固有魔法はSANチェック!【改訂版】   作:月日は花客

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27.邪神憑依はSANチェック!

 

「う……」

 

 意識が浮上する。

 たしか、僕はハルナの一撃を受けて……それで……。

 

「って、決勝は!?」

 

 思わず起き上がれば、僕はベッドにいて、周りでは何やら人に囲まれているのに気づく。

 ツヴァイやモリオンさんはともかく、ハルナやリクトまで……?

 決勝はどうなったんだろう。

 

「起きたか。決勝はもう終わったぞ」

「そっか……ごめん、僕が気絶しちゃったら、負けちゃったよね……」

「いや……俺たちの勝ちだ」

「え?」

 

 僕は確実に気絶した。意識を手放したし、それなら試合は終わっているはず。

 白いベッドに天井、衝立……ここは保健室のようだ。しかし人払いがされているのか、他の関係無い人の姿は見えない。

 なんなら防音魔法までかけられている。こんな厳重に……どういうことだろう。

 

「コルト、お前は何者だ?」

「え、」

「ちょ、ハルナいきなりかよ……」

 

 何者……? ハルナがまともな言葉を喋ったことも驚きだけど、質問内容がうまく掴めない。

 本当に、状況がわからないのだけれど?

 助けを求めてツヴァイに視線を向ければ、ツヴァイも苦々しい表情のまま説明してくれた。

 

 僕が気絶したと思っていたら、「ハスター」と名乗る人物が僕の体を借りて戦ったらしい。それによってハルナは剣を折られ降参。結果的に僕のチームの勝利で終わったらしい。

 ええ……ハスターおじさん憑依してたの? ハスターって憑依した人間はその後ぐちゃぐちゃの死体になるんじゃないんですか? 僕の体どうなってんの……?

 つまり一般人の戦いに邪神が乱入してしまったということらしい。よく生きてましたね……。被害はハルナの剣だけみたいだけど、邪神の一柱が降臨したのにそれで済むんだ……ハスターさんがとっても手加減してくれたお陰かな。

 

 それでつまり、僕は今存在を疑われていると。邪神やなにか悪魔と契約した罪人ではないか、ということらしい。

 ハルナ曰く、ハスターからは止めどなく邪気が溢れ、溢れ出ていたと。

 

「ええっと……」

「その前にだ、ハルナ」

 

 言い淀んだ僕の前に、モリオンさんが煙管を向ける。

 モリオンさんはこの中で僕の()()を知っている一人。庇うように部屋の光を反射する煙管からは、タバコではない煙が出ている。

 

「コルトの正体がなんであれ、殺すな。これは私の大切な友人よ」

「……無意。邪神の手先に生きる価値なし」

「お前……!」

「ツヴァイ、落ち着きな」

 

 ハルナのキッツイ言葉に、ツヴァイが思わず立ち上がる。そこまで僕を思ってくれているのはありがたいんだけど、今は僕の立場が立場過ぎるからなぁ……。

 でもツヴァイは味方になってくれそうだ。モリオンさんも僕を庇ってくれているし、ここですぐ斬られるなんてことはなさそうで良かった。

 

「お前に人間の生死を決める権限は無いと言ったんだ」

「人間……? そいつが?」

「私が人と言ったら人だよ。すこし黙りな」

 

 モリオンさんが煙管から煙を湧き立たせ、ハルナを拘束した。

 ハルナも抵抗するけど、微塵も動かずに煙はハルナの抜刀を封じている。

 やがて諦めたのか、恨めしそうな目でモリオンさんを見て抵抗を辞めた。

 

「悪いね。この話は他言無用だ。で、コルトはどう説明するつもりだい?」

「ええと、僕の固有魔法から……」

 

 僕の固有魔法は《邪神召喚》であること。おそらく意識が途切れた時に固有魔法が暴走したであろうこと。

 いつもはこんな事ないのだけれど、「攻撃を受けた」という部分で邪神のトリガーを引いてしまったのかもしれないということを説明する。

 

