よりも速くベートが動く。

 

「【勇者】、小娘達の面倒は俺が見る。蜥蜴どもの相手をしている間にそっちは正規ルートで下りてこい」

 

「分かった。念の為にガレスも行ってくれ、皆! 急ぎ陣を変更! 急ぎ出発するぞ!!」

 

 短いやり取り、深層にて許されるギリギリの話し合いは有無を言わせること無く可決される。

 

 瞬く間に事態に対応していくロキ・ファミリア、“最優”の派閥たる所以を目にし、満足したベートは一度だけリリルカへ視線を向ける。

 

 言葉はなく、ただ頷くリリルカにベートも頷き返し。

 

「行くぞジジイ! ガキどもが蜥蜴のエサになる前に追い付くぞ!」

 

「分かっとるわ狼小僧!」

 

 ベートとガレス、二人は気を解放して穴へと飛び込み、下へ向かって飛翔する。

 

 流石は深層、初っ端から波乱に満ちた行軍である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ─────昔、夢で見たことがある。

 

 突拍子もなく高いところから空を落ちていく、恐い夢。

 

 何をしても覆らず、手足を踠いても落下速度は変わらない。グシャリ。そんな、嫌な音と共に夢から醒める悪夢。

 

 現在()、自身の落ちる先には地面よりも恐い(モノ)が待っていた。

 

 熱が迫ってくる。遥か下からの巨大な竜が放つ大火球が、一人の妖精(エルフ)を焼き尽くさんと迫ってくる。

 

 迫り来る熱が死を告げる。このままでは自分は死ぬという事実が恐怖となり、レフィーヤの感情を揺さぶる。

 

 このままでは自分は死ぬ。恐怖で身体が固まる中………。

 

「「レフィーヤァァァァァッ!!」」

 

「ッ!?」

 

 アマゾネスの双子、ヒリュテ姉妹が全身から白い炎を滾らせて垂直落下。瞬く間にレフィーヤを追い抜き、迫り来る大火球に刃を向ける。

 

「合わせなさい、ティオナ!」

 

「オッケー!!」

 

 視界を埋め尽くす大火球、当たれば第一級冒険者も無傷では済まない熱の塊を前に、二人は刃を構える。

 

 それは、対新種のモンスターが吐き出す酸に対抗するための代物。本来の得物とは異なるが、それでも構わないとアマゾネスの姉妹は己の武器に自身の気を浸透させる。

 

「「ハァッ!!」」

 

 裂帛の気合いと共に振り抜かれる刃は大火球を╳字に切り裂き、真空の刃はそのまま打ち出したヴァルガング・ドラゴンの首を打ち落としていく。

 

「ヨッシ、狙い通り!」

 

「まだよ! 気を抜くなバカティオナ!」

 

「っ!?」

 

 狙ってくるのはヴァルガング・ドラゴンだけじゃない。大きな穴となったダンジョンの脇道、本来冒険者達が通る筈の通路から無数の竜種が三人目掛けて食らい付こうと口を開く。

 

 危機などまだ終わっていない。雪崩のように起こる窮地に流石のティオネも顔をひきつらせる。

 

「ティオネはレフィーヤをお願い! 下からの砲撃は私が防ぐ!」

 

「っ、分かった!」

 

 問答の暇はない。たった一言、瞬きすら及ばない刹那の逡巡がダンジョンでは自分達の命運を別つ。

 

 妹の言葉に即座に頷き、レフィーヤの下へと急ぐ。上からは小型竜種が、下からは二体目のヴァルガング・ドラゴンがそれぞれレフィーヤ達を狙う。

 

(───私の所為だ。私の所為でティオネさんに、ティオナさんに迷惑を掛けている! 足を引っ張っている!)

 

 誰かに何かを任せてばかりで、自分の力では何も出来ない。そんな自己嫌悪がレフィーヤの内から湧き出てくる。

 

 このままでは自分は本当に唯のお荷物だ。ならせめて、せめてこの一瞬だけは………!

 

「“誇り高き戦士よ、森の射手隊よ。”」

 

「まさかッ!?」

 

「レフィーヤ!?」

 

 あの時にフィルヴィスからは並行詠唱のコツは教わった。詠唱最中の動き方と、魔力の暴発を防ぐやり方を。

 

『忘れるなレフィーヤ、私達冒険者が最終的に求められるのは【勇気】、それさえ忘れなければどんな困難にだって抗える』

 

(はい、フィルヴィスさん!)

 

「“押し寄せる略奪者を前に弓を取れ。同胞の声に応え、矢を番えよ。”」

 

 謳が紡がれる度にレフィーヤの内側から魔力が溢れ出す。

 

 モンスターがその顎を開き、レフィーヤへと迫る。

 

 しかし、そのモンスターの噛み付きをレフィーヤは身を捩る事で回避。そのまま壁へと着地し、駆け抜けるように脚を前へと動かせる。

 

「“帯びよ炎、森の灯火。撃ち放て、妖精の火矢”」

 

「二人とも 来るよ!!」

 

 瞬間、下から二体目のヴァルガング・ドラゴンがその顎を開く。集束されていく熱量、逃がしてはならないと取り巻きのドラゴン達が下からも押し寄せてくる。

 

