固有魔法はSANチェック!【改訂版】   作:月日は花客

19 / 35
19.ステイルメイトはSANチェック!

 

「マフィア『ステイルメイト』……都市グリモアを拠点に、世界の裏側に存在する反社会組織」

 

 扉の奥に通され、沢山の警備員やロックをパスした先、黒と白で統一された応接室らしき場所に、僕とオルカさんはいた。

 革製のソファがギチリと音を立てている。

 オルカさんは対面の一人がけソファに座り、いつのまにかテーブルに置いてあったコーヒーを啜る。

 その姿は貫禄があり、プレッシャーが毛先にさえ伝わってきた。

 

 実質的な世界の黒幕。表舞台には滅多に出て来ず、“キング”と呼ばれるボスの呼び名だけがわかっている。

 暗殺、襲撃、違法取引。その他()()()()()()()()も熟す手広い組織だ。

 しかし、それはこの都市グリモアを他の勢力から守る、一つの盾でもある。

 都市上層部は、苦虫を噛み潰しながらもこれを黙認していた。

 

「と、いうのが私の組織についての概要さ。何か質問はあるかい」

「ええと……どうして僕のサポーターになってくれたんですか?」

「モリオンに頼まれたから……という部分もあるが、聞いたぞ、白亜の心眼が何やら動いているそうじゃないか」

 

 この街で暗躍するなんて、ステイルメイトに唾を吐いたのと同じ。ならば、報復は当たり前だ。

 その為にも、協力者の助力は惜しまない。

 という事だそうだ。裏社会の人間として、思うところがあるのだろう。

 煙草の火を点けながら、オルカさんはその深い藍の瞳を鋭く尖らせる。銀製ライターの点火音が部屋に響く。

 

都市(シマ)荒らされてんだ。落とし前つけてもらわなきゃあ気が済まん。コルト、お前の固有魔法を使ってでもな」

「っ僕の固有魔法を知って……!?」

 

 その剣呑な雰囲気に、思わずソファから腰が浮きかける。

 すると、オルカさんはさっきとはコロリと雰囲気を変えて、最初に会った時のようなフレンドリーさを戻してきた。

 鋭かった視線が丸さを帯びる。

 

「キミ、どうせモリオンに振り回されてるんだろ? 意趣返しとして、彼女の秘密を教えてあげよう」

「……?」

「モリオンの固有魔法は《その物の本質を見透かす》のさ。正体を見破る、と言うのがわかりやすいかな。あの瞳の前では隠し事ができない」

「あ……それで、僕の固有魔法を……」

「私が、モリオンから聞いたキミの固有魔法は、詳しくは聞かされてないが《精神を発狂させる》ようなものだと聞いている。容易に人を廃人にしてしまえるものだとね」

 

 間違ってはいない。それにプラス国や世界を滅ぼせる事が追加されるが。彼女には言わない方が良さそうだ。

 僕が頷くと、オルカさんは「おっそろしいねぇ」と笑う。

 オルカさんは、それを聞いて自分にも得、僕にも得な鍛え方を思いついたそう。

 しかしここはマフィア。人道に反する事は基本だ。

 

「それでも良いなら、鍛えてあげよう。祝福武装が使えるほどにね」

「……やります。尻尾を切られないならね」

 

 その言葉に、オルカさんは今度こそ思いっきり破顔したのだった。

 

 *

 

「さて、早速だが仕事の時間だ。っと、これを見えるところにつけておけ」

「……チェス駒?」

「私の“客人”の証さ。これを付けてないと侵入者として処理されてしまうからね、失くすなよ」

「絶対失くしません」

 

 それは銀色のキングの駒だった。キラキラと照明を反射して、派手。

 僕はそれを首に下げると、部屋を出ていくオルカさんに続いた。飲みかけのコーヒーが少し名残惜しい。

 また、薄暗い廊下をしばらく歩いた先にあったのは、鉄製の扉が並んだ場所だ。

 厳重に施錠された何十もの扉は、まるで檻のよう。耳をすませば、微かに呻き声も聞こえる。

 ここで僕の固有魔法を鍛えるらしい。

 

