ダンジョンに超なアイツが来るのは間違いか?   作:アゴン

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あと一月で2025年が終わるってマジ?

そんな訳で初投稿です。


物語99

 

 

 

 ベル・クラネル。

 

 今から1ヶ月と少し前にオラリオへやって来た若干14歳の少年。オラリオの有名な冒険者や英雄に憧れて田舎の故郷からやって来た如何にもなお上りさん。

 

 昔は結構有名な冒険者だったらしいお義母さんや叔父さんから鍛えられ、童顔な顔つきとは裏腹に中々鍛えられている肉体をしており、ヘスティア・ファミリアに入団してからは団長であるベジット氏の下で日々鍛練に励んでいる。

 

 一般的な冒険者とは違って物腰も柔らかく、素直な性根だからか此方の提供する知識や情報は瞬く間に吸収、自分の知識としている。

 

 まだまだ駆け出しで、色々と心配が耐えない純真無垢な少年、それが私から見たベル・クラネルの印象だった。

 

 けど……。

 

「そうだよねぇ。ベル君、ヘスティア・ファミリアの眷族だもんねぇ」

 

 Lv.2。オラリオに来て、ヘスティア・ファミリアに入団して1ヶ月とちょっと。過去に記録されたアイズ・ヴァレンシュタイン氏の最短一年の記録を大幅に塗り替えた世界記録兎(レコード・ホルダー)

 

 可愛い顔をしてとんでもないことをやってのけるベル・クラネルに、彼の担当アドバイザーであるエイナ・チュールは乾いた笑みを浮かべるしかなかった。

 

 尚、Lv.3への記録保持者はLv.2到達から約3ヶ月で至ったとされるリリルカ・アーデ氏。彼女も彼女で当時襲ってきたLv.4の冒険者を返り討ちにしたっていう逸話がある。

 

 曰く付きで逸話だらけ。ここ数年特に目立った記録のないヘスティア・ファミリア、新進気鋭の派閥からは嘘呼ばわりされたりしているけど……彼等の打ち立てている記録は嘘ではないと証明している。

 

 最も少数派閥でありながら、最も単独で階層主を打ち倒している派閥。下層の主アンフィス・バエナ、深層前半の階層主ウダイオス。

 

 第一級の冒険者でもパーティーを組まなければ対抗できない怪物達を、かの【凶狼】ベート・ローガ氏と【槍の乙女(デミ・フィアナ)】はこれら階層主を単独(ソロ)で討伐。

 

 その立て続けに偉業を打ち立てている事から、一部からゼウス・ヘラの後釜ファミリアだとか、次代の英雄最有力候補なんて呼ばれているが、中でも彼等の団長が彼等の評価を著しく複雑化させている。

 

 何せ、ヘスティア・ファミリアの長であるベジット氏はLv.1。ステイタスも軒並み“I”のAllゼロらしく、そんな彼が団長なんてしているものだから、一部の新人冒険者からは裏で彼をペテン師呼ばわりしているらしい。

 

 でも、ローズ先輩や一部冒険者からは信頼されていて、その中にはアストレア・ファミリア、ロキ・ファミリア、フレイヤ・ファミリア等、世界でも有名な派閥から注目されている。

 

「なぁにエイナ。アンタまだ報告書を書いてんの?」

「ローズ先輩、はい。担当冒険者のベル・クラネル氏についてちょっと………」

「アンタも大変ねぇ。あのバカの弟子を担当するなんて………胃薬欲しかったら言いなさい、ディアンケヒト・ファミリア謹製のモノがあるから」

「あ、ありがとうございます」

 

 先輩職員から労いを戴いた通り、ヘスティア・ファミリアは色々と曰く付きな話が数多く眠っている。

 

「主神であるヘスティア様は凄く良い女神様なんだけどなぁ……」

 

 色々と噂の絶えないヘスティア・ファミリアだが、彼等の主神である女神ヘスティアは一貫して善神として知られている。厄介極まりない眷族達を側に置いているにも関わらず、彼女を知る人々や神々からは概ね好意的な話が出ているのだ。

