ダンジョンに超なアイツが来るのは間違いか?   作:アゴン

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 いやー、まさか昼飯ノ流儀が閉じない領域でも出せるとか。
飯に対する拘りと良い、宿儺と良い関係になりそう(笑)

そんな訳で初投稿です。


物語97

 

 

 

「スキルと魔法が発現した????」

 

 ベートとリリルカが深層で大暴れをしていたその頃、【竈火の館】では夕飯を終え、自室にて待機していたベジットは相談しにやって来たベルの一言によって困惑に満ちた声を出す。

 

「は、はい。さっき神様にステイタスを更新して貰って、その時に発現した事が分かって………」

 

 スキルや魔法は冒険者にとって一つの必須要素であり、時には二つ名の代名詞になる時もある等のある種の象徴的な代物である。

 

 当然ベルも常日頃からスキルや魔法の発現に期待していたし、今回の昇格で内心ワクワクしていた。

 

 しかし今回、慣らし運転の後の更新を行った際の自身のステイタスを見て、一度に二つも発現したスキルと魔法にベルは喜び以上に困惑していた。

 

「ふーむ、取り敢えず見てみなきゃ何も言えんわな。ベル、写しはあるか?」

 

「は、はい!」

 

 こちらです。と、手渡された羊皮紙に目を通すと確かに見慣れぬ項目が二つ程追加されていた。

 

 Lv.2に昇格した際のステイタスは全てのアビリティが初期化され、追加アビリティの“幸運”が追加された程度。

 

 けれど今回、Lv.2となって初めての更新でスキルの欄に【英雄願望(アルゴノゥト)】。魔法の項目には【ファイアボルト】とそれぞれ追加されている。

 

「【英雄願望】、効果は………能動的行動に対するチャージ実行権、か。ロックマンかな?」

 

「へ? ろ、ろっく?」

 

「いや、何でもない。しかしチャージ(溜め)とは手数の攻撃を得意としているベルには丁度良さげなスキルじゃないか」

 

 ベルは体格の事もあって一撃で何もかもを吹き飛ばす一撃必殺! みたいな攻撃はまだ困難とされており、その代わり俊敏の数値が高く、基本的にはメイン武器の短剣を使って戦う速度重視のアタッカーを目標にしてきた。

 

 手数で火力を補うベルにとって、行動に溜めを作れるチャージというのはベジットから見ても中々面白そうなスキルである。

 

「しかし【ファイアボルト】か。詠唱式は無さそうだが………まさかアルフィアと同じ超単文詠唱なのか?」

 

「ど、どうなんでしょう? まだ試していないので何とも……」

 

 加えて“速攻魔法”と書かれているファイアボルトについては明確な詠唱は書かれていない。恐らくはアルフィアの【福音】と同じ、一言詠唱(ワン・ワード)で発動できる超短文詠唱の類いなのだろう。

 

 この魔法も【英雄願望】と合わされば面白い使い方が出来るかもしれない。ベルの見せる新たな可能性にベジットは面白そうに笑みを浮かべた。

 

 ただ、一つ気になることと言えば………。

 

「しかし、スキルは兎も角どうして魔法が? 言っちゃ悪いが、お前にエルフの様な魔法の才能は無いと思っていたが………」

 

 魔法はスキルとは異なり余程本人に素養が無ければ開花することはない才能。魔力に富んだエルフや、規格外のアルフィアといった素養を持つ者で無ければ発現することは滅多に無いとされるモノ。

 

 だからベルには魔法よりも気を纏って戦う、純粋な戦士タイプの育て方を目指していたのだが……。

 

「ぼ、僕もそう思っていました。ただ………」

 

「ん? なんか心当たりあるのか?」

 

 ベル本人もそれは重々承知しているみたいだが、口振り的には何か心当たりがあるようだ。何だと思い訊ねると、オズオズとベルは後ろに隠していた一冊の本を差し出す。

 

 開いてみれば、そこにはまっさらな状態。文字一つ描かれていない本の中からは使用された魔力の残滓の様なものが感じ取れた。

 

「成る程、魔導書(グリモア)か」

 

 魔導書(グリモア)。それは言うなれば読んだ者に魔法を授けるという凄まじい効果を持った超希少物。

 

