呪術師の炎上勝法 ~嫌われる程レベルアップする俺が、悪役配信者を始めたら〜   作:みわ

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無能

 

 付き合っていた彼女が倒れた。

 

 高校で出会って五年ほど付き合い、同居していた彼女だ。

 

 原因は過労らしい。

 

 しかし俺はそれがただの過労ではないと知っている。

 

 全ては俺の『スキル』が引き起こしたことなのだ。

 

 

 ◆

 

 

 俺が通っていた高校は世界中に存在する『ダンジョン』を探索する『探索者』を養成するための学校だった。

 

 有名な探索者を両親に持つ俺は期待されていたし、実際に学生ながら期待以上の成果を出していた。

 

 しかしそんな状況は長く続かなかった。

 

 全てはあの日、ダンジョンの演習中に出会った怪物に俺の持つ全てのスキルを奪われた時に終わった。

 

 スキルとは探索者がダンジョンを探索するために必須となる力。才能と努力によって獲得できる異能力だ。

 

 だが、俺は『冥王』と名乗った怪物によってその全てを奪われ、そして一つの呪いを手に入れた。

 

 【冥府の誓約】というスキル。

 

 その効果によって俺は他のスキルを全て失い、新たに獲得することもできなくなった。

 

 更に他人の悪意に敏感となる効果があるらしく、誰かが俺に対して悪感情を抱くと激しい頭痛に苛まれた。

 

 能無しとなった俺の周りには誰もいなくなった。

 

 俺を天才だと褒めていた友人たちは掌を返し、有名な探索者だった両親とは高校卒業と同時に縁を切られた。

 

 残ったのは当時から付き合っていた一つ下の彼女。樋口美弥(ひぐちみや)ただ一人だけだった。

 

 何年たっても俺にスキルが芽生えることはなく、俺は探索者という夢を諦めて土木のバイトをして生活費を稼いだ。

 

 美弥もパートをして俺を支えてくれて、俺たちは質素ながら同居を始めた。

 

 彼女も探索者学校の生徒で、一つのスキルを有していた。

 

 それは『浄化』のスキル。呪いを癒すことに特化したスキルだ。

 

 しかし、呪いを使ってくる魔獣はかなり限定的でそのスキルだけしか持っていなかった彼女は高校ではかなりの落ちこぼれだった。

 

 しかし、俺の受けた【冥府の誓約】によって発生する頭痛にはかなり効果があって、美弥の腕の中に居る間、俺は一切の痛みを感じなかった。

 

 だからそんな美弥のために必死で働いた。どれだけ辛くてもどれだけ悪意を向けられて頭痛が起こっても美弥のために頑張れた。

 

 けれど……そんな美弥は過労で倒れた。

 

 これは単なる身体的な疲れではない。

 

 俺はずっと勘違いしていたのだ。

 

 浄化は、呪いを解除するスキルではない。

 浄化とは、呪いを自分の生命力で打ち消すスキルだった。

 

 そんな事に気が付いたのは、彼女が倒れた後だった。

 

 俺は自分を呪った。

 

 何もできない自分が許せなかった。彼女が死ぬ位なら俺が死ねばいいと何度も思った。

 

 俺は、必死に彼女が生き残る方法を探した。

 

 そして唯一、美弥を延命させることができる手段を見つけた。

 

 迷宮No.81……世界樹。その第三十二階層にある泉の水。

 

 それは、掬ってから一日のみ効果を保持した万能薬となる。

 

 その効果とは『寿命の延長』。

 

 生命力を失った俺の彼女にとっての救いであり、尤も現実的な治療方法だった。

 

「行くか……」

 

 だから俺は、ダンジョンへ踏み入れる。

 

 最後にダンジョンに入ったのは高三の時だから、三年振りくらいか。

 

 多くの物を質屋に出したのに、何故か捨てられずにとっていた学生時代の装備。

 

 あの頃はまだ、両親からの援助で結構良い装備を買い与えられていた。

 

 両親には嫌悪感しかなかったが、これをくれたことだけは有難いと今は感謝しておくことにしよう。

 

『お前のせいだ! お前のせいで美夜が!』

 

 彼女のお父さんの言葉が頭に蘇る。

 

『お願いだから、あの子を返して下さい。あの子は優しくて、悪いことをするような子じゃないんです』

 

 彼女のお母さんが俺の胸を叩いた時の衝撃を思い出す。

 

『申し訳ございません……! 申し訳ございません……!』

 

 地べたに頭を擦り付け、そんな意味のない言葉しか吐けなかった無力感が蘇る。

 

『愛してるからずっと一緒にいるんだよ』

 

 大切な人の言葉を胸に刻む。

 

 本当に、自分が情けなくてしょうがない。

 

 迷惑ばかりかけて、無力で、無価値で、有害で、不幸を巻き散らす自分が大嫌いだ。

 

 彼女だけでも幸せになって欲しい。だから俺は、ダンジョンへ踏み入れる。

 

 俺の全てに変えてでも、美弥だけは幸せにして見せる。

 

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