 

 そんなヘスティア様は普段はバイトをしていて、そこで得たお金の殆どは孤児院に寄付し、時折お菓子を持って子供達と遊んだり、時にはお年寄りと駄弁ってたり、本拠地周辺の市民達と良好な関係を築いていたり等、恐ろしい話の絶えない派閥とは思えない程に慕われ、親しみを持たれている。

 

 他の眷族達もベジット氏含めて悪い噂は聞かない。いや、時折ディアンケヒト・ファミリアの“聖女”から折檻されたとかの話は耳にするが……。

 

 総じてヘスティア・ファミリアの評判は良い。寧ろ主神が温厚で親しみのある女神であるから、ある意味最も扱いが難しいファミリアなのである。

 

「ベルくーん、お願いだから手加減してねー。単独で階層主討伐とか、本当に勘弁してねー」

 

 自分が担当になった一人の冒険者の少年。どうか彼の今後の活躍が此方の胃を痛めない程度であることをエイナは願うしか出来なかった。

 

 ────尚、そんな些細な願いは叶うことは恐らくない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「イェーイ! アリーゼ・ローヴェル、完全復活ー!」

 

 アストレア・ファミリアの本拠地(ホーム)【星屑の庭】、新入りを含めて総勢15名の少数派閥。

 

 アルフィアによる救援のお陰で人造迷宮(クノッソス)という魔境から抜け出した彼女達、有益な情報を得られたと言うことで今日、シャクティとベジット、並びにロキ・ファミリアの主神であるロキ本神に召集を呼び掛けた。

 

「快復おめでとうアリーゼ。お前が呪詛(カース)を受けたと知った時は焦ったぞ、身体はもう良いのか?」

 

「えぇ、心配かけてごめんなさい。でも本当に大丈夫よ。【戦場の聖女(デア・セイント)】のお陰で呪詛は完全に解呪されたから!」

 

 シャクティとアリーゼは共にオラリオの街を守る派閥の団長である事から昔から仲は良く、互いに親友と呼べる間柄となっている。

 

 アリーゼが呪詛を受けて死にかけたと言う報せを聞いた時は、普段は冷静沈着なシャクティが一瞬表情を強張らせてしてしまう程に動揺していたと、後に彼女の妹であるアーディは語る。

 

「事前にあの人造迷宮から幾つもの呪詛武器(カースウェポン)を回収出来たのも、順調に解呪出来た一因らしいからな」

 

「【戦場の聖女】曰く、彼処から回収した呪詛武器の全てが同じ製作者であると言われているからな。解析に時間を掛けたお陰もあって、解呪するやり方も確立出来たそうだ」

 

 本来、アリーゼに掛けられた呪詛は解呪するのに時間を要し、また解析するのも時間が掛かるとされてきた。

 

 しかし当時ベジット、ガレス、ライラ、アルフィアによる特級の戦力で突撃し、多くの物資を回収したお陰で、その中にあったとされる呪詛武器を解析した事でアリーゼの身体を蝕んでいた呪詛と同様のモノであると気付き、迅速な対応と適切な処置を施す事が出来た。

 

「成る程。つまりはあの時の俺達のやり方に間違いは無かったと言うことだな。正義は巡る。ン~~実に良い言葉だァ」

 

 やり方としては否定したいが、当時強盗染みたベジット達の行動が巡り巡ってアリーゼを助けた事になる。

 

 腕を組み、しゃくれた顎でドヤ顔で語るベジットとライラ。実際その通りなのだけれどここでツッコミを入れたらまた面倒臭い事になることを察した一同は、適当に相槌を打って流した。

 

「ハイハイ、取り敢えず話を進めんでー。先ずは例の怪人女………レヴィス言うたか? ソイツはアルフィアにボコられた途端逃げたんやな?」

 

 手を鳴らし、場の空気を変えるのは大多数の眷族達がダンジョンに潜り暇を持て余していた道化師の神ロキ。糸目の瞼をうっすらと開けてこの場にいないアルフィアに変わってベジットに訊ねる。

