固有魔法はSANチェック!【改訂版】   作:月日は花客

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23.魔法師祭はSANチェック!②

 

 拍子抜けな一回戦だったが、二回戦からはそうもいかないだろう。相手も一度戦い、勝ち抜いた存在。ウォーミングアップは済んでいるはず。

 相手はC組の──って、またC組? ダブルスに偏ってるのかな。

 あ、ダブルスの他に一対一(シングル)三対三(トリプル)もあるよ。そっちにABは流れてるのかな。詳しくは運営が知ってるだろうけど。

 

「“風鬼の杖”サント&ハズー」

「やぁ“猫と翼”。よろしく」

「まさか君たちが二回戦にくるとはね」

 

 “風鬼の杖”の二人組は、薄緑の髪をした青年、サントと、オリーブの髪をした青年、ハズーだ。

 どちらも優しい好青年といった雰囲気で、穏やかそうだ。細身の長身というのも、なんというか物語の王子様のよう。

 その腰元には、チーム名の由来だろう杖が差されている。

 

「良い試合にしようじゃないか」

「うん、よろしく」

「ただし、容赦はしない……いいね?」

「臨むところだ」

 

 そうだよこう言うのだよ。

 チンピラみたいなセリフとか、余計な煽りとかは要らなくてさ。こういう真摯に試合に向き合う心が大事なんだって。

 サントが僕の肩をポンと叩く。試合相手への激励だろう、僕も彼の背中を数度叩き、その心意気に応える。

 

「どんな結果になろうと恨みっこなしだ。それじゃあ、僕らはもう行くよ」

「よろしくな、“猫と翼”」

「ああ」

「お互い頑張ろう!」

 

 正々堂々、と言う言葉が似合う。そんなカードだろう。

 なかなか油断できない相手、僕も祝福武装を切ることになるかもしれない。

 僕とツヴァイはそれぞれ装備を整えると、コロシアム入り口に向かった。

 

「次の試合はダブルス、“風鬼の杖”VS“猫と翼”だぁー!! 一体、どんな試合を見せてくれるのかー!?」

 

 ハイテンションの実況が頭に響く。試合中はほとんど気にすることはないけど、こうしてコロシアムを見回すと観客の多さにプレッシャーを感じるなぁ。

 外部の人や商会の職員なんかもいるらしいから、余計にそう思えるのかも。

 生徒によっては、あそこに家族が……なんて事もあるんだろう。僕とツヴァイは残念ながらそういった身内の応援は無い。

 でも、モリオンさんやリリリ先輩が応援してくれてるもんね!

 

「さぁ試合開始のゴングが鳴ったぞ!」

 

「悪いね、プセヴドニモくん」

「え?」

 

 直後、僕の左肩を風が切り裂いた。

 

「コルトッ!?」

「っう……大丈夫! そのまま続けて!」

 

 相手は詠唱や杖を振った素振りも見せなかった。それなのに風魔法が発動したと言うことは……無詠唱? でも、一年は無詠唱での魔法行使は禁じられてたはず……。

 それに魔力の流れを一切感じなかった。考えられるとしたら……

 

「僕の固有魔法は、事前に魔力を付着させた場所に風を発生させる! うまく引っかかってくれて助かったよ」

「っあの時か! 試合前の妨害は禁止のはず」

「バレなきゃ良いのさ、さぁさぁどうした!? プセヴドニモくん!?」

 

 さっき肩に手を置かれたのは、激励ではなく魔力を付着させるためってことか……。試合開始直後に発動させて、混乱を狙ったんだろうけど。

 

「ネタバラシが早いよ」

「っ! もう復活したか!!」

 

 リリリの杖があって助かった! すこし魔力消費が大きいが、肩の傷を回復させて猫たちに指示を飛ばす。

 肩口の大きな傷は癒えたが、その間につけられた細かい傷までは癒してる暇がない。

 ツヴァイは上手く避けているようだから、僕もこのまま猫たちで押し通す!