「多少暴れたり口汚い言葉を吐くだろうが、キミに怪我させたりはしないよ」

 

 その言葉と共に扉が開けられる。

 そこには、ギチギチにベルトで拘束された、屈強な男が座らされていた。

 

「来やがったなアバズレ。さっさとこの縄を解けぇ!!」

()()が今回の練習相手だ。最初だから、壊れちゃっても気にしないで。私は外にいるから、終わったら教えて」

「あ、はい」

「あぁ? 今日はそのガキンチョが尋問相手かよ。バラバラにして好きモノに売り捌いてやろうか!? あぁん!?」

 

 つまり、これから情報を聞き出せるようにしろ。と言う事らしい。

 オルカさんが出て行ったのを確認すると、僕は相手に向き直った。

 聞き出せるようにするだけなら、ミ=ゴさんとかムーンビーストさんらに任せれば一瞬だろう。

 しかし今回は僕の固有魔法の訓練だ。ただ召喚するだけじゃ足りない。

 

 なら、どうするか。

 姿を出さず、僕の体に一部を使って身一つで発狂させられないだろうか。

 例えば、瞳の中に神話生物の存在を映す、とか……。

 

「目を見て」

「あ゛? ……は?」

「みえる? 深淵が、なにかが」

「あ……あ……」

「逸らさないで。じっと、そう、覗き込んで」

「ひ……が、あ、泡……泡が……!」

「逸らさないで」

「あ゛あああああああぁぁぁ!?!?!?」

 

 男は白目を剥き、泡を吹いて失神してしまった。うーん、精神が持たなかったようだ。おそらく、もう起きる事は無い。

 これは……うーん、失敗だ。良い感じに精神を削って従順にしようと思ったのに。

 それか発狂させて多弁症あたりを任意で引けるようにするか。

 取り敢えず、オルカさんに報告しよう。

 

「ほう……また派手にやったね」

「途中までは良かったんですが、耐えられなかったみたいで」

「キミの課題だが、とにかく手加減や力を弱める事を覚えよう。今のままでは被害が大きすぎる、もっと小出しにする事を体に叩き込むんだ」

「小出しに……」

 

 今回、瞳に邪神を映す事は成功した。因みにさっき映したのはウボ=サスラのおじ様。

 虹彩や反射の中に呼び出すつもりでやってみたが、邪神の姿ではオーバーキルか。瞳の中だからまだリアルで会うよりSAN値チェックが軽減されると思ったのだけれど。

 発狂させるのか、恐怖を与えて従順にするのか。どちらかに先ずは絞った方が良さそうかな?

 

「何、まだまだ練習相手はいる。追加も入ってくるだろうしね。重要度の低いやつは積極的に回すから、一つ一つしっかりと学ぶつもりで相手をしろ」

「はい、ありがとうございます」

「殺すよりも掃除が楽だし、情報が聞き出せれば上々……いやぁ、ウチに欲しいくらいの能力だ」

 

 オルカさんは部下を呼んで、廃人となった男を片付けさせた。

 時間はまだあるので、数をこなして検証していこう。

 オルカさんは別の仕事に戻るらしいが、近くに部下を置いてくれて、聞けば対応してくれるそう。

 黒服に仮面をつけた部下さんは圧があるけど、割りかし穏やかに接してくれた。マフィア相手に言うことでは無いだろうが、良い人そうだ。

 

「じゃ、頑張れよ」

「はい、ありがとうございます」

 

 コートを翻して、オルカさんは尋問室を出て行った。

 ここからは僕の工夫次第。オルカさんのためにも、情報を吐かせられるよう頑張るぞ!

 

 張り切る僕を黒服さんたちが少し引いた目で見ていたが、気にしないで! 僕とオルカさんの倫理観がおかしいだけなの!

SAN値チェック

  • 成功
  • 失敗
  • 発狂
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。