 ……勿論、色々誤魔化している。

 《クトゥルフ神話TRPG》なんて通じないだろうし、概要はだいたい同じ。普段から寮とかで顔を出していることも隠したりしている。そこまでいったら普通に討伐されそうだし……。

 

「でも、ハスターは誰も殺さなかったし発狂させなかった。僕の立場を考慮してくれたんだと思う。これで僕が処刑とかになったら、それこそ何をするかわからないよ」

「それは……確かにな」

 

 リクトが恐る恐る頷く。リクトも間近でハスターの気配を感じていたから、その恐ろしさは沁みているのだろう。

 ツヴァイは、神妙の顔のまま固まってしまった。……彼は僕を撃つだろうか。破邪の一族として。

 

「その固有魔法で、何をするつもりだった?」

「なにも。祝福武装はあの通り邪神を召喚するものじゃないから、ただ実践経験を積んでみたくてダブルスに参加したよ」

「なぁ、固有魔法が《邪神召喚》っていうなら……あの猫はなんなんだ?」

「あれは……ええと、邪神のペットみたいなものかな。でもただの猫だよ」

「ただの猫……」

 

 若干疑念が残るだろうが、ウルタールの猫は普通に猫だ。ちょっと頭がいいだけ。

 ハルナもあまり納得していないし、拘束が解かれれば今にも剣を抜きそうだけど、黙っている。

 一先ずの質問の波は突破しただろうか?

 でも、かなり大勢の人に見られてしまった。あれで大事になっていないといいのだけれど……。

 

「ああ、観客については気にしなくて良い。私がある程度記憶をぼやかしておいた」

「モリオンさん、そんなことが……!?」

 

 なんでもありだな、モリオンさんは本当に……。なら、問題になるとして学校内のみ……またホムルみたいなことになるだろうか? これ以上悪目立ちしたくないんだけどなぁ。

 

「ハルナ、リクト。これで此奴の正体はわかっただろう」

「ええと……最後に一つ。コルトちゃんはこれからどうするの?」

 

 その言葉に、僕は考え込む。

 何を……? 白亜の心眼について調べたいし、ハスターさんに僕の体について聞きたい。リリリ先輩に鏡の逆探知の結果も……とあるが、リクトに話せることはほぼ無い。

 ので、適当に誤魔化しておこう。

 

「邪神を抑えるためになんとかするよ。今回は運良く被害が出なかったけど、今後もそうだとは言えないから」

「そうか……何かできることがあったら言ってくれ」

「ありがとう」

「……ハルナ、行くぞ」

「…………」

 

 釈然としていないハルナを連れて、リクトが保健室から出ていく。

 完全に廊下からも姿が消えると、モリオンさんが煙管を振り鍵の施錠、遮音魔法、探知魔法でガッチガチに陣営を固める。

 本番はこれからだ。

 

「それで……実際のところは?」

「多分僕が気絶して怒って出てきただけですね。まだ話のわかるひとなんで今夜理由を聞いてみます」

「……やっぱり、誤魔化してたな」

「えへへ、ツヴァイにはバレバレだったみたいだね」

 

 ツヴァイは誤魔化していたことに気づいていたようだ。そこは流石僕の親友といったところ。

 ハルナとリクトは気づいてなかったから良いのだ。うん。

 ツヴァイとモリオンにはあらためて、《クトゥルフ神話TRPG》という名称を避けて真実を説明する。

 寮では自由にさせているという話にツヴァイがビックリしていたけれど、そうでもしないと学校でところ構わず出てきそうだったんだもの……。

 

「邪神……と言っているが、ハスターなんて神聞いたことがないぞ」

「えーとね、この世界の神様じゃないんだ、たぶん。外の世界……異世界の邪神が、なんでか僕を気に入ってくれてるの」

「それは……流石に俺の管轄外だな。外の邪神をどうこうなんてできないし」

 

 一族的にはセーフだったらしい。部署が違うとかそういう風なのだろうか。

 僕の正体を説明したけれど、二人とも怯えたり離れたりせずにいてくれた。それはとてもありがたい。

 むしろ、だから固有魔法を偽装していたのかと納得したようだ。

 

「さて、次は白亜の心眼についてだがね」

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