気を取り直して……ついにラスト、決勝戦だ。
ここまでは温存できている。すこし二回戦で魔力を削られたけど、ホムルが棄権してくれたお陰でなんとか大丈夫そうだ。
今回のお相手は“無手勝流”リクト&ハルナだ。
リクトは《全属性行使》で強力な魔法を、ハルナは手に持つ大剣で強力な物理攻撃を繰り出してくるはず……かなりの難敵になりそうだ。
「よろしく」
「ああ……ホムルはどうしたんだろうな? まぁともかく、よろしくな。ほらハルナも」
「……無意」
ハルナはそのクールな白銀の見た目を裏切らず、無口でほとんど会話をしない。というか、ほぼ成り立たない。
授業で当てられた時以外、「無意」「無用」とかしか言わないもんな……。でもその美しいルックスから、クラスではそこまで浮いていない。
というか、浮いてるレベルなら僕に勝てる相手いないだろうし……今回の棄権でより顕著になりそうで面倒だなぁ。ツヴァイ曰く「あまり突っ込んでやるな」だそうだけど……なら理由を教えてくれたってよくない?
ハルナは相変わらず会話のキャッチボールをしてくれないので、リクト中心に話が進んでいく。
「前の試合見てたぜ、祝福武装を持ってるなんてな」
「はは、修行したからね」
「でも、祝福武装を解放してるのはキミだけじゃない……容赦はしないからな」
「臨むところだ。こちらも手加減は無しだからな」
うんうん、やっぱりリクトはまともだ。癖の強い女子に囲まれているけど、本人はこうして話が通じる。常識があるし、僕を邪険にしない貴重な相手だ。
ただ、その分強敵というのもよくわかる。魔力は洗練されているし、油断が見えない。隙がない姿勢を維持している。
こちらを侮っていないというのは、かなりのデメリットだ。最初から本気で行かなければならないだろう。
「ツヴァイ、最初から出し惜しみせず行こう」
「ああ、元よりそのつもりだ」
お互い、それぞれの入り口に待機する。
転送用魔法陣が光れば──もうそこはコロシアムの中央だ。
「さぁ、ここまで快勝の“無手勝流”か、祝福武装を見せてくれた“猫と翼”か! 決勝戦、見逃せませんよ……ゴングがなったぁ━━!!」
爆音のゴング。それと同時に僕とツヴァイは祝福武装を起動した。
《祝福武装:The Keeper of Arcane Lore》
《祝福武装:Viel Feind,viel Ehr'.》
僕はさっきと同じく本とダイス、仮面が。
ツヴァイには、大型の
「速攻で──終わらせる!」
「おおっと、早速か!? ハルナ、オレたちもいくぞ!!」
「……無力」
《祝福武装:輪廻ノ賢者》
《祝福武装:春望》
「おおっと!? 祝福武装の連続! こんなものが一年の戦いであって良いのか━━!?!?」
リクトとハルナも祝福武装を起動できたようだ。やはりか……。
リクトは刀にも似た真剣を構え、周囲に浮いた宝珠が強い魔法の気配を漂わせている。
ハルナは最初から装備していた大剣が光の刃を重ね、さらに大きく長くパワーアップし、
魔法剣士と純剣士といったところか。
僕とツヴァイはガッツリ後衛なので、相性は悪い。だけどツヴァイは翼で空に羽ばたき、滞空して遠距離狙撃をしているので、まだマシか。
僕も祝福武装の効果で、攻撃は逸れる筈。
「速攻! ツヴァイ、全問斉射!」
「了解! そっちも猫たちを前へ!」
「うわっ猫様攻撃しないととか精神的にキッツぅ〜!?」
「無様」
流石に策を抱え落ちしたくは無いのでね!
