固有魔法はSANチェック!【改訂版】   作:月日は花客

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図書館地下編
12.図書館地下はSANチェック!


 

 中間テストは無事終わった。

 自己採点はオール満点だし、今回は応用が多かったからしっかり勉強してて良かった。授業でただノートに書き込まされた単語をただ出してくるなんて、フォークロアではしないと思ってたし。

 ツヴァイも自分のできる分はこなせたそう。ツヴァイは元から優秀だしバランス型だから成績も安定してるんだよな〜羨ましい。

 さて、テストが終わったので明日から二日間は授業がお休みだ。フォークロアのテストは教科が多いのでテストだけでも丸二日かかる。そしてその採点もまた同様なのだ。生徒としては単純にお休みがあって嬉しい。

 

「それでモリオンさん、依頼ってなんなんですか?」

 

 中間テストの後に説明すると言われた依頼。

 モリオンさんはいつも通り煙のついてない煙管を弄びながら、何やら見た事ない道具や書類を出してきた。

 七階はやはり人がいない。

 

「この図書館には地下がある。閉架図書や禁書を保管してある場所とは別でね、大昔に使われてた防災壕みたいなものさ」

「ふむふむ」

「閉鎖されているはずのそこから、突然魔力反応が検出された」

 

 ペラ、と渡されたのは今までの防災壕の魔力値で、確かに数日前からその数値がガッと上がっている。

 魔力というのは、よほど特殊な環境でない限り大気に含まれる数値は一定だ。それこそ空気のように。

 こんなにも急激に、突然上がると言う事は……その中に「なんらかの生命体」が発生したと言う事。

 

「魔物ですか?」

「いや、魔物ならここのアラームがなっている筈。しかし人間なら何故こんな所に? どうやって? という疑問が生じる。転移魔法は万能じゃないし、そもそも図書館に防災壕がある事は公開していない」

「謎……ですね」

「防災壕を知っている人物に心当たりは?」

「私世代の卒業生やそれより前の卒業生、教師なら知ってるだろうね。ただそいつらを全部当たるのは現実的じゃない」

「つまり、今回の依頼は……」

「防災壕の中に実際に入り、調査をお願いしたい」

 

 図書館に残された防災壕から謎の魔力反応……しかも理由、正体が全くの謎……。

 それの調査の依頼……なんだかTRPGっぽくなってきたぞ!?

 高学年は基本忙しくて捕まえられない、外部に依頼は金がかかる、教師陣はテスト採点中。なら優秀で暇な一年を使えば良い。

 僕らに依頼した理由はざっくりそう言う事らしい。

 

「でも僕、魔法はカスみたいな出来ですよ」

「そもそも荒事になるかもわからないし、荒事にならなきゃそれが一番良い。その為には知識、教養、冷静さが必要さ。もし、防災壕に“なにか”がいたとしても、お前さんの知識で切り抜けられるかもしれない」

 

 それにそっちのボウズは使えるんだろう? とモリオンさんは説いた。

 なるほどINT、EDU担当と戦闘技法担当なわけね。CoCでのステータス分業が推奨されるかの議論は置いておいて、モリオンさんは図書館での僕の読書量を買ってくれてるのかも。

 だとしても、二人だけってのはちょっと不安かも……。

 

「私が他の一年からも適当に見繕う。優秀とはいえ一年、人数は多い方が心強いだろうからね」

「実行日はいつです?」

「明後日だ。魔力を温存しとくんだね」

 

 *

 

「ティナが到着したぞーっ!!」

「しーっ! 図書館では静かに……!」

「モリオン先生、お待たせいたしました」

 

 図書館に集まったのは、ティナ、リクト、クラリネのA組お騒がせトリオ。早速コントのような何かを繰り広げている。

 モリオンさんがこの三人を選ぶのは意外だった。モリオンさんは司書として、図書館で騒がれるのは嫌いだし……そもそもこの三人を図書館で見た事がない。

 

「魔法戦力が揃ってるならあとは物理さ。……まぁ残り二人は保護者みたいなもんさね」

 