 上と下からの波状攻撃、逃げ場はない。しかし彼女たちにとって選べる選択肢は元から一つしか存在しない。

 

「“雨の如く降りそそぎ、蛮族どもを焼き払え”」

 

 詠唱は完了する。膨大な魔力の塊がレフィーヤの杖に顕現する。

 

 しかしてレフィーヤは気付かない、自身の練り上げる魔力の他にもう一つの力が込められる様を。

 

 それは“学区”にて学んだ魔力とは異なる生命の力。練り込む、練り上げ、無意識に高めるその力は輝きとなって空洞のダンジョンを照らし出す。

 

 そして。

 

「【ヒュゼレイド・ファラーリカ】!!」

 

 解放された力の奔流が数千に及ぶ炎の矢となって、場を埋め尽くすモンスターの群れを射貫いていく。

 

 上からの小型の飛龍を、下から迫るヴァルガング・ドラゴンを含めた全てのモンスターに余すこと無く降り注がれる。

 

 上下共に降り注がれる炎の矢は、着弾と同時に連鎖爆破を引き起こし、モンスターを粉微塵に吹き飛ばす。

 

 深層のモンスターすら通す規格外の魔力、その力は【九魔姫】が自身の後継と認める程。

 

 しかし───。

 

「ごめんなさい!!」

 

「え?」

 

「レフィーヤ?」

 

「一体、免れました! ヴァルガング・ドラゴンです!!」

 

 竜の壺の底で待つ大型の竜が、顎を開いて待ち構える。

 

 第二の大火球が来る。急ぎティオナが止めようと───。

 

「やりゃあ出来んじゃねぇか」

 

 灰の閃光が三人を追い抜いていく。飛翔し、脚に気を練り上げる狼は……。

 

「死ね、クソ蜥蜴」

 

 “気円脚”。振り下ろす一撃で巨大な竜を両断し、その余波で周囲の竜種を蹴散らすのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 





Q.ベートの最終到達階層は?

A.52階層。

主な理由は。

「おっ、追加の大火球キター! ほれベート、パース!」

「パスじゃねぇッ! ンなもんこっち向けてくンなぁぁぁ!?!?」

Q.なんでヴァルガング・ドラゴンの狙撃遅れたの?

A.上記のやり取りが深く関わっている模様。






オマケ。

もしもベジット&ヘスティアが15年前からいたら。

オラリオ馴れ初め編。


「ゲホッ、ゲホッ、クソが、こんな時になんて無様を………」

 当時の私は、強くなることに夢中で何一つ省みる事が出来なかった。

 不治の病にこの身を侵され、医神にすら匙を投げられた私に選べる選択肢はただひたすら強くなることしか出来なかった。

 半身である妹の才能まで喰らって得られた力。なんでも良い、妹を救えるのならどんな力だって惜しまない。どんな呪いだって受け止めてやる。

 けれどこの日、私は焦りのあまり自身の限界を見誤っていた。未だLv.3の未熟者。忌々しい女帝やヘラから無様を晒すなと釘を刺されていたのにこの体たらく。

 嗚呼、忌々しい。叶うことなら、この身体を捨ててしまいたい。妹を護れず、救えない役立たずな肉体など……!

 そうしている間にもモンスターが迫ってくる。立たなければ。

 立って、立ち上がり、モンスターを駆逐する。強くなって妹を救わなければ、何のために自分は姉として生まれたのか。

「ゲホッ、ゲッホゲホ、ぐぁぁ………」

 咳の痛みと衝撃で呼吸が止まる。視界がブレる。迫り来るモンスターの群れを蹴散らさねばならぬと力を無理矢理にでも使おうとした………その時だ。

「あん? どうしたお嬢ちゃん、こんな所で一人で何てよ」

 ソイツは並みいるモンスターの群れを一撃の元に粉砕して見せた。

 何気ない腕の横凪の一振。

 見えなかった。大抵の相手の技は初見で見破ってきた私が唐突に現れた黒髪の男の動きを、全く、挙動すら目にする事は出来なかった。

「失………せろ、邪魔………だ」

「おっと、おい、大丈夫かよ?」

 薄れ行く意識、妹以外に他人に触れて不愉快と感じないのはいつぶりだろうか。

 気付けば、私はディアンケヒト・ファミリアのベッドの上に寝かされて、更に奇妙な事にその日以降、暫くの間、私の身体は好調だった。





「どうだったベジット君、初めてのダンジョンは」

「巨人とかいたし、結構面白そうな所だったぞ。ただ、途中で病人と出会ったから早めに切り上げたけど」

「びょ、病人?」

「あぁ、顔色悪かったし咳も酷かったからさ。俺の気を分けた後はディアンなんとかって医神様に預けてきた」

「はぁ、そりゃあお疲れ様」

「それより、明日はいよいよヘファイストス様の所に行くんだろ?」

「そうだよー。ベジット君が拾った素材、高く売れると良いね。1個500万とか」

「どうかなー? 最後の竜以外大した手応え感じなかったし、精々100万とかじゃね?」

「夢がないなーベジット君は」

 オラリオへやって来て初めての夜。ヘスティア・ファミリアの処女神と唯一の眷族はそんな談笑と共に1日を終えるのだった。

 女神ヘファイストスの胃が爆散するまであと───。

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