 その価格は並みの魔剣を容易く凌駕し、大手の派閥ですら中々手が届かないとされている冒険者垂涎の一品。

 

 ヘスティア・ファミリアも二、三冊購入すれば資金難に陥るとされる超高価な物品。そんなモノを何故ベルが持っているのか。

 

「じ、実は今日ダンジョンの帰りにシルさんにお店の忘れ物だから預かってくれって頼まれちゃいまして、物語の本かと思ってつい好奇心で中を覗いていたら………いつの間にか寝ちゃってて」

 

「…………」

 

 心底申し訳なさそうにしているベルだが、ベジットは苦笑いを浮かべる他なかった。

 

 恐らくは某美の女神からの贈り物なのだろう。具体的には先の怪物祭での一悶着に対する彼女なりの謝罪と、昇格を果たしたベルへの些細な贈り物(プレゼント)

 

 本当にベルの事を気に入ってるんだなぁと、ベジットは焦っているベルに生暖かな視線を向ける。多分、ステイタスを目の当たりにしたヘスティアも似たような顔をしていたのだろう。

 

「───因みに、ヘスティアはなんて?」

 

「魔導書の件に関しては此方で何とかするから、君は気にしなくていいって………あの、本当にすみません団長、僕の不注意の所為でファミリアに迷惑を掛けてしまって」

 

「気にすんな。ヘスティアの言う通り、この件に関しては俺とヘスティアに任せとけ」

 

「で、でも………!」

 

「そんな事より魔法だ魔法! ベル、早速試し撃ちに行こうぜ!」

 

「えぇ!? い、今からですか!?」

 

 既に外は暗く、夜の帳が降りている。ベルも夕飯を終えて後は部屋で身体を休ませるつもりだったのだが、これからダンジョンに向かおうと誘ってくるベジットに目を丸くさせる。

 

「ベルだって、本当は自分の魔法がどんなモノか気になってるんだろ? 取り敢えず上層辺りで試してみようぜ!」

 

「は、はい!」

 

 どういう訳か、自分よりも楽しみにはしゃいでいる団長(ベジット)にベルも嬉しそうに笑みを溢す。

 

「おっと、どうした団長、ベル、そんなにはしゃいで………ダンジョンにでも向かうのか?」

 

「おっ、ちょうど良い、ザルドも来いよ。ベルの魔法がどんなモノか見てみようぜ」

 

「ほう! ベル、魔法が発現したのか。待ってろ、今夜食を用意してくる」

 

 途中、明日の仕込みを終えたザルドと合流し、夜食の弁当を持参しながら、三人は夜のダンジョンへと向かう。予想通りベルの魔法は一言唱えれば発動すると言う速攻魔法に相応しく、アルフィアの【福音】以上の代物にザルドも面白そうだと笑っていた。

 

 その後、【英雄願望】と併用して魔法を使わせたり、最大連射数や弾数を試したり、途中魔法の使いすぎで精神消耗(マインドダウン)で気絶し掛けたベルにありったけの精神回復薬(マインド・ポーション)を飲ませて連射(グミ射ち)させたり、更には界王拳と【英雄願望】の併用など、男三人によるバカ騒ぎは朝方まで続いた。

 

 初めての魔法に大はしゃぎのベル、甥っ子の成長に喜ぶザルド、ベルの魔法やスキルの使い方をどんな風に教え、魔改造してやるかと企むベジット。

 

 そんな、色んな意味で魔法を楽しんだ三人は朝帰りの後、怒れる灰色の魔女の福音によって折檻されるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 迷宮第56階層。迫り来るモンスターを駆逐しながらロキ・ファミリアは正規ルートを押し進む。

 

 ヘスティア・ファミリアからの助っ人、リリルカ・アーデの献身的な活躍によりフィン達が保有するアイテムはまだ余裕があり、リヴェリアやアイズも殆ど魔力を消費しないまま突き進む事が出来た。

 

「もうじき57階層だ。リリルカ・アーデ、今なら補給に若干の間がある。今の内に一度下がり、体力の回復に努めてくれ」

 

 これまで、アイズやフィンと連携したりラウル達のフォロー等幅広く活躍していたリリルカだが、フィンはここで彼女の一時後退を指示する。

 