 

「ああ、一応常人なら再起不能のレベルで叩きのめしたみたいだが、気付いたら姿を消していたらしいぜ」

 

「多分、アルフィアに“まだ”敵わないと知って逃げに徹したんだと思う。アイツの気の気配の断ち方、普通じゃなかったから……」

 

 ベジットの言葉を補足するのは、同じ場面にいた狼人のネーゼ。あの時、レヴィスの出現を目視するまでネーゼは気付けなかった。後のアリーゼも自分が切り裂かれる直前まで背後にいた事すら気付けなかったと自白している辺り、怪人女(レヴィス)の気の気配遮断は相当なモノだと予想出来る。

 

 いや、問題の本質は其処じゃない。

 

「ほんの少し前まで気の解放しか出来ん奴がこの短時間で気配の消し方までマスターしとんのかい………ベジット」

 

「ん?」

 

「気っちゅーのは、短時間でそこまで極められるモノなんか?」

 

「分からん」

 

 少し前、24階層の食料庫にてベートとリリルカ、並びにアイズがレヴィスと遭遇した時、彼女はまだ気の解放しか習得していなかった。

 

 それなのにアリーゼ達が遭遇した時は気による気配遮断まで会得している。ベジットから教わり、手探りで習得してきただけにレヴィスの成長速度は異常に思えた。

 

「俺自身、“気”についてはある程度熟知していたからな。基準が曖昧なんだ」

 

 ただ、ベジットは他の一から教わってきた者達とは異なり、最初から概念を知り、同時に習得していた。その為レヴィスの成長速度の異常性を理解できる一方で、其処まで驚異的なのは実感出来なかった。

 

 何せ、あの世界の敵は気という力については殆どが生まれた時から習得済みで、あの魔人に至っては目にしただけで瞬間移動を習得する無法ぶり。

 

 尤も、現時点でそのレヴィスが驚異的な存在なのは間違いない。

 

「ただ、そうなると次に奴がどこまで強くなっているのか未知数なのは面白────じゃなくて楽し───でもなくて厄介だな」

 

「隠せてへんよ?」

 

 戦闘民族の血が疼いたようで、つい願望が溢れてしまった。ジト目で睨んでくるロキ含めた全員が苦笑いを浮かべる。

 

「まぁ、次そのレヴィスが出てきたらどこまで強くなっているか未知数なら、それぞれ鍛えておけってのが、俺から言える事かな」

 

「身も蓋もねぇー」

 

「だが、事実その通りだ。………ミア母さんと相談して、今月は休みを多く入れとくか」

 

 確かにレヴィスはその成長速度から脅威は未知数だが、そんな怪人に対抗するには今以上に自分達が強くなる必要があるのもまた事実。

 

 レヴィスのいる場にベジットが偶々登場、そのまま拘束───が、一番理想的な展開だが流石にそこまで上手く事が運ぶことはないか。

 

 奴に関する話は其処までにしておいて………次。

 

「そんじゃ、次はアタシからだな。シャウ、例の奴を」

 

「はい」

 

 人造迷宮へ潜り、手に入れた情報は一つだけじゃない。ライラに促され、後輩のシャウがテーブルの上に広げるのは一枚のマッピングされた地図。人造迷宮(クノッソス)の大まかな地図情報だ。

 

「人造迷宮の地図か。以前よりも精度が上………やるやないか【狡鼠】」

 

「出来の良い後輩のお陰ですよ。………でも、見て欲しいのはこれだけじゃない」

 

「?」

 

 自慢気に語るライラだが、まだ何か隠し玉があるらしい。真剣な顔付きとなり、ライラが取り出すのは六人の巫女と真ん中に邪竜らしきモンスターが描かれたモノと……。

 

「何だこれ………目ん玉?」

 

 机の上に置かれた、紅く不気味に光る球体。人の眼球を思わせる不気味な置物。

 