 

「卑怯な手を使うよね……そんなに僕らに勝ちたいの?」

「A組には容赦なく、それがC組の意思だ! 優秀だからって調子に乗ってる連中を俺たちが超える!」

「調子に乗ってるのはどっちだよって……! 猫たち、挟撃して!」

 

 C組の妬みは本物らしい。

 サントは風魔法で僕を集中して攻撃し、魔力が付着すればすぐ固有魔法で刻もうとしてくる。なんとか撹乱で避け、猫たちで妨害する。

 ハズーはツヴァイを相手しているようだが、ツヴァイも風魔法が得意だから上手く相殺していて、あまり優勢ではない。

 

 ツヴァイはまだ大丈夫。でも僕はこれ以上傷を重ねるわけにはいかない。

 切り札の使い所だろう。

 

「ツヴァイ、《祝福武装》を使う!」

「! わかった」

 

 猫たちを翻弄するフォーメーションに変え、僕は杖をしまった。

 手元に魔力を集中させ、目を閉じる。

 

 精神統一、そして集めた魔力を極限まで抽出し……顕現させる!!

 

「《祝福武装:The Keeper of Arcane Lore》」

 

 祝福武装は、その名の通り武装。抽出された魔力が物体を型取り、その者の一番適した装備に変質する。

 そして、その武装は決して壊れず、決して使用者を裏切らない。

 

 僕の武装は、口元を覆う仮面、手にある分厚い魔法書(ルールブック)、そして宙に浮くダイスだ。

 まさにクトゥルフ神話TRPGにおけるKP(ゲームマスター)。そのための武装だ。

 

「あれは……!?」

「祝福武装か!? もう習得してるのかよっ……!!」

「うん、問題なく起動できた。それじゃあセッションを始めよう」

 

 僕の祝福武装の効果は、

 ・僕自身への攻撃の無効化。

 ・周囲の生物が行動する際、ダイスロールを発生させる。

 ・一部判定の数値は僕が決められる。

 ・邪神の完全顕現。

 

 の四つ。

 ちょっと最後がヤバすぎるけど、今回使う予定は無い。世界滅んじゃう。

 クトゥルフ神話TRPGにおけるKPとは、キャラクターやシナリオよりも一つ上の次元の存在。

 ダイスロールによって成否を判定し、プレイヤーに情報を与え、時に試練を与える。

 故に、キャラクターはKPに攻撃することはできない。

 僕に向けられた風魔法は全て逸れ、無効化される。

 そしてその風魔法にはダイスロールによる成否判定が必要だ。僕の周囲に浮いた幾つものダイスが、彼らの行動を1d100で判定している。

 勿論ツヴァイと猫の行動もなのだけれど、どちらも優秀だからそもそもの基礎数値が高い。出目も安定しているし、なんならクリティカルも出している。

 逆に“風鬼の杖”は固有魔法に頼って鍛錬を怠ったのか、風魔法の成功値はあまり高くない。サントよりハズーの方が高いが、それでもツヴァイとのステータス対抗で負けている。

 周囲のダイスロール対象のステータスは、数値化され僕の持つ魔法書に書き込まれている。変更があるたびに都度更新され、じわじわと減っていく二人のHPが見える。

 

「っこうなったら……! 僕たちも奥の手だ、サント!」

「そっそうだな! 温存しておくつもりだったが……しょうがない!」

 

 サントとハズーが並び、杖を構える。

 杖の先に魔力が集まり、風を巻き起こす。

 合体魔法だ。

 緑の旋風が辺りを舞い、収縮する魔力によって髪が靡く。

 

 おそらくこのコロシアム全体を風の魔法で埋め尽くす《合体魔法:風龍の怒り》を使うのだろう。そうすれば、僕はともかくツヴァイは大ダメージを負ってしまう。

 猫たちを一時退避。ツヴァイにも防御魔法を張るように言い、僕はその合体魔法の判定を行う。

 

「運命のダイスロール……1d100、成功値50」

「二分の一か……」

「100面ダイス、ロール!」

 

 カラン、カランとダイスが舞う。

 1から100。数字を刻まれた真っ白なそれが、数度跳ねた後カラコロと転がり…………止まった。

 

 その数値は────

SAN値チェック

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