固有魔法はSANチェック!【改訂版】   作:月日は花客

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24.魔法師祭はSANチェック!③

 

100(ファンブル)

 

 それが、ダイスが示した結果通告だった。

 

「な、なんだ、魔力が暴走して……!」

「しまった、失敗──」

 

 轟音を立てて、暴走した魔力がそのまま爆発する。

 爆風をツヴァイが張ってくれた防御魔法越しに見つめていると、黒い煙と緑の風がやがて晴れ、黒コゲになった“風鬼の杖”が姿を現した。

 ブスブスと口から煙を吐き、焼け焦げた服はボロボロ。顔には煤が大量についている。典型的な暴走による魔力爆発の惨状だった。

 

 コロシアムに沈黙が満ちる。

 

「おおっと、“風鬼の杖”魔力爆発により戦闘不能━━!! これにより、勝者は祝福武装を披露してくれた“猫と翼”だぁ━━!!」

 

「コルト、あれはお前の……」

「というより、彼らのダイス運……かな」

 

 ここぞという場面で致命的失敗(ファンブル)を引くなんて、ダイスの女神に愛されてるんだか嫌われてるんだか……。

 僕としても、ツヴァイが大ダメージを負うのを覚悟していたのに。こう言う時に防御魔法を使えない自分が嫌になる。

 猫たちは退避させたから無傷。僕もツヴァイも軽傷こそあれまだまだ継戦可能。

 第三試合も問題なく行けそうだ。

 

「とにかく、第二回戦突破だよ、ツヴァイ!」

「やったな。この調子で行きたいところだ」

「でも、まさかここで祝福武装を切ることになるなんて……」

「俺はまだ温存してるし、大丈夫だろ。むしろ切らずに消耗する方が不味い」

 

 だとしても、ツヴァイの攻撃にかなり頼ってしまっている。猫たちも攻撃はできるけど、やっぱり銃撃で大きく削れるからこそだしね。

 ツヴァイの消耗に気をつけて、次は初めから祝福武装を切るのもありかもしれない。

 祝福武装は大きく魔力を消費するから、そう何度も起動するとキツイのだけれど……あと二回くらいなら、僕の魔力量なら起動できそうだ。

 魔力量は多い方で良かった……。

 

「祝福武装はいけるけど、そうなると回復と撹乱は厳しそう。僕は回避優先で動くから、ツヴァイも祝福武装で通せる時はそっちで」

「わかった。猫たちは?」

「多少疲れてるけど、次の試合までにはある程度回復してるはず」

 

 二回戦突破の喜びもそこそこに、次の試合のために状態を報告し合う。

 基本試合間のインターバルは10分。その間になるべく魔力、体力を回復させなければならない。

 あの二人のルール違反の報告については……ファンブルが可哀想だったから、辞めておいてあげよう。それに運営も気づいてそうだし。

 あれは敗者復活戦は出れないだろうなぁ。

 

「まさか盤外戦術を食らうとはね」

「肩は大丈夫か?」

「うん、リリリ先輩の杖が無かったらしんどかったけど」

 

 武器に関してはある程度容認されているので、リリリ先輩のあのプレゼントはかなりのファインプレー。後でお礼に行かなければ。おつまみとか渡したら喜んでくれるかな。

 

 第三回戦までの時間、僕らはとにかく魔力回復に努める。

 僕は祝福武装に、ツヴァイは弾薬のために、魔力の回復は最重要。

 ツヴァイの弾幕は、すべて魔力が消費される。ゴム弾に変更するのにもプラスで魔力を消費するため、少ない魔力で使うと数発で魔力切れを起こす。

 ツヴァイも、魔力量は少ない方だけど、なるべく温存しなければいけない。余裕なんて無い。

 祝福武装を発動させると弾薬での魔力消費は抑えられるらしいけど、備えるに越したことはないのだ。

 やはりリリリのモノクルによる魔力消費減が役立っているので、僕らはリリリに頭が上がらない。

 

 *

 

 さて、第三回戦なのだけれど……。

 

「あら、貴方達なの」

「あわわわわわ……」

 

 クラリネとホムルだった。

 チーム名は“氷青紫苑”ここまで勝ち抜いていたらしい。確かに実力としては申し分ないチームだ。

 しかし僕とホムルは本当に相性が悪い。今もホムルはガクガクと震えているし、僕と目を合わせようとしない。

 たぶん、対戦相手が僕らだと言うのを今知ったのだろう。思わぬところから天敵が来たような小鳥のように縮こまっている。

 

「ホムル、ほらしっかり」

「あばっあばばばば」

「……ホムルはどうしたんだ?」

「なんというか、僕をすごい怖がるんだよね……何故か」

「ああ……」

 

 怖くないとあれだけ伝えようとしたんだけどなぁ……。取り巻きは怖いけど本人は何もしてこないし。

 ツヴァイはなんとなく納得したらしいけど、なんで? 僕、そんな怖い雰囲気纏ってた?

 僕が何かしてしまったのなら伝えてくれれば治せるところは治すのに……。

 クラリネに励まされているけど、なかなか震えがおさまらないホムル。……これから大丈夫だろうか。

 

「ええっと……取り敢えず、よろしく」

「はぁ……ホムル、大丈夫?」

「ううううう……」

「大丈夫には見えないんだが」

 

 もはや半泣きどころか大泣き直前になっているホムル。

 クラリネにジトっと見られるけど、本当に僕は何もしていないのだ。

 オロオロとなにも言えないままでいると、ホムルが震えながら口を開いた。

 

「き……」

「き?」

「棄権しましゅうううぅぅぅ!!!!」

「えっちょっとホムル!?!?」

 

 叫びながら出口へ走り去っていくホムル。それをクラリネが驚きつつも追う。

 棄権……そこまでして僕と戦いたくないのか……。流石にあそこまで拒絶されると心にくるものがある。僕、本当になんで怖がられてるんだろう。

 この前の絡んできたクラスメイトに何か言われたのだろうか。気絶で済ませたのに……。

 

「……これ、どうなるんだ?」

「さぁ……?」

 

 結局、数分後に「“氷青紫苑”棄権」のアナウンスが響き、僕たちは不戦勝となったのだった。

 

「本当に、なんで怯えられるんだろう」

「気持ちはちょっとわかるんだよな……」

「えっ、ツヴァイ??」

「俺も気配には敏感な方だし……」

「ねぇなんで? 何故か知ってるの? ツヴァイ??」

 

 ツヴァイはなんとなく理由がわかるらしい。

 でも知らない方がいいって教えてもらえなかった。お前はそのままでいいって。

 なんで?? 教えてくれたっていいじゃん、ホムルに怖がられたままなの嫌なんだけど???? ツヴァイ??

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