 いや、でもこれで人数は五人になった。筆記の点数がかなり偏っているけど、単純な戦力としては申し分ない。

 モリオンさんは外で魔力反応と僕らの生命力を監視し、危険そうだったら僕らを防災壕から外に転送する役だ。水鏡と、ただの色水が入った試験管のように見える道具たちがそれを可能とするらしい。錬金術の分野なんだろうけど、僕でも知らない技術だ。

 人がいる一階ではなく、最上階の八階で待機するそうだ。一般に公開されてるのは七階までだから、八階は司書専用スペースなのだろうか。

 

「改めて自己紹介を。僕はコルト、固有魔法は《猫の召喚》。 戦力的には心許ないかもしれないけど、知識面でサポートするよ」

「俺はツヴァイ、1B所属。風魔法には自信がある。よろしく」

「1Aのリクトっす。魔法は全般得意で、ちょっとだけど剣も使える。知識とかはサッパリだから頼むわ」

「ティティナ・ティーカチュア! 天才最凶魔法少女とはこのティナのことよ! ティナの力に圧倒されなさい!!」

「クラリネ。“氷青”の二つ名持ち。氷魔法は負けないから」

 

 個性が渋滞している。僕とツヴァイが明らかに埋もれている!

 クラスでも目立ってる三人組だから、注目されることに慣れてると言うか元々性格が濃いというか……。

 

「ああ、コルト君」

「ん、どうしたの? クラリネさん」

「貴方のご両親、貴方が生まれてすぐ発狂して病院で過ごしてるって本当?」

「……ど、うして、それを」

 

 自画自賛を始めるティティナをリクトが適当に躱していると、少し声のトーンを落としたクラリネが爆弾を落としてきた。

 僕の両親は精神病棟から出てきていない。別にその事はいい。どこから知った?

 もしかしてバレたか? 僕が両親を発狂させた原因だと、邪神を喚べる存在だと何らかの手段で見透かされた?

 

「おい、いきなりどう言うつもりだ」

「私は真実かどうか気になっただけ。クラスの一人が言ってたのよ、『ある料理店に行ったら産まれてすぐ両親が精神病棟送りになりながら、飛び級でフォークロアに入った奴がいると客が話していた』ってね。今年の一年で飛び級は貴方しかいない、コルトじゃないかって既に噂になってるわよ」

「……それを本人に言うか? 普通」

「本人に聞いた方が早いじゃない、嘘なら嘘で済むし。……どうやら本当みたいだけど」

「クラリネー! ティナの自画自賛が第五章に入ったからそろそろ止めてくれ〜」

「はいはい」

 

 僕が放心してる間にツヴァイが対応してくれた。どうやら僕の固有魔法の事はバレてない……っぽい?

 料理店というのは僕が働いていたお店の事だろう。僕を揶揄する客は随分減ったと思っていたけれど、まだ居たのか。僕がフォークロアに入ったからそれでぶり返しているのか? でもそれならすぐ店長達に鎮火させられてそうだ。クラスでそれを聞いた奴がいるのは運が悪かったと言う事だろう。

 両親が発狂したのは別にどうでも良いし、それが広まるのも面倒だけどまだ許容できる。でもそこから「何故発狂したのか」に焦点を当てて探ろうとしてくる人が出てきたらクソめんどくさい。

 覚えてないとかでのらりくらり躱しても嗅ぎ回る奴は嗅ぎ回るだろうしな〜面倒臭いな〜もうなんか、ミ=ゴさんあたりに脳みそ弄ってももらおうかな〜面倒臭いな〜。

 ツヴァイは僕がショックを受けてるように見えてそうだから後で弁明しておこう。

 でも庇ってくれたのはマジで助かったありがとう後でバナナチップス奢る。

 

「大丈夫か? なんだあの女」

「気にしてないよ、噂になってるってのは怠いけど」

 

 このメンバーで地下調査……上手くいくのかなぁ?

 早速僕に不安が込み上げてきた。

SAN値チェック

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