最初から全力で獲らせてもらうよ。猫たちは限界まで召喚し、百を超える軍猫の大群がリクトたちを挟撃する。
剣を振ろうとすればツヴァイの射撃が、ツヴァイに魔法を向けようとすれば僕のダイスロールが。どちらか片方では絶対に落とせない、コンビネーション攻撃だ、これならひとたまりも──ない、筈だったのに。
「無謀」
ハルナの一太刀で、猫の津波が蹴散らされる。
どの子も深傷は負ってない。それなのに、その一撃で全てが崩れるほどに……圧倒的だった。つまり、剣を振った風圧だけで歴戦の猫たちが吹っ飛ばされたのだ。
猫たちの構えが戻らないまま、リクトの追撃が飛ぶ。猫たちが一匹、また一匹とウルタールに帰っていく。
ハルナの一振りは、それだけ強大で……自分の無力さを思い知らされるようだった。
「コルト、怯むな! まだ手はある!」
ツヴァイが上空から叫び、それにハッとする。
猫たちは殆ど帰ってしまった。一度残った猫たちもウルタールで休んでもらい、僕はダイスロールと妨害に徹することにする。
妨害とは、ロールにペナルティを加算することだ。ファンブルした時に、次の技能ロールの成功値を低下させることがあるが、それに似たようなことができる。
しかし、自動失敗や自動成功まで引き上げられるものでは無い。数値が大きいほど魔力や体力を消費するし、結果とのブレも大きくなる。
例えば、成功値が70──ダイスで70以下を出せば成功するもの──だったとしたら、それを40くらいまでは下げられるけど、それで失敗した時も掠ったり若干失敗とは言えない結果になったりする。
この力は一つの未来改変能力に相当するらしい……モリオンさん情報。なので、消費魔力も結果のブレもしょうがない。
が、ここでそのブレによって倒されたら元も子もないので、僕は15〜20ほどデバフを与えながらヘイトを受ける。
リクトも僕が何かをしていることは察しているのだろう。魔法を撃ってきているが、残念ながらそれは当たらない。
「クソッ、コルトちゃんに攻撃があたらねぇ! どういう絡繰だ?」
「よそ見とは良い度胸だな」
「あ゛ーもう! 撃ち落とす!」
しかし直接的に攻撃に参加しているわけでは無い僕ではなかなかヘイトを買えないようだ。ツヴァイに攻撃が集中し始めている。
まずい、このままではツヴァイの消耗が激しすぎる。
……ウルタールの猫以外に頼りたくなかったけれど、仕方ない。あの子も猫科だ、手を貸してもらおう。
「来て! ナス=ホルタースの獅子!!」
「ライオン!? そんなのアリなのかよっ……!?」
旧神、ナス=ホルタースは黒い影のようなライオンを連れている神だ。今回はそのライオンだけを貸してもらった。
幼い頃からよく遊び相手になってもらっているから、ライオンも僕に協力してくれる。ありがとうナスおじいちゃん、今度また神殿に遊びに行きます。
「────!!」
黒い獅子が吠える。その迫力は如何にも百獣の王!!
肉食獣たる威信とプレッシャーを背負い、ハルナに襲いかかる。
流石に旧神の獅子だ。ハルナも両断したり風圧で退かしたりできないまま、なんとか蹴りつけたり物理的に剣で押したりして対抗している。
リクトが抑えられないままだけど……ハルナの火力が一番不味いから、これで動きを封じられるのは大きい!
「大丈夫かハルナ!」
「無用。──ハァッ!!」
ハルナが思いっきり獅子を殴りつけると、黒い獅子は大きく吹っ飛ぶ。いや、腕力やばくない……? 祝福武装で強化されてるにしろ……。
しかしその一瞬、獅子が体勢を立て直すその隙間に、ハルナによる至高の一刀が叩き込まれる。
────僕に向かって。
「《
その光の剣は僕の祝福武装の
なぜ確定できないのかというと、僕の意識は剣の光に飲み込まれ、痛みを感じる前に途切れたからだった。
ツヴァイの叫びが、最後だけ聞こえていた。
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