 現在“竜の壺”と称される階域、その底にあたる59階層は現在戦ってくれているベート達のお陰でフィン達はヴァルガング・ドラゴンの狙撃に狙われずに済んでいる。今の内に階層を踏破し、合流を急ぐ。

 

 その間、例の連中に襲われる可能性を考慮すれば、リリルカ・アーデに与えられる小休止はここしかない。【勇者】フィン・ディムナの指示に従い、リリルカが一度ラウル達の所へ下がろうとした………その時だ。

 

「っ! フィン、前!」

 

「!」

 

 アイズに促されて視線を向けると、無数の巨大な蟲の群れが押し寄せてきた。

 

 アレはフィン達ロキ・ファミリアが煮え湯を呑まされた強力な酸を内包した生きる爆弾。予想通り現れた異常事態(イレギュラー)にフィンは彼女(・・)に指示を出す。

 

「アイズ!」

 

「うん、任せて」

 

 迫り来るモンスターの群れは自分達の射程範囲に入ったと思ったのか、一斉に強酸を吐き出す。

 

 強竜(カドモス)すら殺す酸の濁流、しかし飛び出すアイズの目には微塵の焦りも恐怖もなかった。

 

目覚めよ(テンペスト)

 

 口ずさみ、纏うのは精霊由来の風。それは母とは違いモンスターを屠り、何もかもを破壊する暴風。

 

 アイズにとっては、ただモンスターを殺し尽くす為だけの道具。

 

 感傷なんてない。思うことなんて無い。全ては黒竜を、自分から全てを奪った黒き厄災に復讐する為のモノ。

 

 …………でも。

 

『───そうか。その風は母ちゃんからの贈り物なんだな。じゃあ、頑張って鍛えて極めねぇとな。いつか取り戻す母ちゃんにしっかり自慢できるようにな』

 

 そんな自分の風を、あの人は笑ってそう言ってくれた。自分の力の使い方を一緒に考えてくれた。

 

 これはベジットから気を教わり、リヴェリアと一緒に考え、鍛えて、編み出した一種の必殺技。

 

 Lv.6になって、【精癒】と共に発現したとあるスキル。ロキ()が唖然となり、リヴェリア()に呆れられた希少スキル。

 

「───纏え、【覇光】

 

 剣に風と気を織り交ぜて光を灯す。風と光が融けていく音、その音が何処か鐘の音にも似ていた。

 

 アイズは、この音が気に入っていた。心地よく、優しい鐘の音。聞けば力が湧いてくるような、暖かくて力強い鐘楼の音。

 

 この音が聞こえるのなら、自分の風も悪くはない。押し寄せる強酸の雨を前にアイズは小さく微笑み────振り抜いた。

 

 光が放たれる。酸の雨を消し飛ばし、ダンジョンすら両断する勢いのある斬撃は光の一閃となって蟲の群れを消滅させる。

 

 アイズの脳裏に過るのは数年前に見せたベジットの光の剣。一人の女の子を救う為に世界ごと要塞を切り裂いた黄金の剣。

 

「まだまだ、遠いなぁ」

 

 何もかもを吹き飛ばした跡地を前に、アイズは一人不満そうに溢すのだった。

 

 

 

 

 

 

「まさか、【剣姫】がここまで力を付けていたとは………」

 

「伝えなくては。“エニュオ”に………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 58階層。“竜の壺”と称される階層域の底、正規ルートで辿り着いたフィン達。

 

「皆、無事か?」

 

 見れば、58階層に集まっているドラゴンの群れが悉く魔石を砕かれ、灰となって霧散している。

 

「おぉフィン、アイズ達も。そっちも問題なく来れた様じゃな」

 

「途中、例のモンスターに襲われたけどね。何とか最低限の消費でここまで来れたよ」

 

「此方も、大した損害が出ずに済んだわい。【凶狼】様々じゃったよ」

 

「此方も似たようなモノだったよ」

 

 大斧を担ぎ、小さく息を吐く。何処と無く呆れた様子で語るガレスに何となく察したフィンも苦笑う。

 

「もー! アタシの獲物を横取りするなんてー! ベートのバカ! アホー!」

 

「ハッ、ノロマなテメェが悪ぃんだろうが。第一級(Lv.6)になってチッとはマシになったかと思ったが、相変わらず鈍重だなァ」

 