「絵の方は私達が人造迷宮で見付けた壁画を模写したモノ、そしてこっちの丸いのが………恐らく、ベジットの旦那が言っていた人造迷宮のマスターキーだ」

 

「「っ!」」

 

 人造迷宮の鍵、それが目の前にある丸い物体の正体。人の眼球に酷似したコレが人造迷宮の鍵だと知らされたロキは眼を開いて驚きを露にする。

 

「人造迷宮の鍵? この不気味で丸いのが?」

 

「仮にそうだとして、何処でそう確信したんや? いやそもそも、どうやって手に入れたんや」

 

「それが鍵だと知ったのは、闇派閥の生き残りである【殺帝】のヴァレッタが持っていた事」

 

「アタシ等がこれを手に入れられたのは、ある乱入者のお陰さ」

 

「乱入者?」

 

「誰や、ソイツは」

 

「私達の窮地に現れた黒い仮面、その者は自らを“(アッシュ)”と名乗っていました」

 

「“灰”………だと?」

 

「なんや、随分と意味深やんけ。その灰の君は何者やったんや?」

 

 過去、大抗争にて人々に恐怖を刻み込んだ悪しき闇派閥の生き残りである【殺帝】のヴァレッタ。確かに奴の存在も問題であるが、ベジットとロキは生き残りの木っ端よりも鍵を手に入れるのに貢献したという乱入者(アッシュ)の方が気がかりとなっていた。

 

 口にして良いのか、何処か迷っているライラとリュー、他の面々も何やら気にしているよう………否、ベジットに遠慮しているようで、何処と無く言い辛そうにしている。

 

 このまま言葉を濁すのは無理だと判断したリューは、一度だけ主神であるアストレアへ目配せして、彼女の慈愛の微笑みと共に頷く姿を見て………覚悟を決めた。

 

「割れた仮面の隙間、ヴァレッタから鍵を奪い取り私達に向けてこの鍵を投げ渡すほんの一瞬でしたが……」

 

「あれは、ディオニュソス・ファミリアの眷族───【白巫女(マイナデス)】のフィルヴィス・シャリアかと思われます」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………」

 

 夕暮れ時、アストレア・ファミリアから諸々の情報を聞き終え、マッピングした地図と壁画の写した用紙それぞれ二枚を手に、今日のところは解散の運びとなった。ベジットはファミリアの皆(ベルは除く)にどう説明するべきか、途中で買ったじゃが丸くんを咀嚼しながら帰路に就いていた。

 

「ディオニュソス・ファミリア………か、まさかその派閥の名を聞くことになるとはなぁ」

 

 ディオニュソス・ファミリアは下層決戦時、ベジットが指揮した派閥の一つ。当時の自分の活躍に感化され、死に物狂いで戦った戦友達。

 

 彼等は冒険する事への恐怖、危険に対する自らの臆病さを自嘲していたが、そんなものベジット(■■)からすれば当然の事であり、そんな恐怖を乗り越えて戦った彼等こそ称賛している。

 

 自分が人の前に立ち、率先してモンスターと戦えているのは偏に自分が天下無敵のベジットであるからに他ならない。

 

 前世のままの自分であれば、間違ってもダンジョンになんか挑もうとは思わない。そんな自分に比べればディオニュソス・ファミリア達は充分勇敢だと言えた。

 

 しかし、そんな彼等もダンジョンの悪意に呑まれ、たった二人の生存者を残して壊滅。それが決定打となりディオニュソス・ファミリアはオラリオから去っていった。

 

 そんな彼等の生き残り、【白巫女】のフィルヴィス・シャリアが生きている。それも仮面を付けて、人知れず戦っている。

 

 何故、そんな事をするのだろうか? 他の眷族は? 主神は? 彼女の行いを知っているのだろうか?

