1.固有魔法はSANチェック!
やぁ、僕の名前はコルト・プセヴドニモ。
長いし覚えにくいからコルトでいいよ。僕も忘れかける時あるし。
さて、僕はまぁ、所謂ところの異世界転生を果たした人間だ。死んだ経緯とかは知らなくていいかな、よくある奴だし。
それよりも重要なのは、僕の固有魔法について。この世界には誰しも生まれた時から、固有の魔法を持っている。他の魔法がどれだけ使えなくても、魔力がほとんどなくても、その固有魔法だけは絶対に使える。どんな効果かは置いておいて。
で、僕の固有魔法なんだけど……《クトゥルフ神話TRPG》だった。
何を言っているのかわからないと思うけど、僕も発覚した時「正気か?」って言ったからね。クトゥルフ神話だけに。待って逃げないで。
だから、今も僕の横には……
『コルト、次はお前の番だぞ……』
「ああごめん、なんだっけ?」
『殴殺の“つ”だ……』
『ハスターめ、いい加減“つ”責めをやめてやれというのに』
『ええいこれもまた戦術よ』
こうしてしりとりに興じる神話の神がいる。今は黄衣の王モードのハスターさんと、触手一本だけ出張させてるクトゥルフさん、あと褐色イケメンになったニャルラトホテプさんがメンバーだ。ちょっと豪華すぎやしないか。
他にもいろんな神話生物や神々が僕に構ってくれる。これが固有魔法の効果なのだろう。
SAN値は大丈夫なのか? 何故か大丈夫なのだ。もしかしたら生まれた時から0なのかもしれない。
母と父は大丈夫じゃなかったみたいで、生まれたばかりの僕をあやすクトゥルフ(触手の姿)を見て発狂。無事精神病棟へ送られた。僕が生まれて3ヶ月のことであった。
だから現状、僕には保護者がいない。
しかも生まれてすぐ両親が発狂廃人化とかいう厄ネタあり。引き取り手もなかなか見つからず、結局古い小料理店の召使いをする事で衣食住を賄ってもらっている。
小料理店の人は良い人ばかりで、不穏な噂が付きまとう僕をいわれない中傷や噂から守ってくれた。まぁ僕のせいで両親が発狂したのは事実なんだけど。
何かと僕を心配して世話を焼いてくれる神話の神々を「せめて仕事中は出てこないでくれ」とお願いし、平穏? に成長していった。うん、平穏って言ったら平穏なんだ。なんてったって旧支配者をいつでも召喚できるというのに発狂者が2名しか出ていないんだから。
この世界のことにも言及しておこう。
この世界は魔法があり、魔物がいて、地球より文明レベルが低いよくある異世界だ。ネット小説や漫画を読んでいる人なら親の顔より見てきた世界観だろう。僕は親の顔ロクに見たことないからこれは本当。
世界全体は「テラ」、僕が住んでる国は「マギアズ」、都市は「グリモア」。
固有名詞が多いから覚えるのに苦労した。神話生物の名前はすぐ覚えられるのに、自分が住んでる都市や通りを覚えるのには3日かかった。
ここは魔法師養成学校があることで有名で、この学校に通うために全国各地から若くて有望な少年たちが集まる。研究都市みたいな側面もあって、街を歩くだけで勉強に必要な道具が揃う。
「グリモア大通りでは探究心以外全てが買える」なんて言葉が生まれるくらいらしい。
僕が働いてる小料理店でも学者さんが多いね。
そしてここに、一枚の封書がある。
真っ青な封蝋で丁寧に閉じられたそれ。封蝋にはこの都市最大の魔法学校「フォークロア魔法師養成学園」のマークが。
そう、これはフォークロア魔法師養成学園の入試許可証なのだ!
これだけじゃ感動が伝わらないだろうから説明するけど、言うなれば世界最高峰の魔法学園の入試を受けて良いよ〜というお知らせである。毎年5000人が世界中から選ばれ、身分や種族問わず届くという魔法の封書。
あくまでも「入試許可証」というのがポイントで、その入試に受からなかったら当然入学はできない。
5000人の受験者の中から突破できるのは僅か100名。倍率50倍とかいう馬鹿の倍率なのだ。入試で敗れても「フォークロアから封書が届いた」だけでステータスになって、他の学校に入りやすくなるらしいんだけどね。
それが、僕に、届いてしまった。
『やったなコルト。お前なら確実に選ばれると思っていた』
『むしろ選ばれなければあの学園など要らぬだろうよ』
横でクトゥルフさんとハスターさんが不穏な会話をしている。仲が悪い神同士も、僕の事になると何故か後方保護者面で結託するのだ。親戚の人みたいな距離感になってる。
僕としても、普通に嬉しい。学問を学ぶために家柄や所得関係無く封書を送ってくれるのは、この世界の良いところかもしれない。
しかし問題なのはその入試なわけで。
倍率50倍なだけあって座学も実技もただ優秀なだけでは到底足りない。僕なんてエレメンタリースクールやジュニアハイスクールといった、日本での“義務教育”というものを受けていないのだ。
前世のぼんやりとした記憶で数学は高校数学くらいはうっすら覚えているけれど、それ以外のこの世界特有の教養がカスなのである。
しかしここでも神話生物の皆さんが助けてくれた。
名付けて「イスの偉大なる種族が徹底的に教える、フォークロア受験のための学習カリキュラム」である。どこかの個別指導塾の広告かな?
イスの偉大なる種族や他の頭がよろしいとされる種族の皆さんで、フォークロア受験のための教育をみっちりしっかり叩き込んでいくという方法だ。
テキストは大通りで貯金をはたいて大量の参考書を買い、イスさんたちに先んじて確認してもらい効率的な学習カリキュラムを組んでもらった。
あまり広くない僕の個室で参考書とノートを広げ、どこからか持ってきたホワイトボードでイスさんたちが授業をし、ひたすらそれを頭に詰め込んでいく日々。
正直ここが一番辛かった。
メンタルが限界になった時はシュブ=ニグラスお母さんやその子どもたちがケアしてくれたし、ハスターさんの
なんとかイス式模試でA判定を貰い、あとはケアレスミスと当日の体調に気をつけなさいと激励されて学習カリキュラムは終了した。
なんせ封書が届いてから入試まで3ヶ月を切っていたので、みんな必死だった。
しかしこれで当日まで内容不明の実技を除いて試験の準備は整ったのだ。
試験前日、僕たちはクトゥルフのおじさんが作るたこ焼きでたこ焼きパーティーをして士気を高めた。
これは、一歩間違えれば世界を終わらせる僕が学園生活を(クトゥルフ神話TRPG的な意味で)楽しむ物語である。
なんで前アカウント消したんですか?
という質問については活動報告の方で答えさせていただきます。
今回は削除しません。頑張ります。
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