「そう思うなら少しは此方に回してよー! ベートばかり暴れるから、アタシは不完全燃焼だよー!」

 

「知るか」

 

 ワーギャー騒ぎ立てるティオナを軽くあしらうベート、そんな二人の数年前から変わらぬやり取りに遠巻きで眺めていた三巨頭も思わずホッコリと力が抜けてしまう。

 

「団長」

 

「あぁティオネ、君もレフィーヤのフォローお疲れ様」

 

「いえ、レフィーヤの魔法で状況を切り抜けられましたし、其処まで大変ではありませんでした。………ただ」

 

「ただ?」

 

 ティオネからの進言、普段はフィンを前にするとこれでもかとスキスキアピールを全面に押し出して来る彼女だが、その表情は何処か険しい。

 

 珍しい彼女の反応にフィンも顔付きを変え、詳しく聞き訊ねると、ティオネは此方へと59階層へ続く階段へ案内する。

 

「団長、確か59階層からは極寒の寒冷地帯が続くと、そう仰っていましたよね?」

 

「…あぁ、通称『氷河の領域』。嘗てゼウス・ヘラの眷族達からもたらされた情報だ。間違いはない筈だが……」

 

 疑問を投げ掛けてくるティオネにフィンも気付く。本来であれば59階層は極寒の冷気で満ちているとされ、その寒さは第一級冒険者の動きすら阻害させる程。

 

 しかし、それ程の冷気だというのに階段の奥からは全くその冷気が届いてこないのだ。

 

 あの二大派閥が虚偽の情報を流していたとは思わない。ここから先に待つのは神々すら予想しなかった未知が待ち受けているのだと、本能的にフィンは察知した。

 

 脳裏に過るのはこれ迄何度も遭遇してきた新種のモンスター、冒険者としての直感と強くなる親指の疼きに一瞬だけ思考を巡らせ……。

 

「総員、半刻の後に59階層へ向かう。速やかに休息と食事を摂れ」

 

 【勇者】は前進を選択する。それは未知を前に昂る冒険者の性か? それとも【勇者】である実利を得る為の選択か。

 

 どちらでもあって、どちらでもない。フィンが前進を選択した理由は───危機感。

 

 この先に待つ未知、それを放っておけば未曾有の大災害に繋がるという根拠の無い直感によるもの。

 

 59階層、其処で待つのは嘗て無い脅威なのだと、この時フィンは確信していた。

 

 そして───。

 

「…………氷河の領域。ソイツがまさかこんな密林に様変わりとはな」

 

 一時の休息を終え、改めて59階層へ降り立ってきたフィン達。そんな彼等の眼前に広がるのは極寒の大地ではなく、いっそ蒸し暑ささえ感じられる密林地帯だった。

 

 更に言えば、この何処と無く淀んだ空気をリリルカとベートは知っていた。

 

「ベート様」

 

「あぁ、似てンな。24階層の食糧庫と」

 

 それは以前、ベートとリリルカが24階層での異変解決に向かった際、体験したとされる異形の空間。ダンジョンの一部を改編し、自らの領域に異常空間。

 

 あの時の空気と何処と無く似ていた。

 

(アイズさんも………気付いているみたいですね)

 

(なら、やっぱ“決まり”か)

 

 二人が遠征に出る前、アイズの母親たるアリス(アリア)は警告に似た助言を口にした。

 

『もしかしたら深層には私に類する存在がいるかもしれない。どうか、アイズの事をお願い』

 

 アイズはアリアの娘であり、アリアは風の大精霊。その彼女が自分に類する存在がいるかもと忠告してくる事から、待ち構えている存在は…………恐らく。

 

「っ、アレは!?」

 

「宝玉の女体型(モンスター)……」

 

「寄生しているのは、死体の王花(タイタン・アルム)なのか!?」

 

 密林の中に唐突に現れる開けた空間、夥しい灰の中に巨大なモンスターが佇んでいた。

 

 女体型のモンスターの足下に集るのは極彩色の魔石を持つ新種のモンスター。傅き、自らの魔石を捧げては灰となって消えていく

 

 その異様な光景にその場の全員が総毛立つ。密林の中に唐突に現れた開けた空間、そこにある夥しい灰の山が全て目の前のモンスターに捧げていたのだとしたら……。

 