 

 それとも、ディオニュソス・ファミリアからはとっくに脱退して別の派閥に移籍したのか。

 

 どれだけ考えても、答えは出ない。

 

「………ちゃんと、飯食ってンのかなぁ」

 

 当時、一言二言しか話していない間柄だが、彼女もまた自分の中にある誇りや矜持を大事にし、仲間を思いやれる優しい少女だった。

 

 そんな彼女が誰にも知られる事なく、何らかの事情を抱え、今も何処かで戦っている。けれど、今の自分にはそれを助けてやれる術がない。

 

「アポロン様のアレコレが片付いたら、ダンジョンに籠って探してみるかぁ?」

 

 もどかしい。そう口ずさみながら本拠地に向けて歩くベジットの背中は、いつもより少しだけ小さく見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………そんで、今日は何の用やディオニュソス」

 

「単刀直入に言わせてもらうよロキ、ヘスティア・ファミリアには気を付けた方がいい」

 

「─────あぁ?」

 

「団長であるベジット、彼は何かを隠している。このオラリオを………ひいては、世界を脅かす何かを、ね」

 

 

 

 

 





Q.例の鍵は現在アストレア・ファミリア預かりなの?

A.そうです。人造迷宮のマッピングや壁画の写しも念の為複数枚所持。

「地味に面倒臭ェ作業だけど、愛しのフィンの為だからな」

「………なんか、悪寒が」






オマケ。

もしもベジット&ヘスティアが15年前からいたら。

オラリオ馴れ初め編。




「…………なぁ、お前いつまで付いてくるんだよ」
「貴様が私にした事を吐くまでだ」

 アレから、オラリオの街で自分を見付けてはチョコチョコ付いて来るようになった灰色の少女。

 ダンジョンの中は危ないから来るなと言っても、自分も冒険者だと言って聞かず、少しでも揶揄ったりすれば即座に音の攻撃魔法を唱えて攻撃してくる癇癪娘。

 一度彼女が所属している派閥に文句を言いに行ったら、何故か逆ギレされて此方が悪者扱い。団長の女帝に至っては速攻殴り掛かってきたので流石のベジットもバチギレし、相手が女性だらけの派閥でもお構いなしにその喧嘩を買い、その場にいた全員(病弱らしい少女を除き)全員犬神家のスケキヨの刑に処した。

 この時、灰の少女にも尻叩きという屈辱的な敗北を味あわせたのだが、何故だか今日もこうして付きまとわれてしまっている……。

「人の尻をあんな風に乱暴にしたんだ。責任を取れ」
「普段から音の爆弾ばら蒔いている奴が言うこと?」

 しかも更に厄介な事に、ベジットが蹂躙した少女の派閥はオラリオでも有名な所らしく、団長の女帝から頻繁に求婚され、主神同士が天界の頃から面識があった為、何かにつけて顔を合わせやすくなってしまっている。

 しかも同じ有名派閥のゼウス・ファミリアからもちょくちょく腕試しがしたいと、これまた問答無用で襲われる様になり、お陰で我等ヘスティア・ファミリアは零細派閥であるにも関わらず厄介者扱いにされてしまっていた。

 あ、でもオッタルやフィン、レオンと仲良くなれたのは良かったかな?

「───妹がいるんだ」
「あ?」
「私よりも重症で、一人で外に出歩くことも出来ない。頼むベジット、私に出来ることなら何でもする! だから、だから!」
「………………」

 それは、初めて少女が見せる涙だった。プライドが高く、傲慢で、他者を毛嫌いしてきた少女。

 そんな彼女が初めて誰かに縋っている。医神も匙を投げてしまった自分達の病、それを和らげてくれた目の前の男ならば何とかしてくれるかもしれない。

 恥も外聞も捨てた少女の嘆願、それを前にベジットは観念したように苦笑い……。

「わぁったよ。そういう事情があれば力を貸してやる」
「っ! ほ、本当か!?」

 ベジットは医者ではない。神でもなく、ただの天下無敵の最強だ。

「俺はベジット、そこらの悲劇なんて片手間に吹き飛ばしてやるよ」

 泣きじゃくる少女の不安を消し飛ばす様に、ベジットは不敵な笑みを浮かべた。

 
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