「不味い、強化種か!?」

 

 刹那、産声にも似た叫びが59階層に響き渡り、巨大モンスターの先端が膨れ出す。

 

 膨れ上がったそれは、まるで蕾のよう。そして、花開く花弁の中から現れるのは………。

 

「…………うそ」

 

『────アリア』

 

 『精霊』。神々が地上に降りる以前より、人類に助力していたかの存在が無邪気に微笑みアイズ(アリア)を見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウラノス!!」

 

 祈りの祭壇にて、創設神は瞠目する。

 

「やはり………か」

 

 古代、神々が降りる以前。

 

 神々の意思を受け取り英雄に助力した数々の『精霊』達。

 

 ダンジョンに潜り、モンスターに喰われその在り方が反転してもなおその自我を保ち続けてきた。

 

「神々の子とモンスターの融合。これも、下界の未知か」

 

 アイズ・ヴァレンシュタインに持たせたとある魔道具のアクセサリー、そのアイテムを通して顕になる光景にウラノスは目を見開いていた。

 

「『穢れた精霊』。嘗て人類に助勢してきた神々の子が、人類に牙を向けるか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………どうするウラノス。ベジット、呼ぶか?」

 

「……………………………………………………保留で」

 

 

 





Q.アイズたん、強すぎじゃね?

A.数年に渡り、機会があったら面倒を見てくれる激強おじさん(ベジット)がいたらそりゃ強くなるよね




オマケ。

もしもベジット&ヘスティアが15年前からいたら。

オラリオ馴れ初め編。


 とある酒場。ダンジョン帰りの冒険者で賑わい、酒を浴びるように呑む冒険者達の間でその空間だけは異質な空気を纏っていた。
 店内の端、人の目に寄り付かない隅の隅。目の前に置かれたエーテル酒を前に暗い表情で俯く二つの影。
 ご存知、女神ヘスティアとその眷族ベジットである。

「……ねぇ、どうするのさ」
「……どうするって?」
「三大クエストだよっ! 君が腕試しで倒した三体の大物モンスター!! どうすんだよ、ヘファイストス滅茶苦茶怒ってたよ!?」
「怒ってたっつーより発狂してたな」

 オラリオに向かう道中、腕試しで手応えのありそうなモンスターを片っ端から見付けてはぶちのめして来たベジット。時折手に入れたドロップアイテムを手土産に天界の頃からの神友であるヘファイストスと懇意にしようとした矢先、それは起きた。

 手に入れた陸の闘牛っぽいモンスターと黒い隻眼の竜のドロップアイテム。その入手方法と経緯を説明し、唯一持ち出せなかった海のシードラモン擬きなモンスターの事を話していると、突然ヘファイストスは震えだし、滂沱の如き冷や汗を流している。


 彼女の質問に悉く是で答えると、突然女神ヘファイストスは発狂し地に伏せた。その後落ち着きを取り戻した彼女に件の三体のモンスターとその歴史を説明すると、話が進む度にベジットとヘスティアは顔を青くさせていた。

 三大冒険者依頼。それは詰まる所、人類が総力を上げて挑み、打ち勝たなくてはいけない終末機構。

 いつか来る人類との決戦、下界と人類の命運を懸けて挑まなくてはならない生きた厄災をこのベジットは腕試しと称して蹂躙。人類が総力を上げて挑まなければならない試練をたった一人で片付けてしまったのである。

 ヘスティアは懇願した。なんとかならないかと。

 ヘファイストスは答えた。無理と。

 この事が世に広まれば、自分達が世間の槍玉に挙げられるのは必定。最悪の未来を回避すべく、女神と眷族が選んだ選択肢は……。

「ま、まぁ今考えた所で答えなんてでないんだ! 今は呑もう! そして忘れよう! 明日は明日の風が吹くってね!!」

「そ、そうだね! それしかないんだからそれでいこう! 未来の話は未来の僕達に任せればいいさ!」

 アハハ、オホホと笑いながらヘスティアとベジットはオラリオでの一夜を堪能する。
 そんな華麗なる現実逃避の一晩を過ごし……。

「おい、おい貴様。私に何をした」

「んあ?」

 翌朝、ダンジョン向かおうとしていたベジットの前に灰の少女が現れた。





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